344  地獄に仏


宿の窓から夜明け前の松島湾

 少年野球では元旦、子供の日、旧盆、体育の日が休みである。今年は我がチームが強く、日本ハム全軟連大会に備えて旧盆も練習することになった。そこでその前に仙台の母を見舞いに車で行くことにした。13日6時15分に出発、奥松島に宿泊することにした。予めNEXCO東日本の情報で東北道の下り渋滞ピーク日というのは知っていたが、その渋滞予報どころではない大渋滞、仙台南ICから仙台南部道路、仙台東部道路、三陸道と有料道路を乗り継いで、宿に着いたのがなんと17時45分、11時間半!


宮戸島からツク島方面

 この所要時間はこれまでの新記録だろう。はやてで仙台へ、それから仙石線という便利で楽な交通手段に慣れた身には疲れ果て・・・。ただし奥松島・宮戸島の旅館は漁師宿、風呂に入って夕食、これが超豪華版!ほや、あわび、むらさきうに、えび、ひらめ、たい、いか、かれい、ほたて、さざえ、これらが刺身、煮付け、焼き、サラダ、酢の物、天麩羅、いろいろな形で出てくる。貝の茶碗蒸し、貝の炊き込みご飯、アラ汁、デザートは西瓜のほかに貝入りヨーグルト、海鮮てんこ盛りの料理となると、ビールだけではダメ、ぬる癇を1本、2本・・・、出されたものはすべて食べろとの親の教えを守ったら、立ち上がれぬほどの満腹感、これを東京の料理屋で食べたら勘定書きを見たくない、という感じ。ただ、東京でこんなほやは食べたくても多分相当な店でないと無理だろう。直前まで生きていたほやには調味料など不要、天然塩味で十分だ。内陸の人は「クサイほや」しか知らないから嫌いな人が多い。それにしてもウニの甘かったこと、アイスクリームより美味い。

■貝塚と嵯峨渓
 食べ過ぎて、運転の疲れも有り、20時過ぎには寝てしまったら、午前2時半頃目が覚めてしまった。仕方ない、ビールを1本飲んで、風呂に入ったら、海に面した見晴らしの風呂から見える空が段々明るくなってきた。朝焼けの海を見て、朝食前の散歩は里浜漁港へ、釣り人たちが船の前に集まっている。目の前に奥松島縄文村があったがまだ記念館は当然開いていない。里浜貝塚→150m右折という看板があったので行ってみた。貝塚はこの辺り一帯に分布しているのだそうだ。耕作をしない縄文人たちが海の幸、山の幸で暮らしていたということは、この一帯が豊かな土地だということを示している。

■大渋滞の松島
 宿を出て島の南へ、月浜大浜室浜と回った。これらはすべて海水浴場だが、快晴の海水浴日和だというのに有料駐車場はガラガラ、白砂の浜にも海水浴客はチラホラ、民宿がたくさんあるが、今年は恐らく上がったりで、例年に比べ収入激減だろう。島の東側の嵯峨渓とはこういうものか、と遠くから見たが、本来は遊覧船で回らないとその醍醐味は満喫できないらしい。石巻方面へドライブしようと北上したら、広くアーチした野蒜海岸は車、車、車・・・、これで納得した。ここは駐車場が無料で、しかも砂浜の海岸線が長い。やはり海水浴も人が多いほうが楽しいのだろう。石巻市で買い物したりガソリン給油した。この町は高い建物が全く無い。郊外店がたくさんある。日本のありとあらゆる郊外店の展示場みたいだ。ガストの近くにジョイフルがあったりする。九州で多い安いファミレスだ。松島経由塩釜〜多賀城と国道45号線を走ろうとした。しかし松島に近付くにつれ大渋滞、「ホテル一の坊」前で引き返して山道に入り、迂回したが、また松島が近付くと大渋滞、結局分かったのは、東から北から西から松島へ向かう道はどれも大渋滞ということ、特に仙台方面からは延々5kmどころではない。大回りで利府方面から多賀城を経由して母のいる仙台市宮城野区へ。

■バッテリー故障・・・親切
 ここでハプニングが起きた。旅程の途中、車のエンジンがかかるタイミングが遅くなって、これは帰り次第すぐバッテリー交換しなければダメだと思っていたら、プッツンしてしまった。これで今の車で2回目。西友で買い物して、駐車場でエンジンをかけようとしたらキュルキュル・・・。ボンネットを開け、バッテリーを外して点検、液は十分、セルが1個だめになったようだ。充電器かバッテリーコードを持ってきていればマイナスドライバで電極サルフェーションを掻き落して、少し充電すれば当座を凌げるが。幸いにもすぐ脇が国道45号線、近くに店がないか探そうと思案中、買い物帰りの自転車の人が「バッテリーがだめですか?」と言う。「そうなんですよ」と言って、「バッテリーを売ってくれる店かGSはどこでしょう?」と聞いたら、「自動車用品店は多賀城のほうへ行かないと無い、ちょっと待って、自分はリサイクル(解体)屋だから、中古のバッテリーがあるから」と言う。「よろしくお願いします」と自転車で走り去る姿を見送り、待っていたら、やがてトラックでやってきて素早く交換して廃バッテリーを引き取ってくれた。いくらですかと言ったら「金はいらない」と言う。「そういうわけには行きません」、「じゃあ気持ちだけ」、それで気持ちだけ払ったが、エンジンは快調に始動する、本当に有難かった。地獄に仏とはこのことだ。旅先での親切は身に沁みる。今の世の中は、他人が困っていても見て見ぬ振りという人が多い中で、恐らく30代後半と思うが、こまちの久保田さん、有難う!仙台と言う土地柄もあるのか、こういうことがあると、その街に好印象を持つようになる。もう1面では自分の運の良さも感じる。西友の駐車場であの時間に故障しなかったら、旧盆休みで久保田さんの会社が休みでなければ、この巡りあわせはなかっただろう。タラレバだが、こんなラッキーはフツー有り得ない。
 旧盆には車で移動すべきでないことがよくわかった。仙台でのハプニングもあり、こうなったら渋滞を避けてゆっくり出ることにした。

 宮戸島の自慢は嵯峨渓と里浜貝塚のようだ。嵯峨渓は、岩手県の猊鼻渓と大分県の耶馬渓と並んで日本三大渓だそうだ。一方里浜貝塚は、縄文人の春夏秋冬、豊かな暮らし振りが窺える。

里浜貝塚の案内標

 14日18時35分に仙台東を出発、泉PAのETC入り口から入り、渋滞情報で国見SA(宮城・福島境)で長い休憩、栃木県内大渋滞情報で那須高原SAで仮眠、自宅に着いたのが午前5時半、チョット寝て、小学校のグラウンドへ。こんなことやっていたら、長生きできないな(^_^)


宮戸島の里浜貝塚は日本最大級

 価値観の変化 

 景気の行く末はどうだろう。日本経済は底を打ったとの見方が広がってきた。株価の動向は将来の動向を示す指数であるから、おそらくこれは正しい見方だろう。ただ、不安定要因が多数ある。一番は雇用問題、世帯主の失業、ワーキングプアの増加、高齢者が増えて、定年後の世代も働かなければ経済全体が停滞するというのに職が無い。まだまだ働ける層が働きたくても働けない。女性労働力の活用がテーマだが、正社員で働ける恵まれた人は少ない。子育てが終わって、さあもう一度働こうと思ってもロクな求人が無い。二番は世帯収入の減少に伴ってサービス業の需要低下だ。旺盛なのは老人医療や介護サービスだけ、デパートは存続の危機を迎えつつあるし、外食産業も大ピンチだ。値下げ合戦がモノの価値を下げ、製造業にも波及している。居酒屋の生ビールの価格、飲み放題料金値下げなど、いかにして客を呼び込むかの知恵比べだ。一方でゴルフ料金値下げで、引退世代が週に何度もゴルフに行く。温泉旅行は老人団体ご一行様で賑わう。レストランの客層を見ていると、豊かなヒトとそうでないヒトがハッキリ分かれているように思う。三番は再び商品価格が上がってきたこと、石油も貴金属も、さらに工業原料もまた上がってきた。鉄スクラップさえまた上がってきた。商品先物へのマネーゲームが再び鎌首をもたげてきたのではないか。日本は困るが、米、豪、露、ブラジル、南アなどは資源国だから歓迎だろう。製造業が回復しだしたところへの原料価格アップは資源の無い日本には痛い。四番は設備投資マインドの縮小だ。製造業が復活しつつあっても、今回のショックで在庫も要員も賃金も減らしてきた経営者が、強気の投資マインド再びというには傷が深過ぎた。慎重な姿勢が目立つ。五番は日本の財政のツケ、将来世代に回したツケは社会全体に不安を与え、希望を持てと言っても無理、という若者の気持ちになっている。
 こうした中、今回の経済ショックで一番変わった点は何かと言われたら、「モノに対する価値観」ではないかと思う。環境問題もそうだが、浪費はいけないことという風潮が定着した。「良いものを大事に長く使おう」という風潮だ。すると、ちょっと目先を変えただけの新製品をドンドン出すというのは受け容れられ難い。自動車や家電品も、むしろいかに長く商品寿命を保つかということが大事であって、その企業姿勢が評価されてくる。企業内で、そんなに開発者は要らないというようになってくると見る。ソフトウェアも同様だ。職人が輝く時代が戻ってくるだろう。我々生産財企業にとっては、ヒトが生きていく上で必要なものを作る設備投資に拠り所を見つけて行かねばならない。「便利に」とか「快適に」という付加価値ニーズは減ってくるだろう。
(2009年8月16日)


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