137  ケータイ料金値下げ

 第3次安倍改造内閣の支持率が上昇しています。安全保障関連法をめぐって反対運動が盛り上がったにもかかわらず、なぜ支持が増えたのでしょうか。世論調査によると、読売新聞が支持46%(5ポイント増)に対して不支持が45%(6ポイント減)、日本経済新聞は支持44%(4ポイント増)、不支持42%(5ポイント減)、毎日新聞は支持39%(4ポイント増)、不支持43%(7ポイント減)、共同通信が支持44.8%(5.9ポイント増)、不支持41.2%(9ポイント減)、NHKは支持が43%(変わらず)、不支持が40%(1ポイント増)となりました。政党支持率はどうかといえば、自民党支持が35.6%(0.9ポイント増)、民主党は8.6%(1.2ポイント減)でした。自民党支持率が上がって、民主党支持率が下がったのは、国民は安保なんてどうでも良いから経済に注力してくれ、と思っているので、安保が終わってTPPが決着して、さあ経済だ!と安倍首相がぶち上げたからです。民主党は真面目で「清く正しく美しい」けれど、現実の政治は泥臭く、国際情勢はきな臭く、民主党の言っているようなことじゃ心配だ、ということ、鳩山、菅、野田元総理時代のメチャクチャのトラウマが残っているのです。そこへケータイ料金下げろと安倍首相が指示したというニュース、これがまた拍手喝采で、支持率上昇に繋がりました。

■ ケータイ料金下げろと安倍首相が指示
 安倍晋三首相は2015年9月11日の経済財政諮問会議で、「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、スマホ通信料などの負担を減らす方策を検討するよう指示したそうです。安倍政権は安保法成立にばかり熱心で、デフレ脱却や経済再生という「経済面の課題」に対しては無関心なのではないか?と国民は疑っていました。安保について大方のマスコミは批判的な論調で、支持率も40%前後でウロウロ、歴代内閣に比べたら相当高いのですが、安倍内閣としては高くない状態でした。日本国内の景気動向も一進一退で、設備投資にかげりが出てきて、先行きの企業マインドが心配されていました。そこで、今や「国民1人当たり1台以上」となっているケータイの料金引下げを持ち出すというのは、一般庶民には心地良い響きに聞こえる!という読み、さすがです。

■ 家計に占める通信費が上がっている?
 図1は経済財政諮問会議に出されたもの、2人以上の勤労者世帯の通信費は年間18.8万円で、ここ10年間で家計支出に占める割合が2割上昇(2004年:4% → 2014年:4.9%)したことを示しています。これだけ見ると急上昇に見えますね。さあ大変だ!ただグラフというのは恣意的に作れるものなので注意が必要です。いつを起点として、X軸の期間、母集団が何か?などです。このグラフの分子は通信費、分母は家計支出です。
 通信費の伸びの多くは、パケット通信によるものと考えられますから、家計における携帯電話料金の負担は大きくなっているのは確かです。
 実際、我が身を振り返っても、auスマホの9月料金は下記の通りです。毎月ほぼ同額です。
  プランSSシンプルWIN(無料通話月1,000円) 1,868円
  誰でも割+家族割 ▲934円
  オプションIS NET 300円
  オプションISフラット定額料 5,200円
  auスマートバリュー割引(auひかりSonet導入で2年間だけ) ▲1,410円
  ユニバーサルサービス料 2円
  消費税8% 402円
  税込み計 5,428円

[図1]消費支出に占める通信費の割合

■ 個人消費低迷→家計支出減少で分母が下がり通信費シェア上昇
 ただ、支出における通信費の割合が上がっているのは、消費税の5%から8%への増税と、円安による輸入物価の上昇で食料品価格が上がっていることが大きく影響しています。筆者の例で分かるように、通信費は固定の人が多く、国民に広くケータイが行き渡って、グラフのように急増するはずがないのです。分子である通信費があまり変らなくても、分母である家計支出が減れば割合は上がります。アベノミクスで政府が財界に賃上げを呼び掛けて、確かに大企業の中には上げたところもありますが、統計的には実質所得の平均はまだ下がっています。それは給与所得者の多くを占める中小企業や非正規雇用労働者の所得増を上回る税金や社会保険料の増加のためです。加えて食料品価格の上昇で、消費者は少しでも安いものを買い求めようとして個人消費が低迷しています。しかし通信費は下がらない、だから通信費の割合が上がるという構図であって、グラフというのはその背景を知らなければ、説得材料として都合よく作れるものなのです。

■ 通信費は実は下がっている
 我々庶民の家計負担を軽くするのであれば、ケータイ料金を引き下げるだけでは全然足りません。消費支出に占める割合で見ると、我々が毎日支出している「庶民の義務的経費」には、通信費以外にも電気代やガス代、水道代などがあり、これらは通信費よりも伸びが著しいのです。
 例えば、2014年の家計収支の状況(総世帯のうち勤労者世帯)で見ますと、通信費は消費支出のほんの一部に過ぎないことがすぐわかります。数ある消費支出項目のうち、国や自治体による規制・制度改革で介入できるものと言えば、消費税を除いたとしても、「水道・光熱」、「保健・医療」、「交通・通信」のうちケータイ料金を除いたものと「教育」が挙げられます。右グラフは「失われた20年」における公共料金の推移です。これまた政府の消費者委員会で示された資料です。これを見ると、ナント!通信費はダントツで下降しているでは有りませんか!統計のマジックです。上下水道は明らかに上がったと実感している人が大半でしょう。驚くべきはガス料金です。化石燃料は上がらざるを得ないのです。最近上がったと皆さん感じている電気代はどうですか?最近急上昇しているとはいえ、このグラフの時点ではまだバブルの頃の水準まで戻っていないのです。これは原子力発電のおかげで下がったのですが、大震災で原発が止まり、太陽光発電などが急上昇したので、今うなぎのぼりに上がっているのです。だから安倍政権は原発再稼動を目指しているのです。
 通信費が下がったといっても情報化で郵便料が下がり、競争激化で運送料が上がらず、固定電話が下がり、携帯が上がって、トータルが下がったのです。

[図2]消費物価指数における公共料金の推移

■ 通信サービスは典型的なグローバル・ビジネスなので国際価格連動
 携帯電話料金の絶対値が高いことはまた別の問題です。日本のスマホ市場は閉鎖的であり、諸外国のように端末と通信会社を自由に選択することができません。最近はMVNO(仮想移動体通信事業者)も増えてきており、いわゆる格安SIMも登場していますが、まだまだマイナーな存在です。実は日本の通信市場が閉鎖的なのは、後で説明しますが政府の政策によるものです。
 通信サービスは典型的なグローバル・ビジネスですから、国によって料金の大きな違いは原理的に生じにくくなっています。海外に行って、自分のケータイが鳴って、国内に居るのと変らず会話できた・・・というのは国際ローミングのためです。ただしスマホの場合パケット通信料が問題になります。筆者のように「ISフラット」というパケット定額を契約していると海外でも基本的にそれが適用されますが、スマホの設定で現地の通信会社と接続するように設定する必要があります。
 日本のケータイ市場は利用者の選択肢が少なく、事業者中心のマーケットであるという点や、ドコモ、au、ソフトバンクの大手3社による寡占状態ではありますが、諸外国に比べて日本の通信費用が特別に高くなることはしたがって考えにくいというのが現状です。総務省の通信費に関する内外価格差調査でも日本が特別に高い結果になっているわけではありません。

■ 所得が上がらない日本だから携帯料金が高く見える
 日本の携帯電話料金が家計を圧迫するのは、絶対値としての価格が上がったのではなく、家計の収入が減少したことによる影響が大きいのです。日本のGDP(国内総生産)は「失われた20年」の間ほぼ横ばいですが、諸外国は同じ期間で経済規模を1.5倍から2倍に拡大していることを過去度々書いてきました。中国など5倍以上ですよ。韓国だって倍以上です。米国では大卒初任給が40万円を超えるケースは珍しくありません。日本はずっと20万円近辺でウロチョロ、アベノミクスでやっと鎌首もたげてきたという現状です。アベノミクスは「失われた20年からの脱却」政策です。だから国民の支持が高いのです。分母が変らない日本、1.5倍から2倍に拡大した諸外国、したがって生活実感としての携帯電話料金は日本の3分の2から半分程度になるわけです。

■ 果物価格が上がったように通信サービス料金も上がるのは実は当然
 卑近な例で見たほうが分かり易いですね。例えば果物の価格、西瓜、メロン、りんご、桃、梨、柿、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、バナナ・・・・、国産の果物は押しなべてずいぶん高くなりました。価格の優等生である牛乳や卵と同様にバナナは安いものが相変わらず存在しますが、高いものと安いものが極端に価格が違い、「格差」が表れています。果物の価格が高くなったのは、日本の農家のためではありません。国際価格が上がっているからで、所得が上がり、物価も上昇している諸外国では、果物価格が上がってもそれは当然のことです。一方日本では慢性的デフレで、一時は「貧乏人は牛丼を食え」という世界でした。それが出来たのはコメ価格が下がり続けたからです。穀物は基本食糧ですから諸外国は国際価格に合わせるために農家にバンバン補助金(国際価格差額補填金)を出して農家を守っています。ところが日本はJAを悪者にしていますが、基本的に自由競争です。だからコメ価格が下がり続けたのです。一時民主党政権が農家の所得補償を掲げ、消費者の反発を食らいました。しかし諸外国ではそんなこと当たり前なのです。食糧安保のためには、国内生産維持は必須、パンは何ものにも代え難い大事なものなのです。外国依存になったら、言いたいことも言えません。しかし果物はそこまでする必要が無い、だから価格が上がり、結果的に日本の果物農家もやっていける、というわけです。
 通信費はどうでしょう?すべて総務省が仕切っています。海外では所得の伸びに応じて通信費が上がってきました。ゆるやかなインフレが続けば、相対的にモノの価値を表すマネーの価値が下がりますから、モノやサービスの価格は上がって当然なのです。果物の価格が上がるように通信費も上がって当然なのです。ただデフレの日本で海外並みに上がっては困るから規制する、日本郵政やNTTが厳しくなるのは当然です。反面ケータイ各社に恩恵が行く、それは情報通信の形態変化のなせる業なのです。

■ アンテナ林立のニッポン
 日本では電波の割り当ては総務省が仕切っています。海外ではオークションです。官製日本対民間競争の海外という感じです。古くは電電公社というものがありました。電気、水道、通信、鉄道というのは、公共インフラの最たるものです。水道は地域によって水事情が劇的に違うので、自治体に委ねられています。住んでいる地域によって水道料金は何倍も違います。電気は長く電力会社が寡占してきましたが、今風穴が開きつつあります。鉄道は国鉄が解体されて、JRになり、莫大な借金は国民のツケになっています。通信は電電公社がNTTになり、KDDIとかSoftbankも出てきましたがまだ寡占です。それは総務省が規制しているからです。狩猟採集社会、農耕社会、牧畜社会から産業革命によって、産業社会が出来ましたが、それが情報化によって新たな情報化社会への情報革命のステージが進行中です。国際的には嵐が吹き荒れている状況、海外から見ると日本の通信市場は国によって守られているために、日本に進出した海外メーカーはことごとく撤退していきます。ガイジンが日本に来て不思議に思うとしたら林立するアンテナでしょう。ドコモ、au、ソフトバンク、PHSのアンテナが別々なので林立しているわけです。海外ではアンテナはひとつで電波帯をオークションで落札するわけです。どちらが合理的でしょう?ただ、アンテナを建てる仕事は、日本国内に膨大なビジネスを産んでいることもまた事実です。

■ 見事な官邸による根回し
 総務省が仕切っているのに価格を下げろ?これはドコモ、au、ソフトバンク各社から見たら「何言ってマンネン」という感じでしょう。ちなみに、安倍首相の発言を受けて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの株価は6〜10%下落し、3社で約2兆円の時価総額が吹き飛びました。それでもケータイ料金下げろという政策に国民が喜んで、安倍内閣の支持率が上昇したのは何故でしょう?それは筆者のように、毎月auに大枚の寄付金を払っているかのごときユーザーや、収入もないのにケータイは必須の子ども達のようなユーザーも含めて、大抵の人が通信費は高過ぎる、でも無くちゃ困るから仕方なく払っているからではないでしょうか。このところ食品値上げの影響などで個人消費が伸び悩んでいるので、支出が増加している携帯電話料金に目をつけ、政労使会議を通じた賃上げの成功のように携帯料金値下げを政府主導でやろうとしているということです。安倍首相がケータイ料金下げろと指示したことになっていますが、経済財政諮問会議で民間議員から提案された形になっているものの、その席上に図1のグラフが出てきて、「高いねぇ、なんとかしましょうよ」ということになって、安倍首相が「至急検討して下さい」といえば、「安倍首相がケータイ料金下げろと指示した」ことになるのです。このグラフは総務省のデータです。経済産業省の図2のようなデータが出てきちゃ困ります。菅義偉(すが よしひで)官房長官は実は元総務大臣です。見事に官邸によって根回しされた安倍政権人気取り作戦なのです。

■ 長期利用者の寄付で恩恵受ける人
 これによって何が変るのでしょう?携帯大手3社では、スマートフォン向けのデータ通信料金の定額プランは2ギガバイト(以下GB)の月額3,500円からで、通話中心の利用者も毎月3,500円を支払わなければなりません。これに対し、例えば1GBの定額プランが新たにできれば、データ通信をあまり使わない人の料金は大幅に引き下げられるとみられます。携帯電話のデータ通信サービスでは、1GBあればメールや無料通信アプリ「LINE(ライン)」などを十分使用できます。ただ、動画視聴など容量の大きなデータを受信する場合は、一般的に2GBは必要とされており、携帯大手3社のスマートフォン向けのデータ通信サービスも2GBからとなっているのですが、そこまで使っているユーザーは実際何割でしょう、とても少ないはずです。
 番号を変えずに通信会社を移ることができる制度、すなわち番号ポータビリティ、ケータイではMNPと呼ばれますが、これの導入後、大手3社間で利用者獲得競争が激化し、他社から移る利用者に端末価格を大幅に割り引く「特売」が常態化しています。割引のために必要な資金は長期利用者の通信料金などから工面されており、過剰な割引販売を是正していけば長期利用者の料金を低く抑えることも可能になります。筆者は16年auユーザーですが、息子は2年ごとにケータイの会社が変ります。2年縛りのため、その恩恵を享受したら会社を替えるのです。同じauユーザーの娘はauスマートバリュー割引▲1,410円の恩恵を今のところ受けていますが、これが無くなればまたどうするか?妻はドコモのガラケーです。だから通信料が安いのですが、メールも「はい」とか「そう」の2文字メールなので、ガラケーで十分、実は高齢者にはこれが最適でしょう。妹夫婦は「カケホーダイ」で月2,200円で電話かけ放題というガラケーを使っています。メールしないのでそれで十分なわけです。娘や息子はパソコン不要というほどスマホをガンガン使って、YouTubuも音楽もテレビも、ネット注文もスマホなのでパケット定額必須です。

■ 格安スマホに乗り換えなければ・・・
 すると5,428円を毎月払っている筆者は?馬鹿みたいですね。つまりMNPで端末価格割引特売のために寄付を強制されている哀れなユーザーなのですよ。通話はほとんどしませんが、メールはガンガン、ウェブ参照も少ししますが、動画参照しないしゲームもしないので、実は1GBで十分です。無料通話は毎月そっくり繰り越され、毎月上限5千円の頭打ち、まったくバカみたいです。実は電話で長話が大嫌いだったのですが、そのうちに電話で話すこと自体が嫌いになりました。対面すれば饒舌ですよ(^-^)
 携帯大手の通信回線を借りてサービスを提供する格安スマホは、設備投資を抑えることができるため料金が安いので、近々これに乗り換えようと思って検討中です。筆者は自宅のパソコンでauひかりのソネットに契約していますが、ソネットからメールが来ました・・・・
今話題の「ZenFone 2」(メモリ4GB/ストレージ32GBモデル)に、月間4.2GB相当のデータ通信と通話も可能なSIMカードがセットになったスマートフォンのセットを好評発売中!お使いのスマホと料金を比べてみてください!
 ・一般的な携帯電話契約プランの場合…国内通話:かけ放題 インターネット2GB/月で⇒平均6,500円/月
 ・LTE SIM+ZenFone 2セットの場合…国内通話:20円/30秒 インターネット4.2GB/月で⇒3,527円/月
通話をほとんどしない場合、月約3,000円もお得!!

というものです。
 しかしこの月額3,527円にも端末料金が実は含まれています。筆者のスマホはauの企業向け端末で、退職したときまだ新しかったのでもったいないと思い、買い取りました。今考えればこれは間違い、企業向け端末ですから融通が効きません。当時SIMフリー対応の新しい端末にしたとしても、2年縛りではありますが、今例えばauをやめてDMMのSIMに替えれば月額1,500円で使えます。人気ナンバーワンの楽天モバイルでもやや高いだけ、ほとんど同じです。ソフトバンクの孫さんがケータイ市場に殴りこんで地位を確立したように、楽天の三木谷さんもMVNOを踏み台に飛躍しようと考えていますね。ただ筆者は楽天カードも持っていますが、旅行予約も楽天はやめて最近はじゃらんです。セキュリティが心配だからです。だから楽天モバイルにすればポイントが付いて有利だと言われますが、コワイ、まあいずれにせよauへの寄付活動は近々止めます。

■ 1億総活躍社会・・・国民会議のメンバー発表
 第3次安倍晋三改造内閣の目玉政策「1億総活躍社会の実現」に向け、加藤勝信1億総活躍担当相は、具体策を話し合う「1億総活躍国民会議」のメンバー28人を発表しました。民間議員には、タレントの菊池桃子さん(戸板女子短大客員教授)や増田寛也元総務相ら15人が選ばれました。安倍首相と加藤大臣が相談して人選を行ったそうです。安倍首相が議長、加藤氏が議長代理を務めるほか、甘利明経済再生担当相、石破茂地方創生担当相ら11閣僚が参加。民間議員には、経団連の榊原定征会長、日本商工会議所の三村明夫会頭、パラリンピック冬季大会のアルペンスキーで活躍した大日方邦子・日本パラリンピアンズ協会副会長らも選任されました。
 1億総活躍社会というネーミングは果たしてどんなものでしょうか?1億国民火の玉になって、などと言われるとぞ〜〜〜っとしますが、少子高齢化社会になってニッポンの社会から活気が失われ、お隣の中国が世界の覇権を握って行くのを指をくわえて見ている訳には行かないというのが根底にあるのでしょう。日本は間違いなくスローダウンしており、犯罪が増加し、安心安全が損なわれつつあります。だからテレビで、日本の良いところをガイジンに語らせ、「へ〜え」と言わせるテレビ番組が増えているのです。増田寛也さんはNHKで高齢者と若者の世代間対立を述べておられましたが、全くその通りで、1億総活躍するにはニートの若者、ひきこもりの若者を支援で減らし、高齢者には、楽するな、もっと働け(報酬の有無は別にして)とやらなければなりません。増田寛也さんは岩手県知事を3期勤めて、改革派知事の代表格と言われました。「多選は弊害を生む」と3期でさっとカッコ良く引退しました。もともと小沢一郎に請われて知事になったのですが、3期目立候補の際「今回が最後の立候補」と公約していました。その公約を守ったのです。ここが埼玉県の上田清司知事との違いです。上田知事は初当選後、3期を越えて出来ないように自ら多選自粛条例を作りながら、それを破りました。

増田寛也さん・・・筆者が会長だった在京盛岡広域産業人会総会で講演していただいた時のスナップ(東京ガーデンパレス)
 権力の座はそれほどまでに愛おしいものなのです。自民党はこれを批判し、総務官僚を対抗馬に立てました。麻生太郎財務大臣が自民党候補の応援に駆け付けたら、上田知事には自民党の鳩山邦夫議員が応援に掛けつけると言うややこしい事態になりました。埼玉県の市町村のほとんどの首長が上田知事を支持したのは、上田知事への実績評価が高いこともありますが、やはり権力構造が出来上がったら、それにすがるのが手っ取り早いからです。結局上田知事が圧勝しました。自民党は、上田知事と仲直りしました。
 しかしながら増田寛也さんは全国的にも有名になって、次もやってくれと支持の声が多かったのですが、退任会見で決断の理由を問われ、「行き過ぎた多選は、県庁内で自由に意見を表明しにくい雰囲気を醸成する」と説明しました。つまり、3期12年もやれば取り巻きがガッチリとガードする体制が出来上がり、業者との癒着など、弊害が出てくる、というわけです。このカッコ良さに惚れて、第1次安倍晋三内閣の総務相に民間から抜擢されたというわけです。次の福田内閣でも総務相を継続し、麻生内閣で鳩山邦夫さんに代わりました。
 増田寛也さんは必ずしも自民党の政策に協力的というわけではありません。TBSの時事放談に出ているくらいですから。しかしながら安倍晋三首相に請われて総務大臣になったわけですから、安倍首相とは仲が良いわけです。その発言は偏向せず、たいへん時宜を得て国民の共感を呼ぶので、今やマスコミから引っ張りだこになりました。我が妻と親戚で、母親同士がいとこ、実家も隣り合っています。いわゆるハトコですね。
(2015年10月24日)


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