154  鞆の浦

 2016年2月19日は「雨水」でした。「雨水」とは立春から数えて15日目頃で、空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になる、という意味だそうです。草木が芽生える頃で、昔から、農耕の準備を始める目安とされてきました。春一番が吹くのもこの頃です。しかし、本格的な春の訪れにはまだ遠く、大雪が降ったりもします。三寒四温を繰り返しながら、春に向かっていきます。まさにその通りの気候ですね。
 我々少年野球人にとっては、この「雨水」の頃が代替わり時期なのです。6年生が卒団し、5年生が新6年として始動します。練習試合を重ね、3月の春分の日頃からの新しい大会に向けて備えるのです。

■ 鞆の浦埋立架橋計画撤回
 広島県福山市の景勝地・鞆(とも)の浦の一部を埋め立て、橋を架ける計画を広島県がまとめたのは1983年、反対する地元住民らは訴訟で対抗し、このたび県が計画を完全撤回しました。広島地裁が「鞆の浦の景観は、国民の財産ともいうべき公益だ」として、計画を差し止めてから6年余り、控訴していた県と住民側が訴訟終結で合意に達したのです。景観保護を前面に掲げた住民運動が「動き出したら止まらない」と言われる公共事業を頓挫に追い込んだ画期的な一例と報じられました。
 鞆の浦は瀬戸内海の北側沿岸のほぼ中央に位置し、平安時代から港町があったそうです。古くから瀬戸内海の「潮待ちの港」として栄えた鞆の浦には、雁木(がんぎ)と呼ばれる階段状の船着き場や常夜灯のほか、幕末に坂本龍馬も立ち寄った風情ある街並みが残っています。宮崎駿(はやお)監督の映画「崖の上のポニョ」に登場する町のモデルとしても有名です。
 そもそも瀬戸内海は大小の島々が点在し、海岸もギザギザしています。右写真で分かるようにびっしりと建物が並んでいます。既に湾のところに立派な道路や橋も架かってますね。生活便利のためには開発を、しかし昔ながらの風情は観光の目玉、まあ多少不便でも観光資源を残したほうが良いでしょう。

鞆の浦

■ 鞆の浦にまつわるもろもろ
 この地の出身・宮城道雄の筝曲「春の海」は、瀬戸内海の島々の綺麗な感じを描いたもので、「長閑(のどか)な波の音とか、船の櫓(ろ)を漕ぐ音とか、また鳥の声というようなものを織り込んだ。曲の途中で少しテンポが速くなるところは舟歌を歌いながら、櫓を勇ましく漕ぐというような感じを出したものである」と宮城道雄は後年書いています。蕪村のうた「春の海 ひねもすのたり のたりかな」の風情ですね。
 万葉集にも鞆の浦をうたった歌は4首登場します。その中で、大伴旅人の歌
  「鞆の浦の 磯のむろの木見むごとに 相見し妹は 忘らえめやも
などもありますが、
  「海人小舟(あまおぶね) 帆かも張れると見るまでに 鞆の浦みに 波立てり見ゆ
などは、作者未詳ですが、普段は穏やかな鞆の海上に風が出てきて、白帆のような波が立っているさまをうたっていて、鞆の浦をよく表した一首です。鞆の浦の海が荒れてきたようだ、海人が小舟の帆を張っていると思われるほどに白波が立っているよ、ということですね。

■ 鞆の浦を表すキーワード
 上で書いた鞆の浦を表すキーワードについて詳説します。鞆の浦は瀬戸内海の東西の潮流の分岐点、すなわち、東は紀伊水道、鳴門海峡、西は豊後水道、関門海峡から瀬戸内海に流れ込む潮がちょうど瀬戸内海のほぼ中央の鞆の浦あたりでぶつかり合うため、古くから潮待ちの要港として栄えたのです。雁木とは江戸時代に築かれた船着場の石段で、潮の満ち引きに関係なく荷物の積み下ろしが出来るようにしたものです。現在も、200mにわたって残されています。幕末には坂本龍馬が率いる海援隊の「いろは丸」(170トン)と紀州藩の軍艦、明光丸(880トン)とが衝突し、竜馬が巨額の賠償金を大藩からせしめた事件、最近では、映画「崖の上のポニョ」製作にあたって宮崎駿監督がここに滞在して構想を練ったことで一躍有名になりました。

■ 鞆の浦の食といったら鯛ですね
 そして鞆の浦の食の名物はなんといっても鯛。井伏鱒二は「鞆ノ津茶会記(福武文庫)」に次のように書いています。要約ですが「春になると、鯛は産卵のため外洋から三つの関門を潜って瀬戸内に入って来る。みんな燧灘(ひうちなだ)の走島を目がけて来て、走島の近くの岩礁に卵を産み、それがすむと一方的に西の関門から外界に出る。どういふものか鯛は瀬戸内に入ってくるときには三つの関門から入って来るが、ことごとく長門の関門から出て行って、豊予、紀淡の関門から出て行く鯛は一つもない。これは瀬戸内の七不思議の一つだと思っておる」というものです。

■ 2016米大統領選…民主・共和両党の候補者指名争い
 米大統領選で、民主、共和両党の候補者指名争いは始まったばかりですが、不思議な戦いが展開されています。民主党はもともと、、クリントン前国務長官が圧倒的有利とされてきましたが、大多数の米国民が嫌う「社会主義者」のサンダース上院議員が若者の圧倒的な支持を集めて急伸し、互角の大接戦となっています。一方、共和党は政治経験が無い実業家のトランプ氏が優勢で、追うのが保守強硬派のクルーズ上院議員ということで、良識的米国人からすると「どっちが勝っても恥ずかしい」と言われています。左右両翼に挟まれて、やっぱり最後は一番まともなクリントンさんに落ち着くのでは?と言われていますがどうでしょうか?
 結局のところ、不満渦巻く米国社会のブーイングがこの選挙に出ているのです。そしてそれはマスコミへの不信でも有り、ネット中心に左右両極端が支持されるのであって、これは日本では有り得ないなどと言う人もいますが、そんなことはありません。一時期東京都知事が青島幸男だったり、大阪府知事が横山ノックだった時代があったではありませんか。
(2016年2月21日)


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