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 ♪古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた♪ --- このフレーズは、そう涙そうそうの歌い出しである。この歌は夏川りみの歌唱でもっとも有名。オリコンシングルチャートで2002年5月20日付から連続112週TOP100入り、ロングセラー記録単独2位、1位の「地上の星」(中島みゆき、174週)に次ぎ、今なおヒットを続けている。「地上の星」は2003年3月1日付け8 元気な50代で紹介した→クリックNHKの「プロジェクトX・挑戦者たち」の主題歌である。♪風の中のすばる ♪砂の中の銀河 で始まるお馴染みの歌、♪つばめよ 地上の星は 今何処に あるのだろう♪ という、これも良い歌だ。「地上の星」も番組がまだ続いているのでヒットは続くだろうが、「涙そうそう」は本当に歌自身の力でヒットを続けているのに驚く。なぜだろう?

 ♪いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ♪
この歌を聴くたびに、目頭が熱くなるという人が多いそうだ。森山良子が兄を亡くした時の話を、沖縄の人気グループBEGINが聞いて曲を作り、その曲に乗せて改めて森山良子が作詞した曲で、BEGINと同じ石垣島出身の夏川りみが歌って大ヒットした。

 ♪晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔♪

思いがけず身内を亡くした人たちはこの詞に共感する。しかし誰にも面影浮かぶ懐かしい人は心の中に居る。「涙(なだ)そうそう」とは沖縄言葉で涙ぽろぽろ、涙が止まらないという意味だ。
 想い出遠くあせても
 おもかげ探して よみがえる日は 涙そうそう
もともとこの歌はBEGINも森山良子も歌っていた。しかし夏川りみが後で発売し、沖縄からヒットの火がついた。やはり夏川りみの歌声の透き通った美しさが、南国調のリズムに乗ってこの曲をひき立てる。子供の頃から歌のうまかった夏川りみは、上京して芸能人が通うので有名な堀越高に通いながら歌手となるものの芽が出ず挫折して沖縄・石垣島に帰ったが、この歌を聴き、「私にも歌わせて」とBEGINに直訴したそうだ。BEGINは長姉と同級生だったこともあり、快諾したという。

 フォーク調の涙そうそうに対し、全く有名ではないがひき潮(作詞:門谷憲二 作曲:浜 圭介 歌:門倉有希)という歌が好きだ。今、若手で最も歌謡曲らしい歌謡曲歌いといえば門倉有希であろう。ポップスでも演歌でもないという歌のジャンルでは門倉のハスキーで硬質な声は魅惑的だ。近頃は韓国バラードを歌って人気が出ている。最近では「グッバイ」(浜崎奈津子作詞・作曲、ビクター)というちょっと「冬ソナ」系のピアノで入るメロディアスなバラードを発売した。淡々とはかなげに歌い出し、最後にぐっと情熱的な盛り上がりをみせる。この深く心にしみるパターンが門倉有希の本領発揮である。実に歌謡曲的なひき潮も、門倉有希が歌うからこそ詞が生きるという気がする。その最後のフレーズは

 波のように もう一度だけ
 強く 抱きしめて くれませんか
 あなたに 逢えたことだけが
 私の 歴史です

 パリーグのプレーオフには興奮した。ロッテと日本ハムの3位決定戦も白熱したし、西武と日本ハムのプレーオフ第1ステージでも互いに必死の死闘を演じ、新庄の活躍する日本ハムが西武を追い詰めたが、劇的な和田のサヨナラホームランで西武が辛くも逃げ切った。そしていよいよプレーオフ第2ステージでは、レギュラーシーズン第1位のダイエーが新垣のナイスピッチングと西武先発石井貴を早々ノックアウトした城島を始めとする打線の爆発で先勝、しかし西武も第2戦エース松坂がダイエーの前に立ちはだかり、第3戦も連勝して王手をかけたが、どっこい王者ダイエーは第4戦を取り返していよいよ最終第5戦にもつれ込んだ。ダイエーは今シーズンチーム最多勝、第1戦でも勝利している新垣の先発、期待通りのピッチング、西武は第2戦を6回で余裕の降板でこの日に備えたエース松坂が先発、こちらも期待に違わぬ投球内容だったが、4回裏城島に1発を浴びて先制された。この後更に1死1塁でズレータが右中間を破ったが、センター赤田が素早く打球を処理してセカンド高木浩が中継、本塁へストライク送球でキャッチャー野田の好ブロックもありバルデスの生還を阻んだ。どれかひとつのポイントでもズレあればセーフの場面、完璧な中継プレーだった。5回2死2塁でも右前打を処理したライト小関が本塁へこれまた野田捕手へストライク返球、2塁走者柴原を本塁手前でタッチアウトにした。追加点の場面を好守で防御した西武、ピンチの後にはチャンスあり、6回表3点取って逆転、松坂はその裏を抑えて退いた。ダイエーは8回裏井口のソロホームランで1点返し、土壇場9回裏には柴原が執念の同点打で延長戦に突入した。しかし引き分けなら優勝できない西武は10回表1点勝ち越し、その裏第1戦先発の石井貴を出して逃げ切った。気迫を前面に出す石井貴で始まり、石井貴で終わった第2ステージ、西武の優勝!手に汗握る熱戦だった。野球は流れが大切、好守備で流れを引き寄せ、リリーフ、代打の全員野球で勝利をもぎ取った西武の戦いは見事だった。久し振りに大興奮だった。熊本工の後輩である伊東監督に川上哲治氏もメッセージを寄せたそうだ。オレ竜の落合中日との日本シリーズもすぐ始まる。新人監督同士の熱戦が期待される。

(2004年10月12日)

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