663  てっぺんの向こうに

 二十四節気の『小雪』の時期となりました。さすがに南関東ではまだ雪はちらつきませんが、青森県の酸ヶ湯では積雪1mを超え、北海道でも雪景色が拡がって、各地のスキー場はいよいよシーズン入りと張り切っているようです。昨週も盛岡日帰りがあり、冬のコートを着て行きましたが、新幹線を降りても寒くは感じず、日中は汗ばみました。服装はちょっと「オーバー」でした(^_^) 南関東との差が段々無くなっていると感じます。地球温暖化は急激に進んでいるんですね。

■ 影が長い
 11月22日(土)〜24日(月)は三連休という人もいるでしょう。筆者は少年野球漬けです。15時40分、埼玉県ふじみ野市立西原小学校は、16時30分の日没に向けて太陽高度角が下がり、影もこんなに長い、身長10mです もう「冬至」まであと1ヶ月です。


■ てっぺんの向こうにあなたがいる
 映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」を見ました。女性で初めて世界最高峰エベレストの登頂に成功した登山家・田部井淳子さんをモデルに、人生のすべてを懸けて“てっぺん”に挑み続けた女性登山家の姿を描いた映画です。エベレスト日本女子登山隊がエベレスト登頂を為し遂げた1975年から、1992年の世界七大陸最高峰登頂はいずれも女性で世界初の偉業ですが、晩年には闘病生活を送りながら、余命宣告を受けた後もなお、笑顔で周囲を巻き込み、山に登り続けた主人公、キャストには、田部井淳子をモデルにしたキャラクター=多部純子を演じる吉永小百合(80)、青年期の純子役にのん(32)のほか、夫・正明役に佐藤浩市(64)、その青年期を工藤阿須加(34)、エベレスト登頂の相棒で純子の盟友の新聞記者・北山悦子役に天海祐希(58)、その青年期を茅島みずき(21)、純子の長女を木村文乃(38)、息子を若葉竜也(36)さんが演じました。役年齢と実年齢の差を見ると、吉永小百合さんが際立って高齢、他の人はそれなりに釣り合っています。「北のカナリアたち」以来13年ぶりに吉永小百合さんとタッグを組んだ阪本順治監督、吉永小百合さん124本目の出演作品ですが、この映画は吉永小百合さんのために作られたと言って良いでしょう。田部井淳子さんと吉永小百合さんはかなり違ったキャラクターです。お二人ともてっぺんを極めたところは共通していますが、田部井淳子さんは9年前、腹膜がんのため77歳で逝去されました。夫の政伸さんは淳子さんより年下ですが、今もなお84歳でご存命です。吉永小百合さんの夫;岡田太郎さんは吉永さんより15歳も年上で、昨年94歳でご逝去されました。

■ 感想
 映画では、エベレスト登頂成功のあと、純子だけがスポットライトを浴びる現状に嫌気が差して、仲間たちは彼女の前から去って行きました。でも、新聞記者として帯同していた悦子だけは、彼女と関係を保ち続けます。世界で初めてエベレスト登頂、世界7大陸最高峰制覇という華々しい実績の陰で、友人は去り、息子も母親が家に居ることが少なく、有名な母が故にグレてしまいます。娘も「お母さんが居なくて可哀そうね」と近所のオバサンに言われてしまいます。父に手を引かれて「お父さん、あたし可哀そうなの?」と問いかける娘、抱きしめる父...しかし支え続けたのは夫でした。夫は、谷川岳やマッターホルン北壁などに登頂した山男でした。山男と山女だからこその絆がある、二人の愛が素敵でした。この時代、女たちだけでエベレストを目指すなんて考えられないことでした。しかも夫がいる、子供もいる、なんて無謀な・・・純子の強さは、登頂をゴールと思っていなかったことでしょう。下山した先で待っていてくれる友達や家族に会えることを何よりも幸せに感じていたように思います。終盤、富士山の八合目くらいで純子が「私はここまで」と言って、空を眺めます。余命宣告されてからもうずいぶん長く生きてきました。東日本大震災被災地の東北の高校生を引き連れての富士登山、そんな体調でてっぺんなんて無理です。「人生は八合目からがおもしろい」というポスターに書かれた言葉の意味、おそらく、人生もう八合目を過ぎたけど、まだまだこれからが面白いんだという不屈の闘志、それなくして純子の偉業は成し得なかったと思います。そして、それはこの夫なくして成し得なかったはず、また友達や子どもたちも支えになっていました。てっぺんの向こうにいる人たちに会いたい・・・


富士山八合目で語り合う夫婦のショットが素晴らしかった

■ ざくろ坂プロジェクト
 田部井淳子さんは福島県三春町生まれ、滝桜で有名ですね。お隣の川越市在住ということでずっと親近感を持っていました。筆者も新婚時代は川越市民で、今も川越市境に住んでいて、川越も所沢もさいたま市もみんな同郷みたいなものです。田部井淳子さんは急姓石橋で、夫の政伸さんが本田技研に勤務していたので川越住まいだったわけです。田部井淳子さんと思いがけずお会いしたのは、東日本大震災復興支援のため吉永みち子さんが立ち上げた、グランドプリンスホテル新高輪、「ざくろ坂プロジェクト」でした。この人が世界の田部井淳子か、と驚きました。小柄で優しそうで、普通のおばさんに見えました。




ざくろ坂プロジェクトを立ち上げた吉永みち子さん


ざくろ坂プロジェクト賛同者たちのサインが貼られ、右上に田部井淳子さん

■ キャスト選びが素晴らしい
 10月31日公開の映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』のスタートは好調のようです。「週末動員ランキング」では初登場3位に入り、公開3日間で16万4000人を動員、興行収入は1億8900万円で、これは興収11.1億円を記録した2023年の主演作『こんにちは、母さん』の初日3日間より112%も高い数字で、80歳を迎えた吉永小百合さんが今なお、集客力と話題性でトップを走る存在であることを裏付けています。
 「この映画は吉永小百合さんのために作られたと言って良い」と上で書きましたが、主人公;吉永さんの青年期を誰にするか、迷いなく「のん」さんを選んだのは、若い時のはつらつとしたイメージはこの女優をおいて他に居ないからだそうです。優しい夫の佐藤浩市さんの青年期の工藤阿須加さん、なるほどイメージピッタリ。親友;北山悦子さん役の天海祐希さんの青年期を茅島みずきさん、抜群のスタイルがピッタリです。
 近年、吉永小百合さんが主演した映画・・・『おとうと』『北のカナリアたち』『ふしぎな岬の物語』『母と暮せば』『北の桜守』『最高の人生の見つけ方』『いのちの停車場』『こんにちは、母さん』はいずれもヒットの目安となる興収10億円を突破しており、今回の『てっぺんの向こうにあなたがいる』で“9作連続”となりそうです。吉永小百合さんは、“サユリスト”と呼ばれるファンに支えられてきましたが、年を重ねるごとに新たな魅力が次々と出てきます。観客が「また新しい吉永小百合に会える」と期待を抱き続ける理由がここにあります。観た後に“挑戦したい”“まだやれる”という気持ちになる『てっぺんの向こうにあなたがいる』。それは、まさに吉永さんの生き方そのものでもあり、「なぜ80歳でここまでの結果が出るのか」ではなく、「80歳だからこそ生まれた到達点」であることが分かるのです。


室堂で撮影されたエベレスト登頂シーン、演じるはのんさん

■ 平場の月
 映画館イオンシネマ大井では一番デカデカとアピールされ、上映本数最多なのは堺雅人・井川遥主演「平場の月」でした。映画は、小説家、朝倉かすみさんの「平場の月」(光文社文庫)が原作で、舞台となった朝霞市などの実在の地名が登場します。中学の同級生だった青砥健将(堺さん)と須藤葉子(井川さん)が、それぞれ結婚を経て独身となり再会し、ひかれていくストーリーだそうです。朝霞市は、ロケをきっかけに市内の魅力スポットを発信しようと、市役所や公民館にポスターなどを張って、市を挙げてPRに協力しています。映画の魅力との相乗効果で、映画を見た人からロケ地の場所に関する問い合わせが市にきているそうです。実はふじみ野市でもロケが行われ、見学者が集まったそうです。馴染みの酒場です。


朝霞市・南割公園で話が弾む二人

■ G20閉幕
 G20サミットは2025年11月22日、南アフリカのヨハネスブルクで開幕し、気候変動危機など課題への対処を盛り込んだ首脳宣言を採択しました。首脳宣言は気候変動の深刻さと適応の必要性を強調し、再生可能エネルギー促進に向けた野心的な目標を評価しました。また貧困国が抱える過重な債務返済負担にも言及しました。米国のトランプ大統領は、南ア政府が少数派の白人を迫害していると主張し、サミットへの参加をボイコット、ホワイトハウス当局者は南アフリカが議長国の立場を悪用していると非難しました。米国の孤立主義が懸念されます。もう一つの大国・中国も習近平氏が参加せず、李強首相でした。日本の高市早苗首相は22日に英国のスターマー首相、23日にドイツのメルツ、インドのモディ両首相とそれぞれ会談するなどG20を利用した首脳外交を展開、同じ右派のイタリアのメローニ首相とはハグしてました。中国は国連に対し、日本が台湾海峡情勢に武力介入した場合、断固とした自衛措置を取ると警告する書簡を送付するなど、日増しに日本への反発を強めていますが、どうやら習近平氏が高市首相にターゲットを絞って攻撃しようとしているようです。李強首相は、高市首相と絶対目を合わせないように決心していたようで、その固い表情、一心に正面を見据えている姿が印象的でした。


田部井淳子さんが愛した日和田山の山頂から巾着田や飯能方面を望む

■ COP30閉幕
 ブラジルの港湾都市ベレンで開催されていた国連の気候変動会議(COP30)が2025年11月22日に閉幕し、深刻化する気候変動への適応を助ける資金を3倍に増やすことで合意しましたが、根深い分裂で協議が決裂しそうになる場面もあり、化石燃料からの脱却に向けたロードマップ(工程表)では合意できませんでした。190ヶ国以上の代表団により2週間以上にわたって交渉が行われ、当初の会期を延長して協議が行われましたが、サウジアラビアやロシアを含む産油国や化石燃料を多用する国の強い反対により、協議がまとまらなかったのです。ただ、比較的豊かな国は、気候に脆弱な国の地球温暖化への適応を支援する資金を3倍に増やす方針で合意するという、一定の前進もありました。ここでも「地球温暖化なんて嘘っぱちだ」という米国のトランプ大統領の主張によって、国際的な協調が後退して行く場面を見せつけられました。


田部井淳子さんの生地に咲く三春滝桜

■ 2025大相撲九州場所安青錦優勝
 初土俵からわずか14場所のスピード優勝となった21歳の関脇安青錦(あおにしき、安治川部屋=本名ダニーロ・ヤブグシシン)は場所後の大関昇進が確実となりました。初土俵から所要14場所での大関昇進は、琴欧州の19場所を抜いて史上最速記録です。千秋楽本割で大関・琴桜を内無双で倒して12勝3敗。優勝決定戦では横綱・豊昇龍を送り投げで破り、賜杯を手に、殊勲賞、技能賞も獲得しました。大一番に勝っても安青錦関は笑顔を見せることはありません。「力士は土俵で勝っても喜んではいけない、負けた相手に礼儀をつくし、対戦してくれたことに感謝をする…日本の心」を、1990年代、ウクライナに相撲を広めた立役者であり恩師のワージャ・ディナウリさんから学んだそうです。格闘技の盛んなウクライナ中部で育ったダニーロ・ヤブグシシンは、レスリングで鍛えた体幹に加え、7歳のころから相撲にも親しんだそうです。レスリング仕込みの低い姿勢から一気に圧をかける攻撃は、相撲にもそのまま応用できます。2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻で家族は身の安全のためドイツへ避難しましたが、ヤブグシシンは迷わず、「日本に行く」と決断しました。ウクライナの若者は徴兵されますが、2022年4月、わずかな荷物だけを持ち単身で来日。2019年にアマチュア相撲世界大会で来日したときに、関西大学相撲部主将だった山中新大さんと出会い、親交を深めていて、その家に身を寄せ、同大学の相撲部で汗を流し、言葉も分からぬままに稽古だけに没頭したそうです。安治川部屋に入門、2023年秋場所で初土俵、安治川親方は教えると翌日には身に付ける姿、練習熱心さに舌を巻いたそうです。安青錦関のしこ名の名前は「新大」(あらた)。山中さんの本名です。日本語習得の速度も特筆もの、頭が良い上に、相撲の心は日本語を覚えないと習得できないと考えて、来日から2年で複雑な表現も自在に使いこなすまでになりました。千秋楽のNHK解説席で、元大関の琴風豪規氏は「千代の富士の出世を思い出す」と言い、舞の海秀平氏は「安青錦はすごいことを淡々とやり遂げてるのにひょうひょうとしてますよね」と指摘。「私、もう千代の富士さんのような人は出てこないと思ってたんですけど出てきましたね、安青錦が。安青錦をみんなでどう攻略していくのか来年楽しみですね」と期待していました。「青い目のウルフ」という呼称がピッタリ、大相撲は日本文化の象徴であり、国際的な文化交流のカナメでもありますが、その中心に戦争によって人生の軌道を変えざるを得なかった外国人青年が立ち、そこで勝ち続けているという構図は国際社会にとっても大変意義深いことです。戦争はいけない、スポーツで戦うんだ!大横綱大鵬のお父さんはウクライナ・ハルキウ出身です。大鵬の孫・王鵬と安青錦のライバル対決は続くでしょう。SUMOはウクライナの人々に勇気を与えています。


皆さんの笑顔がステキですね 笑う門には福が来ます 一日も早くウクライナに平和が訪れますように

■ 明治神宮野球大会
 第56回明治神宮野球大会は、高校の部では九州国際大付(福岡)が山梨学院(関東)と花巻東(東北)を運よく破って波に乗り、決勝で神戸国際大付(近畿・兵庫)に11-1圧勝して初優勝しました。運も実力のうちです。大学の部は、青山学院大学が2年連続優勝です。大学駅伝だけではなく、様々なスポーツで最近目立ちますね。
(2025年11月24日)


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