297  SI定義改定
 寒くなってきましたね。前回紹介した岩手県雫石町の鶯宿温泉ホテル加賀助では、朝目覚めて外を見たら他の宿の屋根が白い、駐車場の車の屋根も白い、霜が降りていました。しかし日中は暖かく埼玉と変わらぬ気温で、岩手山や奥羽山脈の連峰、姫神山や北上山地の山々が降雪も無くくっきりと群青色に空の青と際立っていました。11月半ばとしては珍しいことです。しかしその後、さすがに岩手山も冠雪し、朝の最低気温は零度になるという、本格的な冬の始まりの便りが届きました。

■ 枯葉の季節
 この1週間で急に枯葉が目立つようになりました。道路の端に枯葉が積もり、片付けに躍起になっている人たちを見かけます。ビニール袋に詰めて燃やすゴミの日に出すのを見かけますが、もったいないですね。落ち葉の堆肥は近隣の農家などでは貴重なのです。三芳町の川越芋農家などでは、落ち葉堆肥を使った有機農業が盛んです。枯葉は木枯らしが吹いて落葉するのですが、枯葉で思い出すのはシャンソンですね。日本でも高英男や淡谷のりこ、越路吹雪、芦野宏、ペギー葉山などが歌いました。この話は実は下のほうにつながって行くのです。

■ 少年野球最後の頑張り
 少年野球の秋季大会や新人戦大会が佳境です。12月初旬で主な大会は終わります。オートバイが壊れたので、この際身体トレーニングのためにブリヂストンサイクルの自転車で走り回っています。しかしさすがに25km北の会場には車で行きますが、近隣10km以内は自転車で十分です。

■ SI定義の改定
 国際度量衡委員会は、SI基本単位の定義を改定する決議案を提案し、2018年11月16日に第26回国際度量衡総会で決議・承認されました。新しいSIの施行日は2019年5月20日(メートル条約が締結された日であり、世界計量記念日)です。平成はもう終わってますね。
 言葉が難しいですが、国際単位系(略称SI)は、メートル法の後継として国際的に定めた単位系です。略称のSIはフランス語に由来しますが、これはメートル法がフランスの発案であるという歴史的経緯によるよるものです。SIの大幅な修正は、一貫性のある単位系である国際単位系(SI)が1960年に公式に発表されて以来となります。

■ 度量衡とは
 度量衡(どりょうこう)は、さまざまな物理量の測定、あるいは物理単位のことです。度は「長さ」および「さし(ものさし)」、量は「体積」および「枡(升、ます)」、衡は「質量」および「秤(はかり)」を表しています。私たちの生活上、モノの取引は重さを秤(はかり)で計ったり、容積を枡(升、ます)で計ったりして行われます。国際的な輸出入においても、その計る基準は統一されていなければなりません。したがって計量計測というのは国際的な基準を定めて、常に狂いが無いように較正されているのです。

エスプレッソ

 SI基本単位が定められて、重さのことは「重量」ではなく「質量」と言うことになりました。圧力も昔はkg/cm2だったのがパスカルに変わりました。気圧も昔はミリバールなどと言っていましたが、今ではメガパスカルです。それでも長さをメートルではなくヤードで言ったり、質量をグラムではなくポンドで言うようなヤカラが居ます。石油などはガロンで言います。国際単位に馴染めない英米です。協調性が無さ過ぎです。国際標準で定めたことは守らなければならないのに、わがままな連中です。

■ 原器から物理定数による定義へ変更
 科学の発展とともに、SI基本単位の定義の多くは、例えば長さは合金製のメートル原器から、1983年に「299,792,458分の1秒間に光が真空中を進む距離」として再定義されるなど、より普遍的なものに置き換わってきました。その中で質量だけは国際キログラム原器 という人工物で定義され、100年以上にわたって使われてきましたが、その質量変動の影響が懸念されたため、基礎物理定数に基づいた質量の定義を目指して改定されるのです。この定義改定が日常生活や従来の計量計測に直ちに影響を与えることはありません。その一方で、決して変わらない物理定数を定義にすることで、計量単位の長期的不変性が確保されます。また新しい定義による測定器が開発されることで、これまで正確に測定することが困難だった微小質量を直接測ることが可能となるなど、ナノテクノロジーなどへの寄与が期待されています。このように新しい定義は、計量計測におけるイノベーションを起こす可能性を秘めたものであり、計量計測分野の発展に寄与することが期待されています。

■ 新しいSI
 「新しいSI」において、SI基本単位のうち四つ、すなわちキログラム、アンペア、ケルビン、そしてモルは物理定数を用いて再定義されます。つまり、それらの新しい定義は、それぞれプランク定数(h)、電荷素量(e)、ボルツマン定数(k)、そしてアボガドロ定数(NA)の確定値にもとづくことになります。この結果、SIのすべての7基本単位が、物理定数の式で表現されます。そして、基本単位の定義を実用的に実現する手段として、具体的な現示(実現)方法も規定されます。


■ 質量も原器から変更
 フランスのセーブルにある国際度量衡局(BIPM)には、直径・高さともに約39mmの円柱状の金属塊が厳重に保管されています。100年以上にわたり全世界の質量の基準になってきた「国際キログラム原器」です。これは白金とイリジウムの合金でできています。国際単位系の基本単位を定義するために現在も使われている唯一の人工基準器です。国際単位系は基礎物理定数により再定義されるように変わり、質量もアボガドロ定数に基づいて定義されるようになります。アボガドロ定数とは、ある物質1モル(モルは物質量の単位)に含まれる原子や分子の数のことで、質量数12の炭素12グラムに含まれる炭素原子の数として定義され、その値は約6.02×10の23乗であることが分かっています。10の23乗・・・スゴイですね。アボガドロ定数を決定するには、個々の原子が理想的な大きさの空間を占めている「完全結晶」が必要で、これにシリコン結晶を使います。

■ 計量計測視察団で欧州旅行
 こんな難しい話は興味が無いかもしれませんが、実は私たちの生活に計量計測は無くてはならないものです。そして筆者はそれが仕事だったので、日本の計量計測の元締めである産業技術総合研究所(産総研)とは深い関わりを持っていました。また計量計測に携わる業者団体の委員も務め、27年前、1991年11月のちょうど今頃の時期に、ヨーロッパの計量計測の現状を視察する視察団の一員として欧州を旅しました。成田発パリでトランジット、フランクフルトへ、帰りもロンドンからフランクフルトへ行き、ここでルフトハンザに先立たれ、仕方なくJALを待って帰って来ましたが、日本人スチュワーデスで嬉しかったことを覚えています。計量計測と言えばやはり総元締めはフランスのパリです。次に欧州本部のあるベルギー・ブリュッセル、そして計量先進国オランダ、ドイツ・ベルリン、そして技術的に最も高度なミュンヘンのバイエルン計量局、そして英国・ロンドンと回りました。冒頭の「枯葉の季節」でした。さすがに緯度の高いヨーロッパは昼が短く、寒かったけれど、早々とクリスマス飾りが華やかで、街の風情も品があって伝統を感じさせました。オランダ人の間を歩いていると、まるで森の中、皆驚くほど背が高いのです。ロンドンでは人種による格差を感じました。例えばレストランで、オーナー、ウェイター、ウェイトレス、コック、皿洗い、お掃除する人、明確に人種が分かれているのです。日本の電気製品が驚くほど氾濫していましたが、アプリケーションソフトウェアにおいて日本より数段進んでいることに驚きました。長旅ながら、一流ホテルを泊まり歩いたので、実に快適で、しかも日本人に対し親切なのは、国際的に日本のステータスを評価してくれているのだと感じて嬉しかったですね。ななめのつぶやき44『霧と枯葉』(2003年11月9日)をご覧下さい。

■ 英国滞在者の献血制限
 筆者は日本赤十字社の献血に長く協力して、感謝状やバッジを頂いていましたが、2005年2月に国内で初めて牛海綿状脳症(BSE)による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の患者が確認されたことを受けて、2005年6月1日より、「1980年から1996年の間に英国に1日(1泊)以上滞在した方の献血はご遠慮下さい」と言われて、やむなく献血をやめました。その後2010年1月27日より英国滞在歴に関する献血制限が緩和され、英国滞在歴「1日以上」(1泊以上)から「通算1カ月以上」(31日以上)に緩和することが決定されましたので今では献血できます。しかし血の気の多かった若い頃と違い、還暦過ぎた今では何となく足が遠のいています。

■ カルロス・ゴーン容疑者逮捕
 実際より少ない報酬額を有価証券報告書に記載したとして、東京地検特捜部は2018年11月19日夜、日産自動車(本社・横浜市)のカルロス・ゴーン会長(64)とグレッグ・ケリー代表取締役(62)を金融商品取引法違反容疑で逮捕し、日産本社を捜索しました。逮捕容疑は有価証券報告書不実記載です。2015年6月までの5年間のゴーン氏の報酬額が計約99億9800万円だったのに、計約49億8700万円と記載した虚偽の有価証券報告書を発行し、取締役の報酬を有価証券報告書より少なく支払って差額を自分が得ていたのだそうです。日産自動車社内の内部告発により、社内調査を行い、検察との司法取引を決めて発表したものです。日産自動車は2人の代表取締役の解任を取締役会に提案するそうです。ゴーン氏はブラジル生まれで、若いうちからタイヤのミシュラン社で経営に参画、1996年にルノー社に入り、1999年に日産の最高執行責任者(COO)に就任、2000年6月に同社社長に就任し、2017年4月に同社会長になりました。日産の社員2万人をリストラし、同社の業績をV字回復させましたが、最近では不正問題で揺れていました。
 日産自動車のグループ会社;三菱自動車も、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者を会長と代表取締役の職から速やかに解くことを取締役会に提案すると発表しました。

■ フランスにも衝撃走る
 カルロス・ゴーン容疑者の逮捕は、日産と連合を組む自動車大手ルノーの地元フランスにも大きな衝撃を与えています。フランス政府は同社の株主でもありますので、マクロン大統領は11月19日、ベルギーのブリュッセルでの記者会見で、ゴーン容疑者の逮捕に関し「(ルノー・日産・三菱自動車)連合の安定性を非常に注視している」と語りました。自身の支持率が25%まで下落しており、また頭の痛い問題を抱えた形です。フランス主要各紙は19日、同容疑者の聴取の段階から「稲妻が走った」(フィガロ紙)などと一斉に伝え、欧州市場ではルノー株が前週末終値比で二桁の急落など動揺が広がっています。フィガロ紙は「ルノー側も全く予測していなかった出来事のようだ」と指摘し、世界第二位の自動車メーカー;日産・ルノー連合の将来に影響を与えるとの見方を示しました。ルモンド紙は、ゴーン容疑者が会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるルノーでの報酬の高さがフランスで論争の的となってきたことにも言及しています。日本でも報酬が高過ぎると言われてきましたが、フランスでも同様だったようです。
 これを機に、何か悪いことが経済的に起きないか、大変心配です。カルロス・ゴーンをすごい経営者と敬服してきた日本人は一体なんだったのか。そもそもリストラをする経営者は、経営者の責任を放棄する者だ、という会社に在籍した身には、全くすごいとは思わない、むしろ逆だと思ってきたので、ヤッパリそうだったんだと納得しています。

■ 丸源ビル経営者に実刑判決
 かつて夜の小倉で○囲み源マークの紅いネオンが灯るビルがあちらにもこちらにもありました。その後博多の中州や東京・銀座にもビルを建て、億万長者の典型となった貸しビル業「丸源」グループ会社のオーナーに実刑判決が下りました。同グループ経営者川本源司郎被告(86)の脱税事件は、10億円超の法人税を免れたとして、法人税法違反罪に問われたもので、その判決が2018年11月20日東京地裁であり、懲役4年、罰金2億4000万円(求刑懲役5年、罰金3億円)が言い渡されました。川本被告は売上額の一部を除外するなどの方法で、丸源の前身「東京商事」(解散)の2011年12月期まで3年間の所得計約35億4300万円を隠蔽、法人税計約10億6000万円を脱税したものです。「刑事責任は重く、高齢だが実刑は免れない」との結論でした。これから寒くなる折り、檻の中は辛いでしょうね。でも多分控訴して、莫大な保釈金を払って、弁護士を次々替えて、公判を長引かせているうちに寿命が来る...のではないでしょうか。
 小倉の呉服屋「丸源」に生まれ、家業を継いだ後、不動産投資に乗り出して、高度経済成長による不動産価格の高騰で莫大な利益を上げ、飲食ビル賃貸業に乗り出して、呉服屋は廃業しました。自身の事を『日本一の資産家』と称し、税金の支払いには極度に消極的な姿勢を見せ「節税をしない経営者はバカ。無駄な税金を支払う必要はない」と公言していました。2013年3月に脱税容疑で逮捕されました。この人にとっては、金が惜しいのではなく、税金を払うのがイヤという信念、すなわち確信犯です。こういう人は厳罰しかないでしょう。
(2018年11月20日)


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