414  ダイバーシティ

 暖かくなってきました。梅の花が咲いています。近所の河津桜の花もほころび始めました。もうすぐ二十四節気の「雨水」です。この時期は少年野球の卒団の季節なのです。六年生が引退して代変わりします。下右の河津桜の写真を撮った翌日、土肥温泉は大雪に見舞われ、帰って来るのに苦労しました。伊豆で大雪ですから、東京も埼玉ももちろん大雪、あちこちで停電が発生し、交通も遮断され、やっとの思いで池袋に着いたら、帰宅できない人のために終電を延ばして運行してくれていて、助かった〜と思ったら、ふじみ野駅では長〜いタクシー待ち、仕方なく大雪をズブズブと踏んで歩いて帰宅したら午前3時を回っていたという、もう二度と経験したくないような思い出です。折角の温泉旅行が、しっぺ返しのような大雪体験で、暖かくなってきたと思っても油断できないなぁと思ったものです。しかしこの年はこれでは終わりませんでした。2014年2月14日のバレンタインデー、関東地方は120年振りの大雪に見舞われたのです。地球温暖化で、もはや〇〇年振りなどと言う言葉には慣れっこになってしまいました。これから先どんな災害が待ち受けているか...。

源平咲きの紅白梅 西伊豆・土肥温泉の河津桜(2014年2月7日)


■ 東日本大震災の余震
 2月13日(土)23時8分頃、久々に大きい地震がありました。もう寝ていましたが、思わず起きてテレビを支えました。我が家では震度3ぐらいだなと思いました。宮城県と福島県で最大震度6強を観測したとニュースでやっていました。スマホが唸り、各テレビ局も一斉に地震のニュースになりました。震源地は福島県沖で、震源の深さは55kmなので広範囲で揺れ、地震の規模を示すマグニチュードは7.3、2011年3月11日の東日本大震災の余震とのことです。あのときは埼玉県戸田市美女木の社屋に居て、ものすごい揺れで死ぬかと思いました。会社の車に乗り合って帰宅したらふじみ野市の我が家は何事もなかったような有様、戸田市ではテレビが落ち、本棚が倒れ、パーティションさえも倒れるすさまじい状況を体験しただけに、余りの違いにビックリしたものです。その後東大地震研究所の発表で、我が家のある武蔵野台地は、関東ローム層の厚さ6mの岩盤の上にあるので、群馬県渋川市一帯と共に、関東で最も揺れない地域なのだということが分かり、移住してくる人が増えました。


2011年3月11日埼玉県戸田市美女木の社屋の中はこんなことになりました


■ Saint Valentine’s Day
 本日はバレンタインデーです。「恋人たちの日」ですね。3世紀のローマで兵士たちの婚姻を禁止していたローマ帝国皇帝の命令に従わず、多くの兵士たちを結婚させていたキリスト教司祭・ヴァレンチヌスが処刑されたのが2月14日でした。後世の人々は、ヴァレンチノ司祭の勇気ある行動を讃え、彼を愛の守護神「聖バレンタイン」としてまつるようになりました。そして、ヴァレンチノ司祭が処刑された2月14日を「Saint Valentine’s Day(=聖バレンタインの日)」と呼び、お祈りをするようになったのです。ただし今では皆様ご存知と思いますが、「女性から男性へチョコレートを贈る」という風習は、日本独自のものです。チョコレートの販売促進を目的とした、菓子メーカーの商業的な背景から広まったようです。ちなみに米国では男性から女性にプレゼントを贈る日だそうですよ。「ホワイトデー」も日本独特みたいですよ。


2014年のバレンタインデーは大雪で、富士見市民総合体育館の屋根が崩落しました


■ 森会長辞任
 森喜朗オリ・パラ組織委員会会長(83)が女性蔑視発言問題の責任をとって辞任しました。森会長は2021年2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などと発言し、女性蔑視とも受け取れる発言として、国内外で波紋が広がりました。森会長は翌日すぐさま謝罪会見を開き、スピード感があるなぁと思いましたが、これがやぶへびでした。IOC(国際オリンピック委員会)は2月4日時点で「森会長は謝罪した。この問題は決着したと考えている」との声明を出しましたが、世論や選手、協賛社の多くから非難の声が相次いだことを受け、9日になって、この発言を「完全に不適切だ」などと指摘する声明を発表しました。これで森会長は崖っぷちに立たされました。


やぶへび・・・瀬戸大也の出身地・埼玉県毛呂山町の野球場隣の林にある看板


■ 失言大魔王
 森喜朗氏が「失言大魔王」と言われていることは、古い人間なら知ってますね。今回女性蔑視だと言われたのは、かつての一連の発言との流れがあるのです。しかしその失言もかつてはご愛敬でした。一例を挙げましょう。2000年5月、当時日本の首相だった森氏が米国のクリントン大統領との会談の際に、“How are you?”と言うべきところを“Who are you?”と言い間違えたとの逸話があるのです。どうみても冗談としか思えませんが、クリントン氏がユーモアを交えて“I'm Hillary's husband”と答えたところ、森氏がすかさず“Me too”と返したという笑い話です。この話は各メディアによって、まことしやかに報じられましたが、のちに毎日新聞の記者が自作のジョークであったと告白したのです。いまだにこれがジョークであることを知らず、本当の話だと信じている国民もまだまだ多いというのですから面白いですね。森さんならさもあらん、ということのようです。

■ 女が多いと会議が長時間化
 今回の失言事件を最初に聞いた時、何が問題なんだろう?と思いました。「女が多いと会議が長時間化」、「競争意識が高いので一人発言すると自分も言わなくちゃということになる」・・・とかおっしゃったそうで、ワイワイ発言者が多い会議は良いことでは?などと思ったのです。女性が増えたほうが活発化するのならドンドン女性を増やすべきではと思いました。むしろワンマン経営者の仕切る社内会議で、特に発言もなく「御意!」で通る会議はコワイなぁ〜などと考えていました。ところがどうやら問題はそこではなかったようです。今回の森会長の発言に会議の席上では若干の笑いが起きたものの、逆にこれを諫めるような話は出なかったそうです。リップサービスの上手い森会長は、「ここだけの話」をやったのでしょう。「文科省が女性を増やせとうるさいし...」などとも言ったようです。首相経験もある人が何気なくそんなことを言うのは、私たち日本人の社会にそれを受け入れる下地があるからではないかと言うコメンテーターも居ました。そして、今回の失言事件が広がりを見せたことで、人々の意識が随分変わったんだと実感しました。何が問題なんだろう?と思ったということは、自分は古い人間なのだと思う一方、あらゆる分野で男女の差を無くすのが当然という風潮の中で物事を良いほうに捉えようという意識が働いていると感じました。

■ 辞任あいさつ
 森喜朗氏は辞任あいさつで「私が余計なことを申し上げたのか、これは解釈の仕方だと思いますけども、そう言うとまた悪口を書かれるのだが、私はそういう意図でものを言ったつもりはないんだが、意図的な報道があったんだろうと思いますけども…。えー、女性蔑視なんていうことを言われまして、私はこの組織委員会に入ってから、できるだけ女性の皆さんを称えてきましたし、女性の皆さんに発言してもらえるように、絶えず勧めてきました。そういうふうに、私自身は女性を蔑視するとかなんとか、そういう気持ちは毛頭ありませんが、この一言でこういうふうになったということは、私自身の非常に不注意もあったのかもしれませんが、長い83年の歴史の中で、本当に情けないことを言ったもんだなと思っています」と述べました。

■ アンガーマネジメント
 ここまでの大騒ぎになったのは謝罪会見が火に油を注いだからです。意地悪質問の記者に逆切れしたのはまずかったですね。言葉尻をとらえようとしてくるのは記者会見や国会質疑ではいつものことです。以前、看護師・保健師・精神保健福祉士の田辺有理子さんの「アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版)という本を紹介しました。誰かに何かを言われてカチンときた時、「勝手なことを言いやがって!」、「もう!いい加減にしろ!」などと、心の中では叫ぶけれど、声には出さないということがありますね。相手も怒っていてにらみ合いになっているような時には、相手があなたに優しい言葉をかけてくれるようなことは期待できません。そこで、自分で自分に向かって気持ちを落ち着かせて冷静さを取り戻すための言葉をかけるのが良いのだそうです。これが「魔法の呪文」です。怒っている時でなく、いざという時のためにあらかじめその言葉を準備して置くと良いそうです。森喜朗氏はアンガーマネジメントを勉強すべきでしたね。

■ ジェンダー
 森喜朗氏は女性蔑視なんて意識は無かったみたいですが、そもそもジェンダーに触れることそのものがいけなかったことを知らなかったのでしょうか。ジェンダー(gender)とは生物学的な性別(sex)に対し、社会的・文化的につくられる性別のことを指します。男女の社会的・文化的役割の違いや男女間の関係性を示す言葉です。3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」です。これは、女性に対する差別撤廃と、社会開発への完全で平等な参加に向けた環境整備を目指してゆくことを目的に定められました。
 前々回”DX”「デジタルトランスフォーメーション」に触れた中で、2019年の世界幸福度ランキングで日本は156ヶ国中58位、男女格差を示すジェンダーギャップ指数は121位だと書きました。こういうことを意識していたら森喜朗氏のような発言は無かったはずです。筆者は中国の合弁会社を訪問した折、女性社員が力仕事をバリバリやって、男性社員がその手際を感心して見ている姿を見て驚きました。日本社会はジェンダーギャップがあるんだなぁと実感したものです。日本では力仕事は男がやるもんだという暗黙の了解があります。それ自身がジェンダーギャップなのです。最近では大型ダンプカーやトラック、バス、タクシーなどの運転手にも女性を見かけますし、林業や建設業でも女性が働くようになってきました。

■ ダイバーシティ
 「多様性」という意味のダイバーシティを女性活躍とか障害者雇用などと捉える人が居ますが、これは、多様性の一部に過ぎません。ダイバーシティという言葉を初めて聞いた時、潜水夫の街かな?と思いました。そうではなくて、Diverse=多様ということのようで、多様ならVariousじゃないの?などと思ったものです。やはり英語と日本語では趣が違う分野の言葉だということです。ダイバーシティは、特定の人々を性別や人種などの生まれ持った属性でくくり、それを保護することではなく、一人ひとりが持っている違いを認め、尊重しようということのようです。LGBTなどもまさにそうですね。「空気を読む文化」があるほど同質性の強い日本だからこそ、ダイバーシティは極度に遅れていると言われています。そもそも難民も受け容れない国ですからね。今回の女性蔑視発言が広がりを見せたのは、日本でもダイバーシティの意識が拡がってきたことを示すのでしょう。

■ 株価上昇
 株価の上昇が止まりませんね。以前も書きましたが、そろそろバブル崩壊して良い頃なのですが、30年に一度のサイクルでやってくるバブル崩壊、もう30年を過ぎましたが、いまはちょっとこれまでの法則とは違います。米国の株価は恐ろしい...でも景気から見て米国は理解できますが、どうして日経平均株価まで上がるの?と言えば、これまたご存知の通り、企業業績以前に日本の株も投資家のマネーゲームの一環ですから、米国連動なのです。その上、日銀やGPIFが株や投信を買っていますから、下げるわけには行かないのです。日本の民間企業は国有化?などとさえ言われています。米国の年金生活者が豊かなのは株のお蔭だというのは良く言われる話です。日本も同じような一面もあります。
 日本の2020年度実質GDPは前年度比マイナス5.6%になる見込みです。実体経済にしたがえば株価の下落が懸念されても良いのですが、そうはならないでしょう。何故ならアメリカは経済対策として220兆円、日本でも108兆円の対策をとっています。さらに、日本政府は12月8日に総額73兆円の追加経済対策を、そして1月15日には米国のバイデン氏が200兆円の新しい経済対策を発表しました。これほどのお金がばらまかれると、実体経済は弱っていても、インフレが進み、株や不動産が今後さらに大きく値上がりすると考えられます。その先にあるものはバブル崩壊でしょうが、危機が迫りながらもまだまだ株価は上がるでしょう。そしてカネ余りですから企業業績とは関係なく、投機的な株売買となるはずです。短期的には投信も有用でしょう。

■ リベンジ消費
 COVID-19第三波が落ち着きを見せてきました。緊急事態宣言が解除されると、これまで巣ごもりで鬱屈していた消費がワーッと出てきて、いわゆる「リベンジ消費」需要が高まるはずです。株価も上がり、何かコワイ...と言いながら、GoToトラベルが再開された暁には・・・行くゾ−−−−−!。

   

■ COVID-19ワクチン接種用注射器
 2021年2月12日、ベルギーから航空便で製薬会社ファイザー(本社:米国)が開発した新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)ワクチンが到着しました。日本では14日にもファイザーのワクチンが承認され、17日から医療関係者向けに接種が始まります。ところが、田村厚生労働大臣が、この期に及んで接種可能人数が大幅に減ることを発表しました。ファイザーのワクチンの1回あたりの投与量は0.3ml、一般的な従来型の注射器を使うと、“デッドスペース”にワクチンが残ってしまうため、1つの瓶から接種できるのは、これまで言われていた6回ではなく5回分になるそうです。厚生労働省は当初ファイザーと「ワクチン1容器あたり6回接種」を基本として計算し、計7200万人分(1億4400万回分)を契約しましたが、現在購入した2億本以上の注射器では一つの容器につき5回分しか採取できないため、ファイザーワクチンの接種を受けることができる人員が20%近く減ることになったのです。米国はいち早くこれを察知して、特殊な注射器を購入すべく変更し、韓国でも手を打ったのに日本は・・・そもそも現官房長官の加藤氏が厚生労働大臣だった昨年7月、ニプロやテルモなど注射器のメーカー6社を集めて増産を要請したというニュースがあって、そのときテルモは、「急激に増産するのは難しいが、国難でありチームとして要望に応えるために、増産体制を約束した」と言っていました。

■ 注射器の構造
一般的な注射器の構造(テルモのHPより) ローデッドタイプ目盛り合わせの注意(ニプロのHPより)
一般的な注射器と特殊な注射器の構造の違い  
 注射器は一般に液体を注入および吸引するために用いられる器具です。医療機器業界ではシリンジ(Syringe)と呼ばれますが、構造としては上図のように円筒形の筒(シリンジ)と、可動式の押子(プランジャ)、注射針から成り、注射針が筒先にあらかじめ結合されたタイプや針だけ交換するタイプなどがあります。すなわち狭義のシリンジは外筒部分を指します。普通の注射器は左図の構造なので、完全に押し込んでも、筒先とガスケットの間にわずかに液体が残ってしまいます。右図はガスケット形状を見てお分かりのように、筒先にフィットする形のガスケットなので、残る液体の量がわずか、すなわちLow deadなのです。このタイプは先日NHKテレビでは「日本ではニプロしか作っていない」と言っていました。ニプロにとっては大宣伝ですね。

■ 余談ですが・・・画期的な注射針
 継続的に肉体的な苦痛を余儀なくされる糖尿病患者が用いるインスリン自己注射器などでは、注射針の先端部を細くして、針刺し時の痛みをほぼなくした注射針(ナノパス33)が2005年に日本で開発され、大ヒットしました。これについては以前も紹介しましたが、これを開発したのがテルモです。この注射針の大ヒットで一躍有名になりましたね。この技術も実は日本が誇る町工場から生まれたというエピソードは有名です。
 この他にもライトニックス(兵庫県西宮市)が2012年に発売した、採血時の痛みを軽減する使い捨てタイプのランセットや、2013年に菱光産業(三菱マテリアルの子会社)が大学や精密機器メーカーと共同で針の先端部分を先鋭化する機器を売り出して注目されました。プラズマ処理技術を利用し、外径が大きい注射針でも先端部分を細く、滑らかに加工することが可能となったのです。注射針の輸出増加は、日本の高い技術力により開発された新製品が世界に販路を広げた一例です。日本の医療機器では、CT(コンピューター断層撮影装置)や超音波診断装置などが外国に比べ比較優位ですが、強いブランド力を持つメーカーがある米国はもとより、中国、メキシコなど新興国が輸出を伸ばした結果、日本の輸出シェアは落ちてきました。CTや超音波診断装置についても、中国や韓国の他、フランスなど欧州も追い上げを見せています。

■ 今度は「アルペン」の創業者が容疑者に?
 前回は原田泳幸氏(72)が警視庁渋谷署に逮捕されたことを書きましたが、今度はスポーツ用品販売大手「アルペン」の創業者である水野泰三氏(72)が「強制わいせつ致傷」の疑いで愛知県警に逮捕され、容疑者として2021年2月12日朝、身柄を検察に送られました。2020年11月、男女の出会いを目的とする「マッチングカフェ」と呼ばれる店舗で女性と知り合い、名古屋市中区のホテルで42歳の女性とトラブルになったようで、取り調べに対し、容疑を否認しているとのことです。ただ水野氏は「逮捕にともない取締役の職務を果たすことができない」として、アルペンの会長を2021年2月12日付で辞任しました...72歳ですよ。どうなってるんでしょう...

■ 丸源ビルオーナーの場合
 以前も紹介しましたが、銀座や中洲、小倉などに「丸源ビル」の名称で多くの雑居ビルを所有する日本の億万長者の1人、川本源司郎氏、1932年生まれですから今年89歳ですね。Wikipediaによれば、『1000億、2000億は簡単に動かせる』と豪語し、金銭に執着しない一面がある一方で、税金の支払いには極度に消極的で「節税をしない経営者はバカ。無駄な税金を支払う必要はない」と公言していたのは有名な話です。節税対策には細心の注意を払っていましたが、2013年3月6日、会社の所得約28億円を隠し、約8億円を脱税したとして、東京地検特捜部に法人税法違反容疑で逮捕され、2018年11月20日に東京地裁にて懲役4年、罰金2億4千万円の実刑判決を言い渡されました。判決を不服として控訴しましたが、2020年1月29日に東京高裁はこれを棄却、更に今年2021年1月29日に最高裁が上告を退ける決定をし、懲役4年、罰金2億4千万円の実刑が確定することとなりました。“結婚しない理由”を「子供ができて変なことされても困るからな。この商売をやるのは俺1人でいいんだ」と答えていたという人です。「俺が死ねば資産は国に接収されて丸源は終わり。それでいい」とも言っていたそうです。やれやれ、ご高齢のムショ暮らし...大変でしょうね。

■ 熊沢元農水事務次官の場合
 これまた以前も紹介しましたが、東京都練馬区の自宅で2019年6月1日、長男英一郎さん=当時(44)=を刺殺したと自ら110番通報して殺人罪に問われ、一審で懲役6年の実刑判決を受けた元農林水産事務次官、熊沢英昭被告(77)の控訴審判決が2021年2月2日、東京高裁であり、裁判長は一審判決を支持し、弁護側の控訴を棄却したというニュースがありました。被告は狂牛病(牛海綿状脳症:BSE)の国内上陸を許し、畜産業界を苦境におとしいれたとして責任を追及され、2002年に引責辞任した人です。しかし9千万円弱の退職金をもらい、その後もチェコ大使なども勤めるなど、好きじゃない言葉ですが「上級国民」として金銭的には余裕だったでしょう。しかし息子はいじめに逢い、日大を卒業はしましたが就職氷河期で辛い目にあって次第に精神を患うようになったようです。両親は息子のためにいろいろと手を尽くし、アパート収入などで息子が暮らしていけるように部屋も確保して手も打っていたようですが、事件前に息子は家に戻ってきたようです。

■ 引きこもりの息子の暴力に悩む家庭が多い日本
 事件当日、自宅隣の小学校で運動会が開かれていて、昼食の準備中に熊沢被告は英一郎さんの「うるせえな、ぶっ殺すぞ」という言葉を聞いたそうです。このままでは息子が社会的迷惑をかけるかもしれないと考えたのかもしれません。被告本人は「事件当日に息子から『殺すぞ』と言われ、とっさに包丁を持ち出して刺した」と罪を認めて、一審では量刑を争う姿勢でしたが、二審で一転弁護側が「正当防衛などが成立する」として無罪を主張していました。この事件では被告への同情の声が数多く聞かれました。同じような引きこもりの息子の暴力に悩む家庭が日本ではものすごく多いのだそうです。ましてや妹が兄のせいで結婚もできないと悲観して自殺しているということもあって、余計に同情の声があったのでしょう。執行猶予付きの判決を求めたのに対して裁判員裁判の1審が出した結論は実刑判決でした。事件の質は全く異なるものの、池袋暴走事件で自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)が無罪主張してから10日後、熊沢被告も無罪を主張して控訴したのです。社会的地位が高い高齢男性が被告となっている事件で相次ぐ無罪主張ということもあり、再び注目を浴びました。一審判決では執行猶予がつくのではないかと期待していたのかもしれません。しかし、英一郎さんの遺体には首などに36ヶ所もの傷が残っていたそうです。正当防衛を言うには無理があると裁判所は判断したのでしょう。ああすればよかった、こうすればよかった...事件について論評することは勝手ですが、辛い事件ですね...

■ 高齢者の事件
 最近高齢者の事件が多いように感じるのは、それだけ高齢化が進んでいるからです。今回の主役・森喜朗氏は「老害」と言われることに激しく反発しました。辞任あいさつで「誰かが老害、老害と言いましたけども年寄りは下がれというのは、どうもいい言葉ではないので、子どもたちに対する、何と言うんですか、いろんな言葉がございますけども、老人もやっぱりちゃんと日本の国のために、世界のために頑張ってきているんですが、老人が悪いかのような表現をされることも極めて不愉快な話であります」と述べました。一時会長を禅譲しようとした川淵三郎氏は1歳上の84歳、そういえば麻生太郎副総理・財務大臣は80歳、二階俊博自民党幹事長はもうすぐ82歳、お元気ですね。高齢者も活躍できることこそダイバーシティですから、「老害」だなどと言ってはいけません。
(2021年2月14日)


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