スコアラーの目2014    澤 藤 隆 一

 2014年度は大井ウエスト15年目、しかしスタート時は楽観を許されなかった。6年生3人、5年生4人、4年生を2人入れなければ試合に出られない。前年度は6年生が6人、42勝6敗、勝率8割7分5厘、年間6敗しかしないというウエスト史上最高成績だった。その前の年は6年生が4人しかいなかったが、トータル成績は38勝11敗、優秀な下級生に支えられた結果で、ウエストの近年の強さは、選手が少ないので、下級生のうちから試合経験を積み、勝ち方の伝統が受け継がれてきたためだ。ただ、さすがに4年生がレギュラーで入ることは珍しく、矢野壮真が5年生を押しのけてレギュラーだったのが例外だった。5年生でレギュラーを経験した3人が最上級生となった2014年度は、5年生以下の試合経験が乏しいので楽観できなかった。案の定、南部春季大会は勝瀬キッズに1回戦負け、富士見親善大会では若松ブルーウィングスにコールド負け、ふじみ野市春季大会でも上福岡ジュピターズに1回戦負けする有様だった。エラーがボロボロ出てヒドイ試合、失点6、自責点1なんて、投手がかわいそう、いったい今シーズンは何勝できるのだろう?と暗雲立ち込めるスタートだった。
 とにかくまずはエラーを減らそうと徹底的な守備練習、またアウトカウントとランナーを想定しての考える野球の体得、連携プレーの練習を繰り返し、試合経験が乏しい下級生に実戦経験を積ませて体で覚えさせるために、精明スワローズ、新堀ジャイアンツ、新町トレジャーズと強豪相手に練習試合を組む、負けても負けても・・・、大井ウエストの伝統のお蔭で強いチームが相手をしてくれた。そして、新町トレジャーズに4−10で負けた試合で矢野壮真が開眼したようだ。強打の相手に真っ向勝負しても弾き飛ばされる、ストライクを投げるだけが投手ではない、相手の打ち気をそらすにはどうするか、緩急を付ける、上下左右のコースを投げ分ける、そして何よりバックを信頼して投げる・・・4月26日からシーズン4大会目の東入間春季大会が始まった。なんと初戦は水谷フェニックス、6年生が14人居て強力打線、エースの速球派田中投手も良く、強いチームと分析していた。代表の秋葉さんは戦前余裕の表情、冨士川監督が挨拶に行ったら、「まあ、相手してやるよ」てな感じ。ところが試合が始まったら「こんなはずでは・・・」と顔が曇って行く、なにしろノーヒットノーランまがいのピッチングで全くタイミングが合わない。ウエストの攻撃は3番壮真、4番巧真、5番梓馬の三まクリーンアップが打って着実に加点、まずい攻撃多々あるも、壮真の7回70球の圧巻ピッチングで完封勝利。2回戦はコールド勝ち、準々決勝は亀少クラブ、例年強豪、前年は低学年が大井KAMESTを組んで一緒にプレーしたのでお互い良く知っていて仲も良い間柄、しかしこの試合もウエスト三まの活躍で10−3と圧勝、さあメダルを賭けた準決勝、2ヶ月前の南部春季大会で1回戦負けしている勝瀬キッズ、やはり押されて2−0、しかし4回裏壮真が粘って9球目、2ランホームランで同点に追い着き、気落ちしたエースの清水から巧真、梓馬が連続四球、盗塁して無死2、3塁で6番セカンドフライ、2塁送球〜併殺、「ヤッター」と小躍りしてキッズベンチ、選手たちを呼ぶ、フライなので3塁へ戻っていた巧真に冨士川監督が「行け!タクマ行け〜〜〜!」と絶叫、俊足の巧真は本塁突入、気付いたキッズは本塁送球、しかし巧真の足が上回り、主審は「セーフ!」、結局これが決勝点となった。一瞬何が起きたのか、わからないような出来事、結局壮真のこの回粘りに粘った打席が効いて長い守りになったキッズナインは、この試合2度目の見事な併殺だったので勘違いしてしまったのだろう。バックのエラーから失点したもののこの大会ここまで自責点ゼロの壮真は、エラー続出でも踏ん張って投げてきて自らの一打で追い着いて、ラッキーな逆転となれば気持ちが奮い立つ、この後の3イニングを完璧に抑えて勝ち投手となった。ここまで戦前予想通りの相手と戦い、迎えるダブルヘッダーの決勝戦、前年新人戦優勝の富士見エンゼルスか準優勝鶴小ニュースカイヤーズか、第三位の大井ブルーウィングスか大井少年ファイターズかと予想していたらナント!三芳ホープ、バッテリーの活躍で勝ち上がって来た。ウエストは壮真連投、ホープも久保連投、エース対決、ウエストは6年三まクリーンアップのところで着々と得点、5年生もようやく打てるようになって、ホープバッテリーにホームランを打たれたが、決勝までの5試合でこの本塁打2本の自責点2という壮真の見事なピッチングで優勝した。
 続く西部夏季大会も恐怖のくじ引き、しかしこの勢いは続き、1回戦で朝霞フレンズにコールド勝ち、2回戦で大東スポーツクラブ少年団に今期随一と言って良い素晴らしい戦いで2-1勝利、3回戦で勝瀬キッズに3−0完封勝利、ブロック決勝の相手は練習試合で完敗の優勝候補新町トレジャーズ、これも5−4で撃破して、優勝も夢ではないと助兵衛根性を出したら坂戸ロイヤルズに0−8完封負け、ここから調子が狂った。
 とは言え、序盤のヒドイ状態から、結果21勝14敗まで行けたのは立派。中盤までエラー多発、終盤でやっと守備が良くなったら、対戦相手の攻撃力も上がった。6年生の三まが奮闘して下級生を引張ってくれて、今年も大井ウエストの名前を轟かせてくれたことに感謝、ありがとう。