33  住み良いところ

 東洋経済に載っていた日本各地の住み良さランキング2013年版です。都市の「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」「住居水準充実度」の5つの観点からそれぞれ平均値との偏差値を算出し、その単純平均を総合評価としてランキングしたものです。2012年の「住みよさランキング」総合評価1位は千葉県印西市、2位が石川県野々市市、3位が茨城県守谷市、4位が福井県坂井市となりました。
 1位の千葉県印西市は1996年3月に市制施行して誕生した比較的新しい市で、80年代半ばからの北総線延伸とともに千葉ニュータウン区域が拡大、今もなお人口流入が続いている典型的なベッドタウンです。人口増加と幹線道路などの整備に伴い大型商業施設が相次いで開業し、また地盤の堅さから金融機関の事務センターも多数立地しており、人口当たりの税収も高く、持ち家比率も都心近郊の都市としては高水準です。ただ、千葉県北西部周辺は人口当たりの病床数、高齢者人口当たりの介護施設定員では全国平均以下という水準であり、ドクターヘリを日本で初めて常駐させた日本医科大学千葉北総病院が立地しているものの、「安心度」では633位と下位に位置しています。
 野々市市は金沢市のベッドタウンとして都市化が進み、人口は増加傾向が続き、市制施行前には、全国の町村としては3番目に人口が多かった町です。市内に石川県立大学、金沢工業大学があることもあり、20歳代(特に男性)の比率が飛び抜けて高い街です。
 守谷市は2005年の「つくばエクスプレス(TX)」開業で東京都心からのアクセスが飛躍的に向上し、人口の流入、商業施設などの開業に拍車がかかりました。福井県坂井市は福井市の通勤圏のベッドタウンです。


■豊かな日本中央部とその理由
 全体を眺めて感じるのは、@都市近郊のベッドタウンが多いA北陸3県(福井県、石川県、富山県)とその南の岐阜県、愛知県が多いという2点です。
 後者を考えるときに、豊かな県のランキングでも北陸3県が日本のトップだということを思い出します。世帯収入が高く、住宅の広さも広いのです。雪も多く、交通も至便とは言えないところ、確かに冬の魚はおいしいけれど、なぜでしょう?東京と大阪の間の、いわゆる日本のど真ん中が一番住み良いのです。東京、神奈川、埼玉などは世帯収入は高いものの家は狭く、文化的施設や医療でも恵まれていません。北陸3県は、地理的な要因で1次、2次、3次産業がほどよくバランスしている結果、共稼ぎが多く失業者も少なく、保育施設も文化施設も多く、教育レベルも高い、収入が多い上に土地も高くないので広い家に住み、自動車もたくさん保有しているわけです。

■電源三法交付金
 もうひとつは原発です。これの建設を進めるため、電力会社から税として集めた電気料金の一部を、国が原発などの周辺自治体に配分します。交付対象は原子力関係では原発以外に、再処理工場やウラン濃縮工場なども「発電に不可欠な施設」として含まれます。電源三法は、1974年に制定された「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」を総称するもので、これは立地地域に発電所の利益が十分還元されるようにする制度です。これによって、発電所立地にともない、立地地域に振興効果がもたらされてきています。この地域の豊かさは原発のお蔭でもあります。


■東京の住み良さ、地震の怖さ
 下の左図は、前々回(31)紹介した、東京都が5年に1度「地震に関する地域危険度測定調査」を行い、発表した結果です。東京23区において建物倒壊・火災危険度・災害時活動困難度を考慮した総合危険度が5段階中4、5にあたる地域を「危険度の高い地域」とし、色・パターン別に地図上に示しています。右の図は、同じデータをもとに、新聞社が作成した地図です。こちらのほうが刺激的です。危険度が最も高い「ランク5」は84地域で▽足立▽荒川▽墨田の3区で6割以上を占めること、そして最後に次のように結びました。「皇居がある千代田区の安全性はさすがですね。荒川、隅田川流域が最も怖いのに対し、東京湾の埋立地が安全というのは意外でした。中央区、港区、渋谷区、新宿区、世田谷区、板橋区などはほぼ安全で、区部では練馬区が危険度が最も低いようです。怖い地域に住んでいるからと言って引っ越すというわけにはなかなか行かないでしょう。ココから先は自己責任です」。
 東京区部は人口増大しています。それだけ危険度が増しています。それでも便利なほうが良いよ、1000年に1度の地震はもう来ないし、関東大震災級も生きているうちは来ねえってんだから、いいじゃあねえか・・・と、江戸っ子流に言われてみれば、それもそうだと思います。
(2013年10月6日)


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