220  血圧

 5月は暑かったですね。真夏日なんて、どうしてこの時期に?という感じでした。一方で桜がなかなか咲かないとか散らないとか、全国から届く花便りは異変を知らせるものが続々...やっと雨が降り、庭に水撒きしないで済みましたが、この夏は暑いそうです。いっときの雨かもしれません。雨が降ると、植物が活き活きして、生長するのが分かります。普段も朝晩水撒きしているのですが、やはり自然の雨とは違うみたいです。

■ スモッグに苦しむ世界の大都市
 天気予報で、スモッグの話題があり、北京や上海以外にもソウルやパリ、モスクワ、テヘラン、メキシコシティなど、世界中の大都市でいまだにスモッグに苦しんでいるのだそうです。公害先進国日本は、東京の青い空を取り戻しました。こんなに短期にスモッグを解決したのは、課題先進国の面目躍如、誇らしいことです。ただ、異常気象がとみに問題化しています。とにかく異常に暑い日が増えました。雨の降り方もおかしい。福島第一原発の事故以降、石炭火力発電所の建設計画が相次いでいることに環境団体が反対ののろしをあげています。それはスモッグではなく地球温暖化対策のためです。今のまま二酸化炭素の放出を続ければ、東京は今世紀末、奄美地方の気候になるそうで、夏は暑く、集中豪雨などの災害が多発します。一番住みやすいのが盛岡辺り、北緯40度近辺になるそうですよ。
 5月27日(土)はその盛岡に用があって行って来ました。

■ 高齢者は血圧をどこまで下げればいいのか
 血圧が高いので毎日朝晩計っています。しかし降圧剤は飲んでいません。どことなく薬に頼りたくないからで、運動によって上がるのを防げるのではと思っています。血圧が高いと、脳卒中や心筋梗塞などを起こす危険性が高まるのは理解しています。高血圧が心臓のみならず、様々な臓器に悪影響を及ぼし、場合によっては、腰痛の原因が高血圧だったなどの事例も聞きました。
 ところが最近、これまで考えられていたよりも更に「低め」がいいとの研究結果が出て、話題になりました。低くなり過ぎるとめまいやふらつきが起こることもあり、これまた心配です。高齢者は血圧をどこまで下げればいいのでしょうか。

■ 血圧は「120未満」をめざせ?
 「衝撃データ」「『血圧は120以下に』は本当か?」。2015年秋、複数の週刊誌にこんな見出しの記事が出ました。米国であった臨床試験の結果を受けたニュースからのものです。
【特集】スモッグでかすむ世界の大都市
AFP BBNewsより転載  上:北京・天壇公園(2016年12月20日)
【特集】スモッグでかすむ世界の大都市
エッフェル塔もかすむパリ(2014年3月14日)
「SPRINT(スプリント)試験」と呼ばれるこの研究は、血管の状態に問題を抱えるなどの50歳以上約9千人が参加し、めざす血圧の値を収縮期120mHG未満と140mHG未満のグループに分け、その後の経過を追ったものです。すると3年あまり後には、120未満をめざして治療した人たちのほうが心臓病などの発症率が25%、死亡率は27%低かったのだそうです。中でも心不全を防ぐ効果が明確で、75歳以上の人たちに限って分析しても傾向は同じでした。
 日本高血圧学会が示す降圧の目標値は、65〜74歳の前期高齢者で140未満、75歳以上の後期高齢者は150未満で、薬の副作用の問題などがなければ140未満をめざすとなっていますが、SPRINTの結果だと「もっと低めの方が良い」ということになります。

■ 「白衣高血圧」
 ただ、この研究は「血圧の測定法が特殊」のようです。参加者は医師や看護師らスタッフのいない場所で5分間安静にし、自動式の機械で測ったとされます。血圧を気にする人はご存知かと思いますが、自宅で測る血圧と病院で測る血圧の値は後者が高いと言われます。医療スタッフの前で緊張すると、血圧が普段より高めに出ることを「白衣高血圧」と言います。「SPRINT試験」の方法だと、これを避けやすいわけです。
 この研究で120だった人が、診察室で測ったとすると値はどれくらいかと言いますと、おそらく135くらいではないかと言われます。日本で目標とする140未満とさほど違いませんね。日本高血圧学会は、測定方法によって値がどう異なるのかを日本人でも調べる研究を始めたそうですが、今の目標値をすぐに見直そうという動きにはなっていません。

■ 塩分の摂り過ぎが高血圧を招く要因大
 血圧が高いことによる悪さは、脳卒中や心筋梗塞などの「心血管病」で亡くなる危険性が高まることです。糖尿病を伴う高血圧の人も多いようです。そういう人は降圧目標値「130未満」とすべきだそうです。高齢になるにつれて血管のしなやかさが失われ、血圧が大きく上下するようになります。立ち上がったときや食後に急に血圧が下がり、ふらつきや立ちくらみなどが起きやすくなるのはこのためで、転んで骨折につながる危険もあります。
 高血圧を招く要因として大きいのは塩分の摂り過ぎというのは誰でも知っていますが、特に北東北のような寒い地方では冬の保存食のために塩漬けの漬物、魚という食文化があって全般にしょっぱいものを食べます。関西などの甘い食べ物と好みがまるで異なります。食塩摂取の目標は高齢者でも1日6グラム未満だそうです。でも薄味のせいで美味しいと感じないなら、人生の楽しみが減りますね。

■ 朝と夜、家庭で血圧測定を
 筆者は家で、上腕につけるタイプの機器で朝と夜、血圧測定しています。リラックスしてから測ると低く出ます。数値はグラフ化しています。健康診断で診察室で測ると高く出るのは、リラックス不足だということも分かってきました。家庭血圧はいわば『ふだん着』の血圧で、よそ行きの診察室血圧より、その人本来の値を示しやすいのは確かですが、家庭血圧でもお酒を飲んだ翌朝などは高かったり、どうしてこんなに低いのだろうと原因が分からないこともあります。長いこと測っていると、おおむね傾向は分かってきました。

■ 岩手県矢巾町の「塩彩プロジェクト」
 脳卒中死亡率が全国ワーストなのは岩手県です。厚生労働省の人口動態統計(2010年)によりますと、10万人当たりの脳卒中による死亡者は全国平均で男性49.5人、女性26.9人ですが、岩手県は男性70.1人、女性37.1人で、最も多かったのです。塩分の取り過ぎが脳卒中や高血圧の原因とされるので、岩手県の県庁所在地・盛岡市のすぐ南にある矢巾町は、地方創生事業「塩彩(しおさい)プロジェクト」を展開しています。その中心に位置付けるのが、塩分のもととなるナトリウムを減らし、体内の塩分を排出する作用を持つカリウムを加えた「ナト・カリ食品」で、相乗効果で減塩を実現します。ナト・カリ調味料は、食塩(ナトリウム)の25%をカリウムに置き換えたものです。これによって塩味を変えずに減塩できるという画期的な調味料です。岩手県味噌醤油工業協同組合は、浅沼醤油店(盛岡市)、佐々長醸造(花巻市)、八木沢商店(陸前高田市)、宮田醤油店(雫石町)、大黒醤油(軽米町)の5社が協力し、岩手大などの協力を得て昨年春に試作を開始、もろみを絞った各社の生揚(きあ)げじょうゆを浅沼醤油店に集め、ブレンドして最終作業の火入れ(加熱)をして、香り高く澄んだ色合いのしょうゆを3000リットル造りました。この減塩対策しょうゆに「いわて健民」と名付け、発売したのです。1本200ミリリットルで税込み350円。県内のスーパーなどのほか、ネット販売でも取り扱っています。詳しくは→コチラをご覧下さい。

(2017年5月29日)


次回へ    前回へ    最新ページへ    つぶやき最終回