24  ILC

 国際リニアコライダー(ILC:International Linear Collider)は、巨大な線形電子・陽電子衝突加速器です。これ以上の設備は当分作られないだろうと言われています。世界中の研究者が実現に向かい努力しています。完成すると、質量の起源を明らかにし、3次元を超える空間「余剰次元」を見つけ出し、さらには、宇宙の4分の1を占める謎の物質「ダークマター」の正体を突き止めることも夢ではなくなります。ILCはこれまでの宇宙像を塗り替える底力を秘めた加速器なのです。
 地下100mの活断層の無い強固な岩盤をくり貫いて約30キロメートルの直線トンネルの中に加速器を構築し、高速に加速した電子と陽電子を衝突させ、ビッグバン直後(約1兆分の1秒)に匹敵する高エネルギー状態を再現することを目的とします。超対称性理論の検証、暗黒物質の同定、初期宇宙の解明などが期待されています。日本では高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中心にILCの日本誘致を進めています。

■日本再生の起爆剤
 ILCの日本での誘致候補地が今月ぐらいにも一本化されると言われています。ワクワクしますね。候補地が決まったら、政府は早急に誘致へ向けた取り組みを強化すべきです。借金地獄の日本ではやるべきでない、とか反対も多いですが、シュリンクした日本に夢をもたらすことが日本再生の数少ない手段です。保守的なヤカラの主張を打破し、再びニッポンに夢を!


信州大学のHPから 次世代ILCのイメージ図。2トンネル案、右が電子と陽電子加速トンネル、左は加速用電磁波生成装置と電源装置が入る

■成果を挙げる円形加速器LHC
 何故今ILCなのでしょうか?スイス・ジュネーブ郊外の「大型ハドロン衝突型加速器」(LHC)を運用する欧州原子核研究所(CERN)は昨年7月、「ヒッグス粒子発見」という大成果を挙げました。LHCは、円形の地下トンネル内に設置した加速器で、陽子同士の衝突実験施設です。円周は27kmあり、山手線1周(34km)よりわずかに小さい巨大な施設です。運営機関であるCERNには2300人の専従スタッフが勤務し、欧州、米国、日本など50カ国以上から年間1万人以上の外部研究者が研究に参加しています。このうち3分の1は長期滞在者で、ジュネーブやサン・ジュニ・プイイ(フランス)など周辺の街で生活しています。しかし、更に大きな成果を挙げるには、より高性能の直線型すなわちILCが必要で、これが完成した暁には、ノーベル賞級の大発見が相次ぐ公算が大きいと言われています。

■ILCは脊振山地か北上山地か
 ILCに関して世界各国の物理学者による技術設計は2012年12月に完了しました。次の焦点は建設地で、米シカゴ、スイス・ジュネーブ、ロシア・ドゥブナのほか、日本から脊振(せふり)山地(福岡県・佐賀県)、北上山地(岩手県・宮城県)の5カ所が候補に上がっています。ただ10年間で約8千億円と試算される建設費の半額をホスト国が負担しなければならないため、誘致に積極的なのは現時点で日本だけです。
 脊振も北上も花崗岩の強固で安定した岩盤です。九州は空港へのアクセスの良さや大学・研究機関の集積などの受け入れ基盤の充実を売り込み、東北は地元経済界が大震災からの復興のシンボルにとアピールしています。建設に必要な人員は約6500人、完成後は約3000人の研究者とその家族が居住するため、彼らが生み出す経済波及効果を両地域とも期待しているのです。


本日は少年野球の合宿中…埼玉県の槻川

■ILC候補地は研究者が決める
 ILC候補地は、研究者で組織する「ILC評価委員会議」が今月にも決定する見込みです。東北経済連合会の高橋宏明会長は「東北に決まれば新たな産業の集積が進む」と期待感を示しています。ただ「どちらがいいかは専門的な判断が基本で、政治的な圧力で結果がおかしくなっては困る」と語り、候補地選定には地質や地形などの調査結果に基づいた公正なジャッジが不可欠とも釘を刺しました。「政治的」という意味は、北上山地は小沢一郎の地元で、脊振山地は麻生副総理の地元、戊辰戦争の官軍の脊振山地、徳川に忠誠を尽くして敗れた伊達、南部の賊軍が北上山地、戦いの歴史から言えば西軍の勝ちですね。
 今日本が世界で最もリードしているのは高エネルギー物理学部門、ノーベル賞学者がズラリと揃っています。その研究者たちから見て、どちらが良いのでしょうか。世界中から集まる研究者達から見れば、筑波や東京から近く、冷涼な気候の北上山地が望まれるような気がします。

■決まり次第迅速に着手を
 候補地が一本化されたら、政府は早急に誘致へ向けた政府間交渉に着手すべきです。同時に省庁横断的なチームを作り、施設の整備だけでなく、世界中から集まる研究者・技術者が安心して暮らせる住居・教育・交通などの環境整備を図ってください。国だけでなく民間の資金やノウハウを取り込む仕組みづくりも必要です。

■多方面の波及効果
 誘致が実現すれば、アジア初の大型国際研究所に世界中から優秀な頭脳が日本に集まり国内人材の育成につながります。研究者や技術者とその家族1万人が集まる国際都市ができるので多様性を取り込むこともできます。ILCは最先端技術の結晶ですから環境・エネルギーなど幅広い分野に応用できますし、技術力を誇る日本の中小企業も協力できるでしょう。経済再生には成長が必要です。国を開き、世界中からヒト、モノ、カネを集める国づくりが今こそ求められているのです。

信州大学のHPから ILCは直線30kmで、地下に設置されると考えられるので、想像した図

■社会支える「オープンデータ」
 2013年6月に英国で開催された主要8カ国首脳会議(G8サミット)において「オープンデータ憲章」が合意に達し、首脳宣言に盛り込まれました。「オープンデータ」とは言葉通りデータを公開することです。自然科学の分野では目新しいものではありません。研究ライバルには実験・観測データを隠すという古い姿勢を反省し、科学の「オープン・アクセス」という考え方が生まれたのは1950年代後半で、1990年に始まったヒトゲノム計画でデータの公開を原則としたことで研究が加速し、予定の大幅な前倒しができました。
 今話題になっている「オープンデータ」は、この考え方を行政や、ひいては社会全体にあてはめようというものです。政府の持つデータは国民の税金で作られた一種の公共資源であり、広く公開した方が多様に有効利用され、国全体にとってもメリットが大きいと、米国や英国は2009年に政府の諸機関の持つデータを集めた閲覧サイトを設けました。米国では自治体も積極的で、ニューヨーク市が最も進んでいると言われています。
 オバマ政権が「オープンデータにより、新しい企業が生まれて、ジョブが増えている」と述べる通り、各種統計データを組み合わせた新たな保険とか、大量のデータから飛行機の遅れ時間を推定してビジネスの無駄が減るなど、さまざまな経済効果が出始めているそうです。また、データを公開するだけで利用アプリを誰かが作ってくれる、しかも多様で出来が良い、というのは自治体にとって予算をかけないで行政サービスが向上できたということでもあります。
 これらの成果を見て、行政データを電子化している先進国は英米を追い、多くの国でオープン化が進んでいます。特にフランスなど、開始は2011年末と遅かったものの、すでに35万件以上公開と、追い抜く勢いです。さあ、ニッポンは?

■JR北海道は大変だ

 JR北海道の列車で発煙や発火が相次ぎ、JR東日本に技術支援を要請する異例の事態になっています。今年起きた発煙・発火トラブルの大半は、電気ではなくディーゼルエンジンで走行する列車で起きました。ディーゼルの特急は半数近くが製造から20年以上経過して老朽化が目立ちます。こうした車両のメンテナンスを難しくさせている要因の一つが、中核として期待される40代の社員が極端に少ないという同社の年齢構成で、民営化後の数年間で人材採用を大幅に抑制したため、40代は最も多い50代の5分の1程度だそうです。技術伝承がスムーズに進まないことなどから、エンジンの分解など一部のメンテナンス工程は外注に頼っているそうです。これは他の会社でも有り得ることで、人員構成の歪是正は重要です。


■韓国登山者4名アルプスで遭難死

 長野県の中央アルプス檜尾岳(2728m)付近で7月29日に発生した韓国人ツアー登山客の遭難事故、宝剣岳(2931m)山頂付近の崖下で死亡した62歳の男性のほかの3人は、バラバラに尾根道で低体温症で死亡し、いずれも70代でした。ツアーには40代から70代の計20人が参加し、16人は無事に下山しました。20人は空木岳(2864m)近くの山荘から宝剣岳の山荘までの道中、悪天候で散り散りになったそうですが、筆者のような単独行の登山者はともかく、「バラバラに尾根道で低体温症で死亡」というのが信じられません。滑落したら年齢に関係なくヤバイですが、夏山で低体温症で死亡するのは服装が悪かったということです。尾根道の雨は下から吹き上げてくるので、ヤッケみたいなものだと裾から入ってくるので、縛れるものを着ます。また疲れて動けない人が出たら、屈強な人が付き添って体を添わせて、低体温症にならないようにして、別の人が近くの山小屋か麓に下山して救助を要請します。バラバラというのは置き去りにしたということ、いかにツアーとは言え、登山家でしょう、信じられません。


津軽黒石ねぷた


■置き去り

 韓国での報道では、悪天候だと韓国なら止めるとのこと、日本だって山小屋の人は下山を勧めたそうです。しかし強制はできないので、後は自己責任です。ましてやわざわざ韓国からツアーで来たら、山小屋に留まったり、下山する選択肢は無かったのでしょう。登山ツアーの責任者というのは、このあたりをしっかりしないといけません。置き去りなんて言語道断です。ところで韓国の登山者はプチトマトをプラパックに入れて登るそうです。これは良いことです。日本人は梅干や氷砂糖を持ちます。疲労回復や塩分補給に即効性のものですね。
 今は亡き父から聞いたフィリピンでの戦争末期の逃避行を思い出しました。最初は穴を掘って棒を刺し、墓代わりにしたが、最後は気力も体力も無くなって、路端で倒れた兵士をそのままにして逃げ続けたと言う話、1%の生き残りの父の驚きの生命力が無ければ、私はこの世に存在しませんでした。セミの鳴き声がうるさい今の時期になると、思い出します。
 9年前のつぶやき・・・82『戦争の記憶』(2004年8月1日)参照ください


この季節を彩る蓮の花

(2013年8月4日)


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