46  選挙

1月20日は大寒でした。1年で一番寒い時期ですね。左写真は青森県黒石市の友人のホームページ『あずましの里通信』からです。今年は大雪という地方とそうでもないところとバラバラでした。黒石市では例年11月頃から雪が降り始め、12月、1月と豪雪になるのですが、 今年は1月に入ってから連日の雪となったそうで、遅めの雪だそうです。しかし筆者も豪雪地方で育ったのでよくわかりますが、雪かきというのは重労働です。高齢化が進む地方では、お年寄りが多くなって、雪かきもままならないのではないでしょうか。雪がしんしんと降る情景はいまだに脳の深奥に残っていますが、真冬でも日中はポカポカ陽気のところで42年も生きていたら、その深奥の景色に再び戻って行こうという勇気は湧いて来ないのです。雪国の人は、そこで暮らし続ける中から、雪とうまく共存しているのでしょう。雪はすべてを覆い尽くして、汚れたものも真綿のように純白にお化粧してくれますが、一旦融けて氷になったら大変厄介な代物へと変わります。そして雪が融ける季節、それは希望の季節です。
■名護市長選で稲嶺氏再選、普天間の辺野古移設は難航か?
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設の是非を最大争点とした名護市長選が2014年1月19日投開票され、日米両政府が進める名護市辺野古への移設に反対する現職の稲嶺進氏(68)が、移設推進を訴えた前自民党県議の末松文信氏(65)を大差で破り、再選されました。政府は計画通り辺野古に普天間の代替施設を建設する方針です。各大臣も殊更に冷静を装っています。しかし、地元首長の反対を押し切って着手すれば大きな反発を招くのは必至で、普天間移設の行方は混迷しそうです。
 市長選の直前に仲井真弘多知事が政府の埋め立て申請を承認したことを受け、末松氏は移設容認から推進へと主張を鮮明化し、移設問題を巡り候補者が黒白ハッキリした形での選挙戦となりました。仲井真知事は末松氏を全面支援しましたが、県外移設を主張していた知事が、安倍首相の沖縄振興策を激賞して辺野古の埋め立て申請を承認したことが、カネで沖縄を売ると県民の反発を招いたようです。稲嶺氏に敗れたことで、埋め立てを承認した知事への批判や責任を問う声が強まるのは必至でしょう。

■東京都知事選挙
 東京都知事選は「後出しジャンケン」の戦いと言われてきました。巨大都市東京の首長の直接選挙ですから、日本最大の選挙です。しかしながら日本の有権者は近年、政治に対する思慮が浅くなり、まるで人気投票になるものですから、このところタレント候補が選ばれてきました。青島幸男(故人)は都市博中止を旗印に当選しましたが、それ以外に特に目立った施策はなく四面楚歌の中、1期で退任しました。1999年の選挙では後継として、民主党を離党し、衆議院議員を辞職して出馬した鳩山邦夫を指名しましたが、石原慎太郎が当選し、鳩山邦夫は次点、舛添要一は3位でした。石原慎太郎は2003年も2007年も再選され、3期務めたからもういいだろうと辞めるつもりでいたところ、宮崎県知事を1期で退任し、都知事選に出馬した東国原英夫のようなタレントに都政を任せられないと出馬し、169万票を得た東国原英夫に90万票強の差をつけて当選し、その1年後あっさり都知事を辞任して国会へ復帰し、新たに日本維新の会の代表になりました。後継は猪瀬副知事を指名したのはご存知の通りです。しかし、石原慎太郎は1975年の都知事選挙で、対立候補の美濃部亮吉(当時71歳)に関して「もう新旧交代の時期じゃありませんか、美濃部さんのように前頭葉の退化した六十、七十の老人に政治を任せる時代は終わったんじゃないですか」と発言し、政治家は遅くとも70歳前に引退すべきとする考えを表明しました(Wikipediaより)。しかし、自身は、現在80歳を過ぎても政界から引退する意志は全くないと言っています。都知事選は鈴木俊一氏まではマトモでしたが、その後はタレント続きです。

■脱原発で元首相が連携して都知事選出馬
 元首相で熊本県知事も2期務めた細川護煕氏が東京都知事選に出馬するそうです。76歳です。何を考えておられるのでしょうか。若い頃の石原慎太郎発言のように、年寄りは引っ込んで、若者のサポートに徹して下さい、と言いたいところですが、今回の選挙は年寄りばかりで、女性も居ません。どうやらタレントは打ち止めになりそうですね。都知事選に元首相が出てくるなんて、日本はまことに人材不足です。
 政界を引退して陶芸にいそしんでいた細川元首相が何のために出馬するのかといったら、脱原発のためだそうです。原発ゼロの立場を取る小泉純一郎元首相に支援を取り付けたので、首相経験者2人が連携して、舛添要一本命と言われた選挙戦の台風の目になる可能性が高い、とマスコミではやされています。これに対し、甘利明経済再生相は「殿、ご乱心」と会見で述べました。甘利氏はその理由について、「エネルギー政策は国策として、国民の利益を考えて取り組むべきだ」とし、全原発が停止し、代替の火力発電用の燃料となる液化天然ガス(LNG)の輸入などで、1日約百億円の国民の利益が海外に流出していると指摘し、現状を放置することは「政治家として努力が足りない」と述べました。また、安易に火力発電に頼り続けることは地球温暖化防止の観点でもマイナスだと指摘しました。また、菅義偉官房長官は記者会見で、東京都知事選の争点として2020年東京五輪開催に向けた街づくりや少子高齢化対策などを挙げ、「基本的には自分の生活に身近な問題が争点になるのではないか。国政選挙とは違う」と述べました。東京には原発がないことを念頭に、原発問題は争点になじまないとの認識を示したものです。この発言は、国政問題を都知事選に持ち出さないでくれ、というのが本音でしょうが、むしろ電力の大消費地である東京が、自らは原発も核燃料廃棄場所も持たず、次々に高層マンションを建設して田舎から人を吸い寄せている現状は、電力の安定供給無くして有り得ないのですから、堂々と争点とすべきです。ただ、都知事は原発に対しての権限はないので、これは国政に対する意見を都知事選を利用して唱えようということで、言わば安倍首相が相手の戦いです。原発以外の課題に対して突っ込む気持ちが無いならば降りるべきではないでしょうか。

■三村明夫日本商工会議所会頭=原発が都知事選の争点か?と疑問呈す
 政府の総合資源エネルギー調査会の会長を務めている日本商工会議所の三村明夫会頭は、東京都知事選で脱原発が争点として浮上していることについて「脱原発は単なる願望で現実的なエネルギー政策ではない」と指摘しました。脱原発にともなう自然エネルギー比率をどうするか、コストアップを誰が負担するのか、家計の負担をどう考えるかなど「どういう影響があるのかを提示したうえで脱原発を唱えるべきだ」ということです。すなわち、理念だけで非現実的であり、答えが無いという意味です。そのうえで「東京都知事は(エネルギー政策について)実質的になんの権限も持っていない」と直言し「都知事選の争点とすることが本当に正しいのか」と疑問を呈しました。

■地球温暖化防止の方が喫緊の課題
 脱原発は舛添要一氏や宇都宮健児氏も同じです。というよりも、本来誰もが脱原発を望んでいるでしょう。それが現実的ならば、です。しかし再生可能エネルギーの中で、太陽光や風力は安定しないため、停電しない安定電力にはなり得ません。もちろん出来得る限りのこれら自然エネルギーの発電は行うべきですが、電気代はどうしても高くなります。だからドイツやスペインでは頭打ちになりました。地熱は良いですが、制御が難しい上に、ガスなど危険を伴います。しかも資源のある場所は、噴火の恐れがある場所です。どうしても多数の設置は困難です。水力はダム反対の自然保護派が反対します。結局、化石資源を燃やすしかありません。しかしそれによって空気が汚染され、地球温暖化が進行します。現状を放置したら、人類の未来はそう遠くないうちに破滅に到るでしょう。発電用のエネルギーの脱化石資源というのだったら大賛成ですが、小泉純一郎元首相が言うような「頭の良い人が知恵を出してくれる」というのであれば、「事故を起こさないように原子力を制御します」という答えに結局行き着くでしょう。それもいやなのなら、電気を使わない暮らしに回帰するしかありませんが、使わないのは無理ですから、太陽光発電で貯めた電気で間に合うような超省電力な暮らしでしょうか。しかし電車を動かすのが困難なばかりか、工場が動かなくなるでしょう。

■劇場選挙はやめて下さい
 小泉元首相は、弟分の安倍晋三首相に真っ向から対向する形になりました。共産党や社民党、生活の党と同じ主張ですが、小泉と小沢が共闘するなんて考えられません。脱原発を都知事選挙に持ち出すのならば、新潟や福島や青森に依存してきたこれまでの東京都民の暮らしをどうするのか?お台場にLNG火力発電所をズラリと並べますか?貿易赤字が定着し、経常赤字にすらなる有様でドンドン日本は貧しくなっています。一方で中東湾岸諸国の豊かな暮らし振りは年々派手になっています。チェルノブイリ事故で一時脱原発を志向したウクライナは、ドンドン貧しくなる現実に耐え切れず、再び原発再稼働しました。脱原発のドイツだって、当面は原発に頼るしかないということで、運転しながら徐々に発電の比率を変えて行くという現実路線です。化石資源に頼るのは地球全体に対する悪の行為です。しかも電気代は上がり、工場はますます海外へ出て行くでしょう。脱原発を言うのならば、東京都は自前の電力をどう発電するのかをハッキリ打ち出すべきです。青島幸男は確かに都市博を中止しましたが、他に何もせず都民にソッポを向かれました。単一スローガン選挙に酔って、劇場型選挙が展開された後どうなったか、この事例がハッキリ示しています。2020年東京五輪開催に向けた街づくりや少子高齢化対策、想定される災害対策など具体的課題が東京都には目白押しです。
サア、どうしますか?冷静に、現実的に、考えてみることです。

■小泉ジュニアは舛添要一不支持
 自民党と公明党の各都連は舛添要一支持を決めました。安倍首相と山口代表も会談して、政党色を控える方針を転換し、党内を締め付けて組織戦を展開することに変えました。細川対舛添というよりも、小泉純一郎が出てきたことで、細川護煕・小泉純一郎対舛添要一・安倍晋三の戦いになると踏んで、黒白ハッキリしたワンフレーズ劇場型選挙になって無党派層に流れることを警戒し、党本部を挙げて組織型総力戦を展開することに作戦変更したようです。
 ところが今や自民党の顔とも言うべき小泉進次郎内閣府兼復興政務官は、「一番苦しいときに『自民党の歴史的使命は終わった』と言って出ていった人を応援する大義はない」と批判しました。神奈川県を基盤とするとは言え、小泉進次郎氏に対して菅義偉官房長官は記者会見で「党本部としては東京都連を尊重して(舛添氏を)支援する。できれば応援してほしいな、という思いだ」と述べました。父親の脱原発論に対して「自分は違う」と明言している小泉進次郎氏ですが、だからと言って舛添氏を支援したくないという気持ちでしょう。しかしコトは国政ではなく都政であり、しかも首長を決める選挙です。自民党に適任者が居ないから舛添氏を担ぐと党都連が決めたのですから、大義などというのはそれこそガキっぽい発言ですね。大義もなんも、人材がいないのですから他に選択肢はありません。
 また河野太郎氏など、自民党内には脱原発議員も居り、どこまで締め付けができるのでしょう?安倍首相自らが、明確に河野太郎氏や小泉進次郎氏に、決断を迫るのがリーダーのあるべき姿と思いますが、事が都知事選挙ですから、そこまで踏み込めませんね。結局自民党都連は舛添だけど、自民党本部としては除名した人間を担ぐわけにはいかないということで、河野太郎や小泉進次郎の顔も立つ、メデタシ、メデタシという話です。だけど組織としてはそんな二枚舌みたいなことを許してはいけません。除名したときと今では場面が違うのです。

■民主党も一枚岩にはなれない
 民主党は細川氏を支援する方針ですが、細川氏は公約作りが難航してなかなか出馬表明出来ません。元来東京オリンピック反対を主張してきたことや、東京佐川急便の1億円問題をどう説明するかなど、民主党側と政策協議を進めているようです。野田前首相は全面的に細川氏を応援するそうです。ただ、民主党の支持基盤である連合は、元来小泉純一郎嫌いですから、腰が引けています。郵政民営化で痛めつけられた仕返しをいつかしてやろうと思っていますから、どれだけ支持するか疑問です。また主力労組の電力労連は、脱原発なんてトンデモナイわけですから、絶対細川氏は応援しません。他にも同様な労組があるようです。連合は官公庁および企業組合の連合みたいなところがありますから、昔のような労働者が赤旗押し立ててストライキを行う労組の連合ではありません。どちらかと言えば賃上げしろという安部首相のほうが好き、という人たちです。民主党の中には、一時期自民党と袂を分った舛添要一を支持したい向きもあります。どうやら民主党も一枚岩にはなれそうもありません。
 ネット上のアンケートでは、首相になって1年も持たずに政権を投げ出した細川氏は、腹が痛くなって辞めた首相よりもっと情けない、そんな人に都政は任せられないという意見が大勢です。国民は民主党政権時代の情けない有様に辟易しています。新党ができれば別ですが、終わった党に終わった元政治家が支援されたところで、都民の支持は得られないでしょう。

■安倍首相の自信
 投資家などは、日本経済面から見ると、細川氏は論外ですが、舛添氏も安倍首相とシックリ来るタイプではないと心配し、田母神氏に期待する声が大きいそうです。唯一原発推進ですが、バックが石原慎太郎で、女性票が???です。結局は舛添氏が安倍首相に歩み寄るのでしょうが、そういう姿勢が小泉進次郎氏などには節操が無いと映るのでしょう。しかしながら今安倍首相の支持率が高率のままなのは、間違いなく日本経済に対する舵取りが広い国民から支持されているからです。外交面で不安はありますが、経済面では株価が上がり、景気が良くなることに反対する人はほとんど居ないでしょう。将来本当にインフレになったら、年金生活者などは困るかもしれませんが、今現役でバリバリ働いている人は、あの失われた20年のデフレ生活のほうがイヤなはずです。そもそも経済界に対して賃上げしろという首相などかつて居ませんでした。原発にしても堂々と信を問えば良いのです。貧しくなってもいいから原発はイヤだという縮小志向か、安倍首相のもう一度日本の元気を取り戻そう政策とどっちを取るかと、国民に刃を突き付ければ良いと思います。

■ハルビンに安重根記念館が開館
 朝鮮独立運動家・安重根が1909年、伊藤博文元首相を暗殺した舞台となった中国黒竜江省ハルビン駅の「貴賓待合室」を改造し、2014年1月19日、安重根記念館が開館したそうです。
 これは韓国の朴槿恵大統領が2013年6月に訪中した際、習近平国家主席にハルビン駅での石碑設置を要請したことに応えたものです。以前の中国政府は、いたずらに日本政府を刺激すべきではないとして、対日配慮姿勢をとっていましたが、習近平体制になってからは対日強硬姿勢となり、安倍首相を対中強硬派として批判を続けた中国政府にとって靖国参拝が「決定打」となり、韓国の要請を受け入れ、「記念館」に格上げしたと報道されています。
 1909年10月26日、初代韓国統監の伊藤博文をハルビン駅で暗殺した安重根は、1910年3月26日午前10時、伊藤の月命日と絶命した時刻に合わせて、死刑が執行されました。満30歳でした。安の死から更に5ヶ月後の8月29日に、日韓併合により大韓帝国は消滅しました。
 安はカトリック教徒であり、旅順監獄の典獄(刑務所長)であった栗原貞吉や、看守であった千葉十七と投獄中親しくなったようで、中々の人物だったのではないかと思われます。安の死刑を執行した関東都督府の当時の都督大島義昌は、安倍晋三総理の高祖父(祖父母の祖父)にあたるそうです。安を日本では犯罪者と捉えていますが、韓国では義士として国民の英雄です。北朝鮮はまた違って、安を良く評価していないなど、見るものの立場によって見方は異なるようです。日本の右翼の中には、安は日韓の皇室に敬意を払い、政道を正すために奸臣を取り除こうとしたと言う者も居り、共感を言う者もいるそうです。しかし韓国では親日はタブーであり、安重根は一面的に反日の英雄としか見なされていないようです。
 右の書は安重根が獄中で書いたものです。素晴らしく達筆ですね。
一日不讀書口中生荊棘
         庚戌三月於旅順獄中 大韓國人安重根書
「一日でも書を読まざれば口の中に刺が生じる」という意味です。ここで言う書とは聖書ではないかとも思われます。

 それにしても、最近の週刊誌や月刊誌の中韓攻撃は目に余ります。内容を読んだわけではなく電車の中吊り広告の見出しを見て思うのですが、余りにも攻撃的です。こうした姿勢は不幸しか生みません。
 確かに前回触れたように中国の覇権主義は目に余るところがあり、これは習近平国家主席の軍重視の姿勢から来ているものと思いますし、韓国の朴槿恵大統領が徹底的に安部政権批判を行っているのも問題です。しかし日中韓はもはや経済的には切っても切れません。冷静に、話し合う方向へ転換してもらいたいと考えます。
(2014年1月20日)


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