36  とまと

 10月体育の日の連休は東北、岩手から仙台を回る旅→在京盛岡広域産業人会の旅行について先週は紹介しました。「食の視察旅行」、おいしそうだったでしょう?このとき、岩手県紫波町のこだわりのトマト水耕栽培を行う農業法人銀河農園を視察しました。

■還暦を迎えた日本施設園芸

茨城県某所フルーツトマト
 2011年は農業用塩化ビニルが実用化されてちょうど60年、すなわち日本の施設園芸が還暦を迎えたということです。
 トマトの品種は今、ドンドン増えています。昔のトマトはエグイ味がして、砂糖を付けて食べたりしました。一時期「桃太郎」(タキイ種苗)が、スッキリとした食感で一世を風靡しましたが、今や生食以外に、イタリアンをはじめとするレストラン食材としても大人気です。日本ではトマトというと、「桃太郎」のようにお尻が尖がって、全体的に桃のような丸い形をしたトマトを想定しがちですが、世界で主流のトマトは、饅頭のような平べったい形のものです。
 トマトは年間を通して価格が安定してきたため、生産者にとっても安心な作物になってきました。栽培方式も各種考案され、土耕、水耕があり、単位面積当たりの収量が増加しています。そのため、栽培面積は年々減り、ピーク時の4分の3になり、収量は2割減となっています。品種は違いますが、施設園芸先進国オランダの技術では、日本より3割収量が多いなどと言われていますが、それはトマトの品種が違うのです。日本人が好むような生食のトマトではなく、料理用のトマトなので収量が多いのです。技術的に日本が遅れていることは決してありません。誤解なきよう・・・

埼玉県トキワ研究場「プロジェクトX」

■異常なり日本人

              銀河農園の橋本正成社長
 銀河農園の橋本正成社長は良く話される方で、お客様へのサービス精神に溢れていました。薬剤師で、薬の商売から、本当に体に良いものを作ろうと、このトマトハウス栽培を始めたそうです。トマトはアンデス原産なのでもともと寒冷気候を好むというところから話が始まりました。皆さん、トマトのおいしい季節をご存知ですか?トマトのシュンは夏だと思っている人が多いでしょうが、実は暑い時期から秋はおいしくないんですよ、特に日本独特のフルーツトマトは冬から早春がおいしいんです。ウチは水耕のほかに、土耕でフルーツトマトも作っています。土でトマトを甘くするには徹底的に水をやらず、もうだめだ、と言う頃に少しだけあげる、徹底的にいじめて育てます(これを業界用語で締め栽培と言います。永田農法などです)。トマトの食べ方も日本人は異常なんです。そもそもトマトを生で食べるのは日本人と韓国ぐらいです。外国のトマトはまずくて食べられません。それなのに外国人はトマトをよく食べます。それは加熱するからです。酸っぱいトマトが、加熱すると甘くなります。外国では大量消費しますから、日本のような果物のように甘いトマトは高くて誰も買いません。

■日本人はトマトの消費量が少ない
 さてトマトの日本における消費量は一人当たり年9kg程度で、世界最低レベルです。これは日本人がトマトを生食するためですが、最近はイタメシブームで1997年当時の7kgから若干増えました。しかし海外ではエジプト96.8kg、ギリシャ94.3kg、リビア93.5kg、チュニジア86.4kg、イラン61.1kg、イタリア53.9kg、スペイン46.1kg、アメリカ45.0kgという順です。イスラエル、レバノン、シリア、トルコ、イラク、ポルトガルも多いですよ。実は人口が少な過ぎて統計に入っていませんが、ドバイを首都とするアラブ首長国連邦がナンバー1という話です。政治的あるいは経済的にきな臭い国ばっかりです。
国別の人口1人あたりのトマト摂取量→カゴメのホームページ(FAO(国連食糧農業機関)の2004年統計)
農水省のホームページは2007年統計で、国民一人当たりのトマトの年間消費量は1位がエジプトで、やはり日本人の10倍以上の摂取量です
国別トマト生産量・・・「野菜ナビ」の国別ランキング2011(単位:トン) 1位 China 48,576,853、2位 India 16,826,000、3位 United States 12,624,700、4位 Turkey 11,003,400、5位 Egypt 8,105,260 日本は29位にランクイン、70万トン、なんと中国のわずか70分の1です。

■トマト栽培の適地は寒冷地

                  まだ幼児期のトマト
 もちろんイタリアンにはトマトは欠かせません。地中海沿岸は気候が良いので野菜も果物も生産適地です。ずっと北に行って、面積の狭い国なのに世界の農業先進国オランダは花だけではなく、トマトの生産でも有名です。緯度はサハリンぐらい、北海道より北なのです。それなのにトマトができる?それは、施設栽培であって、温暖な地域では収穫期が決まってますが、施設栽培農業ではエネルギーがかかるものの1年中栽培ができます。
 寒冷気候を好むトマトは本来北海道とか北東北のような寒冷地が栽培に適しています。しかも岩手県紫波町のように日照が多いところでは暖房しなくても日中は太陽だけで十分に暖かい。今30℃ありますが、見てお分かりのように10月でも天窓を開いたりして外気を入れるくらい、太陽エネルギーの恵みは大きいのです。真冬の夜は暖房しますが、これにはマキのボイラーを使っています。油ではありません。ハウスは暖めるのは簡単ですが、冷房を使って冷やすのは電気代がかかってペイしません。しかも暖房にマキなど自然のものを利用して植物を育てますから、化石資源を燃やすのと違って循環サイクルが保てます。すなわち施設栽培農業にとって、北国が適地であるというのはこれでもわかります。熊本まで銀河農園のトマトは売れますし、今や銀座にも出ています。

■オイシイとまとには日光が大切

  苗のうちはこんな根ですよ 後ろはタンクと暖房機
 そしておいしいトマトには日光が必要です。植物工場で人工光が注目されていますが、太陽光にはかないません。このハウスは紫外線カットしています。それは受粉のためにマルハナバチを導入しているからです。トマトは暑い時期に苗を定植して、最初は根も小さいのですが、どんどん根が成長して養分を吸い上げて成長します。1段、2段、3段と葉が開き、花が咲き、結実しますが、今の時期のトマトは、生食ではおいしくありません。もちろん加熱すればおいしいですよ。果実を見ると青いながらも色が薄いでしょう。4段、5段となってくると根がビッシリと生えます。トマトは青いながら色が濃くなり、赤くなっても濃い赤になります。おいしいかどうかは色でも見分けられます。ヘタのところまで赤いのが完熟トマト、そこだけ青いのは青いうちに収穫したトマトで、我々はそういう出荷の仕方はしません。 養液の管理も重要です

収穫するようになるとホラこんなにビッシリ根が

オイシイとまとには水も大切
 いつも立ち位置でトマトを収穫できるように、成長したら下の葉は摘み、上からワイヤで吊って、下の茎はトグロ巻きます。今日は従業員が休みで、日本に勉強に来ているベトナム人の方が作業しています。彼らもトマトは大好きですが、加熱調理します。トマトは1日に何トンもの水を吸います。これを塩素の入った水道水でまかなったら、料金がとんでもないことになります。銀河農園では地下150mの地下水を汲み上げて使っています。年間を通して同じ水温でしかも何十年も前に降った雨が地中浸透して、ミネラルたっぷりの水だからおいしいトマトができるのです。海外販売は?輸送代が高いから、そこまではどうでしょうか?ただ、日本から持ち込んだら、日本の数倍の値段で売れたという話は聞いたことがあります。

橋本正成社長は熱心に説明される
  
銀河農園の飲むトマトは210cc1本¥600

■見せる化セールス
 橋本正成社長は言いました。「日本ではトマトのヘタが無いと商品価値が無いのですが、皆さんヘタをどうしてますか?捨てるでしょう?家庭やレストランでゴミになるものを、何も付けて出荷することはないと思うのですが、何故日本ではヘタが必要なのでしょう?外国のトマトはヘタは無いんですよ」・・・ここでも日本人の異常性がわかりますね。多分日本人の美意識なのでしょう。合理的な外国人から見れば、日本人はヘンなのです。
 最後にカゴメのトマトジュースと飲み比べさせて、さあ、どうだ!憎いですねぇ〜、誰しも銀河農園のほうを選ぶでしょう。こういう「見せて」、「いわれ、由来を説明して」、「試食させて」納得の上で売る、これは「見せる化セールス」ですね。今の時代に適合した売り方だと思います。
 トマトジュースはアミノ酸が豊富なので、例えば味噌汁などに少し加えるとまるでホタテ汁のように魚介類の味がするそうです。

■キュウリの現状はどうか?
 キュウリは1965年の栽培面積が34,500ha、収穫量77万t、これが2008年にはそれぞれ12,500ha、63万tで、作付面積は今も年々1〜2%ずつ減り続けています。43年間で栽培面積が3分の1になったのに、収量は2割減、すなわち面積だけで見れば効率が倍以上になっているということです。またキュウリも年間を通して価格が安定してきた作物で、これはイチゴ、ピーマン、パプリカ、みょうが、もやし、キノコなどにも言えることですが、共通しているのは、露地栽培ではなく施設栽培が主ということです。最近では花やレタスなどにもこの傾向が現れてきています。
 トマトもキュウリも収穫量が減っている?日本人が好きな野菜なのに何故?実は消費量は減っておらず、加工品として主として中国、韓国からの輸入が増えているためと思われます。

■効率向上する日本農業、減反政策廃止を
 このように日本は科学技術の国というだけでなく、農業技術の面でも先進的な国なのです。とかく日本の農業はピンチだ、と言われますが、それは就業人口が激減していることや、お父さんは会社に行っておじいちゃん、おばあちゃん、お母ちゃんで米作りと言った3ちゃん農業、食料自給率の低迷などをとらえて言われているようです。確かに減反政策で遊休耕作地は増えました。しかし、昔は見られなかったようなビニールハウスなどが、今や日本全国どこに行ってもあります。米にしても諸物価に比べコメはむしろ安くなっているのではありませんか?それは米作の効率化が進み、生産原価を下げているからです。就業人口が激減しているのに生産高は増えている、トマトやキュウリの栽培面積が大きく減ったのに収量は少ししか減らない、ものすごい農業革新が起きているのです。政府はこの10年間で減反政策を廃止する意向のようですが、経済原則から言えば生産させないために金を出すというのは絶対的に間違っています。反対に臆せず、早くやめるべきです。

■日本に学んで発展した韓国
 お隣の韓国は、日本に学べ、ということで、政府の手厚い庇護のもと、日本に視察に来て勉強し、今や栽培施設面積は日本を越え、1戸当たりの栽培面積は3倍以上になりました。韓国は、欧米はじめ各国とFTA、EPA契約を締結していますが、TPPについては参加見送りの方向です。それに伴い韓国農業は過去の補助金漬けからの脱皮を迫られ、またもや日本視察に来て、産地直送、産地直売施設や農商工連携、6次産業化、インターネット直販などのシステムを見学・調査しています。たとえばパプリカなどは国内消費しないのでほぼ全量が日本向け、切り花の薔薇などは、圧倒的に韓国のハウスから日本に届けられています。価格面で日本の農家はかなわない、それは植物工場化した韓国のコストが安いからです。ただし、中国や韓国への野菜や花の種子は、日本から輸出されています。日本では小玉スイカの種を購入して、大玉スイカができた、なんて有り得ませんが、海外ではそんなこと日常茶飯事なのです。だからサカタのタネ、タキイ種苗、カネコ種苗などの種が人気あるのです。

■業務用加工食材として輸入増加
 スーパーなどで中国産の野菜などは以前ほど見かけなくなりました。食肉や魚などは海外産が多く、たとえば牛肉はオージービーフ、豚肉はアメリカ、鶏肉はブラジルが多いようです。魚はチリのトラウトや銀鮭、ペルーのヒラメ、モロッコのタコ、アメリカのタラ、紅鮭、ロシアのカニ、紅鮭、ノルウェーの鮭、サバ、ベトナムやインドネシアのエビ、台湾や韓国のマグロなど、はるかかなたの国からも日本に来ています。近年は特に中国からの魚介類輸入が急増しています。なにしろ日本は世界の魚介類貿易の4分の1の輸入量を占める国なのです。それに比べて生鮮野菜はほとんど国内産、ということで、消費者は「野菜は国産だから安心」と思っているかもしれません。ところが農産物の輸入は増加しているのです。日本人は昔に比べて外食が増えています。なおかつずっとデフレが続いてきました。したがって食材のコストを抑えなければなりません。トマトやキュウリなどは昔に比べれば高値安定というところですが、加工食品の形で『業務用』として日本に入ってきています。たとえばパスタソース、キュウリの古漬けのような形です。保存の効く漬物など、保存料や着色料にまみれたものが中国から大量に輸入されているのです。キュウリの古漬けが日本で売られている生のキュウリより安いのを疑問に思ったことはありませんか?加工品が原材料より安いなんて経済原則からは考えられません。中国産のキュウリだからそうなるのです。簡単に言えば牛丼屋さんや回転寿司、最近流行りの安い居酒屋といった店が使う食材は、米を除いて間違いなく輸入食材と思って良いでしょう。紅ショウガなどは当然です。

■農業とTPPの議論
 このように食材輸入が増えているときに、TPPに参加するとどうなるか?TPPを簡単に説明すると、太平洋周辺の広い地域の国、例えば日本、東南アジア諸国、オセアニア諸国、北米、南米などが参加して、自由貿易圏を作ろうという構想で、シンガポールの提唱で始まりました。中国や韓国は参加見送りの方向で、それはTPPが単に貿易だけの問題ではないと判断しているためです。TPPに対しては、経団連など経済界は歓迎、農業団体や消費者団体は反対、野党の中でも議論が分かれていて、大マスコミはこぞって賛成の方向です。ただ、TPP賛成か、反対か、とデジタル的な議論をするのは間違っています。TPPは貿易だけの問題ではなく、文化的側面に影響を与えますから、TPP賛成か、反対か、というのは暴論と言って良いでしょう。TPPは個別項目で細かく是非を検討しなければならず、市場経済に委ねて良いもの、悪いものがあります。たとえばTPPの対象にコメを入れるのは間違っています。ごはんは和食の要であり、日本人の主食です。これを海外に委ねたら、食糧安保の面で、日本は首根っこをつかまれたも同然です。戦後しばらく、今と違って農家が一番でした。食糧を持っているからです。買出しという話を良く母から聞かされました。今コメ以外はほぼ輸入ですから、コメだけ守ってもムダという話も良く聞きます。それもそうですね。しかしコメは他の食糧と違い、カロリー豊富で栄養価も高い、これだけでも十分に生きられる貴重な食糧なのです。ただし、粒の米を守っても、米を粉にして、それに甘味料を加えたような加工品になると関税は別で、そういうものは大量に日本に入ってきています。

■利益が出ないものは作らない
 日本は世界トップクラスの自由貿易主義の国で、特にアメリカとの間では実質的にEPA状態にあります。過去コメだけ例外にして、小麦、大豆、とうもろこし、蕎麦などは国産を諦めました。牛豚鶏の飼料もほぼ全量輸入です。だから鶏卵は国産でも食糧自給率から見るとカウントされないのです。私たちが食べている蕎麦もうどんもラーメンもパンも饅頭も団子もスナック菓子も納豆も豆腐もほぼ外国産原料です。和食が世界遺産になるそうですが、見た目はともかく材料は生鮮野菜以外皆輸入と言って良いでしょう。その結果パン、うどん、日本そば、ラーメン、焼きそば、お好み焼きなど、ご飯以外へのシフトによってコメの消費は半減しました。生産効率化によってコメの国際価格に日本の米価はだいぶ近付きましたが、それでもまだ数倍です。すでに米作り農家は大規模農家でさえビジネスにならなくなってきています。TPPでコメの関税を廃止したら、日本のコメ作りは一気に減少し、美しい田園風景は失われて行くでしょう。農水省試算では食糧自給率が15%になるそうです。おいしい日本のコメを消費者は見放さないという人もいますが、それは現実を知らない人です。いくら消費者が買いたくても、利益が出ないものに生産者がやる気を持続するはずがありません。

■落花生とピーナッツ
 落花生を見れば一目瞭然です。中国産の安値ピーナッツが市場を席巻し、昔のおいしい落花生はほとんど手に入らなくなって、千葉・茨城産のおいしい落花生は、すごく高いお金を払わなければ口にすることができなくなりました。中国産の殻付きピーナッツは、国内産に比べて殻の色艶が良いのですが中味の豆は甘みがありません。殻は捨てるので、見た目は本来関係ありませんが、きれいで安いのは確かです。稀少となった国産落花生は高価になり、そんなお金を払うのなら、アーモンドやピスタチオのほうが良いので消費者は買わない、生産者は売れないものは作らない、悪循環で国産落花生は急速に衰退しました。今の子供たちにとってのピーナッツは全然おいしくない豆です。落花生を知らない子供たちなのです。

■野菜とコメは別物、同じレベルで論じられない
 野菜農家はどうでしょう?いろいろな意見の人がいますが、野菜は主食ではありません。果物もそうです。国際競争に勝てる農業をめざすしかない!とすれば、農業経営の効率化、コストダウン、品質向上を図って行くしかない、ということで、実際韓国から視察団がやってくるように、日本野菜農業は先進的です。しかも関税は高くないので、韓国から見れば日本市場は大事なお客様です。コメと野菜の大きな違いは、コメが日持ちのするもので、米国、南米、オーストラリアといった遠い国でも品質問題や輸送コストの問題が無い(船でゆっくり運んでも良い)ということです。しかもカリフォルニア米などは試食すれば分かりますが、熱いうちは十分においしいコメです。十分おいしくて値段が数分の1ですから競争になりません。日本の田園は保水の面、野生動物の棲家、それを狙う野鳥などにとって大事なものです。もちろん田んぼが無くなって雑木林になれば、昔がそうだったように別の生態系が生まれるでしょう。しかし現代日本の原風景に田園は欠かせないと私は思いますが、皆さんはいかがでしょうか?

■進みつつある米作の構造改革
 だからといって零細なコメ作り農家を守れと言っているわけではありません。前述のごとく、減反政策を早く廃止すべきです。今や3ちゃん農業は死語です。おじいちゃんもおばあちゃんも亡くなったり要介護で、農業から離れ、お母ちゃんはおばあちゃんになり、お父さんは定年になり年金生活です。でも田んぼがあるから70過ぎても農業をやっている、しかし大農協はそのような農家の土地を集約し、水田を大規模化し、効率的な米作を行うので、農家はもはや軽トラすら不要になってきています。着々と構造改革は進みつつあります。こうした改革・改善を行うところと行わないところは明確に区別されざるを得ないでしょう。では山古志や更級・姨捨の棚田はどうするか、それは観光のためにお金を出して維持するほかないし、そのためのボランティア活動などで守られて行くのではないでしょうか。ただ、ボランティアも限界があります。棚田を耕す方は皆老人です。若者に期待するのは酷というものです。どんなに構造改革をやっても、日本の国土での米作は、米国の広大な土地での米作の原価にはかないません。だからコメ作りを続けさせようとすれば関税をかけるか、補償金が必要です。一旦米作をやめた田んぼがどうなるか、知らない人は米作り農家の人に聞いてください。

■野菜や果物は
 野菜は外国の遠隔地は輸入にしても輸出にしてもハンデがあります。品質に厳しい日本人は、外国から見ると「非関税障壁」だと言われることがあるように、外国人から見ると、ヘンな国なのです。トマトのヘタひとつとってもそうですよね?逆に日本の野菜は日本より西方の国々への輸出品としての可能性すらあります。すなわち、工業製品などは自由貿易を推進すべきですが、主食であるコメは例外品目とし、その他農産品はTPPのような一括交渉ではなく、韓国のようにFTAやEPAにより国対国の個別折衝により時間をかけて進めて行くべきものと思います。

※言葉の意味
FTA・・・「自由貿易協定(Free Trade Agreement)」特定の国や地域との間でかかる関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を自由に行えるようにする取り決め。例外規定があり、段階的実施も決められる
EPA・・・「経済連携協定(Economic Partnership Agreement)」物流のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間での親密な関係強化を目指す協定。FTAより範囲が広いと思えば良い
TPP・・・「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans Pacific Partnership)」2006年5月に環太平洋地域における経済連携協定としてシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟でスタートした。物流のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携であるが、貿易関税などに例外を認めないで関税の撤廃を目指す協定。問答無用なので慎重な対応が必要で、中国や韓国は参加見送り

■特定秘密保護法案
 特定秘密保護法案に対して、マスコミが一斉に猛反発してますね。国民は何のこっちゃ?という感じです。何で今こんなものが出てくるの?といぶかしげな人も多いようです。先般亡くなられた山崎豊子さんなら猛反対したでしょう。この法案に関連して話題になるのが西山事件です。元毎日新聞記者西山太吉氏がスクープした記事の取材が国家公務員法違反に問われた事件で、その後有罪が確定しました。ところが後になってこのスクープが事実であったことが米国の公文書館の情報公開によって明らかとなりました。それでも日本政府は否定し続けましたが、民主党政権に代わって、佐藤元総理の私邸から覚書文書が発見され、外務省も一転認めたというものです。当時の検察は苦労して有罪化にこぎ着けましたが、これ以降大手新聞は政治スクープを自重するようになりました。このあたりはつぶやき477『運命の人』(2012年3月4日)を参照下さい。国会での政府答弁によりますと、西山事件のような国家機密を漏洩した、または盗んだものを罰する法案だそうです。何か、欧米の政府の動きと180度逆の方向ですが、これで良いのでしょうか?
(2013年10月28日)


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