550  盛岡広域南部T

 このところ、このESSAYでは旅行の話が多くなっていますが、今回も旅行の話です。いつもの夫婦旅行ではなく、今回はグループ旅行です。経験したことのない、記録的暑さの首都圏から、北東北の盛岡近郊の旅へ、さて涼しさを感じられるでしょうか。

■ 在京盛岡広域産業人会の旅行
 在京盛岡広域産業人会というのは、岩手県の盛岡広域8市町出身や、関係のある首都圏の産業人の集まりです。盛岡広域地区の工業団地や施設などを視察し、企業誘致や産業振興への理解を深め、併せて盛岡広域の魅力を確認して、ふるさとの発展に寄与するため、秋に盛岡広域地域に視察旅行に行ってましたが、2019年以降4年間、コロナ禍で旅行は取りやめてきました。今年は久し振りの実施で、回ったのは盛岡広域南部の盛岡市、雫石町、矢巾町、紫波町です。観光旅行では体験できない企業訪問や観光施設見学、酒造りなど産業の現場を見ます。今回は特に盛岡市が「2023年に行くべき世界の52都市」というNYタイムズの記事で、ロンドンに続く2番目に紹介されたことで、盛岡市に注目が集まっていますので、知合いの女性たちを誘って出かけました。


今回回ったのは盛岡広域南部

盛岡駅西口バスターミナル27番に集合

■ ヘルステック・イノベーション・ハブ(盛岡市)視察30分
 ヘルステック・イノベーション・ハブ(盛岡市)(盛岡市北飯岡2-4-23)は、令和2(2020)年度に岩手県工業技術センターが開所したヘルスケア産業集積拠点です。ヘルスケア関連中核企業の集積を促進し、新製品・新事業創出による地域経済の活性化とヘルスケア関連産業の拠点形成を図るため、岩手県工業技術センター敷地内に産学官連携や交流、共同研究開発の活動の場として、貸研究施設が整備され、2020年4月に開所しました。潟Aイカムス・ラボ、セルスぺクト鰍ネどのベンチャー企業が入居しています。

ヘルステック・イノベーション・ハブの外観


隣の岩手県工業技術センター


鞄喧k医工の社長自ら説明して下さいました


大学との共同研究の成果です


リハビリ体験です


さあ、ヘルステック・イノベーション・ハブを後にして、次なる目的地へと出発です
空の雲を見てお分かりのように、この日はどんよりと雲に覆われ、時々晴れ...東京は台風で大荒れとのこと

■ プロロジスパーク盛岡 開発予定地(矢巾町)視察30分
 2023年2月3日(金)アルカディア市ヶ谷で行われた盛岡広域企業立地セミナーで、「プロロジスパーク盛岡」について紹介いただきました。講演されたのはプロロジス社の開発部ディレクターである中山博貴氏でした。今回は実際の建設現場を見てみようとの主旨です。プロロジス社はグローバル企業で、持続可能性のある高品質な物流施設を開発し、効率的な物流ソリューションを提供しています。
 矢巾町広宮沢に建設中の「プロロジスパーク盛岡」は東北エリア最大級となるマルチテナント型の大型物流施設(倉庫)です。2024年問題を機に開発される予定地は、東北エリアの物流動脈である東北縦貫自動車道「盛岡南IC」から約4.7km(約8分)、県道13号からも約1.5kmと至近に位置し、盛岡市を中心とする消費地へのアクセスが至便で、南は仙台、北は本州最北まで3時間以内に到達可能であることから選ばれました。マルチテナント型施設とは、1棟を複数の企業で使用する物流施設です。各階に大型車やコンテナトレーラーが直接アクセスできるランプウェイやスロープ、トラックバースを設けています。庫内はワンフロアが広く、レイアウトの自由度が高まるよう広い柱スパンを確保し、効率的な物流オペレーションが可能です。さらに、免震構造の採用や、非常用電源の設置、敷地内の緑化、カフェテリアなど、快適に働ける施設環境を整えています。
 単なる物流倉庫ではなく、働く人の憩いの場や、お客様が見えた時の接客スペースまで、多種多様な施設を揃えています

プロロジスパーク盛岡完成予想図 もう11月には竣工します

まさに建設中の工事現場にバスが入って行きます
あらかじめ連絡が入っていて、ガードマンの案内に従ってバスは緩やかな斜面を昇り、右折して真っ暗な3階へ

皆さん配られた資料を見ながら説明を聞きます


オトコの現場には珍しい女性の方々も説明を熱心に聞いています


説明して下さった方は、なるほど、素晴らしく良く通る声の方、マイク不要でした


説明を聞いた後、質疑応答が熱心に行われました

■ 菊の司酒造株式会社(雫石町)視察35分
 プロロジスパーク盛岡の建設現場を後にして、バスは一路雫石町へ向かいます。距離は随分あるのですが、なにしろ信号機が少ないのでスイスイと進みます。やがて菊の司酒造株式会社(雫石町長山狼沢11-1)に着きました。新設の酒蔵見学とお酒購入が目的です。
 菊の司酒造株式会社は安永元年(1772年)に酒造りを開始した岩手県最古の酒蔵です。2022年3月4日、雫石町への企業立地協定を取り交わし、中津川をはさんで盛岡市役所の向かい側から本社・工場を移転しました。雫石町初の酒蔵です。


菊の司酒造本社・酒蔵


菊の司の概要を説明して下さった菊の司酒造の佐藤統括課長

 原料米も地元で調達しながら、四季醸造の酒造りの詳細を動画と共に説明してくださいました。中津川畔でその美味しい水をもとに酒造りを続けていた菊の司が何故雫石へ本拠地を移したか、すべては岩手山の伏流水が湧き出るこの地の美味しい水が酒造りに最高だと判断したからとのこと。質疑応答では、石鳥谷町の酒のブランド「七福神」を承継して、その風味が守られているか?などQ&Aがありました


出発記念写真

■ グランドセイコースタジオ 雫石(雫石町)視察60分
 岩手山を望む美しく厳しい自然・・・・岩手県・雫石の地に盛岡セイコー工業株式会社が設立されたのは、1970年のことです。世界のブランドSEIKOのものづくりにとって、ウオッチ製造にこれほど最適な場所はほかにありませんでした。そして2020年7月20日、盛岡セイコー工業 雫石高級時計工房内に、グランドセイコーの機械式時計を製造する新施設「グランドセイコースタジオ 雫石」がオープンしました。このスタジオは、2019年完成の国立競技場の設計に携わった建築家、隈研吾氏が設計を手がけました。岩手山に対して屋根を大きく跳ね上げ、建築の中からも周辺の自然が感じられる木造建築で、グランドセイコーのブランドフィロソフィ「THE NATURE OF TIME」を具現化したものです。
 木立に囲まれたスタジオ内には、専任の時計師が組立・調整を行う専門工房とともに、ブランドの歴史、背景を知り楽しむことのできる展示スペース、名峰・岩手山を望むラウンジを併設し、自然との共生のなかで生み出されるグランドセイコーのものづくりを体感できる場所として一般公開されています。しかし余りにも人気のある見学施設のため、グランドセイコースタジオ 雫石の見学は事前予約制となっております。
 盛岡セイコー工業株式会社は、自然との共生を図る、持続可能で循環型のモノづくり…SDGsに取り組んでいます。その結果、2019年「都市緑化機構会長賞」や2022年度「日本緑化センター会長賞」の表彰を受けました。盛岡セイコー工業の環境保全への取り組みや、いきもの図鑑「ちょっと一息」をご覧ください

隈研吾氏設計のグランドセイコースタジオ 雫石


この日は厚い雲に覆われてラウンジから望む名峰・岩手山は裾しか見えません


工場の緑の中にはビオトープ「わくわくトープ」もあります


入口ロビーにはウェルカムメッセージが・・・


盛岡セイコー工業株式会社の加藤社長が自らご案内くださいました


案内して下さる方の服装もまるで執事のような・・・


長い廊下から時計作りの工房が見えます


机はなんと、岩谷堂箪笥のもの


高いところからクリーンルームの現場を俯瞰しました


何やら手に取ってみてますね


体験です


時計の部品の展示


ルーペで覗いています


いやはや、こんなに精密なものなんだ・・・


在京盛岡広域産業人会の皆様で加藤社長と共に記念写真


バスに乗り込むとき、傍らに有った昆虫たちの巣箱「インセクトホテル」について説明して下さる加藤社長

このホテルの中で昆虫が育ち、それを目当てに野鳥たちが集まって、豊かな生態系が育まれます


■ ラ・フランス温泉館「ホテルゆらら」(紫波町)
 グランドセイコースタジオ 雫石を後にして、バスは一路雫石町から紫波町へと向かいます。プロロジスパーク盛岡の建設現場を通り越して更に南なので大移動です。紫波町営のラ・フランス温泉館「ホテルゆらら」(紫波町小屋敷新在家90)は、東北自動車道紫波ICからわずか5分、紫波町の西部・東根山の麓にある天然温泉です。洋風・和風の大浴場はゆったり広々、肌にやさしいpH9.0アルカリ性の泉質でヌルヌル、ツルツル、「美人の湯」と呼ばれます。到着が予定より遅れたので、お風呂に入る時間が少ないですね。


丸屋根がラ・フランス温泉館、山側の横に広い建物がホテルゆらら




ラ・フランス温泉館大浴場(サウナ有り、外に露天風呂)

■ 懇親会
 ホテルゆらら宴会場での懇親会には紫波町の熊谷 泉 町長のご臨席を賜り、親しく懇談させて頂きました



熊谷 泉 町長の歓迎のあいさつと乾杯のご発声


紫波町では乾杯条例で地元特産日本酒で乾杯することになっています


本日のお料理 お品書き


紫波町職員の皆様 いろいろとお世話になります


ホテルゆらら1Fには二次会場スペースが用意されています

1日目終わり、2日目は次回

■ 円安と日本の今後
 円安がグイグイ進んでいます。昨年10月に一時150円/US$を突破し、その後120円台に下がり、いままた150円をうかがっています。2011年10月に75円30銭だった時の倍です。米ドルに対する日本円の価値が半分になったということです。10年ぐらい110円/US$近辺で安定していた頃に比べると様変わりですが、これだけ極端に円安になると海外から日本に旅行客が押し寄せるのは当然ですが、受け容れる日本の方が人手不足で4年前の水準までインバウンドの人数は回復していません。日本に来て食事したり買い物すると、ガイジンは本当にJAPANは安い!と思うみたいです。円安になった理由は様々解説されていますが、いつも書いているように法則はありません。日米金利差をいう人が居ますが、そんな単純な理由ではないでしょう。「為替レートの動きを予想することは不可能である」というのが真実です。国際決済銀行(BIS)が発表した8月の円の実質実効為替レートは73.19(2020年=100)で、さかのぼれる1970年以来の最低の水準となりました。これだけ日本が安くなったのは、例えばシンガポールへ行って珈琲を飲んでみれば分かると言われます。日本でもインフレが進んでいますが、なにしろ給与所得が増えません。アメリカのUAWの賃上げストのニュースをご覧になりましたか?4年間で4割賃金を上げろと言ってストやるゾと言っています。今でさえ日本よりずっと高いのに、さらにこんな要求をしている...これでは日本が安くなるのは当然です。

■ 日本経済の「解体的出直し」を
 日本が復活するには生産性を上げることが必要ですが、少子高齢化が進み、政府は毎年借金を増やして予算大盤振る舞い、これが一向に変わらないのですから、この政治姿勢が変わらない限り無理ですね。岸田首相は経済対策を進めるとしていますが、借金をして場当たり的に対策してもダメでしょう。いまモノが値上がりしているのは、円安が要因として大きいですが、「上げてもいいんだ」というマインドが浸透したことが大きいと見ます。物価が上がって良いのなら、それ以上に所得が増さなければ人々は貧しくなります。もし賃金を上げられない企業は淘汰されるとなれば、そこに画期的な変革、イノベーションが生まれなければなりません。日本経済こそ「解体的出直し」を迫られているんだろうと思います。日本が復活する兆しが見えれば、為替レートは円安から以前のように戻るでしょう。
(2023年9月27日)


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