68  米国社会の分断

 昨週は揺れ動く裁判所の判決と、政権との絡みについて触れました。タイの憲法裁判所のように、選挙で選ばれた政権をひっくり返すのもどうかと思いますと書きました。更に諫早湾の潮受け堤防の開門を巡る裁判で、佐賀地裁と長崎地裁が真っ向から反対の判決を出し、国が身動き取れない状況に陥っていることも紹介しました。

■ 貧富の格差が戦争へと繋がる・・・日本でも右翼の危険な動きが・・・
 タイの揉め事は、富める都市住民と取り残されて貧しい地方の農民の、貧富の格差によるものです。これは中国でもインドでもブラジルでも起きている争い、すなわち「新興国」と呼ばれる地域で起きている現象です。したがって韓国でも当然起きて良いのですが、儒教の国なので激しくならないだけです。最も怖いのは、こうした貧富の格差への不満のエネルギーがどんどん溜まってきて、そのはけ口として内戦や国家間の戦争に繋がることです。これは歴史が証明しています。戦後70年の日本の平和は、他の国から称賛されています。それは、大きな中流が育ち、極度の金持ちや極度の貧民が居らず、自然に助け合いの土壌が根付いたからです。これが可能になったのは憲法9条によって戦争を放棄し、経済活動に一丸となって取り組めたからです。そこから得られた利益をODAや経済援助によって貧しい国の支援に使ったので、日本は海外から讃えられる国になったのです。今これを変えようとする一部勢力の動きがありますが、集団的自衛権とかワケの分からない言葉・・・要するに他国を支援して戦争をするかどうかという意味で、「自衛」という言葉が紛らわしいのですが、何を好んで戦争をするのでしょう?アフガン、イラク、シリアを見ても、その前はユーゴやカンボジア、ベトナムを見ても、戦争によって解決はできません。いたずらに死者を出して、敵対勢力が存続するだけです。海外から称賛されて、お手本とすべき国とされてきた日本の在り方を何故変えるのでしょう?内向きとなった米国と真逆の動きです。国民は今こそ大きな声で、こうした右翼の動きを封じ込める努力をしなければなりません。

■ 米国では富裕層だけの市を作る動き
 新興国の動きに対して、貧富の格差世界一の米国ではどうでしょうか?一部の富める階級が自分達で市を作る動きが出ています。米国は合衆国ですから、州政府に大きな権限があり、その上に連邦政府があります。州の下に群があり、その下もしくは同列に市(city)があります。ところが最近、100万ドル以上の資産を持つとされている富裕層が自分たちで市の境界線を決めて独立し始める動きが出ています。高い税金が自分たちへのサービスよりも貧困層に使われている、という不満から、郡の上位にある州議会に働きかけ、住民投票を行った上で合法的に独立しています。しかも彼らはビジネスの手法を公共サービスの運営に応用することで運営コストを減少させ、減税までをも実現しようとしています。その一方、富裕層に独立されてしまった郡は税収が減少し、福祉サービスなどの予算を削減せざるを得ず、貧困層の生活がダメージを受け始めています。
 この事態をオバマ大統領は、米国の格差を固定化する動きとして懸念しています。例えばジョージア州のサンディ・スプリングス市は約9万4000人が暮らしており、住民の平均年収は1000万円前後だと言います。職業も医師、弁護士、経営者などの富裕層です。サンディ・スプリングス市は2005年に、フルトン郡から住民投票を経て独立しました。

京都・鼓月の千寿せんべい…大好きです

50周年を迎えたそうです→ホームページ

■ 業務を民間に委託して歳出半減の事例
 サンディ・スプリングス市の住民投票では賛成が94%と圧倒的な支持を得ており、やはり高額納税者の税金が貧困層に使われていることが原因でした。サンディ・スプリングス市の財源は豊かです。富裕層が払う固定資産税の15%、売上税の一部、酒税など、2013年の税収は日本円で約90億円となり、州内トップクラスの財源をもつ自治体となっています。財源が豊富なだけではありません。彼らはビジネスの手法を市の運営に取り入れ、ほぼすべての業務を民間に委託しました。市民課も税務課も、建設課や裁判所まで民間に委託しました。例外としたのは警察と消防程度です。その結果、たった9人の職員で市の運営を賄うことに成功したのです。同規模の他の自治体であれば、職員数は数百人必要です。そして市の運営費は当初予想していた半額に抑えられ、それでも住民を守るサービスなどは以前より手厚くなりました。緊急センターでも10秒以内に電話を取る義務などが実施され、警察や消防は90秒で出動します。市民はこのような公共サービスを高く評価し、このモデルを成功例と見た全米の富裕層が移住してきているため、さらに人口が増加し、ますます税収が増加するというプラスの循環が起きています。
立葵の花(さいたま市北区)

■ 取り残された自治体は公共サービス低下
 一方、富裕層が去った自治体はどうなっているのでしょうか。富裕層が居なくなれば、歳入が減り、公共サービスの運営に支障が生じることは当然です。サンディ・スプリングス市が独立したことで、ジョージア州フルトン郡の税収は、年間で約40億円余り減ってしまいました。
その結果、例えばゴミ収集車のゴミの回収頻度が激減し、住宅地は常に腐臭が漂っている状態です。郡が運営する図書館も開館時間が2時間以上短縮され、利用している子供達も時間になれば追い出されます。郡が運営する公園の予算も削減されたため、適切な維持管理が困難になっています。さらに高齢者センターでは、食事代が値上げされることになりました。そして注目すべきは、公立病院の予算が約26億円も削減されたことです。この公立病院は、貧困層の治療には無くてはならない存在ですが、医師の数も削減され、今後貧困層の診断や治療が困難になる事態が予想されます。これで予想されることは、富裕層が去った自治体は、公共サービスを維持できないすさんだ社会となって行くだろうということです。警察官が失業し、非常に危険な街が生まれつつあります。そのような地域では、公共教育も賄えなくなっていますので、教育を受けられないまま成人した住民達が仕事も得られずに、ますます犯罪に走るでしょう。
あじさいの花(埼玉県戸田市)

■ 米国の社会分断・・・日本の将来は?
 米国社会の分断が深まっているのです。米国という一つの国家の中に、2種類の社会が現れるという、まるでSF映画の様な状況が生まれつつあると言えます。公共サービスを契約として金で購入する、といった社会は、住民が所得に応じた、また消費に応じた税金を出し、相互扶助として公共サービスを賄うという感覚を無くします。片方では高レベルのセキュリティーや高品質の公共サービスが提供される豊かで安全な地域があり、片方では犯罪が跋扈し、治療も満足に受けられない荒れ果てた地域が増加して行くのです。すでに米国では富裕層が郊外に住むのがずっと昔から当たり前になっています。ニューヨークのマンハッタン地区だけは例外で、一戸建ては存在せず、厳重なセキュリティで守られた高級アパートメントが立ち並んでいます。東京のような都市は、日本だからこそで、世界では珍しいのです。米国では金持ちは郊外に住み、郊外高級住宅街のいくつかは「Gated community」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなど して内部の治安を保つようにしています。まるで「城」ですね。ただ、例えばタイのバンコクでも同様の地区があり、日本からの駐在員などはこういう地区に住んでいます。
 オバマ大統領は1%対99%の分断を無くす政策を進めたいとしています。しかし、それは不公平だとして独立しようとしている人々や、そこまで富裕でなくても、オバマケアに不満を言う人が増えています。米国はもはや国家という観念が薄くなり、ナショナリズムを喪失しようとしているように見えます。米国での出来事は、自治体に競争原理を持ち込もうとしている道州制を目指す日本にとっては、未来の姿かもしれません。世界でも稀な、助け合いの社会主義的日本社会はどんどん過去のものになって行くのでしょうか。

■ FIFAワールドカップ
 今や世界中ワールドカップ一色、ボール1個あればできるこの世界で一番親しまれているスポーツの人気は、やはりスゴイ。日本でも全試合をTV中継、高い視聴率が見込めるコンテンツで、NHKが初戦のコートジボワール戦を中継して、ナント!視聴率が50%を越えました。スゴイを通り越した数値です。日本テレビが第2戦のギリシャ戦、テレビ朝日が第3戦コロンビア戦を中継します。しかし、この権利が高騰しています。1998年のフランスワールドカップで日本側が支払った額は6億円。そして今回のブラジル大会で提示された放映権料はなんと400億円。日本放送協会(NHK)と民放連加盟各社で構成されるジャパンコンソーシアムが負担します(ちなみに、放映権料のうち、70%をNHKが支払うそうですが、CMも無いのにどこからそんなお金が湧いてくるのでしょう?)。2002年の日韓大会以来、各国の放送局による競売形式となっていることが高騰の背景のようです。コレに伴って賞金も高騰しています。
 日本は第1戦、長友〜本田のシュートで先制していい感じでしたが、36歳ドロクマが出てきた途端2分で2ゴールを決められました。やはりスーパースターです。前回優勝のスペインがまさかの予選リーグ敗退、メキシコのキーパー・オチョアのスーパーセーブ、見所イッパイ。日本はギリシャと引き分け、暗雲。

アルゼンチンのメッシ、ユニフォームはバルセロナ

■ 雫石〜盛岡〜仙台ツアー
 今週は少年野球の大会も大詰めなのですが、実はいろいろなイベントが重なりました。6月21日(土)は在京雫石町友会総会(日暮里・ホテルラングウッド)、大学の電気電子情報科会総会(ハーネル仙台)、埼玉県西部地区少年野球大会の3回戦、我がふじみ野市の少年野球連盟の会長である松本勝治氏の功績を讃えて創設した第1回松本旗争奪少年野球大会開会式と1回戦、この大会の実行委員長は我がチームの横森代表、こうなると、どれもが重要なイベントです。どれを取るか悩みどころですが、実は大学同窓会の支部長を引退して初めての総会なので、今後、後継者をよろしくという意味で今回はこれに決めていました。ましてや仙台での総会は滅多にありません。仙台には93歳の母も弟も住んでいます。どうせ仙台に行くのなら、更に200km足を延ばして、雫石町七ツ森の墓に参ろう、父しか入っていないが、やがて自分も入ることだし、と思いました。すると20日の金曜日から行かなければなりません。盛岡市の妹宅から雫石の従兄宅、七ツ森の墓参り、雫石町役場に顔出して町長に挨拶、盛岡南部の妻の兄弟達との久々の懇親、21日(土)は仙台で母慰問、大学同窓会、温泉を楽しんで22日(日)松島海岸から奥松島、石巻を回って、帰宅という行程を立てました。

雫石町七ツ森の我が家の墓
(2014年6月21日)


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