大井ウエスト

夏の甲子園2015



大井ウエスト出身の選手も甲子園を目指そう!

2014年第96回の模様 → 夏の甲子園2014


第97回高校野球選手権大会夏の甲子園

今回は甲子園大会100年です


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甲子園と言えばこの歌だ…栄冠は君に輝く(作詞:加賀大介 作曲:古関裕而) 少年野球の開会式の入場行進でもこの曲を使う。いつか甲子園をめざせ、という気持ちを込めて・・・

♪ 雲は湧き 光溢れて 天高く 純白の球 今日ぞ飛ぶ

♪ 若人よ いざ まなじりは 歓呼にこたえ

♪ いさぎよし 微笑む希望 ああ栄冠は君に輝く



 組合せ   朝日新聞予想   筆者予想   頑張れ!花咲徳栄   1回戦   2回戦   3回戦   準々決勝   準決勝   決勝 

ページTOPへ  昨年埼玉代表・春日部共栄は敦賀気比に2回戦敗退

 一昨年2013年、センバツ優勝の浦和学院は夏の選手権でも優勝候補筆頭で、春夏連続優勝が期待されていましたが、甲子園初戦で仙台育英にまさかの敗戦、エース小島が不調なのに手を打たなかった浦和学院の森監督の采配に疑問符を付けました。甲子園では優勝候補必ずしも勝つとは限らないのです。
 昨年2014年の埼玉県代表春日部共栄は、開会式直後の大会緒戦で、強力打線を誇る春のセンバツ優勝校龍谷大平安と当りました。優勝候補筆頭といきなりの対戦ですが、春日部共栄は関東ナンバー1の強豪なので、龍谷大平安と言えども予断を許さないとの事前予想でした。点の取り合いにしたくない春日部共栄は、防御率0.85の左腕金子大地とプロ注目強肩捕手守屋元気のバッテリーが踏ん張って、3点以内の接戦に持ち込みたいと本多監督は話していましたが、1回表集中打でいきなり5点奪い、金子がうまいピッチングで打ち気をそらし、埼玉県大会同様の安定したピッチングで快勝しました。
 春日部共栄の2回戦の相手は敦賀気比、エース平沼翔太は高校球界トップクラスの投手です。しかも強力打線、1回裏、4番が金子大地の高めストレートを叩き、バックスクリーン左側「グリコ」看板横にぶつける特大の大会第17号3ラン。試合は一方的な展開となり、埼玉県代表としては屈辱的な1-10敗戦に終わりました。ただ、中盤金子大地が立ち直り、試合がこう着状態に入って、終盤逆転も有り得るかと思われた矢先にまさかの投手交替、本多監督の采配に疑問符を付けました。
 これまで、強いと言われながら埼玉県のチームに未だ夏の大会優勝が無いのはナゾと言われていますが、筆者の見るところ、甲子園の名監督と言われるような方々に比べて、采配の問題がありそうな気がします。強いチームを作るところまでは素晴らしいけれど、夏の甲子園で勝ち切るにはあとひとつ、足りないものがあるのでしょう。木内マジックとは言いませんが、また不動の西谷とも言いませんが、選手の状況を把握して、適材適所の配置、もしくはギリギリの場面で選手に120%の力を発揮させる采配です。今年、埼玉栄に若生監督が復帰して、これが刺激になれば良いと念願します。


ページTOPへ  ■ 夏の甲子園2015開幕前予想


 大会主催の朝日新聞の記者達が事前予想した結果が載っていました。筆者の予想はちょっと違いますが、それによると有力5校は、
@東海大相模…二枚看板:左投げの小笠原慎之介と右の吉田凌が、ともに最速150キロ超。こんなチームは過去の甲子園を振り返っても記憶にありません。昨年も優勝候補の一角に挙げられながら、初戦敗退でした。捕手の長倉や遊撃手の杉崎ら、そのときの選手が7人残り、今夏にかける思いは強いはずです。渡辺監督が率いる横浜高校との決勝戦ではドラ1候補のエース小笠原慎之介が7安打4奪三振で完封。右腕の吉田凌は縦スラを武器とする技巧派タイプ、左腕の小笠原慎之介は速球派タイプ。二人をどのようにして使い分けるのかという門馬監督の采配が重要なカギとなりそうです。初戦の聖光学院は戦後最長の9年連続出場で、出場校の中で唯一無失策という堅実なチームです。東海大相模にとっては嫌な相手と初戦で当たる結果となりました
A敦賀気比…史上8校目の春夏連覇がかかります。昨夏BEST4、今春優勝、その立役者はもちろんエース平沼翔太。少年野球の頃、巨人〜阪神の故小林繁投手が見て、「この子は必ずプロ野球の投手になる」と言ったという逸材です。最速144キロのストレートと多彩な変化球を武器とする本格派右腕で、打者としても高校通算15本塁打の強打者です。決勝では序盤に3点リードされたものの、中盤に追いつき、最終回に主将のタイムリーでサヨナラ勝ちするという劇的な展開で甲子園出場を決めました。センバツで2打席連続満塁弾を放った松本哲幣もスタメンに名を連ねており、マークが厳しくなることが予想される中で結果を残すことができるのかという点に注目です。初戦の相手である明徳義塾は全国選手権の初戦で負けたことのないチーム、ここを突破できるかが鍵です。選抜後も慢心はまったくなく、エース平沼は絶好調ではないけれど、打者の狙いを外して打ちとる投球術は高校生離れしています。福井大会でやや低調だった打線がどれだけ援護できるかがカギになりそうです
B静岡…選抜の準々決勝で敦賀気比に3-4惜敗しましたが、1番を打つ鈴木将に内山、堀内、安本の大型選手が揃う打線は今大会の中でもトップクラスの破壊力です。強肩強打のキャッチャー堀内謙伍、走攻守三拍子揃った安本竜二らがチームを牽引します。プロも注目する2年生エースの村木は最速146キロにフォークボールと成長し、好投すれば悲願のVも見えてきます。春から破壊力が格段に増したようです。3年生の左腕村松とともに投手陣が踏ん張れれば、公立勢として2007年の佐賀北以来の頂点も見えてきます。まずは強打の東海大甲府との「富士山決戦」がカギになります
C智弁和歌山…甲子園歴代最多、63勝の高嶋監督が、投打に高いレベルのチームに仕上げてきました。エース左腕の斎藤祐太は32回を投げて3失点、被安打14で与四死球もわずか6と、抜群の安定感を誇ります。2番手以降が気になるところです。看板の強力打線は打率3割2分9厘と智弁にしては爆発力に欠けましたが、山本、西山、春野ら素材は素晴らしい。高嶋監督が「甲子園までに打線の状態を上げる」と宣言しているだけに、期待感があります。7月3日に行われた大阪桐蔭との練習試合では、5番の春野が3ランを放ち6-5で勝ちました
D作新学院…栃木から5年連続出場は史上初だそうです。1番の赤木や中軸を打つ添田、朝山の振りは鋭く、足を絡めた得点力も高い。投手陣は4投手の継投で乗り切ってきましたが、柱がいないのがやや不安と言われています
 5強を追う第二群10校
E仙台育英…秋の神宮の覇者。センバツでは優勝した敦賀気比に接戦の末に敗れたものの、チームの完成度の高さは間違いなくトップクラスでした。春はエースの佐藤世那に頼りっきりであった投手陣でしたが、2番手の百目木優貴(どめきゆうき)が成長し、二枚看板ができたことは大きなアドバンテージとなるでしょう。4番郡司、5番佐々木良は絶好調ですが、広い守備範囲と強肩を持ち「高校1ショート」との呼び声高い3番平沢大河の予選での不振がやや気になるところではありますが、本来は広角に打ち分ける巧打者です。打線は1番佐藤将が打率4割超、2番青木は6割近い。3番の平沢が1割台と調子が上がっていませんが、郡司、佐々木良と中軸も好打者がそろっています。佐藤世がエースとしてチームを引っ張れるか?宮城大会では、調整不足から準決勝では1死も取れずに3失点で降板しましたが、決勝では気持ちが吹っ切れたようで8回無失点。甲子園で完全復活すれば十分に上位を狙えます
F中京大中京…投打に安定感があります。エース右腕上野は最速143キロで変化球の精度が高く、愛知大会決勝は2回途中から救援して9回までゼロを並べました。上位打線は振りが鋭く、4番で捕手の伊藤は高校通算44本塁打。決勝で右中間席に運んだパワーは魅力です
G健大高崎…看板の機動力は群馬大会で20盗塁。35盗塁の昨夏のチームに比べれば少ないように見えますが、機動力は健大です(シャレ)。また勝負強い5番の主将柘植を中心に、攻撃のバリエーションは増えており、巧みな投球ができるエース左腕の川井も存在感があります
H花巻東…146キロ左腕の高橋は好投手で、菊池雄星2世と呼ばれます。救援に、先発にと大黒柱の働きで、チームも粘り強さがあって接戦に強い
I広島新庄…左腕の堀が注目。田口(現巨人)ら好左腕が育っているチームで、堀も140キロの直球に多彩な変化球を持っていて、レベルは高い
J遊学館…個々の能力が高い。石川大会で打率1割台の5番広橋ら中軸の奮起がカギ
K関東一…1番で俊足強打のオコエがムードメーカーになれば勢いづく
L東海大甲府…打線が良い。中軸だけでなく9番飯塚も本塁打を放っていてどこからでも点が取れる強打のチーム、1回戦で優勝候補静岡との「富士山決戦」となります。お互い投手も良いだけに、打撃戦となるか投手戦となるか注目されます
M明徳義塾…伝統の勝負強さは見逃せません。甲子園で初戦敗退したことが無いというスゴイチーム。高知大会決勝は9回2死から逆転しました。昨年の岸のようなエースはいませんが、今年は継投で勝機を見いだすようです。初戦の相手が優勝候補の敦賀気比、甲子園常連校の名監督がどう選手を操って対抗するか、注目の一戦です
N大阪偕星…昨夏の全国王者で4年連続出場を目指した大阪桐蔭を打ち破っての初出場。田中投手を打ち崩した勢いで勝ち進むか?“リアル・ルーキーズ”に期待しましょう
第三群
○早稲田実…1年生の3番清宮幸太郎が注目されています。ラガーマンの父を持つ1年生で、米国で開催されたリトルの大会で世界一となり、「和製ベーブルース」とアメリカでも注目されました。地方大会準々決勝で5打数4安打、準決勝では2安打。5戦連続安打で16打数9安打、チャンスに強いところが人気の理由です。チームとしては、投手力や守備力がやや劣るので、打力でカバーしていくことが上位進出のカギとなります
○九州学院…1年生の村上が4番です。選抜で出場全4校が1回戦で負けた九州、沖縄勢ですが、夏は九州学院の打力が一番光っています
○聖光学院…戦後最長の9年連続出場。福島大会6試合で無失策はさすが。捕手佐藤のリードもよくバッテリーは安定しています。初戦の相手が優勝候補東海大相模、これまた見逃せない一戦となりそうです
○鳴門…4年連続出場。昨夏の甲子園を経験した左の河野、右の尾崎、両投手が軸。特に河野の内角をどんどん突く投球は見ものです
○天理…27回目出場。1番船曳、3番貞光、4番坂口の好打者が力を発揮すれば上位を狙えそう
○北海…全国最多の36回目の出場。まとまったいいチームです。エース渡辺幹と今夏急成長した山本の二枚看板が持ち味
○霞ヶ浦…初出場、技巧派左腕安高、本格派右腕綾部の二人が安定しています。少ない好機で挙げた得点を守り抜くパターンです
○興南…春夏連覇を果たした第92回大会以来の甲子園です。エース比屋根は変則左腕で左打者は戸惑うかもしれません。どこまで打力が向上しているかがカギです
○龍谷…春の九州大会を制した龍谷は、佐賀大会の準決勝、決勝をいずれも延長逆転勝ちするなど粘り強い
○九州国際大付…3番岩崎、4番山本を軸とした打力に期待
○滝川二…1〜7番にずらり左打者が並ぶ。4人いる右投手の継投時期が勝敗を左右しそう
○花咲徳栄…鎌倉、高橋の継投が勝ちパターン。守備も埼玉大会7試合で4失策とよく鍛えられています
ここまで27チームです。
旋風期待>のチームは
○鳥羽…100年前の第1回大会を制した京都二中の流れをくむ。15年ぶりに出てきました。チーム打率4割2分9厘で本塁打はゼロ。つなぐ野球が身上で、右腕・松尾は制球力と緩急で勝負します
○秋田商…京都二中と第1回の決勝を戦ったのが秋田中(現秋田高校)でした。秋田商は同じ秋田の伝統校です。成田翔はOBの石川(現ヤクルト)をほうふつとさせる好左腕
○三沢商…好投手・右横投げの野田はシンカーを駆使して、八戸学院光星を4安打に抑えました
○鶴岡東…打のチーム。安食、丸山らが力強い打撃をします
○中越…昨秋、今春と北信越大会4強入り。波方を軸に打線が切れ目なし
○今治西…春夏連続出場。杉内ら右腕4枚を擁し、伝統校らしい堅実な試合運びをします
○明豊…前田は注目の好左腕で、制球力が抜群です。バックも堅守で支えます
○宮崎日大…18年ぶり出場。杉尾−薗田のバッテリーを軸に選手の能力が高い
○鹿児島実…右腕・橋本がほぼ1人で投げ抜いて勝ち上がりました。打線は左6人が並びます
○白樺学園…投手力があり、河村、中野と大型右腕2人を擁しています
○専大松戸…エースで4番の原が大黒柱です。千葉大会決勝で勝ち越しの満塁ランニング本塁打を放ちました。激戦区千葉大会を勝ち上がったものの、初出場で、魔物の甲子園を勝ち上がれるか?初戦の相手は近年夏の甲子園BEST4に2回進出している花巻東、これがカギとなりそう
ここまで38チーム
その他
○比叡山…16年ぶり出場。2季連続で甲子園に出場した近江に決勝で零封勝ちしました
○下関商…古豪。タイプの違う3投手の継投で勝ち上がってきました
○上田西…2年ぶりの出場。勝負強さがあります。長野大会準決勝で松商学園、決勝で佐久長聖を1点差で連破しました
○石見智翠館…どの選手も豪快にバットを振ります。長打力はあるそうです
○鳥取城北…打力が良いチーム。決勝では鳥取西相手に15安打を集めました
○寒川…香川大会の決勝で丸亀城西から20点という記録的得点を挙げました
○高岡商…犠打で確実に走者を送る手堅い野球で7年ぶりの出場
○創成館…夏の甲子園は初めて。左横手投げの2投手が試合を作れるか?
○岡山学芸館…初出場。岡山大会の準決勝、決勝は9回に2点差を逆転した粘りがあります
○津商…春夏通じて初めての甲子園です。三重大会決勝は9回に5点を奪う大逆転劇で出場を決めました
○岐阜城北…1番池尾は岐阜大会で9盗塁しました。機動力を生かした攻めを甲子園でも披露したいところ
以上49チームです。
事前予想通りになかなか行かないのが高校野球の面白いところ、今年も暑い夏、熱い夏になるでしょうか?


ページTOPへ  筆者予想
 史上8校目の春夏連覇がかかる敦賀気比は勿論優勝候補です。平沼という大黒柱がいますし、しぶとい攻撃をするからです。投打の総合力では東海大相模も勿論優勝候補ですが、本来の実力を発揮できるか?がカギです。取りこぼしすることがあるのが不安要素です。初戦の相手は聖光学院、9年連続出場で福島大会6試合で無失策という容易ならぬ相手、乗り越えられるか?一押しは仙台育英ですね。秋の神宮の覇者だし、なにしろ選手がスター揃いということもありますが、何より佐々木順一朗監督が良いことです。一昨年優勝候補の浦和学院を破ったときに、監督の差を感じました。朝日新聞の予想で第二群なのは理解できません。恐らく佐藤世那のピッチングと攻守の要・平沢大河の予選での不振に不安を感じてのことでしょうが、甲子園はこういう実績ある選手は力を発揮するものです。大阪偕星は激戦区の大阪を勝ち抜いただけに注目しています。山本皙監督は「お金がないから野球ができない、勝てないというのはおかしい。国籍、肌の色、お金持ち、貧乏とか関係ないんですよ。野球がうまい奴が勝つ。貧乏でもお金持ちに勝てるんです。野球をしてるときくらいは、子供たちにそういう夢を見させてあげたい」と言っています。大阪桐蔭を破り、高校野球の常識を覆す集団が勝ち続けたら、恵まれない球児の希望になるでしょう。ドラフト候補・上野が投げる中京大中京は伝統校だけに良いところまで行くでしょう。146キロ左腕の好投手高橋を擁する花巻東は、佐々木洋監督の手腕が優れているだけにそこそこ勝つでしょうが、優勝まではムリかな?花咲徳栄が第三群というのは気に入りませんね。埼玉県大会で、アウェイ状況を打破して勝ち上がった精神力と鍛えられた守備、左右二枚看板の投手、打力だって強力ですから、作新学院が第一群、健大高崎が第二群ならば、花咲徳栄も第二群に位置付けられて良いはずです。夏の大会前の5月に行われた春季関東大会は、優勝浦和学院、準優勝川越東でした。この大会には早実や関東一は出れませんでした。東京1位の日大三、2位の佼成学園が出て、日大三は作新学院に6-11で負け、作新学院は東海大相模に1-5で負け、東海大相模は浦和学院に0-4完封負けでした。佼成学園は東海大甲府に5-4勝ったものの、川越東に1-6で負けました。専大松戸を5-3で破った健大高崎は川越東に1-5で負けました。決勝は接戦で、浦和学院4-2川越東でした。BEST4に東海大相模と健大高崎が入りましたが、埼玉勢にそれぞれ完敗、ところが埼玉県の代表は花咲徳栄、ハイレベルな埼玉県の代表に対する評価が低過ぎます。

ページTOPへ  花咲徳栄頑張れ!
 筆者予想で書きましたが、朝日新聞の開幕前予想で花咲徳栄が第三群というのは気に入りませんでした。埼玉県大会で、アウェイ状況を打破して勝ち上がった精神力と鍛えられた守備、左右二枚看板の投手、打力だって強力ですから、第一群に位置付けられたって良いくらいです。ただ、花咲徳栄にとってはそのほうが良いと思い直しました。2013年の第95回選手権大会、センバツ優勝の浦和学院は夏も優勝候補筆頭で、春夏連続優勝が期待されていましたが、甲子園初戦で仙台育英にまさかの敗戦でした。「強い」とか、「勝って当然」とか言われると、それがプレッシャになります。第三群なら気楽です。何故花咲徳栄の評価がそれほど高くないか、仙台育英や東海大相模、敦賀気比などに比べると選手の線が細いからでしょうか?実際、腰周りの太い巨漢は先発陣には居ません。背は高くてもヒョロリとして、もう少しメシ食わせたいと思うような選手たちです。しかし野球は柔道や相撲ではありません。埼玉大会を見ても、花咲徳栄の積極的な打撃、一つでも前の塁を奪おうとする貪欲な走塁、堅実な守備、速球投手ではありませんがキレがあってコントロールの良いエース、その後に速球の救援投手が控えている、どこから見ても強いチームの要素が揃っています。浦和学院などのイメージが強くて、それに比べれば、などと朝日新聞の記者たちは思ったのかもしれませんが、花咲徳栄の強さは昨年の屈辱を知っていることです。どうすれば負けるかを知っているから油断しない、相手の圧力に屈しない、逆風を跳ね返す、ということができます。そういう意味では東海大相模も今年は強いのではないでしょうか?
 さて初戦の2回戦は15−3で三沢商を圧倒しました。三沢商も2本塁打で意地を見せましたが、エース右腕鎌倉(3年)が好投し、救援左腕高橋(2年)が後を締めるという必勝パターンが機能しました。相手を良く研究し、野田投手の低めを突く球を逆に叩き付けて狙い打ちしました。どこへ投げても打たれる、野田投手はそういう恐怖感を持ったのではないでしょうか?代った投手からもしつこくヒットを奪い、最後まで攻撃の手を緩めませんでした。9回に5点を奪ったところなど、「強い」と実感させる戦いでした。
 3回戦は第10日・8月15日(土)の第2試合、予定では10時半から山形・鶴岡東高校と対戦します。花咲徳栄が普通に試合に臨めば、負ける相手ではありません。近年の東北勢は強いですが、花咲徳栄は三沢商に続いての東北勢が相手となりました。三沢商ではなく、八戸学院光星が相手だったら筆者も花咲徳栄の優勢予想は出来なかったかもしれません。それほど甲子園というのは、ビッグネームが幅を利かすところなのです。東海大相模が福島・聖光学院を破りましたが、これはビッグネーム同士の対戦でした。東北勢では花巻東や仙台育英はビッグネームですが、鶴岡東が相手なら花咲徳栄はビビル相手ではありません・・・・と書いていましたが、総合力が高く、隙の無い花咲徳栄の優位は動かないと見ていて、結果はその通りでしたが、途中経過は苦しいものでした。鶴岡東のエースで9番福谷優弥の投打に渡る活躍で悲願の甲子園初勝利を果たした昔の鶴商学園、今は鶴岡東ですが、花咲徳栄打線は福谷では抑えられないだろうと見ていました。鶴岡東の佐藤俊監督はやはりそう考えたようで、背番号10松崎祥弥投手(3年)を先発させました。縦スラが素晴らしく、鋭いブレーキがかかるので、三沢商戦で18安打15得点を挙げた強打の花咲徳栄打線が打てません。いわゆる昔で言う「ドロップ」です。曲がりが鋭くてバントすらできないほど変化するのです。想定f外の投手が出てきて、岩井隆監督はエンドランなど機動力を試みますが上手く行きません。一方の鶴岡東は初回、3回、4回、5回と再三無死でランナーを出しますが、これまた鎌倉投手が肝腎なところで踏ん張り、本塁が遠いという状態が続きました。予想外の投手戦です。しかしそういう展開では花咲徳栄有利とみて、そう心配しませんでした。鳥取城北戦で16安打9得点の鶴岡東の強力打線も、ボールでも際どい鎌倉投手のピッチングにタイムリーが出ないのです。この日は四球が多かったのは、それだけギリギリのところに投げていたからです。外角ズバッと決め球!三振か?ボール、という場面が何度かありました。見極めたのではなく手が出なかったのでは?と思いました。打っても花咲徳栄の堅守が立ちはだかります。鎌倉投手の直球と松崎投手のスライダーのキレが良く、まさしく我慢比べのような歯がゆい展開が続きます。お互いに継投時機が問題となりました。松崎投手の予想以上の頑張りに鶴岡東の佐藤俊監督は行けるところまで行こうと思ったようです。7回表の鶴岡東の攻撃で、1死からその9番松崎が投手の足元を抜ける安打で出塁し1番打者も左前安打で続き、1死1、2塁、鎌倉投手100球を越えました。ここで花咲徳栄は、投手を鎌倉から高橋昂也(2年)に交替しました。岩井監督が全幅の信頼を寄せるこの左腕は、埼玉大会でも1イニング1.5個以上の三振を奪う球威があります。キレの鎌倉で試合を作って行けるところまで行き、後を高橋が締めるというのが必勝パターンです。これが的中し、後続を2者連続三振に斬ってとりピンチを免れました。ピンチの後にはチャンスが来ます。7回裏の花咲徳栄の攻撃、松崎投手に合っていたのは4番の大瀧でした。火の出るようなレフトへのヒット、里見がやっと送りバントを成功させ、楠本の内野安打で1、3塁とチャンスを広げ、7番笹谷です。スライダーを上手く中前にポトリと落とすヒットを打っていますが、ここはスクイズか?しかしバントすら難しい投手ですから岩井監督は笹谷にかけました。「頼む、打ってくれ」・・・期待に応えて中前に打球を弾き返し、大瀧が生還、待望の1点が入りました。守りの要、捕手の笹谷の殊勲は、チームに気合をみなぎらせます。8回表、1死から四球とライト前ヒットで1、3塁のピンチを迎えます。7番黒川が引っ張って3塁線、ヒット性の難しいゴロを楠本が3塁ベース後方でキャッチ、ランナー戻れないので本塁へ、1直線のランダウンプレー、野球経験者なら分かると思いますが、これはすごく難しいプレーなのです。本塁へ向かって走る走者の背後から投げる、走者の向こうに捕手が居ます。走者の背中に当てたり、高い球や横の球で捕手が捕れないということが度々起きます。ところが楠本は冷静に走者に当らないように、しかも笹谷が捕り易い球を投げました。笹谷が走者を追って、次のランナーが3塁へ到達する前に素早くタッチアウト、これも大事なこと、モタモタしてたら2、3塁になってしまいます。スロービデオで再生したのを見て感心しました。こんなに余裕を持って冷静な送球が出来るのは相当練習をして、体が反応するんだなぁ、ということ。荒れ球で球威がある高橋は次打者に3球連続ボール、ここからストライク、そしてセンターフライでチェンジ。ピンチの後にはチャンス有り、その裏、花咲徳栄は2死から2番太田の四球と3番岡崎の右前安打で1、3塁のチャンスを作ります。ここで4番大瀧は力を抜いて球に逆らわないバッティングをするか?と思いました。そういうチームバッティングが出来る選手だからです。ところがこの打席ではビュンビュン振ってきました。1-0、勝っている、自分も当っている、4番打者ですからそれで良いでしょう。強烈なファウルの後、痛烈に引っ張って「ヤッター!」と思ったら、鶴岡東の黒川三塁手が横っ飛びダイビングキャッチ、スゴイファインプレイで得点できません。9回表、高橋投手は松崎に代った福谷を投ゴロ、1番見逃し三振、2番空振り三振と3人で抑え、試合終了、マウンド上で鬼の形相で投げる顔、花巻東の高橋樹也(ミキヤ)もコワイが高橋昂也(コウヤ)もコワイ。コワイピッチャーはカッコイイ。互いに、ピンチの場面でも好守を見せ、1点を奪い合う手に汗握る好試合、1-0というのは野球では一番しびれる試合です。花咲徳栄は春のセンバツではベスト8を経験していますが、夏の甲子園では初のベスト8入り、おめでとう!
 準々決勝では優勝候補東海大相模と当ります。左の小笠原と右の吉田、二枚看板の150キロ本格派投手を揃え、強力打線、しかしどんなに強打のチームでも良い投手は打てないというのは、鶴岡東と花咲徳栄戦で分かります。むしろ鎌倉−高橋の完封リレーは相手には脅威と思います。花咲徳栄は埼玉県代表ですから、こちらも本来優勝候補なのです。東海大相模恐るるに足りず、の気概で、選手たちは戦ってくれるでしょうと書いていましたが、筆者の予想通りの戦いとなりました。花咲徳栄はリードして鎌倉から高橋へのスイッチ、東海大相模もリードして吉田から小笠原へのスイッチを目論んでいたでしょう。浦和学院と東海大相模の対戦ならわずかに浦和学院が勝るというところですが、花咲徳栄だとわずかに東海大相模に劣るというところです。しかし野球は強いほうが勝つとは限らない、緊迫した場面での強さは花咲徳栄のほうが上と見ていました。先攻の花咲徳栄は3回表、太田幸成(3年)が右前2塁打、守備の隙を見逃さず3塁へ、3番岡崎大輔(2年)、4番大滝愛斗(3年)の連続適時打で逆転しました。4回も、笹谷拓海(3年)が左翼線への打球で判断よく2塁を陥れると、その後の暴投で生還して2点差とリードします。ドラフト候補右の吉田(3年)はいつもの切れが無いように見えました。やや球が浮いている感じでした。これはヤバイと東海大相模門馬監督はエース左腕小笠原(3年)をリリーフさせました。小笠原は腰周りがドッシリして、素晴らしい体をしています。巨人が早くもドラフト1位指名すると言っていますが、他の球団も黙っていない逸材です。必勝パターン鎌倉知也(3年)−高橋昂也(2年)の投手リレー、しかも4番大瀧が当っている上、6回裏、中越えかと思われた当たりを俊足を飛ばして必死に追い、これ以上無いというタイミングでジャンピングキャッチ、超美技に勝利への執念を感じました。サード楠本晃希(2年)が前の試合に引き続き笹谷捕手への冷静な送球で2回も3塁ランナーを本塁でアウトにする好守、笹谷の冷静なリードもあって高橋はピンチを凌ぎます。予想通り花咲徳栄が勝つな、と思ったのですが、野球には神様が居るのです。それも女神です。どちらに微笑むか?8回の攻防が勝敗を分けました。花咲徳栄は8回表、3番岡崎が内野安打、4番大滝がチームバッティングでライトへヒット、5番里見が見事送りバントを決めて1死2、3塁、6番楠本は外角高めの球を打ってレフトフライ、これはタッチアップ無理、2死2、3塁、打席には7番当っている笹谷、故原貢監督の教えを受けて攻撃的野球をモットーとしている門馬監督もこの場面は伝令を送り好調の小笠原に敬遠を指示して2死満塁としました。打席には高橋昂也、粘りましたが最後はボテボテのピッチャーゴロ、小笠原捕ってガッツポーズ、あと1本が出ませんでした。その裏、5回途中から好救援をみせていた高橋投手ですが豊田にライト前ヒットを打たれ、打席には甲子園で打率8割以上の磯網、ここは当然送りバント、見事に決まって1死2塁、ここで高橋が2塁牽制したところで1塁審判が「ボーク!」、これで動揺しました。長倉(捕手)のレフトフライは大きい、犠飛で同点とされました。動揺おさまらず、竹内も歩かせましたが、川地を外角の変化球でセカンドゴロに打ち取りました。9回裏、打席には小笠原、高橋の球には合っていません。ファーストゴロ、ヨシ!上村トンネル、エッ、どうして?とビックリしました。千野は送りバントしますが2塁送球、小笠原封殺、ショート岡崎が1塁送球して併殺を狙いましたが悪送球でボールデッドで1死2塁、ランナーが入れ替わってしかも結果的に2塁進塁、宮地はサードゴロで2死となりますが、杉崎の当たりは大きい、レフト久々宇の頭を越えて行ってサヨナラ、ゲームセット。堅守の花咲徳栄が土壇場で失策が重なっての負け、勝利の二文字がちらついた終盤のプレッシャーが惜敗につながりました。痛恨の「ボーク」、「トンネル」、「悪送球」、野球の神様は花咲徳栄に厳しかったといえます。しかし、捕手では笹谷のリードが光りました。ピンチで、笑顔で高橋を元気付けた場面など、並みのキャッチャーでは出来ません。大瀧の闘志は素晴らしかった。大阪の少年野球の後輩たちにも感動を与えたでしょう。しかし、総合力ではやはり東海大相模が上でした。小笠原の好投、打線の圧力にジワジワとプレッシャを受けました。野球の敗戦には、タラ、レバが付き物です。もしかしタラ、勝てました。良く頑張りました。この敗戦は、近年の浦和学院とは違って、埼玉県民は納得したでしょう。必死の頑張り、有難う!
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8月10日・第5日第二試合鳥羽VS岡山学芸館までが1回戦です

鹿児島実18−4北海・・・全国最多の36回目の出場を誇る北海ですが、まさかの大敗、大差がついた試合展開になったのは、鹿児島実1番・有村の初球攻撃から、19安打を打った積極性が光りました。大阪桐蔭・西谷監督の「初球から積極的に打って行け」という指導が、最近の高校野球の主流になりつつあります。鹿児島実は正にこの戦法でした
中京大中京4−1岐阜城北・・・中京大中京の打撃陣が見せた好球必打とエース・上野の針の穴を通すコントロールが光りました。ドラフト候補・上野はコントロールだけではなく、そのストレートの多くは140キロ前後を計測し、最速は最後の打者を空振りの三振に斬って取った144キロ、スタミナがあります。野球は投手です。岐阜城北も強さを感じましたが、中京大中京はやはり強い
上田西3−0宮崎日大・・・どちらが勝っても甲子園初勝利となる一戦、初回に鮮やかな速攻で上田西が先制点を挙げ、2年生エース・右のオーバースロー草海がテンポ良く140km/h台のストレートをきっちり内外角に投げ分け、ウイニングショットにはキレのいいスライダーも使って、丁寧に低めを突く投球で完封勝利
☆花巻東4−2専大松戸・・・花巻東・高橋 樹也と専大松戸・原 嵩の、プロスカウト注目の両エースの対決に注目が集まった一戦です。それぞれ本格派ですが、この試合では原が144キロ、高橋が140キロと自己最速には遠く及ばないピッチング、やはりこれが甲子園なのでしょう。試合は専大松戸が花巻東の倍も安打を放ちながら、4−2で花巻東が勝利、「接戦に強い」という前評判を証明しました。原は二段モーションっぽい動きで、球審の桑原和彦さんに注意されました。甲子園の球審はさすがに見逃してくれません。対して、花巻東の高橋は高校生離れしたピッチングでした。“7割ピッチング”でスタミナ温存、イザというところでは縦横コーナーいっぱいに気迫で投げ込む、社会人のベテラン左腕を思わせるピッチングでした。何よりも抜群のコントロール、これでは強打の専大松戸もヒットは出ても連打にはなりにくいわけです。やはり「花巻東」というのは、激戦区千葉代表と言えど、初出場の専大松戸にはビッグネームでした。これが「伝統」の重みです。専大松戸もこれから実績を積み上げて、「伝統」を形成すれば良いのですよ
広島新庄4−2霞ヶ浦・・・初出場校対決、茨城県と言えば常総学院ですが、今年は、準々決勝前に敗退しました。したがって霞ヶ浦が出てきたのですが、やはり甲子園は甘くありません。霞ヶ浦の2投手が好投しましたが、それを上回ったのが広島新庄の先発・堀 瑞輝の好投でした。最速140キロは最終回に計測するなど、最後までピンチを0に抑える粘投が光りました。2年生とは思えない落ち着き払った態度、ピンチでも動じない堂々たるピッチングでした
九州国際大付8−2鳴門・・・予想外の大差、6回表の集中打が勝敗を決めました
☆東海大甲府8−7静岡・・・隣県同士の富士山対決、お互い打撃陣のレベルが高く、打撃戦になるか、静岡の好投手村木と東海大甲府の菊地の2年生の投げ合いになるかのどちらか、しかし筆者は静岡が最後は勝つだろうと思っていました。ところが予想外に、立ち上がりから激しい試合展開となりました。静岡の先発の村木は140キロ台の速球と落差のあるフォークを武器にする投手で、この日もビュンと来る速球は打てそうもありません。そこで東海大甲府はフォークに狙いを絞った感じでした。高めに浮いたフォークを狙い打ち、狙いがわかって静岡バッテリーは目先を変えてストレートを投げるも若干ベルト寄りに集まってきて、東海大甲府打線はそれを見逃しませんでした。しかし静岡も粘りを見せます。2回裏逆転し、3回表東海大甲府が再逆転、しかし静岡は直ぐ2点取って1点差に迫り、4回表東海大甲府が2点追加して突き放すと、静岡は6回裏1点、7回裏2点取って遂に7-7同点に追い着きます。ものすごい、ぶん殴り合いみたいな試合、8回表、東海大甲府は2番福武(2年)の勝ち越し適時打で8-7、2番手の松葉投手(2年)が、低めを徹底的につき、落ちる変化球をまじえて強打の静岡打線を抑え、見事に2回戦進出を決めました。東海大甲府がここまでバッティングを高められた背景には、春季関東大会の佼成学園戦で自慢の強打を封じ込められたことで、何故打てないか徹底的に話し合い、打ち方を変えることに取り組んだ事があったと言われます。春季関東大会の負けは、東海大甲府ナインを大きく成長させるきっかけになったのです。それにしても両チームの打ち合い、両エースの投げ合いは見事でした。1回戦にしては惜しい試合でした
早稲田実業6−0今治西・・・今大会人気ナンバー1は早稲田実業の清宮 幸太郎(1年・一塁手)、1回裏は4番加藤が死球出塁、5番金子が3塁打して先制の2点、さらにエラーで計3点、今治西は人気校・早稲田実業を意識する余り平常心を忘れてしまったようでした。清宮は今治西の厳しい内角攻めに会いながら、7回には甘い初球をライト前にタイムリーを放ったのはさすがです。注目されながら結果を出すのがスターというものです
☆敦賀気比4X−3明徳義塾・・・選抜優勝の敦賀気比と、まだ夏の甲子園では初戦敗退がない明徳義塾、1回戦最も注目の一戦です。敦賀気比先発の平沼 翔太(3年)は立ち上がり、ストレートとスライダーともに高めへ浮き、平沼らしからぬ投球内容。やはり重圧が感じられる投球でした。序盤3-0とリードした明徳義塾ですが、6回裏、敦賀気比は幾度も好守備を見せてきた3番林中(2年)が本塁打を放ち、更に左飛義で2−3、更に8回裏、山本(3年)が右中間を破る三塁打を放つと、6番満塁男松本哲幣(3年)が右前適時打で同点に追い着きました。平沼は4回以降、立ち直りを見せ、常時135キロ〜142キロの速球、キレ味鋭いスライダー、ツーシーム、チェンジアップ、カットボール、カーブと多彩な変化球を両サイドに投げ分け、打たせて取る投球。本来の制球力が蘇り、甘い球を投げ込まない、緩急自在の投球は、まさに大人の投手を見ているかのようでした。10回裏、敦賀気比は苦しんでいた佐田から1死満塁のチャンスを作り、1番で主将の篠原 涼(3年)が振り抜いた打球は中前安打となり、サヨナラ勝ち。まさに激戦ですが、重圧に打ち勝った敦賀気比は優勝候補にふさわしい強さを感じさせました
☆大阪偕星学園7−3比叡山・・・近畿勢対決は、両者が持てる力を出し切る好ゲームでした。特に9回裏2死2塁2ストライクまで追い込まれた比叡山の代打・河合拓巳主将が放った起死回生の同点打には、4万7千人の歓声と悲鳴が・・・。大阪偕星学園は、延長10回に打線が繋がり、一挙に4点を奪う猛攻を見せてトドメを刺しました。特に9番の的場選手、2死から2度の勝ち越し打を放った勝負強さが光りました。チーム全体を見ても、先発選手全員安打を記録する猛攻を見せ、伝統校である比叡山を破り、念願の甲子園1勝目を手にした大阪偕星学園は、今大会の台風の目となりそうです
下関商4X−3白樺学園(北北海道)・・・前評判は白樺学園有利、しかし下関商の先発・森元(3年)の投球が見事でした。コントロールが良いので、打てそうで打てません。延長11回表、6球で白樺学園打線を退けると、11回裏、2死2塁のチャンスから森元が自ら中前適時打でサヨナラ勝ち。初戦突破を決めました
☆津商9−4智辯和歌山・・・春夏通じて初出場の津商と優勝候補智辯和歌山では、ハナから結果は見えたようなもの、実際1回裏智辯和歌山が2点先制、しかし津商は後続を断って、2点にとどめると、津商のエース・坂倉(3年)が好投、この陰には津商の捕手・増岡(3年)の絶妙なリードがありました。坂倉の好投に応え、津商は4回表1点、5回表1点GETで同点、6回表2死から連打で勝ち越しに成功。そして7回表、連続タイムリー3塁打で5−2と差を広げます。津商は7回2死から登板した2番手の石川(3年)が好投し、8回裏の2点に止めました。津商の攻撃的な野球に、智辯和歌山は浮き足立ち、守備のミスが出ました。甲子園で監督通算最多63勝を挙げている名将高嶋仁監督は、なんとか選手を落ち着かせようと手を打ちますが、津商はエンドランやバント攻勢、平常心を失った智辯和歌山の選手たちは連係ができず、9回表無死2、3塁から2本のバント内野安打で2点を追加し、ダメを押しました。優勝候補の強豪校がこのように崩れる姿はなかなか見られませんが、積極攻撃と機動力、相手の動揺を誘うベンチワーク、強い相手にもこうすれば勝てるんだということを見事に実証、野球はこれだからヤメラレマセン。ただ、高嶋仁監督もこれで勇退がささやかれていますが、あのベンチ前仁王立ちの姿をもっと見たいですヨ
☆創成館3X−2天理・・・長崎・創成館は初出場ながら好守備で天理を破りました。両チームの先発が好投、9回裏、創成館は3塁への内野安打、犠打と中飛で3塁へ進み、4番鷲ア(3年)の右前サヨナラ安打で初出場初勝利を決めました。天理の応援団は、甲子園名物のブラバンで、もうちょっと聞いていたい気がしましたが残念でした
☆滝川二4X−3中越・・・1回表中越が先制、3回裏滝川二が追い着き、5回に中越が突き放しましたが、滝川二は6回裏、無死から連打とセカンドゴロの間に1点を返すと、さらに犠飛で逆転に成功しました。しかし8回表に中越が同点に追い着くという、まさに手に汗握る好ゲーム、9回裏、滝川二がサヨナラ打で試合を決めました。滝川二の注目の選手・根来祥汰(3年)は、兵庫大会で打率.500、8盗塁と、驚異的な俊足の選手ですが、この試合でも自慢の足を披露しました。近年北信越勢は強いですが、それを破った地元・兵庫の滝川二は地力があるチームとの印象です
仙台育英12−1明豊・・・仙台育英は上の「筆者予想」で一押しと書きました。好球必打が徹底しています。1回表1死後、今大会プロから一番注目されている平沢大河の2ランホームランを含む5連続長打で4点、さらに2死後に8番打者のタイムリーが続いて5点を先制しました。打者9人の猛攻の中で、3球以内に打って出た打者が6人、すさまじい攻撃でした。明豊の投手は決して悪いわけではないのに、それを上回る打力、しかも最後まで好球必打を徹底し、これでもかと攻め立てました。平沢大河は走攻守3拍子揃ったスゴイ選手、関東一のオコエ瑠偉もスゴイですが、平沢は目が離せません
健大高崎10−4寒川・・・最近四国勢の不振が目立ちます。最後に登場した寒川も負けて1回戦で4校すべて姿を消しました。「機動破壊」の異名がつく健大高崎の走る野球は、昨年ほどではありませんが、健在でした。ドラフト候補・柘植世那捕手の強肩も見られました。予想通りの結果とは言え、寒川も頑張りましたよ
鳥羽7−1岡山学芸館・・・初回に主砲小薗(3年)がレフトスタンドに2ランホームランで先制した鳥羽は、第1回大会優勝校・京都二中の流れを汲み、主将が選手宣誓をした高校という話題先行の感がありましたが、甲子園で15年ぶりとなる白星を挙げ、確かな実力を示しました


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第9日=8/14(金)第3試合 健大高崎VS長崎・創成館までが2回戦です

秋田商3−1龍谷・・・秋田大会5試合で55個の三振を奪った秋田商のエース左腕・成田 翔(3年)を左打者が攻略するのは容易ではありません。スタメン9人中7人が左打者の龍谷打線を手玉に取りました。16奪三振の快投です
鶴岡東9−6鳥取城北・・・攻めの鶴岡東、守りの鳥取城北というチームカラーの戦いは、鶴岡東の先発・福谷優弥の投打に渡る活躍が光りました。5打数4安打1打点2得点。9番の出塁が大量点の原動力となりました
☆関東一12−10高岡商・・・走攻守3拍子揃った関東一のオコエ瑠偉選手は今大会注目の一人ですが、2塁打1本、3塁打2本と、その力を見せてくれました。3回裏一挙7点で8-0となったときには、関東一の圧勝かと思いましたが、高岡商がすぐさま4回表7点返し6回に同点に追い着いて、混戦となりました。12安打対13安打、1本上回った関東一の逃げ切り勝ち。攻撃力はスゴイですが、頂点に立つには投手がチョット・・・
興南6X−5石見智翠館・・・校名を江の川から変更した石見智翠館は8回に3点差をひっくり返したのですが、興南が9回裏に逆転サヨナラ勝ちを収めるという劇的な大熱戦でした。ただ、春夏連続優勝したときの興南の勢いはありませんから、ここら辺かなぁ?
花咲徳栄15−3三沢商・・・予定時間から1時間以上遅れての第4試合開始となり、途中から薄暮の試合となりました。青森県と言えば青森山田か八戸学院光星が近年の甲子園常連校、しかも強いという評価が定着しました。青森県大会決勝で、その八戸学院光星エース中川に12三振奪われながら2-1サヨナラ勝ちした三沢商は、久々の県立校です。甲子園出場の立役者は、長身ながらサイドスローから繰り出す変化球が強みのエース野田です。対して、激戦区埼玉を勝ち抜いてきた花咲徳栄もまた、埼玉大会決勝で県立白岡高校を相手に完全アウェイ状況ながら、それを跳ね飛ばした勝負強い打撃・走塁と好守で甲子園にやってきました。関東1の浦和学院、2の川越東のためにも負けられません。公立校三沢商が、私学花咲徳栄に果敢に立ち向かっていくという構図ですが、花咲徳栄の優位は明白です。花咲徳栄は好球必打、俊足の選手が揃い、機動力もあります。先発はエース右腕鎌倉(3年)、救援が左腕高橋(2年)という必勝パターンを持っています。鎌倉投手は球速130キロ台ですが、胸を張って投げる球にはキレがあって、埼玉大会でも安定していました。代ると左腕高橋は速球投手、このパターンがはまれば相手には厄介です。終わってみれば、花咲徳栄が18安打15得点の15-3で大勝する形となりましたが、三沢商も2本塁打で意地を見せました
東海大相模6―1聖光学院・・・戦後最長となる9年連続出場を果たした聖光学院は先発の森久保の出来が悪かったわけではありませんが、東海大相模は初回、2死から4安打を集中して4点GET。東海大相模の先発は背番号11の吉田。左の小笠原を予想していた聖光学院ですが、吉田は2枚看板で最速151キロ右腕です。この日は140キロ前後と抑え気味で、得意の縦スライダーとカーブも交え丁寧な投球でした。9回1死から巨人がドラフト1位で指名するとしている左腕・小笠原慎之介投手(3年)が登板、151キロをマークするなど球威ある直球で押し、危なげなく抑えました。詰め掛けたプロのスカウトたちは一様に、今すぐプロでも通用する、と言い、「江夏を見ているようだ」とさえ言った人もいました。2010年から続いていた聖光学院の初戦連勝記録は5で止まりました
遊学館(石川)5−3九州学院(熊本)・・・九州学院は2回2死2塁から、連続長短打で2点を先取、遊学館が3回に連続適時打に敵失を絡め3点GETして逆転、4回にも連続適時打で2点を追加して、9回の反撃を1点で抑えてそのまま逃げ切りました。遊学館は、コツコツ重ねた14安打!堅い守備に、失投を見逃さない打線、こういうチームは怖いですよ
作新学院10−6上田西・・・作新学院のエース有田は、チーム唯一の県外中学出身者です。と言っても、生まれは栃木県で、父親の仕事の関係で小学校1年生から中学3年生までを長野県で過ごしました。そんな“第2の故郷”だけに友人も当然多く、上田西との対戦は運命的でした。この試合は、作新学院の球に逆らわない打撃が光りました。7回に打者9人、5長短打を集中して5点を奪い、結果17安打。上田西は終盤に4点を返す見事な粘り、こちらも10安打を放ちました。ただ、作新学院は強いけれども隙があると感じさせるのは、やはり投手陣ですね。ここから上は強力打線のチームばかり、並みの投手では通用しません
中京大中京7−3鹿児島実・・・好球必打とエース・上野の針の穴を通すコントロールが光る中京大中京は投打に安定感があります。一方右腕・橋本がほぼ1人で投げ抜いてきた鹿児島実も1番・有村の初球攻撃から、1回戦で19安打を打った積極性が光り、強いと感じさせました。総合力は中京大中京ですが、最後の勝敗を分けるのは「気持ち」ではないでしょうか・・・と書いていましたが、中京大中京の8番の内藤諒一(2年)が、4打数3安打4打点と大活躍、夏の甲子園78勝目をあげました。全国最多の勝利数をさらに伸ばしたことになります。試合終了後の抽選で、6年ぶりの頂点を目指す強豪の3回戦の相手は、初戦で衝撃の活躍を見せたプロ注目選手・オコエ瑠偉(3年)を擁する関東第一(東東京)と決まりました。大会第11日の第2試合は大きな注目を集めるカードとなるでしょう
☆早稲田実業7−6広島新庄・・・広島新庄の堀が1回戦で見せたピッチングをすると清宮幸太郎もどうでしょう?清宮が打てば早実も乗るでしょうが、投手力は広島新庄が上、堀が冷静に投げれるか?・・・と書いていましたが、清宮が打って堀は降板しました。ならば早実が楽勝?いえいえ、夏の甲子園はそう甘いものではありません。16安打対12安打の壮絶な打撃戦、3回表、早稲田実業・清宮がライト前へのタイムリーを放ち先制点を奪いました。4回表にも2点追加、しかし広島新庄はその裏一挙5点奪って逆転します。このときビックリするプレーがありました。2死1、3塁からダブルスチール、これはアリエナイ戦法です。もちろんサインです。左投手ですから3塁走者は見えません、投球動作に入った途端サードランナースタート、捕手は1塁ランナーが走ったのを見て送球動作に入りました。強肩捕手、2アウトですから2塁で刺せばチェンジです。ところが突然目の前に3塁走者が現れて驚いて送球をやめようとしてボールを叩き付けてしまいました。ホームスチールです。意表を突く奇襲戦法、テレビの実況のアナウンサーも解説者もビックリ、いやはやスゴイ。流れを変える戦法が逆転に繋がりました。ところが点の取り合いなら受けて立つとばかりに早稲田実業はすぐさま反撃に出ます。5回表、この回先頭の清宮がヒットで出塁し、富田がライトへ2点タイムリーを放ち同点。試合を振り出しに戻すと、6回表には主将・加藤がセンターへ勝ち越しタイムリーを放ちます。6回裏、広島新庄は2死2塁からセンターへ大きな打球、同点かと思われたところで、早稲田実業センター・渡辺がセンターの一番深いところ、フェンス際ギリギリの打球をフェンスにぶつかりながら見事キャッチ。しかし8回裏、広島新庄は杉村が起死回生のタイムリーを放ち、同点に追い着きます。そして9回表、早稲田実業はどうしても点が欲しい場面で、好守でピンチを救った渡辺がライトへの値千金のタイムリーで勝ち越しに成功し、その裏の広島新庄の攻撃を抑えてゲームセット、スゴイ試合でした
東海大甲府9−1下関商・・・1回戦で見せた東海大甲府の恐怖の打線は怖過ぎ。下関商の森元(3年)はコントロールが良いので、打てそうで打てません。下関商が守りからリズムを作れば・・・と書いていましたが、結果はご覧の通り、14安打対5安打で圧倒しました。投げても、東海大甲府の先発投手、菊地 大輝(2年)が持ち味を存分に発揮しました
☆九州国際大付10X−9大阪偕星学園・・・大阪偕星学園は強いというより乗ってる感じ、何かがついてる感じがします。大阪偕星・姫野と九州国際大付・吉井の双方の1番打者から目が離せませんと書いていましたが、結果は15安打の大阪偕星学園が10安打の九州国際大付にサヨナラ負け。「何かがついてる感じ」は逆目に出て、9回エラーが出て勝てる試合を落としました。野球にタラ、レバは付き物です。大阪偕星学園は強かった。姫野は本塁打を打ったし、エース光田は打たれながら自らのバットで取り返す大活躍、普通なら大阪偕星が勝つべき流れでした。しかし、四球やエラーが肝腎なところで出れば負けるというのが野球です。1回表、3回表に2点ずつ取って、大阪偕星の勢いからして圧勝かな?と思った3回裏、2番山口の犠飛で1点返し、3番主将の岩崎がバックスクリーンに同点3ランを叩き込みました。この一振りで劣勢だったムードが一変、これに刺激されたのが元ロッテ監督・山本功児氏の長男・4番の武白志(むさし=3年)です。5回裏、またも2番山口の犠飛で1点返した後、左翼席に3ラン、逆転して勝ち越しました。ところが、大阪偕星はすぐさま6回表反撃、光田の2点2塁打で同点とします。更に7回表1点勝ち越し再逆転、ところがその裏九州国際大付・山本が史上31度目(29人目)の2打席連続本塁打、過去に清原和博(2度=PL学園)、筒香嘉智(横浜)、森友哉(大阪桐蔭→西武)らも記録した2打席連続アーチでまた同点に追い着きました。最後は上のような結果でしたが、大阪偕星の山本皙監督は「野球にミスはつきもの、ミスとも思っていない、精一杯やった結果です」と選手を労いました。エラーした選手が泣き崩れる中、エース光田が一生懸命慰めていました。大阪偕星はアッパレでした。胸を張って引き揚げて良いと思いました。昨夏優勝候補といわれながら初戦敗退した九州国際大付は、名将若生監督(現埼玉栄)がこの大会限りで勇退することが公表されていました。若生監督は山本功児氏の法大時代の先輩です。山本功児氏は長男・武白志(むさし)を九州国際大付へ進学させましたが、初めての寮生活に馴染めず一時体重が15キロ近く減ったので、妻と共に福岡への「移住」を決断したのだそうです。子供のためとはいえ生活の拠点を見知らぬ土地にパッと移すなんて、簡単にはできません。しかし、寮を離れ両親の元から通うようになった息子の体重は、すぐに戻りました。若生監督の後を引き継いで監督に就任したのは、元楽天編成部長の楠城徹氏です。早大出身の楠城監督は、功児氏とは同学年、ともに東京六大学リーグで活躍し、日米大学野球では大学日本代表として米国遠征もした仲です。しかし山本功児氏はあくまでひとりの親としてチームには関わらず見守りましたが、昨夏の口惜しさをバネに活躍する息子の姿に喜びはひとしおでしょう。この試合でサヨナラヒットを打ったのは2番山口です。2本の3ランの予備水も2番山口の犠飛でした。実はこの試合の一番の立役者はこの選手だったと思います
☆花巻東8−3敦賀気比・・・2回戦屈指の好カードです。総合力は敦賀気比が上ですが、接戦になれば粘り強い花巻東にもチャンスがあります。花巻東は1回戦みたいに失策で高橋の足を引っ張ったら、敦賀気比は見逃さないでしょう。花巻東の高橋が本来のピッチングをすれば、佐々木洋監督は試合運びが上手いだけに敦賀気比も焦るかも?敦賀気比の東哲平監督はOBですが、2011年に31歳で監督に就任、わずか4年にして全国の頂点に達しました。接戦になれば、選手を信頼して力を出させる花巻東の佐々木洋監督とのベンチワーク対決が見ものですと書いていましたが、結果は敦賀気比のエースで4番、平沼を18安打と打ち崩した花巻東が勝利。敦賀気比も10安打ですから決して打ち負けたというものではありませんが、東哲平監督が全幅の信頼を寄せる平沼が打たれたら仕方無い?まあ、そうも言えますが、「監督の責任です」と東監督が言った裏には言えない本音があったはずです。平沼と心中するというのは思い描いていたかもしれませんが、ここまでボコボコに打ち込まれるはずがないと考えていたでしょう。昨夏の選手権準決勝で平沼は12安打(3本塁打)と打ち込まれて大阪桐蔭に負けました。しかし敦賀気比は15安打(2本塁打)ですから決して打ち負けたわけではありません。このときの大阪桐蔭の西谷浩一監督はエース福島が15安打で9点も取られたのに完投させる辛抱強さ、余程エースと打線を信じているのだろうと驚きました。というのはもう一人田中という良いピッチャーが居たからで、筆者はいつ田中にスイッチするか?と注目していましたが、打たれても打たれても西谷監督は動きません。決勝戦でも福島投手が打たれ、チャンスで福島に打席が回っても代打を出さず、福島と心中だと考えていたようですが、福島はやはり三振、しかし次打者1番主将の中村が中前ポトリの決勝打で大阪桐蔭が三重を破って優勝しました。選手を信頼する西谷監督はスゴイと感心しました。敦賀気比の平沼は、大阪桐蔭打線にムキになって向かって行ったことを反省し、春のセンバツ準決勝では大阪桐蔭を完封しました。このあたりは筆者のエッセイ109『花見』(2015年4月5日)をご覧下さい。敦賀気比背番号17の松本が初回満塁ホームラン、続いて2回にも満塁ホームランの大会新記録で、大阪桐蔭のエース田中を打ち込みました。結果論ですが、大阪桐蔭・西谷監督は田中投手がこういう面があることを知っていたのでしょう。春のセンバツ決勝で敦賀気比・平沼は東海大四のエース大沢のスクイズを咄嗟の判断で外してアウトにしました。東海大四が浦和学院を破った時のダメ押しが大沢のスクイズでした。敦賀気比バッテリーは「絶対来る!」と考えていたのでしょう。スクイズという作戦は、成功したときはヤッター!とうれしいのですが、外された時は惨めです。この成否が流れを変えます。したがって監督にとっては大変強気の作戦なのです。これで流れは一気に敦賀気比へ、背番号17の松本が2ランホームランで試合を決めました。流れとは恐ろしいもので、好投の大沢の球が、吸い寄せられるように松本のバットへ向かって行ったのです。それを逃さないところが、ツキ男ならではということです。筆者のエッセイ109『花見』(2015年4月5日)にはこういうことも書いてあります。敦賀気比の優勝は、優勝候補最右翼の仙台育英を破った時点で決まったと言えます。浦和学院や仙台育英は夏にまた見たいチームです。仙台育英は来るでしょうが、浦和学院は要注意です。なにしろセンバツで優勝した年の夏に埼玉県予選で敗れた前例があります。それだけ埼玉県大会を勝ち抜くのは難しいのです。どうですか?その通りになったでしょう。埼玉は絶対的強さの浦和学院ではなく花咲徳栄が出てきました。話が昨夏や今春に転々としましたが、くどいようですが筆者のエッセイ107『競歩』(2015年3月21日)をご覧下さい。春のセンバツ有力校を紹介しています。その中で敦賀気比について、北信越大会優勝チーム。昨夏ベスト4入りしたときのメンバーが多く残っており、甲子園での経験値が高い分、試合を有利に運んでいける可能性が高いと見られます。プロ注目の平沼翔太が攻守の要。故小林繁さんが、少年野球時代の平沼選手を見て、「この子はきっとプロ野球で活躍する選手になる」と見込んだ平沼投手は、昨夏甲子園でのピッチングで、その能力の高さを見せ付けました。ただ、ひとりで長丁場はキツイです。実はもう一人プロのスカウトが注目する投手がいるのです。山崎颯一郎。188センチ、80キロの恵まれた体格からストレートの最速は140キロを超え、“福井のダルビッシュ”と異名を持つ選手です。楽天に入団した安楽に似たタイプです。プロ注目のエース平沼翔太よりも、素材としては山崎が目につくという人もいますと書いてあります。花巻東は1回戦で専大松戸のプロスカウト注目のエース・原 嵩から4安打しか打てず、それでも花巻東の高橋は8安打打たれながら高校生離れしたピッチングで要所を締めて4-2で勝ちました。好投手というのはランナーを出しても本塁に行かせない投手です。敦賀気比・平沼はその典型で、クレバーだし、ここぞというときに気力を奮い立たせることが出来るからです。花巻東の佐々木洋監督は「宇宙戦艦ヤマト」を歌う佐々木功に似ています。東北訛りの朴訥な監督ですが、2002年に監督になったときの花巻東の硬式野球部員はわずか11人でした。それが今は135人です。どうして短期間にこんなチームを作れたのか?そのモットーは、「我々はもちろん日本一を目指していますが、取り組み方も日本一を目指そうという目標を掲げています。日本一を目指すなら、日本一の全力疾走をしよう、日本一のカバーリングをしよう」ということです。@常に全力疾走…たとえゴロでも全力で一塁を目指して走るA徹底したカバー…誰かがミスをしたとき、必ず後ろにカバーに入るB決して諦めない…最後の最後まで逆転を信じて諦めない、という野球です。選手の兄貴分のような監督ですが、一昨年の夏の甲子園、済美上甲正典監督(故人)との采配があまりに好対照で注目されました。済美のエースは150キロ投手・安楽、投げさせ過ぎだと批判されて上甲監督は反論しました。「ここ一番で勝たせてやりたいときに、選手を信じて投げさせるのが高校野球の監督だと私は思います。球数制限で下ろして負けたら、彼らに一生の悔いが残るかもしれない。あの子たちには『いま』しかないんです。私は投げたいという本人の意思を尊重してやりたい」古い考え方ですが、分かります。ただ、上甲監督は試合中常にニコニコして名監督と言われましたが、練習では常に鬼のような怖い顔だったようで、その厳しさが上級生の下級生への体罰に繋がっていたようです。いわゆる精神論の「古い監督」だったわけですね。一方花巻東の佐々木洋監督は対照的に「新しい監督」で、練習中にジョークを飛ばし、グラウンドに爆笑が巻き起こることもしばしば。厳しくもアットホームな雰囲気が流れているチームだそうです。西武の菊池雄星や日本ハムの大谷翔平のような良い投手を育てたわけですが、全員野球でチーム全体で勝つことを目指し、ここぞというところでも大谷翔平を出さずに敗れて批判されたりしました。それは大谷翔平の状態を見て、将来プロで活躍する選手になる、ここで無理させたら彼のためにならないと考えて連投させなかったのだそうです。ただ大谷を大事に育てたものの、最後の夏、岩手大会の決勝で大谷を投げさせながら惜敗して甲子園に行かせてやれず、勝たせてやれなかったことを後悔したと言います。一昨年の春のセンバツ準優勝済美との対戦では「安楽は大谷以上の投手」と見た佐々木監督は、左打者には得意のスライダーが投げにくそうだと見て、スタメンに1番から6番まで左バッターを並べ安楽を攻略しました。ピッチャーは4人を継投させ、相手打線の眼が慣れてくると代えて目先を逸らしました。まさに全員野球でした。特に大会最小兵、身長156cmの2番千葉翔太外野手(3年)は、2回戦、彦根東(滋賀)戦で5打席で計34球粘った末にすべて左方向に流し打ち3安打。そこで上甲監督は千葉対策でセンターを三遊間に置き、内野を5人で守る変則シフト、さすがと思いました。ところが、千葉はいとも簡単に突破、1打席目は狭い二遊間を破って中前へ。打球を処理したのは右翼手で、記録は右前打となりました。その後に先制のホームイン。7回には思い切り引っ張って誰もいない右翼に打球を飛ばし3塁打。済美ベンチがシフトを諦め、ほぼ通常の守備位置に戻した10回には先頭で中前打、決勝のホームを踏みました。花巻東・佐々木洋監督は千葉に「シフトを敷く時点で、ストライクを投げて打たせてくる。ホームランを打つつもりで引っ張れ」と言ったそうです。一方済美の上甲正典監督は「安楽の球数をいかに減らすことができるか、と考えた。ファウルで粘り左に流し打ちするので変則シフトを敷いたら、今日は三遊間に打球が飛ばなかった。策に頼り過ぎた。最後まで千葉君にやられた。監督の責任です」と言いました。先輩大谷に投げてもらって練習していた選手たちは、安楽投手の球をあまり速く感じなかったと言います。この試合、安楽は甲子園自己最多の14奪三振、183球の力投も報われず、高校屈指の右腕が3回戦で姿を消しました。戦前は済美の絶対優位と言われた試合に勝てたのは、やはり佐々木洋監督が選手を信頼して、安楽対策の打線を組み、しかもベースギリギリに立たせて、得意のスライダーを投げ難くしたことが奏功しました。普通のチームは不動のオーダーですが、佐々木洋監督は相手投手を見て打線を組みます。ベンチ入り全員がレギュラーという考え方です。投手もそうです。相手打線を見て投げる投手を替えてきます。敦賀気比の強力打線が相手ですから当然エースの高橋を出してくると思ったら、なんと先発は2年生の加藤です。ビックリしました。驚いたのは敦賀気比も同様でしょう。どちらも同じ左腕ですが、加藤は強力打線に徹底して外角攻め、打たれるのは仕方無い、後ろにはエースが控えていると緩い球中心に速い球を混ぜて攻めの投球、要注意の松本は2三振に仕留めました。ニヤニヤしながら投げるので、敦賀気比の打者から見ると憎たらしかったでしょう。花巻東・佐々木洋監督は敦賀気比の平沼投手対策として「左打者が打つのは難しい」と結論を出しました。左打者には直球、スライダー、チェンジアップを使うが、右打者にはチェンジアップをあまり使わない。そこで1回戦から先発野手を2人入れ替え、右打者を6人並べました。そして外角のベルトゾーンに狙い球を絞り、ベース近くで覆い被さるように打席に入らせました。下手に手元が狂えば死球の怖れがあります。この外角打ちの戦略が見事にはまりました。右打者は直球かスライダーに絞り、「外の球を狙って逆方向へ打て」という作戦です。言われたってそう簡単に出来るものではありませんが、それをやったのが花巻東打線でした。敦賀気比の東監督は花巻東の狙いに気付いて、平沼に内角も攻めろと身振りで指示しましたが、手遅れで4回までに4点取られ平沼はこの回で降板、レフトに入りました。5回からマウンドには山崎が上がりました。敦賀気比は5回裏、花巻東の加藤を打って、篠原主将の3ランホームランで1点差に迫りました。一方、平沼をあれほど打っていた花巻東打線が山崎投手の前にピタリと沈黙しました。実は山崎投手は背が高いだけに投げた時バランスを崩す悪い癖がありました。そこで大谷翔平の投球フォームを研究して真似するようにしてから安定したのだそうです。6回裏花巻東はエース高橋が登板、リードして高橋を出せば1点差でも勝てるというのが佐々木洋監督の考えでした。敦賀気比は山崎に代打を出しました。1点差、ここが勝負だと東監督は考えたのでしょう。筆者は「エッ、ウソ!」と思いました。山崎投手の素晴らしいピッチングを見て、流れが変わったと思っていたからです。「接戦になればベンチワーク対決が見もの」と書いていましたが、この6回裏の両監督の考えの差が勝敗を分けました。花巻東のエース高橋は佐々木洋監督の期待通りランナーは出しても点は与えません。敦賀気比のエース平沼は東監督の「平沼で勝ってきたチームだから」という期待に応えられませんでした。7回から再び平沼が登板して、今度は内外角に投げ分けるようにしましたが、今度は内角は引っ張る、平沼になって息を吹き返した花巻東打線は打ちまくって、敦賀気比は轟沈しました。花巻東が得点したのはすべて2死からのタイムリーです。「粘り強い」と称される今年の花巻東の特長が存分に発揮された試合でした。ただ相変わらず失策が出て、守りには不安があります
仙台育英7−1滝川二・・・強打の対決ですが、総合力は一押し仙台育英が上です。滝川二が地元の大声援を背に、力を出せるか?と書いていましたが、仙台育英が投打で圧倒しました。2回にエース佐藤世那の中前打で先制すると、4回は紀伊の適時打で加点、5回には郡司の本塁打など打者10人の猛攻で4点を挙げ、滝川二を突き放しました。投げてはエースの佐藤世那が1失点で完投しました。滝川二は佐藤世那に7回まで2安打に抑えられていましたが、8回に大嶋の適時打で一矢報いるのが精一杯でした。兵庫大会で打率.500、8盗塁と、驚異的な俊足の選手で、関東一のオコエ瑠偉選手や仙台育英の平沢大河選手と共に、打と足で今大会注目の選手・根来祥汰(3年)は、1回裏ヒットエンドランで2塁へ走りタッチアウト!佐藤世那のクイック、打者大嶋の空振り、強肩郡司捕手のストライク送球と重なっての結果ですが、ヒットエンドランで空振りではしょうがない面があります。ただ、文字通り打って走るのでは併殺は防げない可能性があり、本来はランエンドヒットで盗塁と同じタイミングでスタートすれば、根来祥汰の足なら、例え空振りでも成功していたかもしれません。やはりスタートが大事なのです
☆鳥羽4−2津商・・・優勝候補智辯和歌山を撃破した津商の強さは半端じゃありません。春夏通じて初めての甲子園ですが、三重大会決勝は9回に5点を奪う大逆転劇で出場を決めただけに、何か「持ってる」チームです。100年前、第1回大会優勝の鳥羽と初出場の津商、さあどうなるか?恐れるものは何も無い、という1回戦の津商の攻撃力が発揮されれば一方的なゲームになるかも?と書いていましたが、筆者の予想はものの見事に外れました。やはり打撃は水物ということと、甲子園で勝ち進む粘っこさという面でまだまだでした。あまり強さは感じない鳥羽ですが、3回に2塁打と犠打で好機をつくり、5連続安打で3点を先行しました。平安や京都西など強豪校の揃う地区の代表ですから強いワケですが、投手がグンバツで無い分、そんなに強い印象を持ちませんが、津商の勢いを出させないということはやはり投手が良いということでしょう。6回鳥羽はバントで走者を進め、内野安打で1点を加えました。津商は早いカウントから積極的に打って4、7回に1点ずつ返しましたが、鳥羽の松尾の打たせて取る投球と堅い守りの前に好機が少なく、4安打に抑えられました。津商は智辯和歌山戦同様、坂倉−石川の継投でしたが、攻撃的な攻めも、相手が浮き足立つことなく堅実に守備されると空回りするものだということが改めて分かりました。柳の下にどぜうは2匹居ないのですヨ
健大高崎8−3創成館(長崎)・・・初出場ながら好守備で天理を破った創成館は「機動破壊」の健大高崎の機動力を封じれるか?順当なら健大高崎ですが・・・と書いていましたが、創成館は初回、3塁打と犠飛で先制、アレアレ?雲行き怪しいヨ、と思っていたら、健大高崎は5回、連打と犠飛でまず同点、更に連打で3-1と逆転しました。ヤッパリ、と思っていたら、創成館はしぶとく7回と8回に1点ずつ奪って3-3の同点に追い着きます、アレアレ?しかし健大高崎は8回、四球から4連打で3点もぎ取り勝ち越し、更にエース川井の右中間への2塁打で2点を加えてダメ押し、最後に突き放しました。創成館の戦いはアッパレでした。負けたけれど、力を出し尽くしたのではないでしょうか


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【大会第10日】8月15日(土)
☆早稲田実業8−4東海大甲府・・・強打の対決、投手は東海大甲府の2年生エース菊地大輝に分があります。静岡戦では11安打7失点でしたがこれは静岡相手ではしょうがない、むしろ村木に投げ勝ったのがスゴイ。下関商戦では相手打線を抑え込みました。打線も全体では東海大甲府がやや上回るか?と思いますが、清宮が打てば早実も乗るので、清宮次第では分かりません。菊地は、1年生の清宮に対して闘志を燃やしていると報道されていますが、あまり過度に意識してはいけませんね。清宮の心臓ではヒットを打つでしょうから、打たれてもしょうがない、位に考えないと、カッカしてたら他の選手に打たれますヨと書いていましたが、その清宮が本塁打含む5打点、ひとりで東海大甲府を粉砕してしまいました。いや〜〜〜、スゴイ!菊地投手は1回清宮にインコース攻めで死球、2打席目は3回表、無死1塁で投じたチェンジアップが甘く入り、振りの鋭い清宮は変化球を読んでいたかのように上手くひきつけてバット一閃、ライトスタンドへ強烈なホームラン!さらに4番・加藤雅樹も打った瞬間それとわかる強烈なホームランを同じくライトスタンドへ叩き込み、一気に優勢に立ちました。「だから言ったじゃないの」というような展開で菊地はマウンドを下ろされました。なんとか食らいつきたい東海大甲府は1−5で迎えた5回裏、2点を返し、3−5と2点差に詰め寄ります。しかしその直後の6回表、早稲田実業は2死満塁から清宮が走者一掃の3点適時2塁打を放ち、再び突き放しました。東海大甲府も終盤、守備での好プレーを連発し、7回からなんとか無失点で踏ん張って流れを引き戻そうとしましたが、早稲田実業先発・松本の後を受けた左腕上條哲聖の前に沈黙。自分たちの野球をさせてもらえずに3回戦で敗れることとなりました
☆花咲徳栄1−0鶴岡東・・・総合力が高く、隙の無い花咲徳栄の優位は動きません。鶴岡東9番打者・福谷優弥の投打に渡る活躍で悲願の甲子園初勝利を果たしましたが、花咲徳栄打線は福谷では抑えられないでしょうと書いていましたが、鶴岡東の佐藤俊監督はやはりそう考えたようで、松崎祥弥投手(3年)を先発させました。縦スラが素晴らしく、鋭いブレーキがかかるので、強打の花咲徳栄打線が打てません。一方の鶴岡東は再三無死でランナーを出しますが、これまた鎌倉投手が肝腎なところで踏ん張り、鳥取城北戦で16安打9得点の鶴岡東の強力打線も打てません。まさしく我慢比べのような歯がゆい展開から、お互いに継投時機が問題となりました。7回表の鶴岡東の攻撃で、1死1、2塁、鎌倉投手100球を越えたところで花咲徳栄は、投手を鎌倉から高橋昂也(2年)に交替しました。必勝パターンが的中し、後続を2者連続三振に斬ってとりピンチを免れました。ピンチの後にはチャンス有り、7回裏の花咲徳栄は4番の大瀧のヒット、里見がバントで送り、楠本の内野安打で1、3塁とチャンスを広げ、7番笹谷が、中前にタイムリーを放ち、均衡が破れました。高橋はこの後も8回、9回を抑え、試合終了。互いに、ピンチの場面でも好守を見せ、1点を奪い合う手に汗握る試合でした
東海大相模11−2遊学館(石川)・・・2回戦でコツコツ14安打に堅い守備の遊学館ですが、東海大相模の2投手を打てるか?総合力で東海大相模の優位は動きませんと書いていましたが、遊学館エース小孫の立ち上がり、さすがに力んだか、死球、センター前ヒット、タイムリー3塁打で2点、その後も連打で1点を追加し、焦った小孫は、牽制を入れるも送球が大きくそれて、ランナーが生還し、4−0。幸先の良い立ち上がりで小笠原慎之介は楽にピッチングができます。最速147kmを計測し、落ち着いたマウンドさばきで140km台のストレートを見せ球に使い、決め球として、緩いスライダーで三振を取る、この緩急が素晴らしい。ただ時折ストレートのコースが甘く入ってしまう場面がみられるも、球威で押し切ります。6回表には、遊学館3、4番に2塁打の連打を浴びて動揺したのか、この試合唯一の死球を与えてしまう場面も見られましたが、8回6安打2失点に抑えて順当な勝利
☆九州国際大付2−0作新学院・・・どちらも強打のチームです。打撃というのは相手の投手次第で、どんな強打のチームでも良いピッチャーは打てません。しかしこの両チームの投手力からすると、打撃戦になりそうな気がします。投手戦なら四死球やエラーが勝敗を分けたりしますが、打撃戦は予想がつきませんと書いていましたが、打撃戦予想が外れて投手戦になりました。九州国際大付は6回に4番山本武白志の左中間本塁打で1点を先取、前の試合の2ホームランに続く肝腎なところでの本塁打です。7回には2死2、3塁から3番岩崎主将の中前安打で加点しました。先発富山は直球とスライダーのコンビネーションがよく7安打完封、作新学院も倉井が6回1失点の好投でしたが、5点取るつもりが、3度の無死1塁の場面で強攻して得点できなかったのが響きました。朝日新聞の予想では優勝候補で筆者は首をひねっていましたがヤッパリ・・・
【大会第11日】8月16日(日)
☆秋田商4−3健大高崎・・・秋田商のエース左腕・成田 翔は好投手です。7人が左打者の龍谷打線から16奪三振です。好球必打とは昨夏から3季連続の16強、甲子園でこれだけ勝つということは地力の証明です。エース川井もまだ3回戦では力が残っているでしょう。果たして成田を「機動破壊」で崩せるか?ポイントは好球必打と見ます。いろいろなことをやってくる健大高崎が優位と見ますが、高校野球勝敗の8割は投手力で決まります、さあどうなるか?と書いていましたが、少年野球の大会で遠征、ラジオで時折待機中聞いていました。やはり野球はピッチャーですね。健大高崎は出塁すると「機動破壊」で成田翔を揺さぶります。これで先取点を取りました。ところが秋田商はひるまず好球必打で逆転すると、ジックリウェイティングの健大高崎を、速球と縦スラの攻撃的なピッチングで成田翔が「破壊」してしまいました。健大高崎は8回裏追い着いたのはさすがでしたが、リリーフしたエース川井が延長10回表1点取られ、力尽きました。しかし健大高崎の粘りにはラジオですら感動しました
☆関東一1−0中京大中京・・・好球必打とエース・上野の針の穴を通すコントロールが光る中京大中京は投打に安定感があります。走攻守3拍子揃った関東一のオコエ瑠偉選手は上野を打てるか?中京大中京は打撃も凄まじいので関東一の投手陣では抑え切れないでしょう。そうならば、関東一は何としても上野をマウンドから引き摺り下ろす打撃をする他に道はありませんと書いていましたが、少年野球の大会で遠征、ラジオで時折待機中聞いていました。やはり野球は分かりません。強力な打線を誇る両チームの対戦は打撃戦が予想されましたが、試合は緊迫した投手戦、1回表、中京大中京はいきなり2死満塁のチャンスを作り、佐藤勇基の打球は大きく伸びて左中間へ抜けようかという当たりをセンターのオコエ瑠偉が真っすぐに追いかけキャッチ。オコエにしかできないというスーパーキャッチで中京大中京は先制を阻まれ、ラジオですら球場の大歓声が聞こえました。中京大中京は上野 翔太郎が予想通り関東一打線を5回までノーヒットに抑え込みます。6回裏、関東一は初ヒットと送りバントで1死2塁、打席にオコエと絶好のチャンス、しかし上野はオコエをチェンジアップで空振りの三振に切って取り無失点。5回から関東一は阿部に代えて金子を送り、結果は完封リレー、予想外の頑張りでした。互いに投手陣、守備陣が粘りを見せる好ゲームの最後を決めたのは、関東一5番・長嶋 亮磨の一発、値千金のレフトスタンドへのサヨナラホームラン、見事な集中力でした。それにしても中京大中京・上野の127球の熱投は見事でした、お疲れ様でした
☆仙台育英4−3花巻東・・・これは3回戦にはモッタイナイ東北勢対決、仙台育英は優勝候補一押しですが、敦賀気比を破った花巻東の佐々木洋監督の采配は尋常ではありません。一方の仙台育英の佐々木順一朗監督はオーソドックスながら、次々に手を打つ監督ですから、もつれたらこれまたベンチワークが見ものです。投手は佐藤世那対高橋樹也、どちらかと言われれば高橋樹也の老獪なピッチングが勝ります。それに投手の顔、カワイイセナとコワイミキヤ、これまた見ものです。打撃は好投手の前には水物なのでなんともいえません。守備は花巻東に不安があります。一番のポイントは佐藤世那対策として花巻東の佐々木洋監督がどういう手を打ってくるか、ですネ。負けるときでも手を打ち尽くして負けるという監督ですから、本当に最後の最後まで諦めないというチームの戦いは見ものですヨと書いていましたが、この試合は少年野球の試合中、ラジオでも聞けませんでした。ネットで見たところ花巻東の先発は2年生の加藤、いきなり1回表仙台育英に2点取られます。一方、仙台育英の先発は百目木(ドメキ)、この選手が投げられるようになって宮城大会では不調の佐藤世那をカバーして投手が2枚になったことで仙台育英一押しとしたわけです。花巻東は1回裏すかさず反撃し百目木からタイムリーで1点を返しました。そして2回からエース高橋をマウンドへ、互いに手の内知ってるだけに加藤では抑え切れないとみたのでしょう。仙台育英は高橋からすぐさま百目木のタイムリーツーベースで1点を追加。その裏の花巻東の攻撃をダブルプレーを含め3人で抑え、勢いを削ぐことに成功します。これは明らかに流れは仙台育英、しかし4回裏、花巻東の2年生4番熊谷 星南がレフトへホームランを放ち1点差に詰め寄ります。仙台育英の佐々木順一朗監督は、百目木では花巻東打線を抑え切れないと見てエース佐藤世那をマウンドへ、互いにエースが力投し流れを手放さないままじりじりとした戦いが続きました。6回表、仙台育英は青木のタイムリーツーベースで欲しかった追加点を奪い4-2、しかし7回裏仙台育英はエラーで出したランナーをバントで進められ犠牲フライで1点を失い4-3、9回裏、花巻東は1死からヒットで出たランナーに勝負に出るように命じ、盗塁を敢行、仙台育英捕手・郡司が落ち着いて2塁送球、アウト、後続をセカンドゴロに打ち取り、ゲームセット。仙台育英が1点差の逃げ切りに成功しました。この日先発した百目木は、3回3分の1で2失点ながら、4打数4安打とバットで大活躍。宮城大会の功労者は甲子園でも投打でチームに貢献しています。百目木に限らず、仙台育英には試合毎にヒーローが現れる良い流れが生まれており、それが21年ぶりのベスト8入りに結び着きました
☆興南4−3鳥羽・・・どちらもあまり強いとは思わないので・・・まあ頑張って下さいと書いていましたが、この試合だけは後半見ました。鳥羽が3-1でリード、これは鳥羽だな、と思っていたら6回裏興南は1点GET、7回裏同点に追い着き、8回裏ついに逆転、先発した2年生エース比屋根は、序盤こそ鳥羽に得点を許すも、尻上がりに調子を上げ、鳥羽打線を抑え込みました。初戦に続き、2試合連続で逆転勝ちした興南の終盤の集中力は、スゴイ!「強いとは思わない」なんて失礼しました。強いです。左腕比屋根の1塁側へ踏み出して横手投げの投法は、右打者内角へ食い込み、腰を引いて三振、左打者は背中から球が来て外角遠くへ逃げて行くのでへっぴり腰三振というパターン、分かっていても打てません。春夏優勝以来の8強、たいしたものです
3回戦を終わればBEST8が決まります。この時点で「朝日新聞の開幕前予想」と「筆者の事前予想」はどういう結果になっているでしょうか?見ものですネ


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 BEST8に残ったのは、「朝日新聞の開幕前予想」の優勝候補第一群5校の中では筆頭東海大相模のみ、当選率2割、第二群10校の中では仙台育英と関東一の2校、当選率2割、参加49校中15校は3割ですから、残念ながらハズレが多いということです。第三群12校の中では早稲田実業、興南、九州国際大付、花咲徳栄の4校、当選率3割3分3厘、ここまで入っていないチームでは秋田商が残りました。「筆者の事前予想」の中では一押し仙台育英のほか、東海大相模と花咲徳栄が順当に残りました。早実は息子の母校なので過去神宮に応援に行ったこともあり、ましてや今年は清宮人気が沸騰していたので注目していました。関東一もオコエ瑠偉に注目していました。ただこの2校がBEST8に残るとは予想外でした。やはりスターが居て注目されることはチームを強くするんですね
【大会第12日】8月17日(月)
早稲田実業8−1九州国際大付・・・早稲田実業の3番清宮、4番加藤がノリノリ、九州国際大付も3番岩崎、4番山本がノリノリ、投手も早稲田実業の松本、九州国際大付の富山の調子が上がっています。普通に考えれば打撃戦ですが、3回戦で打撃戦を予想したのに投手戦ということがあったように、野球は分かりません。ただ確実に言えることは今大会注目の清宮幸太郎と山本武白志、どちらが打つかで勝敗が分かれるでしょうと書いていましたが、早稲田実業の6番富田 直希(3年)がホームラン2本、清宮も弾丸ライナーでライトスタンドに叩き込み、ここまで打率.500で8打点。3死球が示すように相手バッテリーのマークもきつく、インコース攻めも増えていますがこの結果です。エース松本 皓は散発5安打1四球で1失点完投でした。西東京大会では日大三との大一番こそ完封しましたが、32回2/3で19失点、守備陣も6試合で14失策、と守りに不安を抱えていたのに、甲子園に来てから好守でエースの好投を支えるチームに変身しました。清宮が注目され、チームが脚光を浴びる中、グングン選手が成長するという状況です。今大会3本塁打の大砲・山本武白志はあわやという当たりはあったものの4打数1安打、チームとしても最後まで松本を攻め切れませんでした。しかし同じ第三群の2校ですからココまで戦い抜いたのはアッパレです。山本武白志はヤマモトムサシという名前の語感も良く、注目されたことで今後の野球人生が花開くでしょう
☆東海大相模4X−3花咲徳栄・・・ここまで全く危なげない東海大相模、1-0の接戦を制した花咲徳栄、どっちが強いか?普通なら優勝候補東海大相模と言うひとが多いでしょうが、花咲徳栄のほうが強いと見ていますと書いていましたが、筆者の予想通りの戦いとなりました。花咲徳栄はリードして鎌倉から高橋へのスイッチ、東海大相模もリードして吉田から小笠原へのスイッチと考えていたでしょう。浦和学院と東海大相模の対戦ならわずかに浦和学院が勝るというところですが、花咲徳栄だとわずかに東海大相模に劣るというところです。しかし野球は強いほうが勝つとは限らない、緊迫した場面での強さは花咲徳栄のほうが上と見ていました。実際花咲徳栄は右の吉田を攻めてリードを奪います。ドラフト候補吉田はイマイチ切れがありません。これはヤバイと左腕小笠原をリリーフさせました。必勝パターン鎌倉−高橋のリレー、しかも4番大瀧が当っている上、センターでファインプレー、サード楠本が前の試合に引き続き笹谷捕手への冷静な送球で2回も3塁ランナーを本塁でアウトにする好守、笹谷の冷静なリードもあって高橋はピンチを凌ぎます。予想通り花咲徳栄が勝つな、と思ったのですが、野球には神様が居るのです。それも女神です。どちらに微笑むか?8回の攻防が勝敗を分けました。8回表3、4番の連続安打でチャンスをつかんだ花咲徳栄、笹谷を敬遠で歩かせろと東海大相模の門馬監督は小笠原に命じ満塁策、切り抜けました。その裏1死2塁で高橋の牽制球が痛恨のボーク、東海大相模の捕手長倉の犠牲フライで同点、ボークが無ければ結果的に無かった失点でした。9回裏、堅守の花咲徳栄にあろうことか連続失策が出ます。最後は杉崎のレフトオーバーでサヨナラ。土壇場で勝利のプレッシャ、女神がスルリと逃げて行きました
仙台育英6−3秋田商・・・秋田商のエース左腕・成田 翔はまだスタミナ残っているでしょうが、一押し仙台育英が相手ではキツイでしょう。総合力でどう見ても差がありますが、高校野球は8割ピッチャーなので、成田が本来の投球をすればもしかして?と書いていましたが、仙台育英は3回まで秋田商の先発・成田翔に完璧に抑えられていたものの、4回2死から3番・平沢が今大会自身2本目となる本塁打を右翼スタンドへ叩き込みます。この試合チーム初安打が本塁打となり、1点を先制しました。続く5回には連続安打と四球で満塁とし、谷津、佐藤世の連続適時打で3点を追加しました。6、9回にも1点ずつを加え、4試合連続2桁安打で連続東北勢対決を制しました。仙台育英の先発・佐藤世那は、完投しましたが9安打3失点。最終回に投げ急ぎ、2点を失って、今後に課題を残しました。秋田商は、前日に161球を投げたエースの成田翔がこの日も先発、途中ライトへ入って見事なレーザービームで本塁でランナーをアウトにしました。再び登板しても球威が衰えず、今後プロも注目しそうです
☆関東一5−4興南・・・関東一はオコエ瑠偉選手が注目されていますが、オコエばかり気にしていると他の選手にやられます。それにしてもオコエは打撃や走塁だけでなく守備で貢献しています。興南はココまでナン?と書いていましたが、オコエは興南の先発左腕・比屋根雅也投手(2年)がトルネード投法から投じるストレートなどにタイミングが合わず、1回表の第1打席は空振り三振、3回表の第2打席は捕邪飛、5回表の第3打席は右飛。7回表の第4打席はこの日2個目となる空振りの三振でした。長嶋は比屋根の内角食い込む球にも臆せず一閃、この日もレフトスタンドへホームラン、スゴイ選手です。3-3で迎えた9回表のオコエ瑠偉の第5打席は、2死2塁の場面、内角食い込む球にまるでタイミングが合っていませんからバッテリーは当然その球を投げます。オコエは長嶋の振りを見てアレしかないと思ったのでしょう。内角低めの速球をとにかく振りぬくしか無い、いちかばちかヤッタレ、と思ったかどうか知りませんが、カウントボール2ストライク1からの4球目、オコエは真ん中やや内角寄りの低めストレートを鋭く振り抜き、打球は瞬く間にレフトスタンドへ飛び込んで勝ち越しの2ラン本塁打となりました。脅威の粘りの興南はやはり、9回裏粘って1点とり、更に同点、逆転サヨナラが期待されましたが力尽きました


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 筆者が甲子園に応援に行ったのは第82回全国高校野球選手権大会、15年前、2000年です。光星学院のエース斉藤広大が鶴ヶ岡少年野球クラブの出身でした。斉藤広大のお母さんが共に東入間学童野球連盟の事務局を務めていたので、当時の松本勝治会長以下、大型バスを仕立てて試合の度、応援に行きました。夜行日帰りです。準々決勝は強豪鹿児島樟南が相手、ココまでかな?と思っていたら2-1で勝ってしまいました。準決勝は翌日なので帰れません。大阪・江坂のサニーストンホテルに泊まりました。会社の大阪支店が江坂駅ビル大同生命ビルの最上階にあり、このビルが出来た1970年代初めには、回りは農地ばかりで、大同生命本社ビルとサニーストンホテルだけがポツンとありました。大阪支店に出張のたび宿泊していた馴染みのホテルです。
 翌日甲子園のスタンド、智弁和歌山は3塁側、例の白地に赤の「C」の人文字の大応援団です。では青森光星学院(今は八戸光星学院)の1塁側応援団は寂しいか?イエイエとんでもない、複数のブラバンの大応援団です。実は当時、青森光星学院のレギュラーの半分は大阪出身でした。エースは埼玉県です。地元青森出身のレギュラーはほとんど居らず、「大阪構成学院」などと揶揄されていました。後に巨人の坂本勇人なども在籍しましたが、伊丹市の少年野球チームで坂本が投手、田中将大が捕手でバッテリーを組んでいました。田中将大はその後北海道の駒大苫小牧高校で第87回全国高校野球選手権大会で2年生エースとして優勝、翌年第88回全国高校野球選手権大会決勝では早稲田実業のハンカチ王子と投げ合って延長15回引き分け再試合、結局再試合では3-4で破れ、最後の打者となりました。今でも鮮明に浮かびます、最後の投手斉藤と打者田中の対決、凄かったですね。話を戻すと、光星学院の応援団はしたがって地元大阪からたくさん詰め掛けて、友情応援の吹奏楽団が選手の出身校などから詰め掛けたのです。勝ち上がるたびにブラバンの統制が取れてきて、智弁和歌山を上回る大音量で、これはもはや和歌山対大阪・兵庫の対決みたいな有様でした。「サイタマも居るヨ〜」みたいなノリで必死に応援しました。甲子園の応援席で応援するというのは良いものです。テレビではあの感動は得られません。
 さて結果は・・・智弁和歌山 7-5 光星学院、智弁和歌山の打力が一枚上でした。制球重視の斉藤広大は執ように内角を突く投球で強打の智弁和歌山を抑えつつ、4-3でリードして7回表から根市にマウンドを譲った直後、2点取られて逆転されました。光星学院はその裏1死満塁から犠飛による同点止まり、速球派の根市の方が組みし易かったか智弁和歌山は8回にも2点加え、そのまま逃げ切り試合終了。光星学院は3回の北川の同点3ラン後、あとひと押しが足りませんでした。5回に勝ち越したものの6回1死2、3塁で無得点。7回も同点に追い着いたものの勝ち越せず、流れを引き戻されてしまいました。残念、帰りのバスでは途中京都で一時降りて残念会、その後再びバスに乗って翌朝大井町に帰って来ました。甲子園に出るということは大変な費用がかかります。しかし、そういう経験が出来る親はほとんど居ません。カネに代えられない感動が頂けるのです。
 ワタシをもう一度、甲子園に連れて行ってくれる選手はいませんか?オ〜〜〜イと呼びたい今日此の頃・・・・

【大会第13日】8月19日(水)
 近年は投手のために準決勝前に1日休みを取るようになりましたが、選手の体力が向上して打撃が強力になってきたため、今や複数の好投手を擁したチームでないと勝ち上がれなくなりました。BEST4のどのチームも複数の投手です。したがって昔のように一人のスゴイ投手で勝ち上がり、決勝あたりで力尽くというパターンは少なくなりました。休みを取るようになったものの、逆に準決勝、決勝でもまだ投手のスタミナは残っています。したがって、投手が良いチームが最後に笑うでしょう。ところが、今大会は東海大相模と仙台育英が前評判通り2枚看板で勝ち上がってきたのに対し、関東一が4投手、早稲田実業は6投手がベンチ入りしています。関東一は東東京大会ですら9回を完投したケースが1度もなく、一番多く登板している背番号「10」の阿部でさえ、トータル13回3分の2です。この数字は、今大会に出場した主戦投手の中では今治西(愛媛)の杉内洸貴に次ぐ少なさとのこと。阿部はリズムよくゲームを作っていくタイプですが、エースナンバーの田辺は変化球を駆使して総合的な配球で相手を支配していくタイプです。さらに、背番号「11」の小松原は左サイドから投げ込む変則投手。今大会の登板が最も多い金子(背番号16)は、決め球となる変化球を持ち、気合で乗り切るタイプの投手です。3回戦では阿部−金子で完封リレー、準々決勝では田辺−金子のリレーで競り勝ちました。田辺は阿部と同じく下級生の時から場数を踏んできた投手ですが、夏前に故障もあって出遅れて、甲子園に照準を合わせてきた投手、気力も体力も最も充実した状態にあります。田辺も阿部も同じ強心臓だそうですが、準決勝第2試合、両校の投手起用はいかなるものになるのでしょう?東海大相模が“2人で1つ”の起用なら、関東一は、“4人で1つ”の起用、おそらく東海大相模はここまで来たら背番号1小笠原で来るでしょう。関東一は東海大相模の強力打線を封じられると見る投手が誰なのか?田辺で来るのでは?と予想します。
 早稲田実業もエース松本(3年)のほか、10上條(3年)、11宮崎(3年)、16吉村(2年)、17吉野(2年)、18服部(1年)とたくさん投手がいて、みなそこそこ良いのですが、松本が試合の度に良くなってきたので、仙台育英の強力打線相手には松本で行くしかないでしょう。ココまで来ると奇襲作戦は通じない気がします。仙台育英もエース佐藤世那でしょう、本人が自ら、今投手として絶頂期だと言っていますから。
仙台育英(宮城)7−0早稲田実業(西東京)・・・筆者一押し仙台育英はやはり来ましたね。総合力はナンバーワンです。しかし早実も清宮フィーバーに乗ってエース松本が大会期間中にグイグイ成長してきました。短期間にこれだけ力が着くというのは、やはり高校生スゴイと思います。早実は以前東東京でした。早稲田大学の隣にあり、我が息子もここに通っていたので、何度か応援に行きました。野球ではなく卓球のレギュラーでしたが、全国区の強豪・早実でレギュラーというのは大変なんですよ。その後国分寺市に移転したので西東京になったのですが、以前は激戦区東東京で関東一や帝京と争っていました。清宮が打てば勝つ、と言われて来ましたが、どうやら清宮は抑えられません。あのバットの振りの鋭さ、速さは天性のものです。内角攻めで抑えられる類のものではありません。従って打たれても仕方無い、他の選手を抑えるというように気持ちを切り替えたほうが良いでしょう。松井秀喜が敬遠されたような場面は見たくありません。仙台育英の方が力が上と思いますが、ノリノリ早稲田実業に女神がとりつく可能性も無しとはしませんと書いていましたが、予想通りの両エースの先発、しかし実力差がハッキリ出ました。仙台育英は球威は無いが制球で打たせてとる松本投手を攻略するのに、ギリギリの球を見極める作戦、さすがでした。好投手というのはボールを振らせます。ボールは安打になる確率が低いのは誰でも知っていますが、特に追い込まれると多少ボールかな?と思っても振らざるを得ません。「三振しても良い、一巡目は徹底して見極めろ、相手が投手を代えてくる展開になれば、こっちのもんだ」と佐々木監督は指示していたと思われます。早実・松本は2-3ピッチングが続き、追い込んでも球威が無いのでファウルでカットされます。球数が増えて行き、苦しいピッチング、3回表に9番ながら甲子園ではここぞというときに打っている佐藤世那が3塁手の頭を越すライナーの2塁打、佐藤将、青木の3連続長短打と郡司の適時内野安打で3点を先制しました。その裏早実は清宮の内野安打で2死満塁、打席には甲子園で打率5割の4番加藤です。清宮が安打を打った後は活気づくのが今夏の早実打線、ここで佐藤世那がクルリと振り向きざま矢のようなけん制で二塁走者を刺しました。ショート平沢−捕手郡司−投手佐藤世那のサインでしょうが、これは大きかった、ここで点が入っていたら試合はもつれたでしょう。4回にはランナー2人出して松本に代った上條から3番平沢の2戦連発となる3ランなどで4点を奪って突き放しました。平沢は甲子園で4安打しか打っていませんが、うち3本がホームラン!右中間スタンド一番深いところに叩き込み、早実の戦意をくじく痛烈な一撃となりました。打率が低かろうと、ここで打ってくれ、というときに打つのが中軸です。佐藤世那は7四死球と制球に苦しみましたが、これはそれだけギリギリを攻めていたということです。力のある直球とフォークボールの組み合わせで要所を締め、終わってみれば6安打完封でした。早実は9残塁です。打率5割以上の中軸、清宮と加藤がポイント、特にここまで2試合連続本塁打の1年生スラッガー・清宮が打てばフィーバーするので、その対策が課題でした。初回、1死1塁の場面で清宮との初対戦、これまで清宮との対決で「抑えてやる」と真っ向勝負して火だるまとなったエース達と違い、得意のフォークで空振りを奪って清宮を追い込むと、力のある高めの直球でセカンドゴロ併殺に打ち取りました。2打席目の3回には、2死1、2塁から清宮に内野安打を許し満塁のピンチを迎え、打席には4番加藤、ここがヤマでしたネ。「一発牽制」で見事に2塁ランナーを刺し、加藤との対決を持ち越しました。ここで加藤が打ったりすれば、試合の行方は分からなかったでしょう。清宮との3度目の対決は四球、第4打席は2球目のフォークを打たせてセカンドフライ。初回に空振りを奪ったフォークが効いて、“怪物1年生”との対決を制しました。加藤もフォークに合わず、無安打で波に乗れなかった早実は結局完封されてしまいました。
東海大相模(神奈川)10−3関東一(東東京)・・・朝日新聞の優勝候補筆頭東海大相模は順当に来ました。左右両エースが良いばかりか、打線がスゴイ。関東一高は東東京の常連校で、江戸川区の新小岩駅から歩きますが、荒川と中川が並行しているところの畔です。オコエ瑠偉選手が注目されていますが、ナガシマもスゴイですよ。総合力では東海大相模ですが、オコエ瑠偉が活躍すればわかりませんと書いていましたが、予想に反して両エースはベンチスタート、東海大相模の先発は背番号11吉田凌投手(3年)、関東一は背番号10の阿部投手(3年)、結果は門馬監督の読み勝ち、実力差がハッキリ出ました。花咲徳栄戦に先発して打ち込まれ、敗戦投手になるところだった吉田は、8回裏1死2塁で花咲徳栄・高橋の牽制球が痛恨のボーク、東海大相模の捕手長倉の犠牲フライで同点になったとき、ベンチで涙していました。仲間達が負けを消してくれた、心底嬉しかったのでしょう。こういう場面を経験した投手は強い、きっとやってくれると信じて門馬監督は吉田を送り出したのだと思います。7回にはオコエに左前安打を打たれ、キャプテン伊藤に右へ打たれてオコエにホームインを許しましたが、7回を8安打6三振1失点に抑える粘投、これが勝因です。縦のスライダーが冴え渡りました。直球も球威があり、同じフォームからストンと落ちる球は、見逃せばボールなのですが、ストライクだと思って振ってしまうのです。エース小笠原慎之介投手(3年)が残り2回を投げましたが、関東一打線は負けん気を剥き出して4安打で2点を奪いました。2回を2点で抑えたという表現も出来るかもしれませんが、強打の関東一打線に対し、真っ向勝負派の小笠原と、直球のキレと縦スラで三振を奪ったり打たせて取る吉田では、試合を作る意味で吉田のほうが良いと門馬監督は読んだのでしょう、さすがです。小笠原先発だったら打撃戦になっていたかもしれません。結局関東一は2桁12安打でした。「門馬監督は、関東一は攻めでも守りでも捕手の鈴木がポイントと言っている」とテレビの実況で言っていました。オコエマークではないということです。関東一の先発阿部は、先頭千野(ちの)への初球、高めの直球を左前へ運ばれました。続く宮地は普通送りバントです。しかし「攻撃野球」の東海大相模はひと味違います。ヤルゾと見せかけておいてバスターエンドラン、レフト線への2塁打で一気に千野が生還し先制、わずか5球で1点です。なおも無死2塁から関東一が最も警戒していた3番杉崎の右翼線への2塁打で2点目、再び走者を2塁に置き、4番豊田は左翼スタンドへ放り込んで4−0とします。この間約5分。何故阿部先発だったかは分かりませんが、東海大相模は強気の阿部の性格を読んだが如く、高めを徹底して狙って打って行きました。1死もとれずに左腕阿部は金子にマウンドを譲りました。3回戦の中京大中京戦に先発し、好投した時よりひじが下がってボールが来ていなかったと捕手の鈴木は振り返りました。その後、小松原、田辺とつなぐ必死の継投でしたが、「相手の実力が上だった。もう少し接戦にしたかった」と鈴木は言いました。多彩な変化球を駆使して、直球とコース投げ分けの配球で相手に的を絞らせないエース田辺ならば、このように火だるまになることはなかったでしょう。実際田辺が登板したら東海大相模打線は無安打に抑えられました。東海大相模は見事な守りも見せました。5回表1死2塁の守りで、投手の右に転がる絶妙のバント安打を井橋に決められました。ファースト磯網が捕球し、振り向いたら1塁はがら空き、吉田投手も、2塁手の千野もカバーに間に合っていません。「内野安打だ」と瞬時に判断した磯網は、再び振り向きざま3塁へ送球、オーバーランした走者を刺し、1死1、3塁となるところ、2死1塁としました。3塁を回った走者が悪いとは言えません。ランナーコーチャーの指示で3塁を回ってストップ、戻ろうとした時、矢のような送球が背後から来てタッチアウトでした。野球では「次のプレー」が大事なのです。相手を1塁でアウトにする場面でも、先の塁にランナーが居れば、その走者を刺そうと狙う姿勢、捕球して1塁アウト後すぐ2塁や3塁に投げてオーバーランした走者を刺す、普段から練習していたことが咄嗟の場面で出たのです。ランナーは一つでも先の塁を狙うものなのです。素晴らしいプレーは続きます。捕手の長倉が井橋の2盗を封じたのです。この日2度目の盗塁阻止でした。二つの美技で関東一の勢いを止めると、直後に先頭打者の磯網が中前安打で出塁、長倉のサード前犠打が敵失を誘い、好守の2人で好機を広げました。後続もつながり一挙4点。これで大勢が決しました。


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【大会第14日】8月20日(木)
仙台育英(宮城)−・・・東海大相模(神奈川)
さあ、筆者一押し仙台育英が東北に初めて優勝旗を持ち帰るのか、あるいは朝日新聞優勝候補第一群東海大相模が45年ぶり2度目の夏全国制覇を果たすのか。ともに強力打線、しかし野球は投手です。先発投手は両エースという見方が一般的です。東海大相模は2回戦から登場し、試合が1試合少ない上、左腕の小笠原が16イニング、右腕の吉田が19イニングのダブルエース体制で、小笠原は準決勝で球数を36球に留めているのもアドバンテージだといわれています。仙台育英の佐藤世那は5試合、40イニングと3分の2投げていますから疲労度で見れば東海大相模に分があるという見方が一般的です。東海大相模が4試合で31得点9失点に対し仙台育英は5試合で36得点8失点です。佐藤世那はこれだけ投げて防御率0.89、これはスゴイですよ。仙台育英の攻撃力からすれば、佐藤世那が投げれば勝ったようなものです。百目木(ドメキ)が先発した花巻東戦は危なかったけれど、佐藤世那が出て反撃を抑えました。これだけが唯一の接戦です。一方の東海大相模は、吉田が先発して、花咲徳栄に打たれた試合は負け試合でしたが、リリーフした小笠原が抑えているうちに相手のミスでサヨナラ勝ちを拾いました。ただこの試合でも小笠原は大瀧など中軸には打たれて、万全ではありませんでした。仙台育英打線はより強力ですから、力で立ち向かってもある程度打たれるでしょう。その上仙台育英には機動力があります。3番平沢は低打率ですが、打った安打はすべて左投手から、しかも4安打中3本が本塁打で打点6というのは勝負強さの証明です。したがってもしかするとまた吉田から、というのも無いわけではない?調子次第で門馬監督がどう判断するかでしょう。仙台育英はオーソドックスな佐々木監督ですから佐藤世那でしょうが、立ち上がりと最後が心配です。花巻東のときはお互い手の内知り尽くしていますから、サプライズの百目木でした。東海大相模がドドンと先制するか、もつれた終盤で一気に攻略するようだと東海大相模のものでしょう。ただ、佐藤世那のフォークと制球力は、容易には打てません。強打の早実が打てなかったのはむしろ7四死球と散らされて、打てる球があまり来なかったからです。ただし、もう6試合目、スタミナ切れで球威が落ちてたらダメでしょう。東海大相模の先発は小笠原というのがテレビや新聞では専らです。吉田が準決勝でいっぱい投げて、小笠原は余力十分だからです。しかし吉田の防御率1.89、小笠原2.25ですから、小笠原はある程度打たれるでしょう。もし仙台育英が序盤リードするようなら、捕手の郡司は打者の狙いを外す配球の上手さと強肩で、東海大相模の前に立ちはだかるでしょう。朝日新聞は東海大相模、筆者は仙台育英と見ていますが、さあどうなるか?

   


野球は最後に笑った者が勝ちなのだ、と言われますが、まさにその通りの試合でした。「佐藤世那は立ち上がりと最後が心配です。東海大相模がドドンと先制するか、もつれた終盤で一気に攻略するようだと東海大相模のものでしょう」と上で書いたことがその通りとなりました。東海大相模は1回表、先頭の千野が出塁し、2番宮地がバントでファウル。3球目からヒットエンドランに切り替え、1死2塁にして3番・杉崎の中越え2塁打、4番・豊田の左前打と連続タイムリーで2点を先制しました。その裏仙台育英は2死から3番平沢がライトへのヒットで出塁、盗塁し、長倉捕手の悪送球で一挙3塁へ、4番郡司は外角のチェンジアップを見送り四球で2死1、3塁、しかし5番百目木の打球はファーストゴロで無得点。3回表東海大相模は杉崎からの4連打で2点を追加、仙台育英は心配された通り佐藤世那が疲労のためか、制球が甘くなって、早実打線を手玉に取った宝刀フォークも、140キロ台の直球も、東海大相模打線にとらえられました。仙台育英は佐藤世那が打ち崩されれば負けです。3回裏1死後1番佐藤将太はショートゴロ、杉崎の1塁悪送球で2塁へ、堅守のハズの東海大相模がどうしたことか?ここで2番青木が中前適時打で1点返します。さらに3番平沢の2塁打、4番郡司がライトへ打って4-2、5番百目木もタイムリーで4-3、6番紀伊は内角高めのストレートを痛打、しかし不運にもピッチャーライナーで、小笠原は2塁送球〜ランナー戻れず3点止まり。このあたり、まだ流れは東海大相模、小笠原にありました。4回表東海大相模は8番川地が一度もバットを振ることなくストレートの四球、小笠原が送りバントを成功させ、1番に還って千野が外角の落ちる球を打ってショートゴロで2アウト、しかし2番宮地がタイムリー2塁打で5-3、3番杉崎はストレートの四球で2死1、2塁、4番豊田のレフトヘのタイムリーで6-3、リードを3点としました。ただし杉崎は2塁を回って3塁に向かうもアウト!佐藤世那は4回までに10安打を浴び6失点、小笠原は4回裏三者凡退に切って取ります。これは一方的な試合になるかと思いました。5回表佐々木監督が手を打ちます。甲子園で当っていた紀伊が見逃し三振とピッチャーライナー併殺でツキが無い上、レフトの守備で頭を越され、同じようなフライを前の試合でスーパーキャッチしている山本に代えたのです。佐藤世那は当っている磯網を空振り三振、長倉を低めのフォークでサードゴロ、竹内には高めのフォークでショートゴロと三者凡退に抑えます。5回裏、佐藤将太が3回裏と同じくショートゴロ、杉崎がまたしても1塁悪送球、大会ナンバー1ショート平沢を意識してか、なんかヘンです。2番青木が送り3番平沢、小笠原がココで踏ん張ります、ズバッと外角のストレート見逃し三振、4番郡司も低めのチェンジアップでセカンドフライに仕留めました。佐藤世那は6回表8番川地に内角の真っ直ぐを打たれ、打球はグングン伸びてライトのキャプテン佐々木柊が追ってフェンスにぶつかりながらキャッチするファインプレイでピッチャーを助けました。小笠原は低めのストレートでレフトフライ、1番千野は空振りの三振で三者凡退に抑え、バックの美技にも支えられエンジンがやっとかかってきました。仙台育英は3点を追う6回裏、5番百目木が外角のチェンジアップを打ってサードゴロで1アウト、山本が際どい球を見極めてストレートの四球、紀伊に代えた佐々木監督の狙いが当ります。ここで佐々木監督は勝負に出ます。美技の佐々木柊に代打西巻です。西巻は期待に応えてレフト前ヒット、谷津は2回裏ファウルで8球粘って三振しましたが小笠原には合っている感じ、やはりセンターへのヒットで1死満塁、9番佐藤世那は外角の落ちる球で空振り三振2アウト、1番に還り2回エラー出塁しているツキ男佐藤将太です、小笠原の渾身の投球を散々ファウルして粘って、遂に打って中越えの走者一掃3塁打で同点です。遂に追い着いて意気上がる仙台育英応援団、チャンスに強い青木ですが、内角のチェンジアップを打って打球はフラフラとライト前、落ちるかと思われましたが寸前キャッチ、ここで一気に逆転していれば仙台育英が勝ったでしょう。仙台育英の打者が空振りしてくれず、ファウルで粘る、際どいボールは見極める、球数が増えて小笠原もアップアップしているのが表情から見てとれました。まだ小笠原にはツキがありました。一方佐藤世那は5回以降は無安打に抑えています。7回表守備変更で百目木をファーストからライトへ、西巻をファーストへ入れます。2番宮地センターフライ、杉崎を外角の真っ直ぐでショートゴロ、4番豊田を内角の落ちる球でライトフライに仕留め、流れは明らかに仙台育英に傾きました。7回裏2死から百目木がデッドボール、ここで2盗図りましたが刺されました。捕手の長倉ガッツポーズ!なかなか機動力発揮させてくれません。8回表その長倉がセカンドゴロ谷津がファンブルして1塁に生きましたが、佐藤世那が連続空振り三振でしのぎます。8回裏山本がど真ん中のストレートを打つもセカンドゴロ、西巻は外角の真っ直ぐを打つもセカンドゴロ、8番谷津はデッドボールと思いましたが、球審は三振アウトのコール、身振りで四角を作りました。内角のストレートがストライクで、それに当ったから見逃し三振というわけです。谷津は納得行かないといった表情でベンチに下がりました。小笠原は「ヤッター!」という感じで喜色満面、ベンチに走りました。これが勝負のアヤというものです。花咲徳栄の高橋はボークの宣告をキッカケに同点に追い着かれました。勝利の女神はまたしても土壇場で東海大相模に微笑んだという感じでした。ここで谷津が出ていれば、流れからして打順良い仙台育英の9回もしくは10回サヨナラの公算が大きかったからです。9回表は9番小笠原から、この日は大振りで、タイミングが合わずまるで打てていません。ところが、初球ストライクを取りに行った初球のフォークをライトスタンドへの勝ち越しホームラン!これこそ「起死回生」です。中京大中京対関東一戦の長嶋選手のホームランと似た感じでした。あの時も中京大中京の上野投手の出来からして「9回で決まらず延長かな・・・」という空気が漂っていた中で、バット一閃、あっという間に打球がスタンドに突き刺さり試合が決まりました。まさに予期せぬ出来事という感じでした。佐藤世那は調子が戻って、後半ずっと無安打に抑え、この回も抑えて味方の反撃に期待するはずが、打たれて、しかも相手エースの本塁打、後から考えれば何故もっと慎重に入らなかったかと悔やまれるでしょうが、こういう「魔の一球」、エアポケットに落ち込むようにス〜〜〜ッと吸い込まれるような瞬間が野球にはあるんですね。佐藤世那力尽きました。この後打ち込まれ、名手平沢の悪送球やライト百目木がアウトカウントを間違えて、ライトフライを捕って倒れ込み、2塁ランナー豊田がタッチアップからコーチャーグルグル手を回す、3塁蹴って一気にホームインという珍プレーまで出てこの回一気に4点、つくづく野球はメンタルスポーツというのが分かりますね。流れが仙台育英に行っていたのを、小笠原は一発でひっくり返しました。まさしく投打のヒーローです。意気消沈の仙台育英、意気上がる小笠原、9回裏三者凡退、161球の熱投でした。試合終了後の両監督のインタビューが印象的でした。「アグレッシブ・ベースボール」がキャッチフレーズの東海大相模の門馬敬治監督は、エース小笠原慎之介から始まる9回の攻撃で、代打を考えていたそうです。ところが、8回2死、小笠原が打席の谷津航大に死球を与えたかに見えましたが、球審の判定は三振。コースはストライクだったためです。これはまだ、小笠原にいい風が吹いているぞ、門馬監督はそうひらめき、代打策をやめて9回、小笠原をそのまま打席に送ったのだそうです。「あえて小笠原に代打を送らなかったことが、結果的に“動いた”ことになったと思います」ということでした。仙台育英佐々木順一朗監督は、「あと一歩だった。振り返りたくないくらい悔しくてしょうがない」と惜敗に悔しさをあらわにしました。「勝利に両手どころか、両足もかかっていた」と言いました。「悔しいのと申し訳ないのとよく頑張ったのと。全部が混ざった感情」とも言いました。申し訳ないという感情は宮城の人、東北の人へ優勝を絶対届けたかったからです。春夏合わせて11度目の挑戦も弾き返され、被災地に東北勢初の優勝旗を持ち帰るという夢は叶いませんでした。「何であと1イニングで負けてしまうのか。これでまた闇の中に入ってしまった」と肩を落としました。野球は最後に笑った者が勝ちなのです。
 勝負のアヤとか、負けにタラ、レバは付き物と言いますが、8回裏の谷津航大の死球が、球審の判定でコースがストライクなので見逃し三振判定の直後、NHKがホームベース真上のカメラの画像を写しました。ご覧になりましたか?内角ボールでした。ストライクはホームベースのエッジでも、すこしでもかすめていればストライクですが、明らかに外れていました。ビデオ判定はありません。高校野球の審判は両幅がワイド過ぎます。外角明らかに外れている球が「ストライク」で、バッターがビックリして球審を見る、という場面が幾度もありました。メジャーの審判は空気を呼んで、そういう判定をすることもありますが、日本のプロ野球の球審はこのあたりブレがありません。高校野球の審判も見習って欲しいと思います。沖縄・興南の比屋根雅也投手(2年)がトルネード投法から投じる球で三振の山を築きましたが、投げる時に右足を大きく1塁側に踏み出して左腕から横手投げなので、左打者は背中から球が来る、右打者は球が体に向かってくる、ベースのエッジを意識した上手い投げ方、これも高校野球の審判の傾向をつかんだ頭脳的投法です。あの角度で、しかも両幅ワイドなら、右打者も左打者も、ド真ん中以外は打てません。

決勝戦スコア
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9
東海大相模 2 0 2 2 0 0 0 0 4 10
仙台育英 0 0 3 0 0 3 0 0 0 6
東海大相模:小笠原−長倉  仙台育英:佐藤世−郡司
本塁打:小笠原(東)  三塁打:佐藤将(仙)  二塁打:杉崎、長倉、宮地2、豊田(東)、平沢(仙)

東海大相模が45年ぶり優勝、東北勢は8度目(選抜とあわせれば11度目)の挑戦成らず


朝日新聞に日本ハム「スポーツ・コミュニティ・オフィサー」の稲葉篤紀さんの言葉が載っていました。

「東海大相模の小笠原君、いい球を投げてますね。高校時代の僕だったらたぶん打てないだろうなあ。仙台育英の佐藤世那君はフォークでカウントも三振も取れる。素晴らしいですね。早稲田実の清宮君は1年生なのに先輩の肩をたたいたりして、仲が良さそう。先輩に話しかけられなかった僕たちの時代では考えられないですね」
野球人の先輩から言わせてもらうと、野球というスポーツは失敗するもの。10回打って3本ヒットを打ったら一流選手です。失敗したときに切り替えることや反省することは大事。でも、勝ったときやヒットが出た時に「なんで打てたんだろう」と分析することも必要です。成功した要因がわかれば、調子を落としたときに復調するきっかけになりますからね。そして、野球を通じてできた仲間は一生の宝物です。

良い言葉です。肝に銘じましょう。


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