142 喪中
はやいものでもう師走です。日本国政府は、最近次々と経済対策を発表しています。安保が終わって今度は経済だということでしょう。TPPや原発再稼動、地方創生交付金による消費喚起、法人税減税、消費税の軽減税率、相続税問題、携帯電話料金下げ、賃上げと設備投資増を経済界に要請、最低賃金を千円以上に、蛍光灯製造禁止、核燃料サイクルの主管組織変更など立て続けに政策を打ち出していますが、アベノミクスを失速させたくないという思惑の一方で、個人消費も企業の設備投資も思わしくなく、苦悩が膨らんでいます。 ■ 喪中ハガキ
■ 都心に納骨堂の時代に 東京都港区の赤坂見附駅から徒歩数分という都心の一等地に、5階建てのモダンな「赤坂浄苑」という建物があります。金沢市に本院がある宗教法人「伝燈院」が2年前に開いたもので、広さ4百平方メートル超の敷地に、本堂や、約3千7百基を収容できる納骨堂を備えています。 参拝する遺族は、ホテルのロビーのようなラウンジを抜け、2〜3階の参拝室へ向かうのだそうです。参拝ブースは計12あり、ICカードをかざすと奥の納骨庫から骨つぼが入った「厨子(ずし)」が出てきます。これは多分自動倉庫システムではないでしょうか。生花は供えてあり、掃除も不要です。夜21時までお参りでき、都心のサラリーマンが仕事帰りに手ぶらで立ち寄れるのだそうです。 永代使用料は一基150万円、毎年の護持会費は1万8千円とのこと。将来、護持会費が払えなくなっても、合祀(ごうし)して永代にわたり供養するのでアンシンだそうですよ。区画の販売は仏壇・仏具大手のはせがわに委託しており、赤坂浄苑では、すでに区画の約3割が売れたそうです。
■ 想定外の固定資産税課税で裁判に さて問題は、赤坂浄苑の敷地と建物の昨年度分の固定資産税などとして、計4百万円余りを納めるよう伝燈院が東京都から求められたことです。地方税法では、宗教法人が宗教目的で使う土地や建物は固定資産税などを非課税にすると定められています。寺や神社のほか、墓地も非課税扱いとされてきました。しかし都は、赤坂浄苑が宗派を問わず遺骨を受け入れたり、はせがわに建物内で営業を認めたりしていると指摘し、課税に踏み切ったわけです。 これに対し伝燈院は、都に課税取り消しを求める訴えを東京地裁に起こしたそうです。住職は、「他の宗派の方も受け入れて布教するのは当然。故人のために毎日読経するなど宗教活動に使っている」と言っているとのこと。厚生労働省は、民間が墓地や納骨堂を運営する場合、運営主体を宗教法人などと指針で定めています。営利に走らず、永続的な運営が望ましいとの観点からです。葬祭業者や墓石業者などが宗教法人と「一体化」するケースが問題となっており、東京都も「課税するかどうかは実態に応じて個々に判断している」と言っています。伝燈院をめぐる判決が確定すれば、ほかの納骨堂への課税に影響してくるでしょう。 ■ 宗教とビジネスの「線引き」を
■ オウム真理教菊地直子元信徒無罪 1995年に起きたオウム真理教による東京都庁の郵便物爆破事件で、殺人未遂のほう助の罪に問われた菊地直子元信徒(43)に、二審の東京高等裁判所は「テロ行為を認識して手助けしたと認めるには合理的な疑いが残る」として、一審の判決を取り消し、無罪を言い渡しました。事件後に特別手配され、3年前に逮捕されるまで逃亡を続けていて、裁判では無罪を主張しましたが、一審の裁判員裁判で懲役5年の実刑判決を言い渡され、控訴していました。東京高裁の大島隆明裁判長は、一審で有罪の根拠となった教団の元幹部の井上嘉浩死刑囚の証言について、「不自然に詳細かつ具体的で、信用できない」と指摘しました。こんな昔のことで、関係者の記憶があやふやになっているのに、おかしいというわけです。そのうえで、「教団の実行犯が人を殺傷するテロ行為を行うことを菊地元信徒が認識して手助けしたと認めるには、合理的な疑いが残ると言わざるをえない」として、一審の判決を取り消し、無罪を言い渡しました。最後に大島裁判長は、証言台の前に立つよう促し、「審理した結果、法律的には無罪となりました。ただし、客観的には、あなたが運んだ薬品で重大な犯罪が行われ、指を失った被害者が出ています。あなた自身が分からなかったとしても、あなたの行為が犯罪を生んだことを、心の中で整理してほしい」と諭しました。この裁判では、菊地被告は薬品を運搬したことは認めましたが、それが事件に使われるという認識があったか否かが争点となりました。一審は『証拠よりも心証に流されやすい』といわれる裁判員裁判で有罪となりましたが、司法関係者の間では『控訴審はヤバいんじゃないか』との見方が出ていたそうです。今回のケースは、爆弾を直接製造したわけでもなく、原料を運んだのであって、状況証拠を含めても殺人未遂の幇助を立証するには証拠が乏しかったと言えます。『疑わしきは罰せず』というのが裁判の原則です。クロに近い灰色でも、証拠が無ければ無罪、シロとは言えませんが罪には問われないのです。「じゃあ何故逃げたんだ?」と言う人がいるでしょうが、あの頃の国民世論の雰囲気では、オウムと聞いただけで罵倒される状況でしたから、逃げたでしょうね。今回の判決は、日本の裁判所の原則を守る姿勢が示された点で妥当と言えるでしょう。一方で一連の事件の被害者やその家族から見れば、やりきれなさが残ると思います。筆者もオウム真理教については言えないものを抱えていますが、宗教問題なので、生きているうちにオープンできるかどうか?それは疑問です。 ■ 黄金の濃蜜りんご・滝沢はるか 1個1,600円のりんご、2,000円のプレミアムりんごが今年も発売されます。こんな高いりんごがあっという間に売れる、そんな時代なんですよ。高価なフルーツと言えば千疋屋が有名ですが、そんなお店にも出ないネットショップの限定販売です。
■ 東日本大震災から産まれたイチゴ 1粒千円のイチゴとして有名になったミガキイチゴ、ご存知ですか?農業生産法人絵RA(宮城県山元町)のイチゴです。2011年3月11日、東日本大震災の津波により宮城県山元町のイチゴ栽培ハウスの9割が壊滅的な打撃を受けました。そのわずか4ヶ月後、農業生産法人を立ち上げてイチゴ栽培を復活させたのが農業生産法人・株式会社GRAの岩佐大輝さんです。山元町出身で東京でIT企業を経営していた岩佐さんは、震災直後故郷へ駆けつけ、壊滅的被害にあった農業の復旧をボランティアで支援しました。しかし、塩水を被った農地、高齢化した生産者にとって大震災後すぐに立ち直ることは容易ではありません。これを目の当たりにした岩佐さんは自らイチゴを生産する決意を固めました。地元の社会福祉協議会で働く橋元洋平さんと共同で2011年7月に農業生産法人・株式会社GRAを設立、50mのハウスを2棟建て、橋元さんの遠戚でイチゴ栽培のベテラン・橋元忠嗣さんを迎えてイチゴの生産を始めました。岩佐さんはIT企業の経営者ですからビジネスアイデアはありましたが、イチゴの栽培技術がありませんでした。そのためどうしても腕利きの技術者が必要でした。ただし、目指すイチゴの生産は、旧来のように生産者の知識と技に依存する、いわゆる職人のイチゴ栽培ではなく、誰もが一様に栽培できるシステムの確立でした。そのために岩佐さんはハウス内の温度、湿度、CO2濃度、日照量、潅水量、施肥量、さらに風向きや雨量に応じて天窓を開閉して通風を管理するなど栽培条件を数値化し、それらのデータを蓄積して行きました。「甘くてやわらかなイチゴというのは日本独特の栽培技術であり、世界に類を見ません。それだけ世界的にも優位な技術なのです」・・・こういう岩佐さんは、満を持して都会の消費者に自慢のイチゴを届けました。 ■ 1粒千円のイチゴ
■ インドでイチゴ作り 2012年秋、GRA はJICAのプロジェクトに協力してインドの貧困地域・ブネ(マハラシュトラ州)でICTを活用したイチゴの(試験)栽培を始めました。目的は貧困地域に女性の就労機会をつくることです。そして約半年後の2013年3月11日、大震災と同じ日にインドで栽培したイチゴを同国内に初めて出荷しました。インドで栽培したイチゴは高価であり、粒は小さく、酸味が強いといったように味と品質にまだ課題はありますが、イチゴ好きのインドの人たちには好評で販売も好調です。 ■ 地方創生に挑戦するGRA GRAのホームページに次のようなことが書いてあります−−−>GRAの活動の中心である山元町は1995年の18,815人をピークに、人口減少が進んでいます。2011年には16,714人まで自然減少、3月11日の東日本大震災からそれはさらに加速し、同年末には14,628人。2015年には13,000人程度まで減少するとみられています。このような過疎の傾向は、山元町に限らず日本の中山間地に顕著で、日本では都市への人口集中が進んでいます。都市への人口集中は短期的にみるとインフラ投資の効率向上などメリットも多いですが、中長期的に見れば、国力を落とします。なぜなら地方の力が失われることで、都市のダイバーシティが失われ、都市の力もなくなる。その結果、都市を離れて田舎で再挑戦する人の数も減る。負のスパイラルの始まりです。そういう意味では、効率性と創造性(創発性)を合わせて実現することは本当に難しく、それに挑戦しようとすればカオスが待っています。このカオスを乗り越えなくてはなりません。そのために、自らが産業に直接的に身を投じることでロールモデルを創ろうという株式会社によるアプローチ、地域内外の多くの人々を巻き込み、都市と地方の交流により「創発性の泉」を創る特定非営利活動法人に寄るアプローチ、双方の共創モデルにより、地方創生に挑戦するのがGRAです。 GRAの活動は、TPP対策としての日本農業の競争力向上、地方創生の「まち・ひと・しごと創生」という日本国政府の政策に、ピッタリマッチした活動ですね。今後マスコミ登場頻度は高くなるでしょう。 ■ 水木しげるさん逝く
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