スコアラーの目2016    澤 藤 隆 一

 2016年の大井ウエストは6年生が7人、好成績を期待しました。6年生が多い年は強いというだけでなく、昨年の埼玉西部秋季選抜大会で、エースの瀬戸尾侑宏が投げられないのをカバーして見事なピッチングを披露した松原寛太の存在が大きかったからです。野球は8割バッテリーですから、ここが安定していなければ勝利の目算は立てられません。ただ不安要素もありました。前年の5年生大会の成績です。市内5年生大会準決勝では上福岡パワーズの矢野投手の力投の前に2−5敗戦、東入間新人戦大会準決勝では三芳ドリームズと対戦し、先発ジョー、リリーフ寛太共にストライクが入らず合計11四球で自滅、4−8で負けました。つまりここぞのところで稀勢の里のように期待を裏切ってしまう、メンタル面の不安でした。昨年の6年生は4人が全くキャラクタバラバラでしたが、不思議にチームのまとまりが良かったのです。もうダメだという展開になっても全然めげず、あきらめません。これがウエスト史上最多の年間50試合で37勝という結果につながりました。6年生4人が皆素直で真面目だけど実にオモシロイ、ヘンな選手ばっかり、それぞれ特徴がありながら、イザとなると団結するのです。ところが2016年の6年生はマトモで素直過ぎて、イザとなっても奇跡を起こしません。吉本興業じゃないのでオモシロければよいというものではありませんが、5年生のときの稀勢の里から脱皮できるかが課題でした。
 シーズンに入り練習試合第1戦の相手強豪みずほ台ヤンガースを9−1と一蹴、坂戸ロイヤルズとは1勝1敗でしたが、負けは寛太が11奪三振、自責点0のスゴイピッチングながら、土壇場内野のエラー連続で、勝利目前まさかのサヨナラ負けでした。どうも心配が早速現実になった感じでした。続く大井少年ファイターズ戦は寛太が先発して2回完璧、全く打たれそうになく練習にならないとジョーに替えたら、それなりに打たれて引き分け、埼玉南部bPの強豪ガッツナイン戦は寛太が先発して4回1失点、ジョーが3回無失点で5−1勝利、これなら大丈夫だと胸をなでおろして公式戦に突入しました。緒戦富士見親善大会1回戦勝った次の日の埼玉南部春季大会は開会式でジョーが選手宣誓、直後の1回戦の相手は北原ウィングス、土壇場逆転負け、ウエストが南部大会で初戦敗退なんていつ以来か?と前途に暗雲立ち込めました。4月に入り富士見親善大会準々決勝で強豪東野小レッズに8−1完勝して、やっぱりウエストは強いのだと思ったら、準決勝で新所沢ライノーズにタイブレーク負け、川合ランバー旗予選リーグ第1戦で全然強くないと思った清瀬旭丘にもタイブレーク負け、ふじみ野市春季大会準決勝で大井少年ファイターズに1-3「空敗」、♪オー順子 君の名を呼べば僕はせつないよ・・・・カラカラ、空回りの長渕剛が出てしまいました。オカシイ、そんなはず無い、3連敗で東入間春季大会突入、南部大会メダルの大井ブルーウィングスに7−2勝利、ホラやっぱり強いジャン、次の日川合ランバー旗予選リーグ第2戦アウェーで難敵若松ブルーウィングスをナント17−6撃破、ホラホラやっぱり強いジャン、そしたら2日後東入間春季準々決勝勝瀬キッズ戦、優勢なのにまさかの守備のボーンヘッドで追いつかれ、まさかの攻撃のボーンヘッドでタイブレークサヨナラ負け。早くも4大会が終り、5大会目の埼玉西部夏季大会4回戦では勝瀬キッズに0−1完封負け、6大会目の松本旗争奪大会準々決勝でも勝瀬キッズに0−1完封負け、合宿で厄払い必勝祈願して夏休み明け7大会目の毛呂山町長杯大会決勝で大井少年ファイターズを9−1ねじ伏せてやっと初優勝、8大会目の東入間秋季大会決勝では上福岡第五クラブを10−1一蹴して二つ目の優勝、9大会目の埼玉南部秋季大会準決勝は内間木球場のナイター、ガッツナインに0−3完封負け、今期唯一の完敗でした。10大会目の埼玉西部秋季選抜大会決勝は坂戸ロイヤルズとタイブレーク2回やって決着つかず抽選の末負けましたが、実質優勝と同じ。11大会目の川合ランバー旗大会決勝では東野小レッズに2−0完封勝ちしてこの大会では初優勝、今期優勝三つ目、12大会目のふじみ野市秋季大会決勝では鶴ヶ岡少年野球クラブに5−0完封勝ちして優勝四つ目、有終の美を飾りました。前年と並ぶ史上最多の年間50試合で41勝、ウエスト史上最高成績2013年(6年生6人)の優勝5回42勝には一歩及ばなかったものの、埼玉西部秋季選抜大会で決勝まで進み、野球では負けなかったわけですから実質優勝5回と同じです。完敗は1試合だけ、その意味では史上最強チームだったと思います。
 2016年チームの特徴は、309得点90失点が示す通り、勝つときは圧勝が多く、ボロ負けが一切無かったこと、唯一完敗も0−3です。1点差負けは新所沢ライノーズ、清瀬旭丘、勝瀬キッズにタイブレーク負けと勝瀬キッズに2度0−1完封負けの5試合です。いずれも押していて優勢なのに最後負けてしまった形でした。1点差勝ちの接戦は岡ファイターズ5−4、北原ウィングス3−2、大井少年ファイターズ5−5タイブレークサヨナラ勝ちです。練習試合含めて最多対戦は大井少年ファイターズで3勝1敗1分けです。他の市内チームとの対戦では上福岡第五クラブに3勝、大井ブルーウィングス、上福岡パワーズ、上福岡JFGに2勝、鶴ヶ岡少年野球クラブに1勝です。富士見市のチームとは、みずほ台ヤンガースと富士見ファイヤーズに2勝、富士見エンゼルスに1勝、勝瀬キッズに3敗、対戦相手が片寄っています。三芳町は竹間沢イーグルスに1勝だけでした。霞ファイヤーズとの2戦はいずれも2−0で勝ちましたが厳しい試合でした。強いファイヤーナインズには8−2で勝ったものの、試合重複で相手がウエストと真っ向勝負を回避したものでした。終盤はガッツナインも勝瀬キッズも、もう1回やったら絶対勝つと思わせる充実振りでした。勝瀬キッズの丹羽投手を打てなかったのが鬼門、これが無ければ史上最多勝でした。数々の好勝負がありましたが、敢えて1戦挙げるとすればふじみ野市秋季大会準決勝の大井少年ファイターズ戦です

ふじみ野市秋季大会準決勝 TB 総計

2016/12/10上野台小学校9
勝利投手:松原寛太
敗戦投手:渡邊蒼大
本 塁 打 :新井勇斗
勝利打点:熊倉 柚

大井少年ファイターズ 0 4 0 1 0 0 0 5 1 6
大井ウエスト 3 1 0 0 0 0 1 5 2X 7X

 1回表アウト三つすべて三振の寛太らしい立ち上がり、その裏祐茉四球〜2盗、3盗、寛太内野安打でホームイン、柚の2点タイムリーで3点先制の良い立ち上がり、早くも岩本→渡邊投手交代、ところが2回表寛太がまさかの鼻血ブ〜でジョーに投手交代、いくらジョーでもジョーダンじゃない、野選で2点与え、不運な当りが続いて逆転されました。しかしその裏康平歩き、祐茉のタイムリーですかさず同点、3回から寛太が再びマウンドに向かいわずか7球の三者凡退、寛太本来のピッチングが戻りました。4回表8番新井選手に三塁線破られ、不運なホームランでまた1点先行されました。やはり流れは大井少年ファイターズにありました。重苦しい雰囲気のまま、最終回を迎え7回表出してはいけない俊足ランナーを歩かせ、2盗され、迎えた渡邊主将、ウエストなら送りですがファイターズは強攻策、フルカウントから打ってセンターライナー、斗空が落ち着いてキャッチして素早く二塁送球、ジョー捕って飛び出していたランナーが慌てて戻るも間に合わず併殺、これで流れが戻りました。1点を追うウエストの攻撃、ロングリリーフ渡邊主将緩急つけての力投の前に祐茉、斗空連続三振、万事休す?いいえ寛太が歩いて2盗、ジョーのレフトライナーがショートバウンドキャッチで値千金の同点打、さすが4番!いやなタイブレーク、表1点で抑え、裏に柚のライトへのサヨナラ打で勝利。勝ったと思った少年ファイターズは土壇場マサカのサヨナラ負け。
 主将田口 成は例年のキャプテンに比べれば守備はそんなに上手くないし足もナニだけれど何故か盗塁が多い、ここぞというところで打って結果を出す勝負強さは、これまでの四番打者では最も頼りになる存在でした。投手としても勝率史上最高、寛太という絶対的エースの存在で勝ち数は7と少ないですが、21試合に登板して1敗しかせず、2セーブというのは立派です。また各記録満遍なく名を連ね、四球数トップ、打率、打点、盗塁2位、得点3位でした。松原寛太はエースとして史上最多の34勝、防御率は歴代エーストップの1.21、奪三振数244はウエスト新記録、歴代2位が令児の147ですから当分破られないでしょう。打撃は三冠王で打点63はウエスト新記録、もう少し好球必打で四球を選べればもっと打率が上がったはずです。盗塁数も歴代2位でした。しかも富士見親善大会準々決勝の東野小レッズ戦でウエスト初のサイクルヒットを記録しました。澤口 聖は捕手としてチームの要の重責を果たしました。盗塁阻止率歴代2位、逸球6は史上最少で、貧打のウエストがここまで勝てたのは聖の守りの貢献があったからこそ、打っても打点3位で5番の役割を果たしました。もうチョット足があれば...やめましょう。熊倉 柚は唯一人不思議な選手でした。仁王パワーで本塁打2位、ここぞというところで凡打、一塁の守備は後ろのポテンフライが不得意でしたが的がデカイので内野手には投げ易い、高い送球も捕ってくれました。印象に残るのは埼玉南部秋季大会2回戦富士見ファイヤーズの5年生森川投手に苦しめられていましたが、6回裏二塁打の聖を置きズドーンと引っ張って超特大ライナーのライト越え、ものの見事なホームラン、これ以上ない快心の幕切れでした。水上康平は安定した守備、レフトは安心でしたが、チーム事情でサードにコンバート、終盤は「サードに打ってくれ!」と願うほどでした。四球数3位、そしてなんと言っても50試合158打席で三振4とダントツに少ない、早撃ちなので少ないかと思いきや四球も選ぶ、バットに当てるのが上手い、ただ芯を食わないだけでした。倭 祐茉は気合の選手でした。打率3位で3割キープ、盗塁3位、得点3位、大きいリードは他の選手のお手本でした。毛呂山町長杯で優勝した翌日の東入間秋季大会1回戦でそれまでのラストバッターからトップバッターに康平と入れ替え、監督の思いつきに応えてこれ以降眼をみはる大活躍を見せました。柿沼斗空は四球数と犠打トップ、得点2位でチームに貢献しました。触れば折れそうな細い腕なのに、センターへのヒットを1塁への速い球で刺す、チームの士気を大いに盛り上げてくれました。足が速いのでバントすればヒットになるのですが、セコイことが嫌い、エッ不器用なの?
 6年生の平均打率は3割0分6厘、2010年以降最低、バントやスクイズが下手だったのが苦しんだ理由です。タイブレーク5回やって最後にやっと勝ちましたが、これができていれば、史上最多勝だったでしょう。大井ウエストの名前を轟かせてくれた選手に感謝、感謝です、ありがとう。