407  芋煮会

メジャー度(%)
岩手県 (84%)
山形県 (75%)
福島県 (72%)
宮城県 (68%)
秋田県 (40%)
青森県 (14%)
東北地方でのアンケート調査の結果
『過去2年以内に芋煮会をしましたか?』
調査対象:各県庁所在地に住んでいる120人

 台風が来て急に寒くなった。秋になると恋しくなる芋煮会は、東北を中心に、新潟県や関東地方で行われる秋の風物詩である。愛媛県大洲市近辺では、「いもたき」という同様の行事がある。川原のバーべキューのように年中行われるものと違い、春のお花見と並ぶ野外の宴会2大季節イベントである。左は東北地方での芋煮会のアンケート調査結果、青森県が少ない理由は不明だが、青森の南部地方(八戸など)には「せんべい汁」という名物料理もある。近くに川原が多い地方で盛んなのは当然であろう。

■岩手の鶏すき風鍋
 この鍋は里芋が主役だ。各地にそれぞれのやり方があり、味付けは醤油が主流だが、仙台など味噌汁にする地方もある。入れる肉は鶏肉、豚肉、牛肉いろいろであり、岩手県では、汁がしつこくなくて上品な「とりすき風」(鶏肉)に仕立てる。最も盛んな岩手県の盛岡近辺では「芋の子喰い」と言う。
 芋の子汁に使う食材は、鶏モモ肉五十グラム×人数、里芋二個×人数、人参三人で1本、ゴボウ六人で1本、生椎茸もしくは本シメジは五人で1パック、長ネギ四人で1本、こんにゃく百グラム×人数、豆腐百グラム×人数、ここまでが基本セット、プラス太い大根10人で1本、これは汁の旨味を吸わせるものなので好きならスリムなのを10人で2本。 甘味用に大きな玉葱10人で1個。香りと彩りのためセリを少し入れても良い。里芋の選び方が重要で、大きくって見た目おいしそうなものを選ぶ、小さくて固いものはだめ。大体値段でわかる。里芋だけは安いのは避ける。調味料は醤油(出来れば薄口)、塩少々、好みで昆布ダシ、日本酒。盛り付けた後、唐辛子を欲しがる人がいる。料理は彩りが大事だから、里芋や牛蒡、こんにゃくの灰色、椎茸の茶と白、人参の赤、セリの緑、葱の白と緑でおいしそうな色合いとなる。他の食材の旨味を吸う豆腐やこんにゃく、大根などをふうふう言って食べるのはこたえられない。

■各地で様々な汁が
 山形市の馬見ヶ崎川河川敷で行われる「日本一の芋煮会フェスティバル」で有名な山形県では、地方によって「豚汁風」(豚肉)と「すき焼き風」(牛肉)に分かれる。獣肉の場合はどうしてもしつこくなるので、まめにアクを捨てたり、しょうがを切り刻んで入れてアクを抑える。三陸海岸沿岸では「寄せ鍋風」という魚を使ったものがあり、なんとイモに、じゃがいもを使ったりする。ちなみに豚汁から肉を除いた精進料理がけんちん汁である。上で「他の食材の旨味を吸う豆腐やこんにゃく、大根」と書いたが、本来の芋の子汁は、それらを入れないのが正しいかもしれない。なぜならサトイモが旨味を吸うからだ。若い男は脂ぎった豚汁が好き、お年寄りや女性は上品に透き通った鶏汁が好きという傾向があるようだ。

■サトイモ好きな日本人
 南アジアの重要な主食であるタロイモは、サトイモ科サトイモ属の植物のうち、根茎などを食用とするために栽培されている栽培種の総称で、そのうち最も北方で栽培されている品種がサトイモである(英名:taro)。上の茎も食用になり、昔は干して(ズイキ)冬の保存食として煮物などに入れて食べられた。イモは根ではなく、茎の地下部分である。煮るととろみがついて歯にもちっとした食感になる。世界一の生産国はアフリカのナイジェリアで、ナント!日本は第5位だ。また世界一の輸入国も日本で、日本人がいかにサトイモ好きかがわかる。生産量日本一は千葉県で、葉物野菜と違って手間がかからないので、サラリーマンの兼業農家などで作付けされていると聞いた。あの傘のような大きな葉が緑色に光り輝く畑が我が家の周囲にもたくさんある。今年は暑い日が続き、関東などは水遣りに注意した畑とそうでないところで、多分大きな味の差があるはず。盛岡から送ってきた芋の子は素晴らしく美味しい。
 筆者が勤務する会社でも芋煮会を過去何度か行った。荒川沿いにある地の利を生かし、彩湖道満グリーンパークという広大な公園で行う。
(2010年10月31日)

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