企業犯罪
最近のニュースで工作機械メーカー「セイシン企業」の不正輸出事件や、公正取引委員会の水道メーターの談合摘発が報じられた。
後者は1992年に談合の排除勧告を受け、1997年にはその後も談合を続けていたとして刑事告発されて合計34人の有罪が確定している。98年に東京都が損害賠償請求訴訟を起こし、総額20億円をメーカー側が東京都に払うことで昨年和解が成立した。2002年5月の独禁法改正で法人への罰金が1億円から5億円に引上げられた。今回の公正取引委員会の動きは、2度も摘発されながら談合をやめようとしない業界体質に頭にきているように見受けられる。ただ、弁護するわけではないが、水道、ガスメーターのような公共料金の課徴指針となる計器は当然ながら精度が求められる。また8年で交換が義務付けられている。当然官庁の厳しい監督・指導のもとにあり、採用申請し、許可を受け、官庁の監督官が目盛校正〜合格〜出荷許可するという特異な体制下で生産・販売されている。自然に官庁をトップとする業界が出来上がる。公正取引委員会は第三者の官庁だから、これら官庁・業界の仲良しクラブなんてくそくらえだ。同様のことは農水省の農業集落排水設備でもあったし、気象センサなどでもあった。気象センサも精度が命だから気象庁検定付きであるかないかは価格面で大きな差となって現れた。業界から見ると有難いお墨付きである。おかげで世界各国の標準であるかのような位置付けのフィンランド製某メーカーが日本だけ国のシステムに入り込めない。しかし民間では着実に勢力を拡大し、そこへアメダスの登場、さらにアメダスの隙間を縫って補完する農業や通信、サービスなどの気象観測システムニーズが高まり、気象庁検定付きでなくても高精度ですよ、というメーカーの宣伝も効果があって、安価な気象センサが普及していった。すると検定付きセンサでぬくぬくとしていたメーカーにも価格破壊の波が襲い掛かり、気象センサメーカーは一気にサバイバル競争へと突入していった。公正取引委員会も単に談合はダメと言うだけでなく、この例に見られる規制緩和へと他省庁への働きかけを強めるなどの動きをすべきと思う。水道メーターのメーカーはこの10年で十分過ぎるほど罰を受けてきた。我社の近くにある大手メーカーなど、社屋を売り、リストラし、往年の面影が無い。これ以上の懲罰は事業意欲を失わせ、海外メーカーへの代替を促す結果に終るであろう。
6/10〜13に開催された国際食品工業展でセイシン企業は大きくブース展示していた。ジェットミルなどの各種粉砕機器の大手であり、各種の展示会にも積極的に出展しているので、成長企業だと注目していた。工場や研究部門が我が社のすぐ近くにあり親しみも感じていた。それだけに今回の報道にはビックリしたが、このような報道において注意すべきことがある。報道を鵜呑みにすべきではないということだ。特に今回の事件では報道の裏に胡散臭いものを感じるのである。とかく日本マスコミと国内世論は、企業に対して強きを助け弱きをくじくように思うのは筆者の思い過ごしだろうか?たとえばムネオハウスで三井物産はどれほどの打撃を被ったか?水道メーターの談合摘発でメーカー各社が受けた打撃に比べてなにほどのものだったか?関係者が処罰されて企業姿勢が改まると誰が信じているか?
セイシン企業は都内の機械商社を通して1994年3月、別の都内の在日朝鮮人が経営する商社にミサイル関連機器であることを秘してジェットミルとプラント一式を販売し、この商社が貨客船「万景峰(マンギョンボン)’92」号で北朝鮮に輸出したと報じられている。ミサイルやロケットの推進薬に使う「過塩素酸アンモニウム」を細かく砕ける機械である。また、イランへ輸出したジェットミル2台は、いずれもイラン人の経営する商社が仲介したが、この商社との接点は、同社が発送した大量のダイレクトメールだった。ジェットミルは元々、ドイツなどの欧米の技術が進んでいたが、87年に「ミサイル関連技術輸出規制」(MTCR)が国際合意され、91年にジェットミルも規制対象となった。外為法違反容疑で12日に逮捕されたセイシン企業社長、植田玄彦容疑者(68)は警視庁公安部の調べに対し、否認を続けていると報じられている。植田社長は大学卒業後、別のメーカーで粉体測定器の研究開発をしていたが、68年に独立して友人らと同社を設立、社長に就任した。ジェットミルなどの各種粉砕機器の製造・販売を手掛け、業界2位にまで同社を押し上げた。02年3月期の売上高は54億円の中堅企業である。問題は輸出規制対象商品となって以降、各社きちんと法的手続きをしているはずだが、セイシン企業は規制対象外として輸出許可を得なかったことである。会社は民生品と主張、警視庁は軍事転用可と判断している。
ホームページにおいて会社側の発表は下記の通り。
今回の事件に関して当社は、一切違法行為をしておりません。警察の捜査には全面的に協力してまいりました。捜査開始から6ヶ月間にわたり、延べ600名に及ぶ当社従業員らが、連日夜遅くまで厳しい事情聴取を受けてきましたが、今さら社長をはじめ5人もの会社関係者が逮捕されたのは、全く理解が出来ません。私どもは、あくまでも今後の捜査、裁判で事実を主張して参ります。6月12日管理部 |
セイシン企業は野心に燃える若者の集団である。 |