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 何やらアルファベットの標題が続きますね。週刊新潮のコラム「管見妄語」で藤原正彦氏が英国のEU離脱について書いていたこと、実は筆者予想と違って、藤原正彦氏は心のうちで快哉を叫んだ?みたいですよ。グローバル化によって世界中で格差が拡大し、結果として物騒な事件が頻発し、人々は再び内にこもりたい、その表れが英国民の選択だと言うのです。我々はすぐ経済のことを考えてしまいますが、地域経済からEUのような国境を越えて経済連携する動きが拡がり、結果として異なる民族がどんどん入ってくると、これまで培われた文化が失われていく・・・再び引きこもりたい・・・なるほど、確かにグローバル化がもたらす格差拡大は各地で諍いを起こし、ポピュリズムを台頭させて行くのかもしれません。

■ 2025年問題対策のために
 今回は地域と言っても、スケールはグンと小さく、日本国内の地域おこしの話です。ドンドン過疎化が進む田舎、肥大化する大都市、民族大移動が進んでいますが、それがもたらすリスクもまた同時進行します。特に2025年問題、団塊の世代が後期高齢者となって、介護される人が増えると、特に大都市東京などでは介護難民が溢れると予想されています。更に東京では直下型地震が想定され、災害リスクも急上昇しているのに、それでも若者は集まってくる...これではいけないと政府が進める施策、それがCCRC(Continuing Care Retirement Community)なのです。米国発祥の暮らし方で、直訳すると継続的なケア付き引退後地域社会のことです。高齢者が自立して生活できるうちに特定の施設に入居し、介護が必要になっても医療を受けながら生活するまちを作ろうという考え方です。
 これはNHK[クローズアップ現代」2016年2月15日(月)放送「高齢者の“大移住”が始まる!?〜検証・日本版CCRC〜」でも採り上げられました。

■ 一億総活躍社会・・・まち・ひと・しごと創生
 地方に移住する高齢者の生活拠点となる「生涯活躍のまち」構想に関する政府の「まち・ひと・しごと創生本部」は2016年6月2日、構想実現を進めるモデル事例として7市町を選んだと発表しました。対象自治体とともに移住促進策や空き家の活用法などを検討していく方針です。また、有効な取り組みは他の自治体にも広げたい考えです。

■ 生涯活躍のまち
 生涯活躍のまちとは、安倍政権が掲げる地方創生の地域再生プランにおける日本版CCRC(高齢者健康コミュニティ)と一億総活躍社会を推進するため、日本国政府が「ついの住みか」として選定した地方都市のことで、シニアタウンとも呼ばれます。日本版CCRCは「高齢者が元気なうちに移住し、仕事や社会活動を通じ地域の担い手として活動しながら、必要に応じて医療・介護を受けられる共同体」を目指すもので、政府としては地方自治体が策定する「地方版総合戦略」に入居者の安心・安全確保のため守るべき項目や地域の特徴・強みを示すことを求め、実際には医療・社会福祉法人やデイケアサービスなどを提供する民間企業・NPOなどを「運営推進法人」として認定し、交付金の交付や介護保険制度の見直しなど優遇が受けられるものです。

■ 増田寛也氏が座長で推進
 地方創生本部に設けられた有識者会議は増田寛也氏が座長を務めています。精神衛生上も自然と接する機会が多い地方都市(あるいは田園都市・公園都市)暮らしはストレスが少なく、地方移住により農業従事者や郷土の伝統文化の継承者が増える期待感もあり、持続可能な生活にも繋がると考えられます。
 増田寛也氏はこれに先立って日本創成会議の座長として、日本の消滅都市をまとめ、日本国中に衝撃が走りました。東京23区の中で唯一池袋のある豊島区が消滅の危険があるということで、豊島区長は発奮して若者に住みよい豊島区作りを打ち出して、前向きな政策をバンバン打ち出しました。良いことです。やはり危機意識を持って行政を行うことが住民のためになるのです。
 日本創成会議は「医療・介護に余力のある41地域」についてもまとめています。

■ シニアタウン7市町選定
 以下の7市町の選定理由は、2015年に内閣府地方創生推進室から地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)のうち、先駆的事業(CCRC)の認定をうけた5県32市町村の中から、より具体的な取り組みを示し、地域バランスや地元大学や企業・NPOなどとの連携体制の充実度を考慮したとされます。
 岩手県雫石町…未利用町有地14ヘクタールを活かした「100年の森とコミュニティライフの共生プラン」
 新潟県南魚沼市…豪雪地帯であるハンディからエネルギー効率の改善や衛生専門学校との連携を推進
 石川県輪島市…「新交通システムでつなぐ漆の里・生涯活躍のまちづくりプロジェクト(輪島KABULET)」
 山梨県都留市…以前からシルバー産業の構築を推進してきた
 長野県佐久市…北陸新幹線で東京とは一時間半圏内であり、都市部との交流を保った「交流と協働で織りなす夢をかなえるまち」
 鳥取県南部町…分散居住型の町づくりを目指す
 福岡県北九州市…産官学による「地(知)の拠点 大学における地方創生推進事業」(COC+)との連携

■ 生涯活躍のまちづくりサミット 北のまちスペシャル

 2016年6月25日(土)東京・八重洲に北海道上士幌町・厚沢部町、岩手県雫石町の町長が集結し、まちの魅力や地域おこしについて語るイベントが行われ、参加しました。
地域に暮らすすべての人が生き生きと暮らせる仕組みづくりを目指して、自治体と民間、地元の人々と移住者が、知恵を出し合い協力して未来を創る地域おこしにどのように取り組んでいるのか...北のまちの魅力やその取り組みを紹介しながら、あなたが暮らしたい理想の町づくりを一緒に考えてみませんか!?』というイベントでした。
 主催したのは「生涯活躍のまち移住促進センター」です。
 それぞれの町長さんが熱く語られました。
北海道の大自然を満喫しながら人生を楽しむスローライフを提案する大雪国立公園を庭にするまち ・・・・北海道上士幌町の竹中 貢町長
 子育て環境がとても充実している上士幌町を、5日後のNHK「あさイチ」で特集してくれるので是非ご覧下さいと言っておられました。町民の保育料は所得制限もなく、完全に無料。町にある認定こども園では、絵本や和太鼓など設備が充実しているのに加え、アメリカ人の講師が常勤でおり、毎日無料で英語教育をしてくれます。こうした充実ぶりの元となっているのが、道内で最も多いというふるさと納税の寄付金、年間で15億円(2015年度)にのぼります。その寄付金の85%(返礼品の費用など必要経費を除く)をこの町では子育て環境の充実に投入しています。その結果、働くお母さんが増えたり、移住してくる若い世代が増えたりといった効果が上がり始めているそうです。なんといっても十勝地方は食材の宝庫、日本の中でも大規模農業で所得が多いことで知られています。
住む人みんなが暮らしやすい世界一素敵な過疎のまちづくりをめざすメークイン発祥のまち ・・・・北海道厚沢部町の渋田 正巳町長

 北海道新幹線「新函館北斗駅」から車で約40分、数多くの清流に恵まれ、とにかく水がおいしいこと、そのため長生きの人が多いとおっしゃいました。老人に給付金なんて、ウチの町では10年前からやってる、100歳になったら100万円差し上げる(施設入居者除く)とのこと。安全で品質の高い農産物の産地であり、厚沢部町が発祥の地であるじゃがいも「メークイン」をはじめ、大豆やトウモロコシ、カボチャ、メロンなどの栽培が盛んに行われ、近年はビニールハウスを使用した立茎アスパラ栽培に力を入れており、生産額が年々向上していると紹介されました。一方で、急速に進行する少子高齢化及び過疎化に伴う、地域・農家の担い手不足という大きな課題に対応すべく、2009年4月に“過疎”を受け入れた上で誰もが住みやすい、個性豊かで活力に満ちた「世界一素敵な過疎のまち」を目指したまちづくりに取り組むことを目的に「厚沢部町素敵な過疎のまちづくり基本条例」を施行。2009年9月には町の100%出資で「素敵な過疎づくり株式会社」を設立し、町が重点施策に掲げる移住交流事業の実務を担い、都市部からの協力隊やちょっと暮らし(移住体験)の受け入れ、道外大学のアウトキャンパス誘致、町外でのPR活動等に積極的に取り組んでいることを紹介されました。加えて厚沢部町の地域プロデューサー吉木美也子さんが、このまちに住んでみて何が良いか具体的に補足されました。

小岩井農場に隣接する町有地を活用して人と自然が調和した地域づくりを進める山と牧場といで湯のまち ・・・・岩手県雫石町の深谷 政光町長
 「盛岡に隣接し、東北道盛岡ICから車ですぐ、JR雫石駅には秋田新幹線「こまち」も止まる地の利の良さが魅力です」と胸を張りました。雫石町は農業と観光を基幹産業として発展してきた町です。周囲の岩手山や駒ヶ岳を中心とした雄大な山岳美や中央部に広がる歴史ある水田など豊かな自然と景観に恵まれています。泉質も効能も全く違ういで湯が10か所あるほか、日本最大級の民間牧場「小岩井農場」をはじめ、スキー場やゴルフ場など岩手山南麓を中心に数多くのアウトドアレジャースポットがあり、四季を通じて雄大な自然の中で遊ぶことができます。
小岩井農場に隣接している14ヘクタールの町有地でCCRC事業を展開する事について詳しく紹介されました。ここに、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のほか、障害者の多機能事業所、移住希望の子育て世帯向けの住宅などを順次建設、2020年度までに温浴施設、図書館なども作り、町民と移住者が多世代にわたり交流できる街を目指しています。町の総合戦略の重要施策にも位置づけています。更に地域プロデューサー関由美子さんが、さいたま市に住んでいて、移住先を色々探した結果選んだこのまちに住んでみての印象を紹介されました。確かに冬の雪は大変だけれど、除雪はすごく充実していること、なにしろその大自然の素晴らしさは住んで見なければわからないことなどを紹介されました。 コミュニティライフしずくいし


■ 日銀の地域経済報告…消費弱くなり、企業も値上げの抑制や低価格戦略検討
 未曾有の金融緩和で人為的に人々の物価観を刺激する日銀の政策運営に対し、その日銀自体の調査で、狙いとは逆の動向になっているという、なんとも悩ましい報告が2016年7月7日発表されました。消費の弱さの背景としてリポートは、1)株価下落による逆資産効果、2)訪日外国人需要の増勢鈍化、3)先行きの景気に対する悲観的な見方、4)自動車など需要の先喰いと燃費不正問題・・・などを挙げました。「スーパーで298円弁当など低価格商品を拡充する」、「加工食品や日用品は競合他社の販売価格を眺めつつ必要に応じて値下げを行う」といった低価格戦略を強化する動きが見られると指摘しています。アベノミクスがどうのこうのなどと言っていられる場面でないことは、為替と株価から明らかで、なんとも苦しい日本経済となって来ました。何よりも企業マインドが冷えてきたのがヤバイ....
(2016年7月10日)


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