97  念仏

 新年早々、葬儀に岩手県雫石町に行きました。葬儀の前に通夜がありますが、雫石町や我が母のふるさと宮古市では「念仏」という形で、故人をしのぶ方たちが集まって「称名念仏南無阿弥陀仏」と何度も称えながら大きな数珠の輪を回すと書きました。

■ 念仏
 念仏とは「南無阿弥陀仏」と唱えることです。「南無阿弥陀仏」の言葉の意味は、南無も阿弥陀仏もインドの古い言語からの音訳だそうです。ナムは帰依する、すなわち頼みとしてすがる、信じるということ。アミタとは、限りがない、無量という意味で、無量の寿、無量の光の仏ということで、漢字では阿弥陀仏と呼ぶようになったと言われています。
 つまり、阿弥陀仏とは、寿命も光明も無限の仏様という意味で、これがこの仏様の名前でもあります。だから、「南無阿弥陀仏」とは、阿弥陀仏を頼みとしてすがります、信じます、ということを言っている、ということです。「阿弥陀仏を信じます」と称えて、私たちは何を信じているのでしょうか。それは、極楽往生です。阿弥陀仏が住んでいるところが極楽浄土であり、そこへ往って生きることを願うことが阿弥陀信仰であり、浄土の信仰です。そして、阿弥陀仏の「極楽浄土」は西方にあるということになっています。日本は東方には海しかありませんから、西方にあるのは当然です。

我が家のミカン(2015年1月13日)
 仏教の発祥地インドから見て西方と言うことは中東ですね。パキスタン、アフガニスタン、トルクメニスタンなど、いわゆる・・・スタンという国々、更に西へ行けばイラン、イラク、シリア、ヨルダン、イスラエル、そしてイスラム教最大の聖地メッカのあるサウジアラビア・・・、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地が同じ地区に集まっています。仏教の極楽浄土がこれら宗教の聖地に繋がるところに、因縁を感じます。

■ フランスのテロは各地に波及するか
 フランスで起きたテロによって、自由の国フランスで、束縛や監視やさまざまな強権が顕わになることに懸念を覚えます。またドイツでも放火が起きたりしています。宗教と言うのはひとの心の問題です。そもそも自爆テロなんて命令されてもできるものではありません。「殉教」と言う形で、神に身を捧げるから出来ることです。異教に対して風刺したり批判してはいけません。「イスラムは危険だ」とか、自らの信ずるものと異なるからと言って、それを排斥してはいけないし、そもそもひとの心の問題を風刺するどしてはいけないのです。どんな宗教でも、信じるひとにとっては大切なのです。日本の神道のように、都合の良い宗教も珍しいけれど(^-^)

■ きなくさくなってきた世界政経
 本日のニュースで、東京商品取引所で原油先物が5年4ヶ月ぶりの安値になったとのこと。日経平均株価も1万7千円を割り込みました。企業経営者の年頭の挨拶によりますと、ほぼすべての経営者が今年は明るいと言っています。景気というのは文字通り「気」ですから、心理的なものです。したがって今年の景気は良くなり、日経平均株価も2万円目指して上昇するでしょう。今は一時的調整です。問題はその先です。今は世界で経済的には米国のひとり勝ちです。老化したEUはドン底で、ギリシャはEU脱退か、と騒がれています。原油価格が下がって産油国経済が落ち込む影響も懸念されています。ロシアやベネズエラ、ナイジェリアなどです。中国も不動産バブルがはじけて、企業倒産も増えて、経済的苦境とか言われていますが、ドッコイこれまでの過激な伸びが鈍化しただけで、まだまだ伸びています。日本はアベノミクスで、首相が「賃上げしろ」と言って、経営団体が「了解」と言っていますから、サラリーマンには有難いけれど、これは当然なのです。社会保険料が上がって税金も上がっていますから、賃上げしなければダメなのです。ただ、少子高齢化の基本的な流れが是正されない限り、日本は長期的に下落傾向は是正されません。つまりアベノミクス効果は一時的なものなのです。EUの次に凋落するのは日本でしょう。
 日本の膨大な借金対策で歳出切り詰めの対策としては福祉抑制です。生活保護、介護報酬、老人医療費などが対象です。これは致し方ありません。弱者や老人にはきついですが、カネが無くてはどうしようもありません。

■ 民主党の党首選挙やいかに?
 民主党の党首選挙、3人の争いですが、リベラルな長妻氏と、やや保守的な細野氏、その中間の岡田氏です。政治家として最も熟達しているのは岡田氏で、人柄も素晴らしい方ですが、残念ながら民主党政権時代の一翼を担っただけに、有権者には根強いトラウマが残っていますから、もし岡田氏が当選したら、民主党は当分有権者の大きな支持は得られないでしょう。先の総選挙で自公が圧勝したのは、自公が好きだというわけではないが、民主党はもっとイヤだという有権者の消去法の結果なのです。民主党の国会議員たちは、この国民の生理的毛嫌いの要因が分かっているはずです。若い細野氏でなければ安倍総理に対抗するイメージは出ません。しかも民主党だけでは、自公に対立できません。
 このところの知事選挙で自公が支持した候補が3連敗しています。つまり国政選挙と、身近な地方自治体選挙では有権者の気持ちが違うのです。本音で自公が好きなわけではないのです。統一地方選挙はどうなるでしょうか?民主党の党首選挙の結果が影響すると思います。

■ 相続税増税、消費税増税先送り、法人税減税
 前回は新年から相続税増税となったことを紹介しました。そしたら1月6日(火)のNHK「あさイチ」で、【ミニ企画】ひと事でない?!相続税 というものをやっていました。相続税の対象者が増加しますが、自分は対象者になるか、調べる方法を紹介していました。
あさイチ

 相続税についての法律が改訂され、基礎控除額(課税されない部分)が4割減額されたため、これまでより多くの人が相続税の対象になります。思いかげず相続税がかかってしまう事例が紹介されました。現金や有価証券、金(Gold)や宝石などをタップリ持っていないから関係ないと思っていても、いざ試算したら相続税の対象になるかもしれないのです。土地や家屋が最も大きい財産という人が多いと思いますが、昨年までは余程の豪邸でなければ対象にならなかったのが、今回の改訂で対象になる人が増えます。大雑把に言えば、以前は山手線に近いところまで、道路で言えば環状7号線の内側ぐらいが対象だったのが、国道16号線の内側に一戸建てを持つ人などが対象になるそうです。我が住む街の東武東上線沿線で言えば、常盤台ぐらいまでだったのが川越まで拡がるのですから、当然我が家も対象ということです。
 土地の評価額の計算方法・・・路線価図で調べたい住所の路線価を調べ、土地の面積をかけて計算します。その際、面積は平方メートルに直して計算します。一戸建ての場合、路線価×面積=おおまかな土地の評価額だそうです。
 相続税がかかるかどうかを知るための国税庁の「相続税・申告要否の簡易シート」が番組の中で紹介されました。相続税に関して一般的な相談を希望する人は、最寄りの税務署に電話して、電話相談センターを利用します。自動音声に従って「1」を選択するそうです。最寄りの税務署の検索は→クリック

■ 地方活性化のカギは
 NHKおはよう日本の1月8日(木)放送で、「地方活性化のカギ」という企画がありました。熊本のゆるキャラ「くまモン」の仕掛け人、小山薫堂(こやま・くんどう)さん(放送作家として数々の人気番組を手がけ、脚本を担当した映画「おくりびと」は、アカデミー賞の外国語映画賞を受賞、その企画力を買われ、熊本県だけでなく、全国各地の自治体や企業から「地域再生」のオファーが相次ぐ)と、北陸新幹線の車両をデザインした、工業デザイナーの奥山清行(おくやま・きよゆき)さん(イタリア人以外で初めてフェラーリをデザインするなど、世界を舞台に活躍、卓抜したデザイン力を生かして、今、各地の地場産業の再建に奔走)の対談です。

■ 「くまモン」はびっくり
 キーワードは『自ら驚き、楽しむ』でした。小山薫堂さんいわく「そもそもなぜ、どういうキャラクターとして「くまモン」が生まれたかといいますと、熊本にあるいいものを県民がまず発見しましょうよ、ということです。普通、観光というとどうしても外に発信ばっかり考えます。灯台もと暗しで、地元の人はいろんなものに鈍感になる、外から見ると、こんなにすごいのがあるのに。そういうサプライズなものを自分たちで探しましょうよと。その時のびっくりした顔が、くまモンなんですよ」

■ 「シンプル」だからわかる技術力
 奥山清行さんが取る手法は「そぎ落とす」ということです。長い年月にわたって残るものっていうのはシンプルなんじゃないかといいます。大手メーカーの下請け作業が多かった新潟県燕市の、洋食器などの金属加工産業、振興を頼まれて奥山さんは、あえてシンプルなデザインにしたオリジナル商品を作り出しました。すると、燕市の職人たちの「高い技術力」に注目が集まり、海外からも注文が殺到するようになりました。「技術力」という価値を見直し、磨きをかけることで、地場産業に輝きを取り戻したのです。

■ 百年カレーで再生した日光金谷ホテル
 小山さんもまた、眠ったままの“宝”を掘り起こすことに力を注いでいます。日光金谷ホテル、創業140年を超え、現存する日本最古の西洋式ホテルです。経営危機に陥っていたこのホテルの再建を任された小山さんは、蔵の奥から「明治時代のメニュー」を見つけ出しました。そのレシピどおりに再現し、「百年カレー」と名付けて売り出したところ、大ヒット。これをきっかけに、ホテルの経営も息を吹き返したのです。

■ 「ふいご」と「合気道」がカギ
 小山薫堂さんは「風を送るふいごと、『合気道』ってすごいなって思ってるんです」と言います。「いったん消えてるのかなと思ってるものにも、ふいごで風を送るといきなりボッと燃え上がります。合気道って、『えいや』って自分の力で投げ飛ばすのではなく、相手の力を自分の力に変えて投げ飛ばすみたいなのがあるじゃないですか、まさに地方活性化って合気道みたいなもんで、僕が外的に、あるいは強烈なものをその地域の人に『えいや』ってやるのではなく、僕が何かをすることによって、この地域の人たちが力を最大限に発揮して自分たちで動くというか、そういうものだと思うんですよ」・・・なるほど。

■ 運が良かった?本田宗一郎
 我が家の周辺にはホンダ関連の企業がたくさんあります。近くにある会社は、ホンダの創業者本田宗一郎さんが奥様のために残された会社です。本田宗一郎さんは、とにかくバイクや車が好きで、そのためには寝食も忘れての生活、それをさち夫人が黙って支えてこられたそうです。本田宗一郎さんいわく「私と同じように、それ以上に、頭脳、技術が有り、努力された方は幾らでもいます。その方達に比べて、私が認められ、成功したのは、部下、家族、妻のお蔭は勿論ですが、本当に運が良かったとしか言いようがありません」 、非常に謙虚な言葉です。でも、そういうものだと思います。

■ 1%が成功で、99%は失敗だった
 その運を呼び込んだもの、それはこの人の情熱が人間的魅力を作ったからだろうと思います。この人は自分と異なる人と組むことを信条としました。普通の人とは逆ですね。技術の本田、販売の藤沢が好例です。そしてやったことの1%が成功で、99%は失敗だったと言っています。失敗を恐れないチャレンジ精神、それは創業者に共通するものですが、これは宗教とは相容れないものです。倒産の危機のとき、盟友藤沢武夫さんが数々の銀行を回り、融資を引き出したエピソード、当時は無名の小企業だったホンダ、しかも倒産寸前とあれば融資する銀行などあるはずもないのですが、ようやく融資を承諾したのが、三菱銀行京橋支店の鈴木時太支店長だったそうです。鈴木氏がいなければホンダは倒産していた・・・この時の恩を忘れず、いまでも多くのホンダ社員が口座をつくるのは三菱(現・三菱東京UFJ)銀行の京橋支店だそうです。

■ 俺は敬虔な無神論者だ
 本田家の宗派は曹洞宗で、家にも仏壇がありました。しかし、本田宗一郎は「俺は敬虔な無神論者」と言っていました。面白いコトバですね。宗教界に対しては苦言や疑問を言うことがありましたが、他人の信仰や宗教心については批判めいたことを言ったことが無く、人間の精神には畏敬の念を抱いていたそうです。本田宗一郎にとっての念仏は「やればできる」ということではなかったかと思います。
 本田宗一郎が亡くなったのはバブル絶頂期の1991年8月4日、本郷の順天堂大学病院、肝不全、84歳でした。直前までハードスケジュールで、入院後13日目、見事な最期ですね。新宿区西落合の自宅では、位牌も無ければ戒名も無い、僧侶の読経も無い、さち未亡人ほかごく近親者が、花に囲まれた遺影の前で、陽気な生前の本田宗一郎の思い出話を語り合ったそうです。それは本田宗一郎の遺言でした。しかし、本田宗一郎ファンたちはおさまりません。創業者への尊敬の念や畏敬の念では無く、心底本田宗一郎が好きでたまらない「ファン」たちによって、全国各地で本田宗一郎へのお礼の会が催されました。いくら故人の遺志とは言え、何もせずにはいられず、完全に無宗教のパーティーを行ったのです。人間は死んだ後でその人の価値がわかるという典型ですね。
(2015年1月13日)


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