363  牛丼戦争


遅まきながら・・・

 政府が“デフレ”を認めた日本、牛丼の値下げ競争が始まった。12月3日に松屋フーズが牛めしの並盛りを380円から320円に60円値下げ。7日にはゼンショーの展開する「すき家」が牛丼並盛りを330円から280円に価格改定して追随した。ゼンショーは、傘下の「なか卯」でも並盛りを40円値下げするなど、牛丼“値下げ戦争”が本格化している。一方「吉野家」では並盛り380円をキープ。当面、値下げ競争には参加せず静観の構えだが、赤字の吉野家にとっては、安易に値下げするわけには行かないお家の事情がある。味を考慮すればやっぱり吉野家だが、百円の価格差はやはり大きい。


吉野家の牛丼並盛

■値下げできない吉野家
 すき家の牛丼並盛280円はBSE騒動前の値段である。“牛丼デフレ”の中で、吉野家は380円を堅持する構えだ。割高な米国産牛肉を使用し「こだわりの味」を守るには現在の値段がギリギリなのだろう。値下げに参戦すれば、赤字に転落した業績がさらに悪化するのは必至だ。かつてはデフレの波に乗って業績を伸ばした吉野家が試練を迎えている。吉野家の味が好きでも、近くにすき家があったらどちらを選ぶか?100円の違いはさすがに大きいはず。しかも「たかが牛丼」のはずである。中には牛丼いのちという方もいらっしゃるかもしれないが、大多数の人は安いことに魅力を感じているはずだ。「味にこだわる吉野家が、同業他社の値下げに安易に対応することは思想としてあり得ない」と吉野家ホールディングスの安部修仁社長は、かねてこう宣言している。吉野家が使う米国産牛肉は、BSE(牛海綿状脳症)による輸入制限の影響もあり、すき家の豪州産オージービーフに比べコストは1.5倍らしい。吉野家も10%ぐらいはオージービーフを使っている。吉野家は平成13年にそれまでの400円から280円に一気に値下げし、“安値戦争”の引き金を引いて、集客が3倍にアップしたが、今回は値下げしたところで客はそれほど増えないだろう。 食中毒を出した子会社の「ステーキのどん」の業績悪化で、連結最終損益が赤字転落した吉野家は、既存店売上高が11月まで9ヶ月連続のマイナスと苦戦している。値下げに追随したくてもできないというのが実情だろう。

■M&Aで成長するゼンショー
 吉野家が苦境にあえぐ中、店舗数で最大手となったすき家を展開するゼンショーは今年4月にまず330円に値下げした。さらに11月20日〜12月7日まで299円キャンペーンを展開し、その最終日の午前9時から280円への値下げに踏み切った。280円を再現できたのは牛肉のコストの差だけではない。積極的な買収戦略でファミリーレストランの「ココス」や「華屋与兵衛」を相次ぎ傘下に収め、多業態化に成功し、売上高は過去最高を更新する見込みだ。すき家とて、吉野家と同様に11月まで既存店売上高の前年割れが続いているが、他の業態と規模でカバーできる「総合力」がある。これに対し、吉野家はドーナツ、カレー、ラーメンなど多業態化にことごとく失敗しており、明暗を分けている。 吉野家は、原点に立ち返って店舗運営やメニューを徹底的に見直し、デフレに強い経営体質を取り戻すことができなければ明日は無い。昨週つぶやいた「餃子の王将」のように、客単価を上げる工夫、行列の出来る店をどうやって作るかがポイントであろう。

■健康に良い食べ物を
 ここでひと言触れておきたい。
牛丼やマックのようなファストフードはたまに食べるのは良いが、こういうものを食べ続けていると健康にはよろしくない。動物も植物も、生き生きと輝いて健康的な場合は餌や土壌養分が良いのである。良いものは高いかというと必ずしもそうではないが、一般的にはコストを下げるために大量生産した食糧は???である。それは化学肥料を用いた穀物然り、野菜然り、そういうものを餌として与えられている畜産物もそうだ。有機であっても、土作りが悪ければおいしいものは育たない。遺伝子組み換え作物を科学的根拠も無く拒否する人たちが居るが、これはちょっと別問題だ。遺伝子組み換えしたものが健康に悪いと思ったら食べなければ良いのであって、反対運動をするのは間違いだ。これは生産するのに都合が良いように病気への耐性を高くしたりしているのであって、これを食べて人の身体に害があることは無い。ただしおいしいかどうか、これは別である。おいしいものは健康に良い、これは人間の身体が本能で判断するものだ。牛豚鶏もそうだ。食べたくも無い餌を仕方なく食べている家畜が圧倒的に多い。例えば岩手の高原牧場で放牧された牛の肉のおいしさ、これは牛が自分の食べたいものを選別して食べているから高級牛肉となる。では豚舎で飼育されている豚は?群馬のある豚舎の豚肉は頬っぺたが落ちそうになるほど旨い。与えている餌が違うのだ。良い物を食べていると内臓の働きが良くなり、力が出て、肌も良く、疲れが溜まらない。良い食材を選び、それが高いのなら、せめて手作り料理でコストを抑えるような工夫をしたいもの。牛丼やマックは材料コストを抑えながら、おいしそうに思わせるためにドギツイ味付けをし、調味料、香辛料をドバッと使って、紅生姜やピクルスで臭みを消して・・・まあ、確かに美味いところもあるから、良いけどね(^_^) ただしラーメンやカレーなどもそうだし、酒もそうだが、良いものとそうでないものが混在している。安くておいしいものは掘り出し物でヒットするが、高くてまずいものは必ず淘汰される。健康を考えた場合の外食は大変高価なものとならざるを得ないのが現実である。

■残念な訂正
 昨週つぶやいた「野菜はこの寒波の影響と、正月に向けて一段と高くなるだろう」というのは、新聞の折込チラシを見たらそうならないようだ。「日本の農業を応援し続けます」というチラシの特売は大根とキャベツが特売価格79円!これでは農家は悲惨である。何が「応援」かというと、国産野菜しか取り扱わないということ、しかし年末年始でも野菜が安いというのは、完全に流通・小売が価格支配する現状を示している。

■2009年を振り返って
 2009年は「マネー資本主義」が崩壊した2007〜2008年の状況を受けて、本来の「
モノの経済」へ市場が回帰して行く転換の年になった。本来は物と物を交換するために、物の価値を表す貨幣が仲介役となって物流の仲立ちをしてきたのに、貨幣がインターネットを介して世界中をリアルタイムで駆け巡るようになった結果、あたかもマネーそのものが価値を持ったもののように一人歩きを始め、金銀銅貨や紙幣という現物ではなく、インターネット上の仮想通貨の形で取引されるようになった。複雑に証券化された金融商品が、モノの実態とかけ離れて取引された結果が金融バブルをもたらした。マネーからモノへと回帰したら、資源のある国、人口の多い国が強みを発揮するようになる。
 また地球環境がいよいよ目に見えて危機的状況になりつつあることが実感されて、「どげんかせんとあかん」という機運が高まったが、先般の
COP15でも先進国と新興国、途上国とのギャップは埋まらなかった。米国でも日本でも政権は民主党になった。オバマ大統領は大胆な改革政策を打ち出している。アフガンがガンになっているが(洒落ではない)、インフラ整備やバイオ等の科学技術、自然エネルギー発電の大幅拡大、医療制度改革など、多方面で素晴らしい政策を着実に実行に移そうとしている。対決の相手は、前政権を支えたマネー・マフィアだ。一方日本では史上最高の92兆2992億円という、9と2しかない2010年度予算となった。苦肉の予算か?なんと税収が支出の半分以下、収入より借金が多いというとんでもない予算、後世に回したツケはこのままでは国家の債務超過・・・>長期金利暴騰(貨幣価値の下落)・・・>国家経済破綻というシナリオがそう遠くない将来に迫っている。おそらく5年以内をメドに大胆な歳出削減、公務員削減、小さな政府、大きな地域共同社会を実現しなければ、国民がヒドイ目に会う。一例が国債を買っている人、投資信託している人、破産すれば返金は些少となる。したがって金(Gold)が今史上最高値となっている。新興国の通貨に預金逃避する人が増えている。不動産に換えるのが賢明だが、かつて不動産バブルを経験しているから怖くて・・・という人が多い。しかしマネーが紙切れになることを考えれば、本来そんなことを言っている場面ではないのだ。だからといって鳩山政権の政策が悪いと言っているのではない。これまでの政治の結果が現状をもたらしたわけだし、今の未曾有の経済危機、格差拡大、少子高齢化の現状では、極端な絞込みよりも、借金してでもやるべきことがあるというのは理解できる。問題はマスコミの在り方だ。米国に比べて日本マスコミの程度の低さ、批判することしか能が無い(そうすればウケルという国民の程度の低さが背景にあり)。いまTopに来るのが首相の献金問題、そんなことほじくる暇があったら、現在の日本の危機的状況をドラスティックに転換するための提言でもしたらどうか?みのもんたやめざましテレビの大塚さん、反省して欲しい。関口宏のサンデーモーニング、これはまともだ。多様な意見を持ったゲスト陣を集めて議論を戦わせる。適切な問題提起をしている。高収入のマスコミ人多数は官僚と同レベルの保身に走っているとしか思えない。このような状況で「良いお年を」などと言うのはいかがなものか?と思ってしまうが、昨年末2008年12月28日のつぶやき311の最後のフレーズは「もう一度戦後からの復興の時代の気持ちに立ち返ることが必要である」。1年たっても言うことが変らない。
 
皆様、良いお年を!
(2009年12月27日)

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