270  林業


杉花粉拡大写真

 今年のスギ花粉飛散は多い。昨年で花粉症克服したと思っていたが、甘かった。「花粉は無害」の念仏で自己教育しているが、暖かくなってきて戦いの本番はこれからだ。負けるものか!
  ♪春の嵐が 来る前に♪
  ♪暖かい風が 吹く前に♪
  ♪重いコートを脱ぎ捨てなければ♪
  ♪歩けないような そんな気がして♪

大好きなアリスの秋止符である。重い革ジャンを脱いだら、肩が軽くなった。


愛用の革ジャン


■花粉症対策はセルフケア

 スギ花粉は写真のようにクアイのような可愛い形をしている。ななめのつぶやきbX「アレルギーが増えたのは何故?」(2003年3月8日)で触れたように、本来無害のスギ花粉に対してどうしてヒスタミンが出るのか?流行に遅れまいとする感受性の高い人が罹患すると言われているが、日本人の罹患率は20%未満らしい。自然治癒率は1〜2割、3シーズン連続して症状が出なくなれば治ったと言えるのだそうだ。患者は30〜50歳代が多く、杉の少ない北海道や杉の無い沖縄では患者がほとんどいないそうだ。将来は沖縄に行くべきだな。昔は患者が少なかったのに今増えたのは自動車等による大気汚染との複合要因ではないかとか、食生活の変化で抵抗力が減ったためではないかなど、諸説ある。対策はメディカルケアとセルフケアがあり、筆者はマスク、発酵食品(お酒、ヨーグルト、納豆)と念仏でセルフケアしているが、黒酢が有用だという人もいる。

■1次産業衰退が花粉症に追い風
 もうひとつ見逃せないのは、戦後植林が進んだ杉の人工林が放置されていることだ。「切ってくれ」という悲鳴が多くても、肝心の林業の衰退で杉林は減らないのである。このつぶやきでは、かつて農業も林業も水産業も衰退の一途を辿り、山が荒れて、きれいな水が減って、沿岸漁業が衰えたことを指摘した。やはり山を守り、田圃を守ることが海へ流れ込む水を守り、沿岸漁業を守るのである。この3つの1次産業従事者の激減がじわりじわりと日本の国土を蝕み、野生動物を死に追いやり、我々の食生活を脅かしている。中国食材の問題で、「もう中国産食品は食べない」という人がいるだろうが、それならば外食は止めて、すべて国産の食材であることを確認しておかずを作り、弁当持参としなければならない。筆者もその派だが、スーパーに行って冷凍食品の表示を見ると、中国産を排除するのは困難だ。弁当惣菜は家庭の主婦にとって概ね冷凍食品だったはずだが、いやならその利用はやめるしかない。元々我が家では冷凍食品を買わないが、インスタント食品は間違いなく中国産が入っていると言われている。さらに価格の問題、国産だけで食生活を送ろうとすれば相当エンゲル係数が高くなるはずだ。エンゲル係数って何?そうだろうね、今や死語だもの(^_^) こういう中国食材問題で日本農業に追い風?事情を知らない人はそう言うかもしれないが、そういうものではない。作り手は減り、しかも高齢化して、作りたくても作れない。

■林業衰退・・・日本人は熱帯雨林の破壊者
 話を戻して何故杉が伐採されないのか?日本国土の中で森林の占める割合は67%、すなわち3分の2は森林だ。なんと緑に溢れた国土か、中国から見たらうらやましい限りだろう。その中で人工林は40%、その内80%が放置人工林だ。人工林は人間が手を入れ続けないと持続できない。伐採、下草刈り、間伐、枝打ち、筆者は子供の頃父の後を追って急峻な斜面で山仕事をしていたのでこのあたりは詳しい。こういう山仕事は、部落の人たちが共同作業で行っていた。みんなでやれば辛くないのである。今日本の木材自給率は20%、すなわち安い輸入木材に80%を依存している。国産木材価格は昭和40年に比べ3割ダウン、人件費は5、6倍になっているから、切って山麓の製材所へ持ってくるだけで海外の天然木材を輸入するより高い。日本人は知らないうちに野生象などが棲む熱帯雨林を破壊しているのだ。したがって林業従事者は激減し、高齢化が進んで、農業同様担い手は少ない。

■プレカットで大工さんの労賃低下、シックハウス症候群発生
 国産杉は高いのか?いや、フィンランドから輸入された木材より単価は安いのだが、輸入材は工場で接着剤によりホワイトウッド集成材にしたものだ。ムクの杉は安いが、集成材にすると輸入材の方が安い。昔のように伐採した木を製材して乾燥した木材など今のハウスメーカーは使わない。コンピューターで設計図から部材の一つひとつが図面化され、工場内の機械でプレカットして、人工乾燥し、組み立てるだけの柱にして出荷する。このためには、自然材ではだめ、完全な平面を持つ集成材の柱でないとできない。この建て方によって、昔気質の熟練した大工さんがいらなくなって人件費は大幅カット(大工さんの労賃を見れば一目瞭然)、昔であれば坪単価60万円の家が何と坪単価29万円などという価格破壊が起きた。しかし強度を増す接着剤を使うため、シックハウス症候群が起きるようになった。これも花粉症同様のアレルギーである。

■ウッドマイレージ
 コスト優先主義の日本では日本林業の再生は困難だ。海外から運んでくる運輸などCO2換算でコスト以上に環境問題がクローズアップされるなど、価値観の転換が無ければ難しい。花粉症対策は相当長引きそうだ。

■原材料価格高騰・円高・株安で日本企業真っ青
 昨週は原料価格高騰を書いたが、米国発の嵐は凄まじい。為替も株も乱高下、日本経済は大海の大波に揺れる船のような有様で、先行き見通しが不透明なため設備投資は先延ばし、賃上げも抑制、米国依存型経済の悲しさだ。BRICsを相手にしている企業はまだ良いが、大半の日本企業は決算を控えて円高・株安で真っ青というのが真実だ。今週ついに1ドル=98円台に突入、原油先物WTIは1バレル110ドルを突破、急激な円高進行は輸出企業の収益を圧迫するため忌み嫌われているが、過去に比べて輸出先が米国1位ではないだけに経済界から悲鳴の大合唱は聞こえない。以前なら輸入材料価格が下がるので電力、ガス、鉄鋼、石油などの業界は助かったが、今は原材料価格自体が上がっているので焼け石に水、むしろ為替が正常に戻ったときの怖さを考えて固唾を飲んでいるというところだろう。経済界が大混乱に陥らないのは米国ドルの独歩安だからである。日銀もこの4年間為替介入をせず、全く動かないというか、次期総裁選びの混乱で動けないので、投機筋がドル売り円買いやり放題。

■1995年を思い出す・・・阪神淡路大震災、地下鉄サリン、円高暴走特急
 現在の状況で思い出すのは1995年だ。この年は超ド級のスピードで円高が進行し、あれよあれよという間に1ドル=79円75銭という史上最高値をマークした。戦後50年にあたるこの年は、1月17日に阪神淡路大震災。続く3月20日には日本全土を震撼させた地下鉄サリン事件、いやな年だった。それまで概ね1ドル=100円前後にあった円が急伸し、一部の企業では「従業員へのボーナスを自社製品で現物支給」などということもあった。前年のメキシコ通貨危機の影響が周辺国に波及、ドルから円やマルクへ乗り換える動きが加速し、これに乗じて一儲けしようという投機筋が加わって、日本円はノンストップの暴走特急!それまであまり知られていなかった「ヘッジファンド」という言葉が頻繁にマスコミに登場するようになったのもこの頃だ。悪夢のような円高、特に3月・4月の伸びは凄まじく、ついに4月19日に79円75銭を記録!輸出国家ニッポン、一体どうなる!?の大騒ぎ、その当日に日銀は1.75%だった公定歩合を1.00%へ引き下げて、これが奏功したか、再三にわたる介入の成果か、円高は徐々に沈静し、夏からは完全な円安トレンドに反転、0.50%へ更に公定歩合が引き下げられた9月には早くも100円台を回復。この後、為替はほぼ一貫して円安に推移、3年後の1998年8月には1ドル=147円台を記録した。この1995年は、東京・青島幸男、大阪・横山ノックとタレント知事が当選した年だ。この年の日経平均株価は一番の安値が1万4400円台・・・。こんなに波乱に満ちた13年前の株価に、今現在の株価が負けてるとは!頑張れニッポン!

■オリンピックを東京に?絶対有り得ない夢を見る都知事
 2008年、日銀総裁選びの混迷、円高急進展の折、これで良いのか?大阪はまたもやタレント知事が当選、東京は?と言えばこれが大変、新銀行東京の問題、進むも地獄、退けばもっと悲惨、公約に掲げて都知事戦に大勝したからには責任は明白、「運転手が悪い」なんてTopなら恥ずかしくて言えないはず。「オリンピックを東京に」、至る所にポスターが張ってある。2008年の北京、1988年のソウル、1964年の東京のアジア開催、間隔を見るとわかるだろう、国際的な大陸間持ち回りシステムからして、2016年の東京なんてほぼ絶対有り得ない。Top downだからと税金をつぎ込む都庁職員や都議会議員の感覚はどうなっているのか?まあ自分たちが選んだ人たちがやっていることだから都民は税金を払っても仕方ないだろう。
 強い朝青龍が帰ってきた。やはり強い横綱はカッコ良い。相撲を見るのが再び楽しくなってきた。白鵬も頑張れ!
(2008年3月16日)

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