167  地震と地盤

 我が家の周辺の家の庭に薔薇の花が盛んに咲いています。5月と言うのに早くも真夏日が現れて、熱中症に注意と言われています。我が家の庭にもトマト、きゅうり、ナス、ゴウヤ、ヘチマ、隼人瓜が育ち、ミョウガも元気です。アジサイも咲き出し、朝顔や青紫蘇もグイグイ成長しています。花壇も花盛りで目を楽しませてくれます。
 近辺は建設ラッシュで、新築住宅やセレモニーホール、保育園、介護施設が続々建設中です。ただ我が家に最も近い東上セレモニーホール鶴ヶ岡が急に閉所しました。というのは消防署の跡地に東上セレモニーホールふじみ野という大きな施設ができたので、近隣に2箇所も要らないということでしょう。死んだら近くに東上セレモニーホール鶴ヶ岡があるからここで、と思っていたので目算が狂いました。

■ 危険でも住みたい
 災害について過去たびたび書いてきました。ただ、災害はいつ起きるかわからないし、いつ我が身に降りかかってくるかもわかりません。東日本大震災でつくづく感じたのは、えらそうなこと言っていても、自然の前には人間はちっぽけな存在だということです。だからこそ、できるだけ危険から遠ざかりたいし、もし起きたらということへの備えが必要と言うことです。雲仙普賢岳の麓なんて、確実に危険なのに、人間は再びそこに住もうとします。それは三宅島だってそうだし、桜島も、あるいは軽井沢だって箱根だって、隣に危険な山があったり、足の下が火の壺なのに人はそこが好きです。逆に危険なところこそ有名な観光地になります。

■ 地震保険
 今回の熊本の地震で、災害の中でも地震の恐さを改めて感じました。地震保険というのは火災保険とセットで、地震保険だけというものは存在しません。その保険料は、契約条件が同じならどの保険会社から加入しても同じです。営利を目的とせず、官民一体で地震被害に備えるという構造上、保険料は全社統一されています。 肝心の契約条件ですが、これは建物の構造と所在地によってランク分けされます。当然ながら、地震被害を受けやすい建物や地域に住む人ほど保険料が高くなり、安全性が高いと判断できる人は安く設定されています。また基本的にこの保険は、全壊、半壊、一部損傷の程度によって支払われる額が異なりますが、基本的に建て直す金額に相当する金額とはならず、「被災した時の生活の維持」のための金額ですから、建て直しの費用は別途積み立てておく必要があります。詳細は財務省のホームページ「地震保険制度の概要」をご覧下さい。

【地震保険金額1,000万円当たりの年間保険料】
等級 都道府県 2013年10月 2016年5月現在
耐火(非木造) 非耐火(木造) 耐火(非木造) 非耐火(木造)
1等地 岩手県・秋田県・山形県・福島県・栃木県・群馬県・富山県・石川県・福井県・長野県滋賀県・鳥取県・島根県・岡山県広島県・山口県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県 5,000円 10,000円 6,500円 10,600円
福島県 5,000円 10,000円 6,500円 13,000円
2等地 北海道・青森県・宮城県・新潟県・山梨県長野県・岐阜県・滋賀県・京都府・奈良県・兵庫県・岡山県広島県香川県・大分県・宮崎県・沖縄県 6,500円 12,700円 8,400円 16,500円
3等地 香川県 6,500円 15,600円 −  − 
茨城県・山梨県・愛媛県 9,100円 18,800円 11,800円 24,400円
埼玉県・大阪府 10,500円 18,800円 13,600円 24,400円
4等地 徳島県・高知県 9,100円 21,500円 11,800円 27,900円
千葉県・東京都・神奈川県・静岡県・愛知県・三重県・和歌山県 16,900円 30,600円 20,200円 32,600円

 表には2013年10月と現在での保険金額の変化を載せています。地震列島ニッポンでは、保険金は上がる一方ですね。赤字から緑字へとランクアップ(=危険度が低下)した県が6ありますが、唯一ランクダウンしたのが福島県です。福島県は1等地の中で唯一非耐火(木造)の保険料が10,600円ではなく13,000円と高くなりました。長野県・滋賀県・岡山県・広島県は2等地から1等地へ繰り上がり、香川県は3等地最安値から2等地へ繰り上がり、山梨県は3等地から2等地へ繰り上がりました。熊本県は最も保険料が安かった、つまりこれまでは比較的安全な地域だったわけです。今後はランクダウンするでしょう。地震と言うのが、いかに予測できないものか、良く分かりますね。

■ 危険なところに人口が集中している日本
 上の表で皆さん気付かれたと思いますが、いわゆる田舎ほど保険料が安く都会は高い?いいえ、そういうことではありません。田舎でも四国や紀伊半島は高い、すなわち、関東以西の太平洋に面した地域の危険度が高いということです。また危険なところに人口が集中しているということです。地震は怖いが、それさえなければ住み易い、確率的に考えて人はそこに住みたがるのでしょう。

■ 今後30年で震度6以上の地震確率は?
 右の図を見て下さい。今後30年で震度6以上の地震確率を色ぬりしたものです。赤いほど揺れやすく、黄色ほど揺れにくいところです。
 揺れやすいところを見ますと、札幌市、苫小牧市、秋田県大潟村〜秋田市、山形県酒田市、仙台市、新潟市、会津若松市、関東は茨城県南部、千葉県北部、埼玉県東部、東京都東部〜神奈川県東部、静岡県御前崎市〜浜松市〜湖西市、名古屋市、福井市、大阪市、徳島市、岡山市、松江市〜出雲市、北九州市、佐賀市、熊本市、宮崎市、延岡市、鹿児島市・・・・、さあ皆さんもうお分かりになったでしょう?人が多く住むところです。揺れやすいところというのは住みやすいところだ、ということになります。どうしてでしょうね?きっと何か明確な理由があるはずです。
 関東では埼玉県の秩父山地が揺れにくい(秩父盆地を除く)。栃木県西部の足利、佐野、鹿沼も揺れにくい。東日本大震災の被災地では福島県浜通りが揺れにくい(海岸線を除く)。岩手県の北上山地も揺れにくい。北海道では日高山地が揺れにくいということがわかります。

2010年以降30年間で震度6以上の揺れが起きる確率


■ 表層地盤の揺れやすさ全国マップ
 地震を考える時に、地盤の硬さが問題になります。2005年10月19日に内閣府より「表層地盤の揺れやすさ全国マップ」が公表されました。これは地形や地質調査などのデータを基に推計したデータです。地域を1km四方の広さごとに区切って、地震が起きたときの揺れやすさを7色に分類して地図に落とし込まれており、揺れやすい地域と、揺れにくい地域が一目瞭然となっています。都道府県ごとに作成され、インターネットで公開されています。一般には、地震の規模が大きくて震源から近いほど、揺れが大きくなります。ところが、これらの条件が同じでも、表面地盤の軟らかさによって揺れ方が変わり、軟らかい場所ではより強く揺れることがわかりました。マップをみると、平野や川に沿った地域は表層地盤が軟らかいために揺れやすく、山間部では比較的揺れにくいことがわかります。こうした推計データを参考に、揺れやすい地域に我が家がある人は、家具の固定、地盤改良や耐震改修などをして住宅の耐震性を高めれば、大きな被害を防ぐことができるというわけです。
 右の図がその「表層地盤の揺れやすさ全国マップ」です。暖色系になるほど揺れやすいというわけです。揺れやすさMap(PDF)のほうが大きくて見やすいのでそちらもどうぞ。
 表層地盤の揺れやすさマップのほうが「揺れやすいところは人口集中地帯」ということがハッキリ分かります。つまり河川が海に注ぐ平野部であり、そういうところの地盤は軟弱なのです。山間地は揺れにくいということです。北海道、東北の広い部分と九州の一部に緑色、すなわち揺れにくくも揺れやすくもない中間地帯があります。

2005年に内閣府から発表された地面表層の揺れやすさMap

 もうひとつ見逃せないのは房総半島、伊豆半島から北北西方向に緑の帯が拡がっていることです。これは「フォッサマグナ」であり、後で説明します。関東南東部は揺れやすい地域も全国の中で最も広く、神奈川県、東京都、埼玉県の東部と千葉県北西部、茨城県南部が揺れやすいことが分かります。筆者の住む埼玉県ふじみ野市は微妙な地帯で、狭い市なのに東部の荒川・新河岸川沿いは揺れやすく、我が家の位置する西部は狭山市、所沢市に接する武蔵野台地の上なので揺れにくい、数百mの差で極度に揺れが違う地域です。埼玉県の表層地盤についてはまた後で採り上げます。

■ フォッサマグナと糸魚川静岡構造線
 震度6発生確率マップと表層地盤の揺れやすさマップを見比べて見ますと、今後30年で震度6以上の地震確率が低い黄色の地域と、表層地盤の揺れにくい青の部分が重ならない場所があります。それが中部地方と紀伊半島から四国、大分、熊本にかけての部分、これこそ「中央構造線」です。すなわち、表層は揺れにくいけれど大地震が起きる確率は高い地域です。「中央構造線」は日本列島の関東以西の中央を貫く大断層です。右の図の赤線です。本州の中央をU字型の溝が南北に走り、その溝に新しい地層が溜まっている地域を「フォッサマグナ」と言い、中央地溝帯とも呼ばれます。本州中央部、中部地方から関東地方にかけての地域を縦断し、西縁は糸魚川静岡構造線、東縁は新発田小出構造線及び柏崎千葉構造線と呼ばれます。地図で一目瞭然ですが、フォッサマグナは「面」であるのに対し、糸魚川静岡構造線はフォッサマグナの西端の「線」であります。糸魚川静岡構造線は、親不知(新潟県糸魚川市)から諏訪湖を通って、安倍川(静岡市駿河区)付近に至る大断層線で、地質境界でもあります。
肌色の地域がフォッサマグナ


■ 揺れにくい武蔵野台地
 ここで再び表層地盤の揺れやすさマップとフォッサマグナを見比べて見ましょう。糸魚川静岡構造線を境に西側は揺れにくくなっていることがハッキリわかります。東側は古い地層のU字型の溝に新しい地層が溜まっているので当然揺れやすくなります。ただしフォッサマグナのなかで東京都奥多摩町、檜原村から山梨県丹波山村、小菅村、群馬県の富岡市以南、長野県の北相木村、南相木村の辺り、そして埼玉県の秩父地方から比企丘陵と呼ばれている地帯だけは揺れにくい青になっていて、その中でポツンと台風の目のようになっている地域が秩父盆地です。この青い地帯が武蔵野台地と呼ばれます。

■ 日本の断層Map
 右の図はニッポンの断層マップです。糸魚川静岡構造線や中央構造線がハッキリわかりますね。北海道と東北は断層が南北で、中部は糸魚川静岡構造線と並行または直角、近畿地方に掛けて集中しています。断層型地震は新潟や長野、阪神淡路など、コレまでの大震災は皆これで説明がつきます。不思議にも原発があるところは断層が多いようです。
 今回の熊本県、大分県の大地震は、まさしく中央構造線上で起きたわけですから、長い間地震の恐怖とは遠いと見られてきたところでも、地下に断層があればいつ発生してもおかしくないのです。
 また海溝型地震は津波を引き起こすので、今後30年以内に東南海地震が恐らく発生するだろうと言われていますので要注意です。

断層Map

■ 東日本大震災で顕在化した液状化現象
 2011年3月11日、三陸沖でマグニチュード9.0の大地震が発生しました。大津波による甚大な被害と並び、液状化現象も各地で発生しました。地震の揺れには耐えた家でも、 その後の液状化により大きく傾く例が多発し、23,000軒を超える住宅が被害を受けました。どれほど耐震性の高い家でも、その下の地盤が軟弱であれば、液状化現象を起こし家が傾いたり沈んだりします。地震による最大の危険は液状化と言っても過言ではありません。東日本大震災では特に、千葉県浦安市をはじめとした湾岸地区、内陸部でも埼玉県久喜市のような田んぼを埋め立てた土地においての被害が大きかったと言われています。地面から水があふれ出し道路が水浸しになったり、電柱が倒れてしまう、家が大きく傾いてしまうなどの被害が多数報告されました。しかし、一方で液状化地域にあり、隣の家が液状化被害を受けているにも関わらず、無害だった家の存在も報告されています。地盤改良によって対策を打っていた住宅は大丈夫だったのです。

■ 液状化が起こり易い地盤
 液状化とは、地震によって地盤が一時的に液体のようになってしまう現象です。通常、地盤は土や砂・水・空気などが均等に混ざって構成されています。しかし、地震等の揺れによって、これら安定していた土・砂・水が分離され、地盤が水に浮いたような状態になってしまうのです。そうして水が噴き出したり上部の建物などが沈み込んだり、揚圧力を受けて破壊されたりします。液状化現象が起こりやすい地盤は、海岸や川の近く、および埋立地などの比較的地盤がゆるく、地下水位が高く、砂質土がゆるいところになります。液状化を完全に防ぐことは難しいですが、地盤改良の種類によっては、対策を打つことが可能です。

■ 埼玉県の表層地盤
 埼玉県では、 西部に山地、東部に低地が広がることから、全体的な傾向として、西部は硬い地盤、東部は軟らかい地盤となっています。特に、東部の中川低地沿いに軟らかい地盤が帯状に続いているのが特徴です。関東造盆地運動というのがあり、中心は埼玉県久喜市と東京湾北部で、この2地点を中心に年間1mm程度沈降しています。一方武蔵野台地は厚さ約5mの関東ローム層で覆われ、酸化した火山灰層で、地盤は強固です。関東で最も揺れにくい地域です。

■ 舛添知事ピンチ
 東京都の舛添要一知事の問題はどうなっているんでしょうか?本来論評に値しない問題です。神奈川県湯河原町の別荘への公用車通い、2015年4月〜2016年4月、湯河原町の別荘に公用車で48回行き来したうち、43回は自宅のある世田谷区を経由していたそうです。参院議員時代の政治資金の不透明な支出なども相次いで明らかになりました。政治資金規正法では支出を明らかにすれば、その中身までは問われないので、マイポケットと政治資金がわけが分からなくなっても公表してれば良いのでこんなことになりましたが、自分の財布から金を出すことをきちんと励行してきた経営者の立場から言えば、政治家と言うのはどういうものかとあきれるしかありません。これだけ総スカンになりますと、もう持たないでしょうね。
(2016年5月23日)


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