208    般若心経

 本日はお通夜に行って来た。この時期のお通夜は寒い。しかし遺族の悲しみを思えば寒いなどと言ってはいられない。

そく のう とく くう しん ない くう かん
せつ じょ だい ぎょう げん しき しょう そく いっ じ 
しゅ いっ じん のく けい しょ かい さい ざい
わっ さい しゅ はん とく ろう めつ しき
ない じゅ やく さつ
ぎゃ さん さん そう じゅ
はん てい しん だい みゃく
けい やく ぎょう そう しゃ ぎょう
にゃ じつ みょう さん しょ だい しき ぎょう じん
しん ぎゃ しゅ ぶつ さつ ろう しき じょう しき はん
ぎょう てい だい かい やく にゃ
じん げん しき
はん ぞう にょ
せつ じょう にゃ はん みっ
ぎゃ はん しゅ はん にゃ みょう ぜっ げん くう
てい にゃ にゃ しゅう やく しん しゃ
みっ おん めつ くう
みっ どう しょう
みっ とう みっ いっ くう けん
そう どう さい みょう しき ちゅう しき
ぎゃ しゅ しゅ てん じん しょう しょ うん
てい どう やく こう ほう しき かい
くう そく くう
そう とく そく そう
ほう くう

 日本で一般的に知られている『般若心経』は、西遊記の三蔵法師のモデルである玄奘三蔵が翻訳したものであると言われている。般若心経の詳細はここでは触れない。観音様(観自在菩薩)は完全なる智慧(般若波羅蜜多)の修行をされ、人は私というものが存在すると思っているけれど、実際に存在するのは体、感覚、イメージ、連想、思考という一連の知覚を構成する5つの要素(五蘊)であり、そのどれもが私でもなく私に属するものでもなく、結局どこにも私などというものはないと言う。しかもそれら5つの要素も幻のように実体がないのだと説く。この智慧によって、すべての苦しみや災いから抜け出すことができるのだと説いている。空と色(実体)についての反語のような意味がここにある。
 NHKの「ウォーカーズ」という土曜ドラマがあった。携帯電話会社に勤める山下徳久(江口洋介)と婚約者の翔子(戸田菜穂)は、徳島の実家の寺の住職である父・徳大(市川左團次)が余命半年と母・道代(加藤登紀子)から知らされて実家に帰った。定年を迎えた上司・寺島隆彦(三浦友和)と妻・靖子(風吹ジュン)は夫婦の危機を迎えていた。パラサイトの息子のことで悩む進藤英二(森本レオ)と和江(鷲尾真知子)夫妻、これらカップルに謎めいたお遍路228回目の坂田(原田芳雄)、髪を染めた現代風の青年、自称ホストのヒロシ(瀬川亮)、人の死を間近に見過ぎた事で心のバランスを壊してしまった看護師のエリ(ベッキー)たちが、それぞれにつらかった過去を背負い、その解決を求めてお遍路をしている。札所に着く度彼らは般若心経を唱える。
 四国遍路とは、弘法大師・空海が修行された足跡をたどって、徳島県鳴門市の札所一番霊山寺から、高知県、愛媛県、最後の八十八番・香川県大川郡長尾町の大窪寺まで八十八ヶ所の霊場を巡拝することを言う。徳島を「発心」、高知は「修行」、愛媛が「菩提」、香川は「涅槃」の道場とされており、これは仏教の悟りの境地や世界観を絵図にした胎蔵界曼荼羅になぞらえたものだという。全行程は1,300kmとも1,400kmとも言われているが、これを順々にお参りすることで煩悩を1つずつ消していき、本当の自分に目覚め、心身を磨く信仰の遍路である。札所はどこから始めてもよく、札所の番号順に時計回りで巡拝することを「順打ち」、その反対に巡拝することを「逆打ち」という。昔ながらに歩く人、公共交通機関を利用する人、団体バス、車、オートバイ、自転車など様々な形態がある。

 高校サッカー 

 第85回全国高校サッカー選手権は1月8日、東京・国立競技場で決勝戦が行われ、盛岡商(岩手)が作陽(岡山)を2−1で破り、初優勝を飾った。
 0−0のまま前半を終え、後半に入っても互角の勝負だったが先制したのは作陽、シュートがクロスバーに当たって跳ね返ったボールを押し込んだ。しかしここから盛岡商の猛反撃が始まった。PKを獲得したが、キッカー林は狙い過ぎてわずかにゴールを外れた。しかし数分後、その林がゴールを決めて、盛岡商が同点に追いついた。時間が少なくなってPK戦の様相が濃くなってきた40分、左からのクロスに合わせた千葉がゴールを決め、盛岡商が2−1と逆転した。スタミナと一気にゴール前に迫るスピードが勝因だった。岩手県勢は昨年も遠野がBEST4へ勝ち進んだが、優勝は初。
 実はこの試合に先立つ6日の準決勝、国見、野洲と並み居る強豪校を打ち破って準決勝に進んできた千葉の八千代との戦い、国立競技場はそれまでの好天がうそのように冷たい雨が降りしきり、芝に水が溜まってパスが途中で失速する最悪のコンディションだった。「天は我に味方せり」大手術から復帰間もない盛岡商齋藤監督(59)は言った。雪の中でも練習を続けてきた盛岡商の監督と選手たちは「相手がどこだろうと関係ない。試合にはじょっぱりの精神で臨む」と語っていた。「じょっぱり」という方言は意地を張ること、またそのような人を表す。この試合でも残り時間わずかとなってPK戦かと思われたときに、盛岡商の右コーナーキックのチャンスから、林が上げたクロスボールが八千代のGK植田の正面へ。ここまでファインセーブを続け、盛岡商の猛攻を防いできた植田がパンチングで正面にはじき返そうとしたボールが自身の足に当たってオウンゴールとなってしまった。わずかなロスタイムが過ぎて試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、ゴール前で顔を覆い泣き崩れた植田の姿が印象的だった。「お前のせいじゃない」と仲間から声を掛けられても、その口惜しさ、脱力感がTVの画面から痛切に感じられた。
(2007年1月8日)


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