209  課題先進国

■ 東日本大震災から6年 経ちましたね。マグニチュード9.0を生きているうちに経験してしまいました。実際、もしかして死ぬかと思い、会社の机の下に隠れました。テレビは落ち、本棚、パーテーションや植栽が倒れ、ひょっとして建物が倒壊するのでは?とさえ思いました。ところが慌てて妻に大丈夫か?と連絡したら全然焦っておりません。もともと焦るということを知らないようなヒトですが、さすがに今度ばかりは、と思ったのに拍子抜けでした。2回大きな揺れが来て、さすがに2度目は目の前の公園に避難しましたが、そのときに、非常持ち出し品を忘れていたことを思い出しました。咄嗟の時にマニュアルが生きなかったことを後で反省しました。現実にそれどころではなかったのです。社員それぞれが車に乗り合って帰宅しようと決めました。大災害が発生した場合、荒川を越える橋で大渋滞が起きて帰宅困難になるとかねがね報道されていたので、そのときは橋さえ落ちなければ自転車で帰ればまあ4時間もかからないだろうと思っていました。戸田からふじみ野まで20kmです。ところが、外環道と一般道が並行する幸魂(サキタマ)大橋は全然混んでいません、スイスイ帰宅しました。家に帰ってビックリ、何事もありません。物も落ちていないし、ズレてもいません。妻が焦っていなかった理由がわかりました。本人は当時市役所に居て、「揺れたよ〜」と言っていました。窓ガラスにヒビが入ったそうです。しかし我が家は全く何も無かった如き有様で、その後東大地震研究所が発表した内容を見て納得しました。戸田市美女木は荒川の脇なので地盤がユルユル、震度5強、ふじみ野市桜ヶ丘(当時の住居)は関東地方で最も揺れない地域なのだそうです。関東ローム層の厚い地盤の上だからとのこと。

■ 仙台の弟、母は大変な目に遭いました
 地震が起きて電話が繋がらないだろうと思いましたが、すぐのときは携帯は大丈夫でした。しかし仙台の弟、母、盛岡の妹、雫石の従兄は繋がりませんでした。翌日やっと連絡がつきましたが、盛岡の妹は建物は大丈夫とのこと、盛岡も地盤は強固なのだそうです。仙台は震源から最も近いので大変でした。母の居たケアハウスは仙台湾から近い宮城野区なので、すぐ隣の七北田川を遡った津波が堤防を越えて押し寄せて周りが海になりましたが、高く土盛りした上に建てられていたので、床上浸水はしませんでした。後日行った時、隣の消防署の前の道路のマンホールがジョキンと道路の上に飛び出ていました。それだけ地盤沈下したということで、凄まじさが想像できました。ただ、万が一に備え上の階に入居者を避難させたそうで、こういうときの施設の人たちの対応は素晴らしいと後日思いました。余震が続き、不安の中、11日間も停電が続いたそうです。泉区の弟のマンションは大被害でした。仙台市営地下鉄八乙女駅の真ん前で、八乙女駅も散々に壊れ、しばらく地下鉄は休業でした。地下路線は大丈夫でしたが地上に出た部分がダメだったのです。当時、弟は塩釜に勤務していて、建物が津波でやられ、塩釜神社に避難して一夜を明かして歩いて帰ったとのこと、いやはや大変でした。関東大震災、昭和三陸津波、東日本大震災と、生涯で三度の大震災を経験した母は東日本大震災の4年半後大往生しました。

■ マグニチュードと震度
 ところで散々報道されましたからもう皆さんご存知かもしれませんが、マグニチュードは地震そのもののエネルギーの大きさの尺度で、震度はそれぞれの場所のゆれ方の強さの尺度を表します。マグニチュードと震度の関係は、電球と明るさの関係に例えれば、電球そのものの明るさを表すのがマグニチュードで、震度はまわりの明るさです。同じ電球の光でも、電球からの距離によって明るさは変わります。震源が遠ければ震度は小さく、震源が近ければ震度は大きくなるわけです。ただ、宮城県沖が震源なのに埼玉県戸田市で震度5強、遠く離れた大阪でさえ被害が出たというのは、いかに地震のスケールが大きかったかということを示します。もう二度と経験したくありません。
 マグニチュードは地震のエネルギーを1000の平方根を底とした対数で表した数値です。マグニチュードが1増えると地震のエネルギーは約31.6倍になり、マグニチュードが2増えると地震のエネルギーは約1000倍になるわけです。

■ 大地震の巣はTPP
 これまで世界で起きた地震で、分かっている範囲でマグニチュードが大きかった順に列挙してみます。1位はチリ地震(1960年)でM9.5、日本を含めた環太平洋全域に津波が襲来し、大きな被害が発生しました。三陸沿岸でも随分死者が出ました。ハワイも大変でした。2位スマトラ島沖地震(2004年)M9.1〜9.3、死者 22万人、津波による被害としては、約22,000人が死亡したとされる1896年・日本の明治三陸地震、36,417人が死亡した1883年のインドネシア・クラカタウ島の噴火をはるかに超える観測史上最悪の惨事となりました。このときのバンダアチェを襲う津波のテレビ映像を見て、その恐ろしさを知りましたが、まさか6年ちょっと後、それが日本で再現されるなんて夢にも思いませんでした。津波は到達まで時間がかかりますから、警報が出てから避難しても逃げられるのですが、この地震では警報も出ませんでした。こんな恐ろしい津波の経験が無かったからです。3位:アラスカ地震(1964年)M9.2、4位:1833年スマトラ島沖地震M8.8〜9.2、5位:カスケード地震(1700年)M8.7〜9.2…カナダからアメリカ合衆国北部の太平洋岸北西部沿いで発生しました。6位:東北地方太平洋沖地震(2011年)M9.0、7位:カムチャツカ地震(1952年)M9.0、15〜18m規模の津波が3度にわたり発生し、カムチャツカ地方から千島列島にかけての沿岸を襲いました。8位:チリ地震(2010年)M8.8、もうやめますが、こうしてみると、日本からすると地球の真裏のチリ、アメリカ西海岸からカムチャッカ〜千島列島〜日本、インドネシアのスマトラ島沖で大地震が発生しています。もうお気付きですか?そうです、TPPです。

■ 福島第一原発で黙祷
 2017年3月11日、東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)では、広瀬直己社長ら東京電力幹部と社員700人が黙祷したそうです。広瀬社長が「廃炉はまだ先が長いが、経験を積み重ね、責任を果たしていきたい」と誓ったそうです。東日本大震災は、津波災害と、それが惹き起こした原発事故の二面で大災害となりました。原発は地震国日本にはふさわしくないと言われます。確かにそうです。しかし火力発電で地球を温暖化させ、将来世代にツケを回すほうが、現代人のもっと罪深い所業ではありませんか?自動車でバンバン石油を使って、大気を汚染し、地球を温暖化させて良いのですか?私たちは、今の快適な暮らしのために、将来世代に不幸をもたらそうとしています。私たちの子孫は先祖を恨むかもしれません。しかし、待って下さい。地球のために、将来世代のために、最も努力している国は日本です。本日はこれがテーマです。

■ 盛岡は雪、伊香保は晴れ
 伊香保温泉に行って来ました。我が家から100qもありません。1時間半で行けます。関越道川越ICから駒寄PAのETC出口まで高速料金\2,310(土日祝日は\1,790)、ガソリン代は片道\1,000円もかからないので、考えてみると高速道路料金というのは高いですね。往復6千円強プラス入浴料、昼食にお土産代、まあ1万円で温泉を楽しめるのは有難いことです。今回は連れ合いの友達も同乗で4人で行って来て、楽しかったと感謝されたので、良かった、良かった
 伊香保にはまだ片隅に少し雪が残り、風も冷たかったのですが、その前に盛岡に日帰りで行って来ました。ナント!雪が降っていました。さすがです、盛岡。

■ 課題先進国・日本
 日本は「課題先進国」だといわれます。この言葉は第28代東京大学総長の小宮山宏さんが言ったものと思います。「地球のために、将来世代のために、最も努力している国は日本だ」と上で書きましたが、これは小宮山宏さんが言っていることなのです。
雪の舞う盛岡駅前(写真上をクリックすると大きな画面)
 世界に類を見ない日本の超高齢化問題も、実は数十年後の世界の姿であり、日本の課題は、将来の世界の課題なのだと彼は言いました。超高齢化社会の問題にとどまらず、恒常的な資源不足、都市の超過密化と地方の過疎、世界に類を見ないヒートアイランド現象などは、将来確実に世界を覆う問題なのだそうで、それが日本で最も早く顕在化しているのだと言うのです。このような問題の解決を通じて、世界にモデルを提供する国となる、それこそが、これからの日本の使命となる、すなわち日本は「課題先進国」なのだということです。

■ 日本の人口
 日本の人口は右図の通り2010年をピークに減少に転じました。古くは1300年頃に1千万人に達し、徳川幕府が成立した1603年でもまだ1千万人強だったのにそこから急に増加します。100年後には3千万人を越え、そこから漸減に転じます。江戸時代の後半150年は人口が減少したのです。1867年が明治元年ですが、そこから今年で150年です。この間の人口増加が1億人、凄まじいですね。今日本は三度目の人口減少、最初は縄文時代、2回目が江戸時代の後半150年です。すなわち人口減少は裏返せば豊かさの顕れ、決して悪いことではないというのが筆者の説です。
 人々の暮らしが安定すると、種の保存という本能的な働きが鈍る、その典型だと思うのです。途上国では今でも爆発的な人口増加が続いていますが日本は減少している、それだけ日本は豊かになったのです。物理的には、所得など見れば日本人はそれほど豊かではありませんが、心は豊かなのです。
内閣府高齢化白書平成24年版「高齢化の推移と将来推計」グラフ

■ 日本は人口問題の課題先進国
 今後、日本は少子化と高齢化が進み、働く人の数が減り、総人口が減少して行きます。30年後には1億人を切り、40年後には9千万人を切ります。22世紀には46百万人を切り、23世紀で1千万人と戦国時代に逆戻り、このままの状況が続けば2300年には3百万人になると言われています。こうした人口変化は世界的に進行すると見込まれており、日本はその先頭を歩んでいるわけです。ただ予測どおりになるとは限りません。大きな戦争などがあると、種の保存本能が働くからです。
 人口変化は必然的に多くの難しい課題を日本に突き付けます。外国からの移住を認めようという動きも出るかもしれません。ただ日本は災害大国なので、必ずしも外国人から見たら住み易い国とは言えません。やがて他の国々も日本と同じ課題に直面するでしょう。まさに日本は人口問題の課題先進国と言えます。日本の直後を走るのが中国です。高齢化が進む中国は、やがて日本を見習おうとするでしょう。
 余談ですが今日本では地方の若者がどんどん東京へ移住しています。安部政権が必死に唱える地方創生も、石破さんが大臣をやめたらどこかに霞みました。やがて地方は老人だけになり、そして・・・・これ以上は、やめましょう。ところで中国政府は国内の貧富の格差拡大対策として過疎地の住民を強制移住させるという壮大な計画を実行に移そうとしています。強制移住させなくても、東京へ人々が自主的に移住する日本は、どういう課題に向き合って、何に直面するが故にこの現象を招いているのでしょうか?恐らく人口減少社会になると、人々は自然に寄り添いあうようになるのです。原野を切り開き、たくましく生きる時代のエネルギーが失われて行く、都市部へ人口が集中して行くのは、世界的現象としてますます進んで行くでしょう。

■ 日本は環境問題の課題先進国
 他にも日本はいろいろな面で課題先進国です。たとえば環境問題ですが、昔は公害で大気が汚染され、光化学スモッグ警報が頻繁に発令され、隅田川は臭くて、東京湾にはヘドロが溜まり、江戸前の魚?浅草海苔?冗談でしょう、という感じでした。それが今はどうですか?お台場にはビーチが出来て、木更津では潮干狩り、夜空には星が輝き、中国からきれいな空を求めて日本に来る観光客、川には鮎が戻り鮭が遡上する、水道をひねればおいしい水、公衆トイレになんとウォシュレット!こんな国は世界にはありません。どうして短期間に日本は課題を解決したのでしょうか。それは狭い国土で公害を出せば企業は生き残れないから必死になって対策したからです。例えば埼玉県は、県をあげて河川の浄化に取り組み、下水道を整備し、浄水場を整備し、泡がぶくぶくの下水の川のコンクリート護岸を壊して、昔のような植物が生い茂る川にしました。植物は水の富養分を吸い上げ、水は綺麗になって行きました。一方で川を汚染する洗剤は排除され、複合的な対策で、川の水はみるみる綺麗になって魚が戻ってきました。私たちが生きている間に、こんなにも短い間に環境が戻って行くのは、まさしく信じがたいほどの出来事でした。
 排気ガスの脱硫装置、粉塵を除去する装置、水の浄化装置や器材、これらは日本のお家芸、世界の先頭を独走しています。必要が需要を作る典型です。中国は日本から技術導入して課題を解決したいはずです。

■ エネルギー面でも課題先進国
 米国のトランプ政権は「地球温暖化は中国の陰謀だ」などと信じられないことを言って、CO2排出抑制策をやめる、石炭産業を再活性化するなどという馬鹿げたことを言っています。日本には貿易不均衡の原因である非関税障壁の撤廃を求めるなどと言っています。あの環境先進国ドイツでさえ、日本の自動車の排ガス規制は厳し過ぎるなどと言っています。しかし、この狭い日本で自動車の排ガス浄化を義務付けなければどうなるか、過去の経験で日本人は良く知っています。プリウスに代表されるハイブリッド車や、電気自動車、今後の二酸化炭素を出さない燃料電池車などは、地球環境汚染対策として日本が世界の先頭を走っているのです。燃費の悪いアメリカ車を日本人が買わないのは、必然です。米国はガソリンが安いので、わざわざ高いハイブリッド車や電気自動車を買うのはハリウッドのスターや大金持ち、環境意識の高い人たちだけです。しかし石油の輸入100%の日本人は、なるべくガソリンを消費しない車を選びます。出来ればガソリンを使わない車を、と考えます。結果的に日本のガソリン消費量は減って行き、ガソリンスタンドはドンドンつぶれました。サウジアラビアのサルマン国王が46年振りに国賓として来日するのは何故か?環境先進国日本に脱石油で生きるための協力を求めるためです。有限な化石資源にいつまでも頼ってはいられない、資源が無くて、ちっぽけな国土の災害大国が世界3の経済国家として立派にやっている、自分たちも変わって行かなければならないという危機意識からでしょう。日本はエネルギー面でも課題先進国なのです。

■ 「燃料電池」の技術でも課題先進国
 大気汚染対策と二酸化炭素排出抑制にはどうしても「燃やす」ことを抑制しなければなりません。したがって小学校に在った焼却炉は撤去されました。問題は発電所です。石炭火力はコストは安いけれど環境的には抑制したい、石油は高い、LNGが増えましたが、これも二酸化炭素を出します。結局水素利用や原子力と言う発想が出て来ます。水素が大気中の酸素と結合して水になる時に電気が発生する、これは水の電気分解の逆の原理で、これが「燃料電池」の原理です。炭素が介在しないで電気が発生します。炭素と酸素による「燃焼」によって水を沸騰させてその水蒸気の圧力でタービンを回すのが火力発電、二酸化炭素が排出されます。核分裂エネルギーで水を沸騰させてその水蒸気の圧力でタービンを回すのが原発で、二酸化炭素は排出されません。「燃料電池」は水素と酸素の化学反応の過程で電気が発生しますからタービンを回すという機械動力が不要、すなわち摩擦による音も出なければ熱も出ない、二酸化炭素はもちろん出ない、出るのは水だけです。タービンが不要ですから、設備は小さく耐久性が全然違います。すなわち機械動力発電ではなく化学発電です。
 水素は太陽が水素の核融合反応でエネルギーを発していることでお分かりのように、宇宙の始まりの元素であり、陽子1個と電子1個だけなので軽いガスです。水素が危険なガスという一般的に考えられている概念は、考えようによってはその通りですが、一般的にはそんなことはありません。水素は大気中に4%以上の濃度になって五百数十度の温度にならなければ発火しません。軽い気体ですからドンドン上に逃げて行くので濃度が高くなることは通常では起き得ないのです(水素爆発については後述)。
 そして水素と酸素が単純に結びついて水が出来るわけでもありません。反応させるためにはエネルギーが必要なのです。私たちの周りでエネルギーと言えば太陽ですね。すなわち太陽のエネルギーをうまく利用すればよいのです。太陽エネルギーで水から水素を取り出して酸素と結合させて電気を発生させて取り出す、また水が出来る、すなわちこのサイクルが実現すれば、二酸化炭素を出さない究極の循環サイクルが実現します。太陽電池で電気を作るのは効率が凄く悪いのですが、水を利用して燃料電池にして、発生させた電気を二次電池に蓄え、もうひとつ出来るのは水ですから、究極の循環サイクルになるのです。「エネルギー保存の法則」によれば、太陽エネルギーが電気エネルギーに変わったことになります。二次電池を用いれば、太陽が照らないときでも電気が取り出せます。しかも水素は保存できますから、容器に蓄えて必要な時に酸素と反応させれば良いわけです。この「燃料電池」の技術でも日本は世界のトップで、この面でも課題先進国なのです。

■ 原発の廃炉技術でも課題先進国になれ
 原子力は莫大なエネルギーを生み出すものの、放射能が人体に危険なことから、万が一制御不能となってチェルノブイリや福島第一原発のような事故が起きると大災害となります。人間が豊かな暮らしを求めて使うエネルギーが、地球環境を汚染します。炭素、水素、酸素、これは生物の身体を成す元素です。そしてまたこれこそがエネルギーの源です。国土の狭い日本では原発は悪者扱いされていますが、二酸化炭素を出さない自然エネルギーのコストが安くなって普及するまで、燃料電池技術が確立して実用化されるまでの過渡期に、二酸化炭素排出抑制のためには暫定的に稼動させるしかありません。そして日本が環境問題で短期間に課題を克服したように、日本の技術開発のスピードは、国民が一丸となった時に驚異的なスピードが発揮されるのです。福島第一原発の事故で日本は学びました。そして世界中で今も増え続ける原発の廃炉はやがて世界各国の課題となります。日本は原発の廃炉技術でも課題先進国となるべきです。「地球のために、将来世代のために、最も努力している国は日本だ」という意味がお分かり頂けたでしょうか。

■ 福島第一原発の水素爆発について
 燃料電池のところで、水素について述べました。水素が危険なガスかというとそうではないと書きましたが、「水爆」や「水素爆発」ということから危険なイメージが付きまといます。危険じゃないなら、福島第一原発の水素爆発は何だったんだ?と思われるでしょう。2011年3月12日に1号機で、14日には3号機、15日には4号機で爆発が起き、建屋の上部が崩壊しました。水素は大気中に4%以上の濃度になって五百数十度の温度にならなければ発火しないのですから、通常の開放的な環境では爆発は起きません。ところが原発というのは、放射性物質が外に漏れないように密閉容器になっています。原子炉は高温の燃料棒によって周りの水を沸騰させる、湯沸かし器のようなものです。地震後、原子炉は自動停止して核反応は止まりましたが、燃料棒の熱を奪うための冷却に問題が起きました。その冷却系統を制御する制御盤が津波の水をかぶり、しかも自家発電機も同様に止まったことで、水位が下がり、通常は水に覆われているはずの燃料棒が、むき出し状態で非常に高温(千数百℃)になりました。燃料棒はジルコニウムという金属の合金で覆われていますが、このジルコニウムは高温になると、周囲の水蒸気(水)と激しく反応し、水から酸素を奪い、水素が発生してしまったと考えられます。こうして1〜3号機の原子炉の圧力容器で発生した水素は、軽いですから配管や容器などの破損箇所を通って原子炉を覆う建屋の上部に貯まったと考えられます。その水素と建屋内の気体の酸素が混ざり、高温になった結果、水素爆発が起きました。また4号機では、使用済み燃料プールで高温の燃料棒のむき出し状態が続いたことで水素が発生し、同様の水素爆発が起きてしまいました。2号機は水素爆発は起きませんでしたが、これは1号機の水素爆発の衝撃で建物上部側面が開いたために水素ガスが逃げたからです。一方で1、3号機ではベントが出来たのに2号機では出来なかったために、放射性物質は最も多く排出される結果になりました。

■ 人為的な原発事故に学ぶこと
 チェルノブイリ原発事故は、やってはならない実験的な運転をして制御が暴走し、止められなくなって爆発した人為的な事故で、日本の原発では起き得ないと考えられていました。しかしながら福島第一原発では津波で冷却水ポンプが止まり、自家発電機も止まったのです。それでもせめて水素ガスを逃がすことが出来れば爆発は起きなかったのに、厳重な密閉構造でこれもできません。津波の水はやがて引きますから、送電再開して冷却水を供給できれば事故は抑えられました。原子炉停止まではうまく行ったのに、水素爆発で放射性物質が大気中に放散され、「逃げろ〜」ということになってしまいました。すなわち、福島第一原発の事故も結果的には人為的な事故だったのです。制御盤が水を被らないようにしてあれば、水素ガスを逃がせる構造ならば起きなかった事故、「想定外」と言いながら、実は津波を想定していながら対策が不十分だったのです。1〜4号機すべてが事故となって、原発事故はどうすれば起きるのか、起きたら何をやり、何をやるべきでないか、事故を起こさない発想と共に、万が一起きたらどうやって抑えるかまで、多くのことを学び、世界中の原発保有国の教訓となりました。人間は学ぶことで技術を高めてきました。交通事故で年間数万人も日本では死んでいます。しかし事故の危険性があるから車はやめようということにはなりません。最近では事故防止のために自動的に車を止める安全機能が付くようになってきました。人間は間違いを犯すものなので自動運転にしようという技術も現実的になってきました。私たちは事故に学び、更なる安全技術を適用していかなければならないのです。それが技術者に課せられたミッション(使命)なのです。

■ 朴槿恵大統領失職
 韓国の憲法裁判所は2017年3月10日、朴槿恵大統領の罷免を認めました。裁判官は弾劾審判で、朴大統領による友人の崔順実被告の財団設立の支援と、財閥企業からの資金拠出について、「地位と権限を乱用して崔被告の利益追求に関与し、憲法違反・法律違反を続けた」と8人の裁判官全員一致で罷免を認めたのです。ただし私人となった朴槿恵氏はあくまで無実を訴え、崔順実被告も同様です。朴槿恵氏の支持者もまた多数居て、韓国は深刻な分断状態にあると言えるでしょう。

■ 国内外に荒波を立てて経済低迷
 朴槿恵前大統領の政権4年を振り返ると、当選の辞で述べた国民への約束「過去半世紀の間、極端な分裂と葛藤をもたらしてきた歴史問題を、和解と党派間の均衡を図る政策によって断つよう努力する」と言っていたにもかかわらず、蓋を開けたら、国内では「私たち」と「彼ら」に分断する政治を進め、深刻な政争を巻き起こしました。対外的には対北朝鮮では最初南北高官級合意で雪解け期を迎えたかのように見えましたが、北朝鮮の核実験と長距離ミサイル発射、韓国政府の開城(ケソン)工業団地稼動全面中止措置などにより、冷戦時代に回帰しました。日本に対しては李明博大統領の末期に対日強攻策への転換〜反日韓国世論が高まった流れに追い討ちかけるように慰安婦問題を持ち出して対話を拒み、一方中国に擦り寄って米国から反発を受けるなど一方的な外交によって国内外に荒波を立てました。ずっと日韓融和の流れが続いて韓流ブームが起き、韓国経済も好調が続いて、サムソンは日本の家電業界を追い落として、韓国人の給与所得は日本を追い越すなど、四半世紀前には考えられなかったことが起きていたのに、朴槿恵大統領の政策によって韓国経済は低迷したのです。

■ 深刻な打撃を与えたセウォル号沈没事件
 朴槿恵氏にとっては2014年4月16日のセウォル号沈没事件が深刻な打撃を与えました。「生徒たちは救命胴衣を着ていたというのに発見するのがそんなに難しいのですか?」事故から半日経ってやっと中央災害安全対策本部に姿を見せたときの言葉です。事故状況さえちゃんと把握できていなかった朴前大統領は、国民の側に立つ人ではない、と猛烈な反発を受け、自ら惹き起こした国内分断のあおりを受けて逆風を受けることになりました。

■ 日米回帰も実らず、逆に中韓関係険悪に
 これはいかんと、朴槿恵氏は米国の仲介もあって安部首相と不本意ながら握手し、「慰安婦」問題で「最終的・不可逆的な合意」を締結しました。続いて、野党が前々から「日本の軍事大国化」につながるとして反対していた日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を結びました。釜山の少女像の移転を要求する日本政府は、大使を召還するという強攻策をとりましたが、韓国国民の圧倒的多数が少女像撤去に反対する状況をみると、日韓政府間の歩み寄りは悲観的です。また中国・ロシアの反対を押し切ってTHAAD配備を決めたことで、親密だった中韓関係は一転、険悪となりました。

■ 朴槿恵-崔順実ゲート事件で弾劾決定
 そこへ起きた「朴槿恵-崔順実(チェスンシル)ゲート」事件、怒った国民はますます分断し、ついには憲法裁判所で全員一致で弾劾が決定されました。朴槿恵前大統領は結局、一度も来日しないまま任期を終える初めての大統領、弾劾で失職する初めての大統領になるという不名誉な歴史に名を刻みました。
 韓国国民をここまで怒らせたものは何か?それは、民間人の崔順実氏の国政介入の真相以上に、「民主化以後の韓国民主主義」「1987年憲法体制」のあり方なのだろうと思います。民主的に選んだ大統領がおおむね悲劇的な結末を迎える、それは自分たちの民主主義に問題がある、そういう自分たち自身への怒りなのではないでしょうか。権力者に擦り寄ることで利益を得るのが当然と言う韓国的な常識をどこかで断ち切る、そのためにはあのサムソンでさえも例外ではないのです。

■ 韓国国民の民主主義は変えられるか?
 しかし新しい大統領選挙で韓国国民の民主主義は変えられるのでしょうか。保守系の潘基文(バン・キムン)前国連事務総長が2月に不出馬を表明した以上、どう考えても野党から大統領が出るでしょう。最新の世論調査では革新系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が大きくリードしているようです。この人は党内でも左派で、親北朝鮮、慰安婦問題の対日合意破棄、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を表明しています。中国の軍事力強化、北朝鮮のミサイル発射などで緊張が高まる中、日米韓安保の重要性がますます大事なときに、韓国国民はいったいどういう選択をするのか?日本政府はどんな政権になっても日韓関係は大事なので協力して行くとしていますが、その割には大使召還という振り上げてはいけない拳をどうやっておろすのか、難しいところです。メンツなんてこだわらないことですね。

■ 仲良くやりましょうよ
 韓国への旅行をやめろという中国政府の指示は今後韓国経済に台湾同様の深刻な打撃を与えるでしょう。韓国は台湾を見習うべきです。台湾は日本と仲良くすることで、日本人観光客を呼び寄せています。逆に台湾人も日本への観光で、日本の業界から歓迎されています。中国から排除され、日本とも対立したら、貿易立国の韓国経済はガタガタになります。過去を振り返れば、韓国が周囲と仲良くしていた時期は経済が順調でした。過去に学ぶことです。日本もことさらカッコつけず、韓国に手を差し伸べるべきです。

■ 燃える「キングコング」・・・・映画試写会で火災
 ベトナム南部ホーチミンで2017年3月9日に行われた映画の試写会で燃え盛る炎の中に浮かぶ巨体・・・が動画配信されました。燃えていたのは「キングコング」の模型です。火の周りで行われたダンスパフォーマンスの後に火災が発生し、観客は当初、炎は演出の一部だと思い込んでいたそうです。その後、炎は模型全体に広がり、会場は騒然となったとのこと、そりゃそうですね、ジョーダンでできるパフォーマンスではありません。
 キングコングの最初の映画は20世紀にアメリカで作られ、新たに製作された今回の映画は主にベトナムの首都ハノイで撮影されたのだそうですよ。『キングコング:髑髏島の巨神』というタイトルで、これは『GODZILLA ゴジラ』製作チームによるアドベンチャーアクション映画、3月25日に日本でも公開される予定です。人類が決して足を踏み入れてはならない場所“髑髏島(ドクロトウ)”に派遣された調査遠征隊が、未知なる生物と対峙する模様を描く作品だそうです。監督は、『キングス・オブ・サマー』のジョーダン・ヴォート=ロバーツ、そうか、ジョーダンか、道理で。キャストには、『マイティ・ソー』シリーズのトム・ヒドルストン、『ルーム』のブリー・ラーソン、『アベンジャーズ』シリーズのサミュエル・L・ジャクソン、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジョン・C・ライリーらが名を連ねています。
 右の日本版ポスターでは、髑髏島に隊列をなして進む5人の兵士と、2機の軍用ヘリが写し出されていますね。彼らが向かう山の中央に赤々と燃える太陽をバックに、咆哮する巨大なモンスター、キングコングの姿、怖そう〜〜〜。
 イオンシネマで試写会があるというので申し込んだら当選しました!夜なので、夫婦で見てきます。でも、くれぐれも火事にはならないで欲しい、建物内のクローズドシアターではジョーダンでは済まされないので!
キングコング:髑髏島の巨神日本版ポスタービジュアル

■ 凄まじきWBCオランダ戦
 侍ジャパンは第4回WBC2次ラウンドE組初戦で、東京ドームでオランダと対戦し、延長10回で勝負がつかず、WBC史上初のタイブレークの末、8-6で勝ちました。試合が終わった時もう日替わり直前でした。苦しみながらも、1次ラウンドから無傷の4連勝、この勝利は日本得意の「守りの勝利」であるだけに、今後に向けて大きな意味があります。小久保監督も「一生忘れられない試合になるだろう」と言いました。
 WBCのタイブレークは無死一、二塁からです。我々の少年野球では無死満塁もしくは1死満塁からが多いのです。詳細は省略しますが、お立ち台は5番打者中田(日本ハム)と最後を締めた牧田(西武)でした。中田はここぞというところで期待に応えて良く打ってくれました。日本人選手としてはWBC史上初の3戦連発本塁打です。4番筒香が打てなくても中田が打つ、素晴らしい。次に中田が打てなくても今度は筒香が打つような気がします。しかし坂本、山田、菊池、青木、秋山、小林、内川も良かった。全員の勝利です。結局常に日本が先手をとりました。

■ 内角を突かないと強打者は抑えられません
 「守りの勝利」と書きましたが、3回5-1リードから先発石川が3連打を浴びた末に犠飛とバレンティンの左翼ポール直撃2ランであっという間に5-5の同点、試合を振り出しに戻されました。石川は防御率ナンバー1の投手ですが、見ていて外角一辺倒が気になりました。顔が優しいというか、いわゆる怖くありません。攻めはバッテリーが決めるので、石川だけの責任では有りませんが、メジャーの現役大リーガーなどのオランダ強力打線を抑えるには内角攻めが必須です。内角は本塁打の危険性もあるものの、野球に共通しているのは「強打者には内角を突け」という点です。連打を浴びて筆者は「内角、内角」と叫びましたが、外角を突いては打たれました。その後平野や千賀が好投したのは内角を突く強気のピッチングが奏功したからです。平野は顔が良いですねぇ。野球ではああいう顔が良いのです。千賀はガイジンにも打たれないだろうと言われていたとおりナイスリリーフでした。9回に則本で逃げ切ろうとしましたが、同点に追いつかれたのは誤算でした。則本はメジャーで通用すると言われる素晴らしいピッチャーですが、もともと先発投手です。抑えは牧田と小久保監督はかねがね言っていましたから「アレ?なんで則本?」と思いました。結局投手陣で唯一前回WBCを経験している牧田が、強気の内角攻めで強力オランダ打線を抑えました。メジャーはもちろん外国にはそもそもサブマリンは居ません。だから慣れていないのです。

■ 二塁手菊池のファンタスティック・プレー
 注目したのは二塁手菊池です。これまでもたびたび好守でチームを救っていますが、この試合のプレーには鳥肌が立ちました。6-5の7回1死一塁で、ボガーツの二遊間への鋭い打球を逆シングルでダイビングキャッチし、そのまま二塁カバーの坂本にバックハンドグラブトス、それも併殺狙いでやや一塁寄り、結局一塁走者封殺のみでしたが、このスーパープレーは、全世界に中継され、インターネットでも絶賛の声が上がりました。MLB公式サイトも「キクチのファンタスティック・プレー」とのタイトルですぐに動画をアップしたほどです。オランダベンチも思わず拍手していました。
 ところで別の攻撃の場面で菊池が内野ゴロで1塁アウトになったとき、判定とともに菊池が頭に手をやりました。「これはセーフだな」と思いました。打者走者は自分の足がベースを踏んだ感触と1塁手がボールをキャッチしたときの感覚を瞬時に感じます。野球では「同時はアウト」と言われますが厳密には「同時」というのはありません。
菊池が坂本へバックハンドトス
スローモーションビデオでリプレーされたらやはりセーフでした。しかし抗議もせずに菊池が素直に判定に従ったのは見事でした。野球では審判の判定にはたとえ誤審でも従わなくてはなりません。

■ なぜクラシック?
 ところでWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの「クラシック」とは、どういう意味だろうと疑問でした。調べたところ、「クラシック」とは「古典」という意味だと思っていましたが、そうではないのだそうです。「classic」は「非常に重要で質が良く、長く続く価値がある」という意味があって、メジャーではオールスターのことを「ミッドサマー・クラシック(真夏の祭典)」と呼ぶなど、「価値のある試合」には「クラシック」という単語を使うのだそうです。WBCはメジャーの影響が色濃く反映されているため、「クラシック」という命名になったようです。
(2017年3月13日)


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