■ 「鼻血が出た」に抗議
 ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の人気漫画「美味しんぼ」の内容がネット上で炎上しています。福島には疲労感が強かったり鼻血が出たりといった症状の人が大勢おり、それらの症状と原発の放射線との関連を匂わせる描写があるというので、「今週の『美味しんぼ』、福島から帰ってきた山岡さんが原因不明の鼻血を出し、海原雄山も出たと話をして、最後に井戸川さんが出てきてこの有様でした。これは流石に福島県民として抗議の意を示したい。僕はこの三年間、鼻血なんか出たこと無いですが」・・・2014年4月28日に画像付きでされたこのツイートは、29日夕方現在1万回以上リツイートされ、ネット上を騒がせているのです。
 炎上したネット上ではすべてが小学館やスピリッツ編集部、原作者の雁屋 哲氏への批判、非難です。普通少しは反対意見があるものですが、これだけ非難轟々というのは、「頭に来た」という人がいかに多いかを示しています。とても「その通りだ!」なんて書ける雰囲気ではありません。自分の名前を堂々と書いてツイートした「福島県民です。美味しんぼは好きでしたし、スピリッツも嫌いではありませんでしたけれど、現在、心の底から嫌悪感を感じています。あなた方が僕らを被差別部落へと貶めようとしたことを、僕は忘れないようにしようと思います」というのがその代表です。他にも「次号は吐血ですか、下血ですか、それとも主人公のつるっ禿げですか。社会問題にもなりつつあるのに被災地を踏み台にして炎上商法ですか。恥を知れ!」とか、「特集記事で終わらせられる問題ではないと思います。ドキュメンタリー風のコンテンツを用いて、特定地域への誹謗中傷を行ってしまったわけですから、企業としての責任の取り方があるのではないでしょうか?内容がデタラメな事についても、訂正は必要だと思いますが」、「立ち読みで済まします。風評加害雑誌スピリッツは永遠に購入しません」、「美味しんぼの登場人物がちょっと福島に来ただけで鼻血出すほどの高線量の被ばくしてるんなら、私を含めた福島県民、とっくの昔に死に絶えてます」、「懲りね〜な、コノヒト」と言った意見です。
 筆者も早速、サッポロラーメンの店に行って、味噌ラーメン¥650を食べながら見ました。漫画雑誌なんて買いませんから、ラーメン屋に行ったのです。問題となっているビッグコミックスピリッツ22・23号(4月28日発売)の前の21号もありました。これには「福島の米の安全性」について、きちんと対策した田圃のコメは大丈夫と書いてありました。

美味しんぼ110号
 
■ 「福島では同じ症状の人が大勢いる」
 さて、問題となっているビッグコミックスピリッツ22・23号(4月28日発売)では、主人公の山岡と海原雄山たち一行が福島第一原発を見学、一行は3号機の前で1時間当たり1680マイクロシーベルトを数秒間浴びたそうです。何故数秒間で済んだのでしょう?それは置くとして、帰宅後の山岡にひどい疲労感と鼻血の症状が現れました。同じ症状が雄山や同行者にもあったことがわかります。取材の過程で、前双葉町長の井戸川克隆氏と岐阜環境医学研究所所長の松井英介医師のもとを訪れた山岡は、町長の口から「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と告げられます。今週分の話はここまでで、欄外には「耐え難い疲労感と原因不明の鼻血―――!?山岡や雄山たちの体になんらかの異変があるのか?次号ご期待!」みたいなアオリがついていました。しかも「福島原発の真実」といった枠外のキャッチまで付いています。上記の『いちえふ』で描かれているのは「フクシマの真実」ではなく、作者がその目で見てきた「福島の現実」です。「真実」と書いた場合は、多くが「本当のこと」ではなく、「作者の思い込み」であることが多いのは、皆様よくご存知ですよね?週刊誌などで「○○の真実」などというキャッチが付いた場合、たいてい嘘っぱちです。

■ いわくつきの二人にコメントさせている時点で偏向がわかる
 山岡が訪ねた両名は実在の人物で、井戸川氏は放射性廃棄物中間貯蔵施設の受け入れを巡って町長職を辞任、松井医師は『見えない恐怖 放射線内部被ばく』などの著書があり、各地で講演して放射線内部被ばくの怖さを語っているヒトです。そもそも岐阜環境医学研究所などと聞くと、いかにもシッカリした機関という印象を受けますが、組織実態はよくわかりません。はっきりしているのは、チェルノブイリの例などを引き合いに出して、いたずらに恐怖心を煽る人物で、その主張を良く聞くと、非科学的だということです。事故直後は全国の自治体や団体などから引っ張りだこでしたが、今では言っていることの嘘がばれて、特定の思い込み団体からしか声がかかりません。
 一方双葉町は埼玉県加須市の廃校になった高校に町役場を移し、井戸川克隆町長はテレビに度々登場して、一躍時の人になりました。2012年11月28日、東京電力福島第一原発事故で生じた汚染土壌を搬入する放射性廃棄物中間貯蔵施設についての福島県と双葉郡8町村の会議に欠席した井戸川町長は、この問題をめぐって町議会と対立、12月20日、町議会は町長不信任決議案を議員8人の全会一致で可決しました。双葉町民達も当時、町長の対応に呆れ果てていました。井戸川町長は12月26日に町議会を解散しましたが、町民達の批判の嵐を受けて2013年1月23日に町長辞職を表明し、2月12日に退任しました。第23回参議院議員通常選挙にみどりの風から比例区で出馬しましたが、みどりの風自体が議席を獲得できずに落選しました。今回の騒動を受けて井戸川克隆前町長は、マスコミの取材に「私の話したことは全部入っています。果たして風評被害でしょうか。私はそんなつもりは全くありません」と語ったそうです。しかし、いわくつきの二人にコメントさせている時点で既に、「美味しんぼ」の原作者・雁屋 哲氏の偏向がわかるのです。

■ 放射線の影響によるものと断定する意図は無い?
 実は、原作者の雁屋 哲氏は以前、作中とほぼ同様の発言をして話題になったことがあります。この人は1988年(昭和63年)に、オーストラリアのシドニーに移住しました。「人種差別の無い理想の国」と言っていたのが、原住民アポリジニに対する差別を知って沈黙に変わり、「鯨食は文化」という信念から「反捕鯨」のオーストラリア政府を批判したりしています。オーストラリアの情報を紹介している日本語ミニコミ紙「日豪プレス」に対して、福島現地の子供たちもだるさを訴えていたと語り、「あの周辺は人は住んではいけない所になってしまった」と漏らし、福島の食べ物を食べて応援することも疑問視、特に東北地方の海産物の多くについて「恐らく食べられなくなるでしょうね」と言っていました。
 騒ぎを受けてスピリッツ編集部は2014年4月28日夜、コメントを発表しました。それによると、鼻血や疲労感が「放射線の影響によるものと断定する意図」は無く、「取材先の皆様の実体験や作者の実体験について、作中登場の実在の医師に見解を問う展開」だとして、「風評被害を助長する内容ではないか」という指摘についても、そのような意図は無く、これまでの作中でも「きちんと検査が行われ、安全だと証明されている食品・食材を、無理解のせいで買わないことは消費者にとっても損失であると述べております」と説明しています。
 スピリッツ編集部も言い訳するからいけないのです。「これは漫画ですから、作品の内容は原作者の独断と偏見は有り得ます。真実だけを書くべきだと言われても、これは漫画ですから勘弁して下さい。フィクションであり、想像も創造も入っていると思われます」と言うべきです。

■ 過去に物議をかもしてきたこと多々あり
 こうしたスピリッツ編集部の対応にも、ネット上ではなお批判が止まりません。TBSのニュースで、「鼻血があったことを言うのは間違いでないにしても、学問的にはまるで否定できることまでも真実であるかのように書くとすれば、福島の人の不安をあおることになるので適当ではないと思う。(鼻血と)被ばくとの関係はない。その点は確信を持って頂いていい」(日本大学准教授 野口邦和博士)と専門家の発言を紹介していました。現実には、強烈な放射線を浴びれば鼻血が出ることはあるそうです。しかし、漫画で描かれたような状況では有り得ないというのが学者の一致した意見です。
 ネット上での「懲りね〜な、コノヒト」と言った意見の背景は、Wikipediaの『美味しんぼ』をご覧下さい。”問題になった記述”という項で、この漫画が過去いかに物議をかもし、企業や、業界団体、学術団体などと対立してきたかがわかります。食とはまるで関係のないマイクロソフト社などとも絶交状態です。抗議を受けてスピリッツ編集部と作者が謝ったり、単行本で修正していることが多々あります。左翼的、反権力的なことを書くことが多く、天皇制も批判しています。一方、食文化や歴史などで韓国・中国に関しては好意的に描くことが多々あり、ヘイトスピーチ反対運動もしています。

■ 避難指示区域の区分け
 政府は避難指示解除をすべきか否かを判断する時期を、帰還困難区域(年間積算線量50ミリシーベルト超)については2017年、居住制限区域(年間20ミリシーベルト超50ミリシーベルト未満)および避難指示解除準備区域(年間20ミリシーベルト未満)について2016年と見込んでいます。
帰還困難区域:「5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域」であり、引き続き避難が継続される。この区域では、住民の一時立入りの際、スクリーニングを確実に実施し個人線量管理や防護装備の着用を徹底することとしている。
居住制限区域:「年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難の継続を求める地域」であり、帰還に数年以上を要するとみられる区域として計画的避難区域と同様な運用が実施される。この区域では、住民の一時帰宅(宿泊禁止)、通過交通、インフラ復旧など公共目的の立入りは認められている。
避難指示解除準備区域:早期帰還を目指す「年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認された地域」であり、主要道路における通過交通、住民の一時帰宅(宿泊禁止)は柔軟に認められている。また、一時的な立入りの際には、スクリーニングや線量管理などの防護措置は原則不要となっている。
 政府は2014年4月1日、東京電力福島第1原発事故に伴う田村市都路地区の避難指示解除準備区域の避難指示を解除しました。第1原発から半径20km圏の旧警戒区域では初めてで、右地図の田村市の緑色が解除され、全域が避難対象から外れました。推定の放射線量に基づき、避難指示解除を急ぐ国に対して、帰還は容易ではないと受け止める住民の気持ち、富岡町のように、小さな町が推定放射線量で分断される悲劇・・・・。旧警戒区域の光景は原発事故の理不尽さを無言のうちに物語っています。

■ 福島原発20キロ圏内の今
 福島第一原発から20キロメートル圏内の自治体で、立ち入りを厳しく制限する「警戒区域」の指定が相次いで解除され、日中に限られるものの行き来が自由にできる地域が広がっています。東京電力の火力発電所がある20km圏外の広野町にはサッカーのJ-Villageスタジアムがあります。ここが事故後東京電力の復興作業の拠点になりました。その北の楢葉町は昨年8月10日に町内全域が警戒区域の指定を解かれ、「避難指示解除準備区域」に区分されました。第一原発が立地する大熊町や双葉町、北西方向で大量の放射性物質が降り注いだ浪江町などと比べて放射線量が低いことや、東京電力の福島復興本社が立地することから、「復興の拠点」となっています。
 福島第2原発は冷却がうまく行って、事故無く停止しました。ここは楢葉町と、その北の富岡町の境界線に立地しています。富岡町は浪江町や南相馬市同様、上記の如く町内に3つの地域が存在します。除染やインフラ復旧に時間がかかることを理由に、「市内全域で5年間は帰ることができない」と遠藤勝也町長自ら宣言しています。南相馬市の桜井市長は我が後輩です。

閉鎖されたJ-Villageスタジアム

■ 原発強制避難者への特別な支援継続を
 楢葉町の復興計画では、住民の「帰町目標」の時期は2015年春で、ここから本格復興が始まります。ただ多くの住民がいわき市内の借り上げアパートなどで避難生活を送っており、帰町を疑問視する人も多いのが現状だそうです。住めば都、3年経ったら新しい生活が板に着いてしまいます。楢葉町のあちこちに原発の収束作業や除染にたずさわる作業員の宿舎が建っています。地元民でなくても日中に限って自由に立ち入ることができることから、空き巣被害などの問題が発生しています。
 「帰っていいよ」と言われても、「こんな殺伐とした状態では、ここに戻って暮らすことはできない。楢葉町は変わり果ててしまった」と考える住民も多いようです。原発事故をきっかけに仕事を失い、自宅のローンが残って、東京電力からの土地建物に対する賠償額では足りないなどという人がいるようです。これらの被害者に対しての生活再建支援は、単に東京電力だけではなく、国を挙げて行わなければならないのですが、3年を過ぎて、段々忘れ去られてきているというのが現状のようです。津波による被災者はともかく、原発による強制避難者には、特別な支援が継続されるべきです。

■ 凍土壁の効果確認〜廃炉カンパニー;実験結果を説明
 東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策を担う社内分社「福島第一廃炉推進カンパニー」の増田尚宏最高責任者(プレジデント)は2014年4月24日、Jヴィレッジの福島復興本社で会見し、増え続ける汚染水対策の「凍土遮水壁」について、同原発内で実施した小規模実験で、遮水効果を確認したことを明らかにしました。東京電力側は6月にも着工したい考えのようですが、原子力規制委員会は安全対策などの説明が不十分などとして認可していません。
 この対策は、土壌を凍らせる管を地中に埋め込んでヒートポンプで冷やした冷媒っを送り込んで「氷の壁」を作り、水をブロックしようということです。福島第一原発の周囲に氷壁を作れば、汚染水が発生するのは雨水だけになるからです。実験の凍土壁の内外で地下水をくみ上げたところ、内側は地下の水位が下がりましたが外側は変化がなく、水の行き来がないことを確認したそうです。経済産業省資源エネルギー庁は「実証実験レベルでは有効な対策といえる」と説明しました。また、H4エリアの漏えい水対策として、天然アパタイトと天然ゼオライトを混合してストロンチウムを吸着させる土壌改良に取り組むことも説明されました。

■ 福島原発廃炉下請け企業「継続」は半数

 2014年4月25日のNHKニュースで、「廃炉下請け企業「継続」は半数」というのをやっていました。思わず引き込まれて見てしまいました。東京電力福島第一原子力発電所で廃炉作業に関わっている下請け企業のうち、NHKが、取材で判明した企業に「今後も作業を続けるか」尋ねたところ、「続ける」と答えた企業が、全体のほぼ半数にとどまったというニュースです。福島第一原発では毎日約4000人の作業員が働いていますが、そのほとんどは東京電力社員ではなく、協力会社や請負業者の作業員です。廃炉作業は、元請けから下請け、孫請け、曾孫受け…と多数の企業が複雑にぶら下がっています。東京電力の相沢善吾副社長は先の記者会見で、「当面作業員が不足する心配はない」と説明し、2〜3年先の見通しは立っていると強調した上で、「東京五輪の開催などで景気が良くなり仕事が増える中で、きつい現場で働く人をいかに集めるかが重要な問題だ」と話しました。こんな状況の下で、どうして「、2〜3年先の見通しは立っている」のでしょう?
 長期的な作業員の確保が課題になるなか、専門家は「廃炉作業から撤退する企業がさらに増えていくと、廃炉の進ちょくに影響を与えかねない」と指摘しています。30年から40年かかると言われている福島第一原発の廃炉作業は、全国およそ800社の下請け企業が関わっていますが、東京電力は、直接発注する元請け以外、企業の名前を公表していません。NHKはこのうち、取材で判明した278社に現状や課題などを聞いた結果、全体の37%に当たる102社から回答を得ました。このなかで「今後も廃炉作業を続けるか」尋ねたところ、「続ける」と答えた企業は、全体の53%にとどまりました。一方、「今後は分からない」が30%、「続けない」が15%でした。その理由を複数回答で尋ねたところ「作業員への放射線の影響が心配」が43%と最も多く、次いで「工事の単価が安い」が35%、「作業員が集まらない」が20%などとなりました。
 東京電力によりますと、現在は溶け落ちた核燃料の取り出しに向けて、原子炉建屋内部の調査やがれきの撤去などが行われているということです。東京電力は、廃炉作業に必要な作業員の数について、昨年度当初1万800人と見込んでいましたが、実際はこの予測を3000人上回りました。
今後も必要な人数はさらに増えると見込んでいて長期的な作業員の確保が課題だとしています。

【長期的な態勢が必要】
 原発作業員の労働問題に詳しい東京大学大学院の縄田和満教授は「廃炉作業から撤退する企業がさらに増えて行くと、作業に携わる企業や人手が不足し、廃炉の進ちょくに影響を与えかねない。40年とも言われる廃炉は、状況が劇的に改善されるものではなく、長期的に作業を続けられる態勢に変える必要がある」と指摘しています。

【撤退の背景に受注単価の安さ】
 福島県にある塗装会社は、東京電力の発注工事の1次下請けとして、福島第一原発の事故のあと汚染水の貯蔵タンクの塗装や作業員の線量計の管理業務などを受注してきました。この会社を経営してきたYさん(67)は、塗装の作業員として建設当時から福島第一原発に関わり、36年前に会社を設立した後も主にこの原発の工事を請け負ってきました。しかし、受注先の元請け企業が支払う工事の単価が事故の1年後から下がり始め、現在は事故直後に比べ30%ほど少なくなっているそうです。元請け企業からは、東京電力が進めるコストカットの影響で単価を下げざるをえないと説明されていて、こうした単価の減少などで毎月2百万円から3百万円の赤字の状態が続いているということです。さらに、現場の高い放射線量を懸念して会社を辞める作業員も出ていて、事故当初は20人いた作業員が今では15人に減ったということです。Yさんは、利益が出ないうえ、被ばくを余儀なくされる廃炉作業からは今年度末をめどに撤退し、今後は廃炉以外の工事に専念したいと考えています。Yさんは「今の廃炉作業では、収入より従業員に支払う給料のほうが多く経営が成り立たない。長年福島第一原発に関わってきたが撤退は仕方ないと諦めている」と話していました。

【待遇改善の対策】
 東京電力は2013年11月に作業員の待遇や労働環境を改善するための対策を打ち出しました。具体的には、経費削減のために拡大させた一部の競争入札を随意契約に戻すほか、作業員の人件費の見積額を1人当たり1日1万円上積みしていたものを2万円に増額しました。しかしこの対策について東京電力は、下請け企業が作業員に支払う給料にまで直接関与できないとして、作業員の手元に増額した1万円が全額渡るとはかぎらないとしています。このため、直接取引関係がある元請け企業に対して、増額分が作業員の給料にできるだけ反映されるよう対応を求め、結果の報告を求めています。
 東京電力は「廃炉作業にはこれまで経験したことのない多様な専門性や高度な技術が欠かせず、作業を着実に実行するためには多くの企業で成り立つ下請け構造は必要だと考える。今後も作業員の待遇が適切に確保されるよう取り組みを続けていきたい」としています。
 東京電力の広瀬社長は、「除染のほうが給料が良いのではないかとよく話が出る」とした上で次のように述べました。「増額分を1万円から2万円にというのは、これが十分かどうかというのは当然あるかと思う。正直なところ、根拠があるわけではなく、この額にするとこれぐらい人数が確保できるなどの定量的な指標があるわけではないが、まずはこうしたことで、福島第一原発で働いていただけるような労働環境を整備したい」、さらに「金だけではなく、労働環境を向上させることが重要」とし、地上8階建ての「大型休憩所」の設置や、毎日3000食を提供する「給食センター」の設置を行うと発表しました。

■ 福島第一原発廃炉にひと肌脱ぐか?
 53『うっ、暗いな』(2014年3月10日)で、「福島第一原発廃炉にひと肌脱がなければいけないか」、と書きました。廃炉に携わっている組織は下記です。
 ●東京電力福島復興本社 
 ●福島第一廃炉推進カンパニー −−−> その設置について(PDF)
 ●福島原子力企業協議会 発電所の運営に関する様々な相談を受け付ける『原子力企業協議会よろず相談窓口』があります。
  《宛先》 〒979-0695 福島県双葉郡楢葉町大字波倉字小浜作1-1-2
          東京電力梶@福島第二原子力発電所内
          福島原子力企業協議会内 『原子力企業協議会よろず相談窓口』
 筆者はもう放射線を浴びてもなんということのない年齢です。原子力のようなクリーンエネルギーをうまく利用しようとしてきた人類が、制御し切れなくて事故が起きました。廃炉に協力しなければならないというのは、東京電力のためだけではありません。人類のためです。人類の未来にとって、原発が必要だからです。福島第一原発に行ったら鼻血が出た、といったヤカラに身をもってその間違いを示さなければ、といった気持ちもあります。義憤ですね。

■ 原子力は有用です
 原子力は爆弾という恐怖の側面から、問答無用で悪と考える人がいます。大東亜戦争時、日本国中、米軍によって空襲や艦砲射撃で民間人を無差別殺戮された上に、最後はヒロシマ、ナガサキに原子爆弾を落とされてトドメを刺された大日本帝国、だから原子力は悪と考えるのは間違いです。これはアメリカによる戦争犯罪なのです。日本人は世界唯一の原爆被害者です。ヒロシマ、ナガサキでの被爆と、福島を一緒にしてはいけません。原子力を人類のためのエネルギー創出という側面から利用しますと、火力発電のような地球温暖化を引き起こす手段を使わなくてすみます。鉄腕アトムも生まれます。トータルでどちらが地球環境の保護のために良いか?と考えるべきです。もちろん放射能が人体に及ぼす影響も考えるべきですが、その影響を排除して運転するのが制御技術というものです。自動車を運転しても事故は起きます。それで年間何人が死んでいるでしょう?だから自動車をやめますか?やめますという人はほとんど居ないでしょう。でも交通事故だけでなく、自動車は排ガスによって人体への悪影響や地球温暖化も促進しているのです。自動車によって毎年たくさんの人が死んでいるのです。だからトヨタ、ホンダはじめ、日本が先頭に立って「燃料電池自動車」の開発が進んでいます。もうすぐ実用化されます。日本で原発を動かして数十年、それによって死んだ人は居ません。それどころか、地球温暖化防止に役立ってきました。今回の福島第一原発の事故は、津波という大天災に見舞われたとは言え、冷却水を送る制御盤が冠水するという人災でした。女川原発や福島第二原発同様福島第一原発も制御棒で停止できました。マグニチュード9という大地震でも日本の原発は制御停止できたということは世界から驚きをもって受け止められたのです。ただし、冷却が出来なくて事故に繋がりました。東北電力の女川原発は、当初設計より高い場所に設置されました。福島第一原発はもっと高い津波を想定していながら、「絶対事故は起こさない」という完璧主義・理想主義ゆえの落とし穴でした。事故は起きるもの、起きたら影響を最小限に抑えるという現実的な考え方のアメリカ人は、「アメリカではこういう事故は起きない」と言いました。事故後の政府や東京電力のムチャクチャな対応に危機感を抱き、アメリカ政府は福島第一原発から50マイル以上離れた場所へ避難せよ、と自国民に退避勧告しました。日本では脱原発の大合唱が起きました。しかしこれは、日本の「自分達さえ良ければ良い」という利己主義だと世界中から猛反発されています。安倍政権は原発再稼動と、世界各国での原発建設への協力を打ち出しています。民主党も海外への原発技術輸出に賛成しました。一部の偏った利己主義者の主張は、急速にしぼんでいます。

■ 新しいユートピア創りを
 福島第一原発の事故は、チェルノブイリ(ウクライナ、ベラルーシ国境付近)の事故とは、内容も影響もまるで違います。チェルノブイリ原発は、運転中に余計な「実験」を行った結果、制御が効かなくなって、暴走〜爆発したものです。福島第一原発の事故は、原子炉は止まりましたが、冷却水供給が止まったため、メルトダウンして、沸騰した水が分解されて溜まった水素が爆発しました。排出された放射線量もはるかに少ないのです。チェルノブイリと比較にはならないのですが、堂々とデマを飛ばすヤカラがいるのも事実です。不安を持っているときに煽り立てられたら?コワイですね。
 だからと言って、福島第一原発の事故により強制避難させられた人たちのことは上記の如くなんとかすべきです。単に東京電力の賠償に任せるのではなく、国民の税金を使って福島を再び「うつくしまふくしま」に戻さなければなりません。安倍首相は、常磐自動車道を早期開通させろと大号令を発しました。いろいろな産業を福島で興し、ここで働きたいと人が集まってくるようにしなければなりません。沖縄や北海道より、今や福島の、それも福島第一原発周辺にお金を投下して、人々を呼び戻す、あるいは他県から移住していただく、避難者の中にはもういやだという人が多いでしょうから、そういう方の不動産は高く買い上げて、新しいユートピアを創り上げましょう。

■ 「インターネット エクスプローラを使うな」ってどういうこと?
 米国のサイバーセキュリティに関する調査を行う機関が2014年4月28日(米国時間)、マイクロソフトのWebブラウザ「Internet Explorer(インターネット エクスプローラ/IE)」のバージョン6から同11(現最新版)に存在するセキュリティ脆弱性について報告、「該当する製品を利用しているユーザーに対して対応策を講じる」よう、緊急の注意喚起を行いました。Internet Explorerは、WindowsとセットとなったWebブラウザ(インターネットのWebサイト表示のためのソフトウェア)で、PCで利用するデスクトップブラウザのシェアは約60%、2位のGoogle Chrome(約17%)を大きく引き離しています。他にはFirefoxOperaがあります。
 今回の問題は、2014年4月にサポートを終了したWindows XP時代にリリースされたバージョン6から、Windows 8.1にインストールされる最新版のバージョン11までが対象、つまり、現在稼働する「ほぼすべてのIE」に当てはまります。攻撃者が設置した悪意のあるプログラムを置いたWebページへユーザーが知らずにIEでアクセスすると、悪意あるプログラムにより個人情報を抜き取られる、あるいは自身のコンピュータが攻撃の踏み台に利用されるといった可能性があるのです。
 Microsoftは日本時間2014年5月2日未明、緊急アップデートの形でWindows Updateを通じて対策ソフトウェアを配布すると発表しました。これはWindows XP利用者にも提供するそうです。筆者は直ちにアップデートしました。通常はMicrosoftが対応アップデートの提供をはじめるまで1〜2週間ほどのタイムラグがあるので、このような形でコンピュータやソフトウェアの脆弱性が明らかになってから、実際に対策が行われるまでの間を狙って攻撃する手法のことを「ゼロデイ攻撃(Zero Day Attack)」と言います。いくらセキュリティ対策ソフトをインストールしていても感染するというのはこのためです。
 不用意に怪しげなサイトにアクセスしたりしないことが大事ですが、筆者は、この際だから、既にインストールしていたGoogle Chromeを使ってみました。こちらのほうが速いナ、と感じます。

■ 世界卓球選手権2014
 いや〜手に汗握りましたよ。2014年5月3日(土)夜、女子日本代表が苦戦の末オランダを下してメダル確定、既にメダルを決めた男子と共にいよいよ優勝を目指して闘います。
 世界卓球選手権は国際卓球連盟(ITTF)が主催する、最も権威のある卓球の国際大会です。偶数年となる『世界卓球2014東京』は団体戦です。女子は2大会ぶりのメダル獲得を決め、さらには決勝に進出したロンドン五輪の再現を目指します。また、男子は4大会連続のメダル獲得であり、更に決勝進出、そして打倒中国を狙っています。頑張れ!ニッポン!
(2014年5月4日)