81 まさか
世の中にはたまに、「まさか」という出来事が起きます。第59回全国高校軟式野球選手権大会(日本高校野球連盟主催、朝日新聞社・毎日新聞社など後援)の準決勝が、なんと50回でやっと決着した試合など、まさかのまさかでした。兵庫県明石市の明石トーカロ球場での試合、東海代表・中京(岐阜)が4日間、延長50回に及んだ準決勝で西中国代表・崇徳(そうとく)(広島)に3―0で勝利。その勢いで決勝も初出場の南関東代表・三浦学苑(神奈川)を2―0で破り、2年ぶり7回目の優勝を決めました。2014年8月31日のことです。 ■ 復活の茨城GG
■ 辛さを乗り越えて、片岡安祐美監督京セラドームへ
■ リストラ・・・パイオニアの場合 今や、リストラはまさかという出来事ではなくなってしまったかもしれませんが、筆者にとっては、やっぱり「まさか」なのです。東証1部上場の電機メーカー「パイオニア」は、2014年9月16日、国内で約800名、海外で約700名、合計で約1500名の人員削減を発表しました→パイオニアの報道発表資料(PDF)。また、音響・映像機器事業およびDJ機器事業を売却することで、それに携わる人員の減少も見込むことから、それらを合わせると全従業員の約1割に相当する2200名規模の削減となる予定です。新興国を中心に成長が見込めるカーナビなどのカーエレクトロニクス事業に注力するため、不振だった音響・映像機器事業に加え、世界シェア1位を誇るDJ機器事業も売却することにより、抜本的な事業ポートフォリオの再編を進める方針です。パイオニアは筆者のお客様でした。大変お世話になりました。 ■ 企業チームもなくなってしまう
■ リストラ・・・横河電機の場合 東証1部上場の工業計器メーカー「横河電機」は、2014年9月2日、希望退職者の募集による600名の人員削減を発表しました→横河電機の発表資料(PDF)。対象となるのは、同社および「横河ソリューションサービス」「横河マニュファクチャリング」の30歳〜59歳の正社員と60歳以上64歳以下のシニア社員で、退職日は2015年3月31日です。退職者には特別一時金を別途支給するほか、希望者には再就職支援を実施するとのことです。制御事業における国内市場は縮小すると見通しており、一方、堅調な海外市場によりいっそう軸足を移すため、国内は事業規模に見合った人員体制への再構築が必要と判断し今回の削減に至ったようです。 横河電機のキャッチフレーズは『豊かな人間社会の実現に向けて YOKOGAWAは持続・成長可能な未来に貢献します』ということです。以前の日本企業は、経営難からリストラせざるを得なくなり、希望退職者を募っていましたが、今では市場縮小のために希望退職者を募るようになりました。「持続・成長可能な未来」を考えれば、ダメになる事業は縮小し、新たな成長分野に注力するのは経営者としては当然です。 ■ 日本式はすたれ、米国型企業経営に変貌 昔の企業は、一生勤めるものだと思う社員が企業に忠誠を尽くし、経営者も同じ思いで頑張るから、エコノミックアニマルと呼ばれるほどの強い企業軍団が育ちました。松下幸之助さんが最たる例です。しかし松下電器産業は変わりました。今やパナソニックです。それだけではありません。今優良企業とされている大企業の多くは、リストラ、リストラで生き残ってきました。昔と違って、米国型の考え方が浸透し、ステークホルダーナンバー1の株主のために企業を経営するのが経営者の使命になったのです。したがって利益にならない事業はリストラし、そこに働く従業員も役に立つ人は配転し、そうで無い人にはやめてもらわなければなりませんが、悪いこともしていないのに解雇するのは労働法によって禁じられています。そこで「希望退職」を募集するのです。自分が会社にとって役に立つかどうかは、たいていの従業員は分かっていますから、プレミアムが付くうちにやめようとか、残っても将来が暗いから、多少給料が下がっても転職して新しい人生を生きよう、とする人たちが手を上げます。 ■ リストラの悲劇・・・雇用の流動性を計る 横河電機の「30歳からが対象」とは、ある程度「わかった」世代からです。会社にとって役に立つかどうかという意味ですね。しかし、この年齢層は子育て世代であり、これから一番お金がかかる世代です。横河電機は、前期、アベノミクスによる円安効果で営業利益が40.6%も増加しています。輸出比率は67%ですから、3分の2以上が海外のお客様です。資産も自己資本比率もグングン上昇しています。「もうかっているのに何故リストラするんだ?」というのは頭の古い人です。もうかっているからこそ、今のうちに特損計上してでもリストラするのです。会社を売るのも同じです。もうかっている会社は買い手が付きますが、そうでない会社は誰も買ってくれません。昔は赤旗立てて「断固反対!」という人たちもいましたが、今や赤旗がはためく工場は見かけなくなりました。労働組合に加入できない、より哀れな労働者が増えました。世の中が変わってしまったのです。しかし安定した職を失うということは、労働者にとっては大変なことです。精神を病んだり、自殺したり、犯罪に走る人が増えて行きました。 ■ 社会保険と雇用の矛盾 我ら団塊の世代は、まさにリストラする人、される人が真っ二つに分かれた世代です。人事部でリストラを担当し、それを苦にして自ら命を絶った知人もいます。するほうもされるほうも、リストラは様々な悲劇を生みました。そこで正社員を減らし、非正規の契約社員を増やして、雇用の柔軟化を図りたいと企業は考え、政府がソレに応えて法律を作りました。一時期民主党政権でこれをやめようという動きがありましたが、現在の安倍政権ではさらにこれを強化して「雇用の流動性」を高めています。労働者も「連合」加盟の組合員と非正規に分断されています。「労働貴族」なんて言葉は信じ難いですね。政府は年金制度の維持に躍起ですが、厚生労働省というのは年金保険や健康保険などを所管する一方で労働者の雇用をはかる官庁です。しかし「雇用の流動性」を計れば、年金加入者が減るというのは理屈上当たり前です。矛盾する政策を同じ省庁が所管する、ウーム、将来公的年金が維持できなくなることを与党政治家は分かっているんですね。 ■ 度重なるリストラ 横河電機はこれまでも、たびたびリストラを繰り返してきました。 2012年5月11日→横河電機の発表資料(PDF)…半導体テスタビジネスの終息、営業損失12億円、特別損失13億円、計25億円計上 2011年7月11日→横河電機の発表資料(PDF)…希望退職者の募集人員150名に対し、2割以上多い185名が応募したと発表。34億円の特別損失計上 2011年3月22日→横河電機の発表資料(PDF)…2010年10月26日付で公表していた「拡大セカンドライフ支援制度」に管理職134名、組合員127名、合計261名が応募、退職支援金などの支出として約39億円の特別損失を計上 その前については省略。 ■ 時代と共に企業も変わる では横河電機はリストラの会社かと言えば、そうではありません。筆者の企業人生においてこの会社は常に業界トップ企業でした。世界でも工業計器では第3位の会社です。プラントを制御するDCS(分散型制御システム)では今や世界トップではないでしょうか。世界のプラントを横河電機の技術が支えていると言うことは誇らしいことです。その会社が、「国内市場は縮小する」と言っているのは、日本から工場が海外移転して、お客様が居なくなっている現実を示しています。国内で生産して、計器を輸出すれば良いじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、横河電機が得意とするDCSは、プラント制御ですから待った無しのメンテナンスを伴います。したがって顧客密着の事業展開が迫られ、従業員も現地社員を教育する必要があるのです。 「文藝春秋」1998年8月号に「山一を見よ 拓銀を見よ 会社にすがるな 頼れるのは自分だけだ 大失業時代の過酷な現実を徹底取材!会社消滅 35歳でゴミになる」といういかにも過激な見出しの記事があります。この中でこの記事のライターは、次のように書いています・・・・長期雇用を柱とする今までの日本的雇用慣行の見直しが、経営の効率化のために仮に必要だとしても、それが即、「36歳以上の非エリート従業員は不要」とする経営姿勢となってあらわれるのは、企業トップの怠慢であり、無能の証左ではないか。現に、コストダウンや年功制賃金の見直しなどの企業努力によって、ベテラン従業員の雇用を維持している企業も存在するのだ。その一つの例が、山一の自主廃業発表後、あえて、「36歳以上の元山一社員を採用する」と発表した中堅電機メーカー・横河電機である。同社の美川英二社長は、本誌2月号に寄稿した「わが社に首切り、定年制はいらない」と題する一文の中で、こう述べている。 「企業は株主第一主義、従業員は必要なければいつでも切ることが経営者の取るべき姿勢だ、とする米国型経営が妙に持ち上げられるこの時代に、わが横河電機は『会社は家族だ』という考えを守っている」 「会社は家族だ」などという言葉は、時代錯誤のように聞こえる。しかし、よく読むと、横河の「家族主義」経営は、他企業の経営方針と一線を画すものであることがわかる。まず、社員を馘首しない。過去2回の石油ショックの時も、バブルの崩壊直後もクビを切らず、そのかわり徹底したコストダウンを断行、赤字を出さずに乗り切った。定年後の社員も、本人が希望すれば「横河エルダー」という会社で再雇用される。最高齢の社員は78歳だという。さらに男女の差別、学歴、中途入社、学閥などによる「差別はない」とまで言い切る。3年前まで本社の人事部長を務めていたのは高卒の女性だったという。 「横河電機に入って、驚きました」と、同社に採用された、元山一證券国際部課長の川村裕司(仮名・41歳)氏は語る・・・・(以下省略)と続いています。 横河電機はこういう会社だったのです。美川英二社長は慶応大学ラグビー部出身でした。人事・総務畑を歩いた方ですから、リストラなどとんでもない、という人でした。しかし1999年6月、在任6年の社長現役時、ガンで逝去(65歳)され、慶応大学工学部出身の内田勲さんが社長になりました。中興の祖・横河正三さんが慶応大学出身だったので、慶応出身の人が多かったのですが、横河正三さんと美川英二さんの間の山中卓さんは京都大学でした。山中さんと話したことがありますが、紳士でしたね。2000年に出版された『今こそ終身雇用だ!横河電機の挑戦』という本で、内田勲社長は「私も社長として、”首切りはしない”と社員にすでに約束しています」と述べ、新終身雇用宣言を掲げるなど、リストラを行わないことを改めて会社の特徴とアピールしたにもかかわらず、業績が悪化し、早期退職を募集するなど経営方針を転換させました。「希望退職は首切りではない」と言えばそうですが、マスコミでもてはやされた会社だけに、その落差は衝撃でした。横河エルダーも2年後に消滅しています。ただ、計測制御機器業界では、いまだにリストラをしないという会社が多いので、その点は救いです。 ■ 円安進行 2回前に円安ドル高のことを書きましたが、予想外の速度で円安が進行しています。2015年春に108円/ドルと予想していたのに、もう到達してしまいました。109円を越え、騒ぎになっています。大企業は喜び、株価は上がっています。ただ日本商工会議所の三村明夫会頭は、「現状での急激な円安は、輸入物価の高騰によって、国民生活や、輸出に頼れない中小企業にとっては大変苦しい状況で、対策が必要だ」と述べました。何事も急激な変化は人々を慌てさせます。正直筆者の予想、2015年春の108円/US$よりペースは早いのですが、まだわかりません。ただ、7年前には120円を越えていたし、3年前には70円台だったのですから、相場というのは上がったり、下がったり、変動します。ただし、ロングレンジで考えれば、前々から書いていますが、現状でもまだ円高です。米国の経済環境と、少子高齢化・人口減の日本では、国力が違います。国力の源は人です。若者がバリバリ恋愛し、結婚し、子供を産む社会にするための環境が整っていません。高齢者に優し過ぎ、若者に冷た過ぎます。「ふるさと創生」を本気で考えなければなりません。 ■ 地震
■ 算数が出来ない民主党の新執行部 民主党は2014年9月16日の両院議員総会で、代表代行に岡田前副総理、幹事長に枝野元官房長官らを起用する人事案を承認し、新執行部が正式に発足しました。海江田代表は記者会見で、挙党態勢で党勢の回復を図る考えを示しました。海江田氏は、政府が9月29日に召集する方針の臨時国会での論戦などを通じて、安倍政権への攻勢を強めるとともに、次の衆議院議員選挙に向けて岡田氏が中心となって野党間の候補者調整を進めるなど、自民・公明両党に対抗できる枠組み作りを急ぎたい考えで、岡田氏も各党との協議を積極的に進める考えを示しました。ただ、この顔ぶれでは新鮮味が無いどころか、惨敗した前回選挙で何故敗れたか?安倍内閣の支持率が何故高いのか?について執行部が全然分かっていないということを逆に示したものと言えます。みんなの党は、野党再編を考える浅尾代表と、安倍政権に協力したい渡辺喜美元代表が対立しており、9月21日に発足する「維新の党」の幹部などからは、「野党再編を前提としない選挙協力は受け入れられない」などと、民主党との選挙協力に否定的な声も出ています。集団的自衛権問題で党内が割れた民主党が、「選挙協力」などと言ったところでまとまるわけがありません。2012年の前回選挙だって、小選挙区制ゆえに自民党の圧勝でしたが、得票数は自民+公明よりも野党の合計の方が多いのです。比例代表の得票率は自公合わせて39.45%で、180議席中79議席と44%の議席を得て、これはまあ、比例ですから、そこそこ合っています。一方小選挙区での得票は自民43.02%237議席、公明1.49%9議席、民主22.81%27議席、共産党7.88%0議席です。自公が44.5%の得票率で300議席中82%の議席を得たのです。小選挙区制は死票が多いのですが、政党の乱立で票を食い合ったことが、自民党圧勝の原因です。自民党にとっては、維新やみんなが頑張るほど、有利なわけです。政党支持率は、調査機関によってバラバラですが、NHKの9月調査では自民党が40.4%でグイグイ支持を伸ばし、民主党5.4%、公明党4.3%、共産党3.3%、その他の党は1%未満で、言わば泡沫です。新たな「日本維新の会」0.7%、社民党0.5%、生活の党0.2%、次世代の党と結いの党は0.1%、みんなの党は0.0%、新党改革などその他の政党は全部合わせて0.4%。支持政党なしは36.9%、わからない7.8%でした。自公44.7%、決めていない44.7%(支持政党なしと、わからないの合計)と拮抗し、野党全部合わせても10.6%であるという現実を見るならば、野党が協力したところでダメなのです。国民の眼を、自公かそうではないか、という争点に持って行けば、また逆転が有り得るということです。しかも現状の小選挙区制のままであれば、また大どんでん返しがあり得ます。前々回の2009年の総選挙では、郵政民営化の是非が争点となって、小選挙区で自公は39.84%の得票率で21.3%の議席しか得られず、民主系は50.73%の得票率で76.0%の議席を得ました。新民主党執行部は算数が出来ないの?まとめてみましょう。
(2014年9月21日) |