スコアラーの目2013    澤 藤 隆 一

 2000年にトライアングルとニッショウが合併して新発足した大井ウエスト、13年目の2012年度は6年生が4人しかいなかったが、トータル成績は38勝11敗と、ウエスト史上最高成績だった。しかし6年生が少ないのにこれだけ勝てたというのは、6年生が良かったのはもちろんだが、下級生を含めて少数精鋭で一丸となって戦ったためである。そして14年目の2013年度は6年生が6人、42勝6敗、最高成績を更新し、勝率8割7分5厘、これはスゴイ、何しろ年間6敗しかしなかったというのは凄過ぎる。6年生の大会は12で6敗、優勝5回、これまたウエスト史上最高成績で、春の南部大会を富士見親善大会との重複で棄権せざるを得なかったというのも強いチームの故である。優勝は富士見親善大会、東入間秋季大会、毛呂山町長杯大会、ふじみ野市大会春秋連続、準優勝の北岡杯は空気を読んだ結果だが、埼玉南部秋季大会は第3位、川合ランバー杯は新倉フェニックスに不覚を取って1敗3すくみの結果失点差で予選3位、決勝トーナメントに進めず、東入間春季大会はコールド負けしそうな状況からサヨナラ勝ちの場面まで行ってサドンデスで富士見エンゼルスに負けてBEST8、問題は西部大会と西部選抜大会、共に1勝しかできなかった。西部は強豪チームが集まるので、ここで勝ってこそ真の強豪チームと言えるので、この不成績は今後に目標を残したと前向きに考えたい。個人記録も川井田流碧が最多勝記録更新、勝率8割4分6厘も断トツの過去最高、エースの安定がウエスト史上最高成績につながった。「ピッチャーが守備位置を指図している、スゴイ!」と相手チームや大会役員から言われたものだ。捕手の柿沼大翔の盗塁阻止率1割8分2厘は前田夏輝と並ぶ過去2位、終盤に一気に率を上げた。もう少し早ければ、という気もしたが、それだけ体力が上がったからであって、これは仕方無い。パスボール8というのも実はスゴイ。6試合に1個しか逸球が無いのだ。打っても打率4割6分8厘の首位打者は見事である。前年の吉田健太郎の4割7分9厘に次ぐ歴代2位だが、吉田がバントヒットで打率を稼いだのに対し、強打でこの打率はスゴイ!1番打者としてチームへの貢献度はナンバー1だ。まず大翔が出塁して、走り、恐怖の打線で還して相手に先制パンチを食らわせたからこの勝率があったと言える。相手チームから見ると、小柄な1番打者がなんであんな球かっ飛ばすの?と眼を剥く場面がしばしばで、ベンチからすると実に頼もしかった。打率2位のキャプテン内藤匠之介は4割3分2厘で歴代4位、打点62で冨士川文太を抜いて過去最高、本塁打も冨士川文太を抜いて過去最高の13本、強打者という評判が知れ渡って、相手チームが外野をものすごくバックさせたのに、それでもこの数は見事と言うしかない。打点は川井田流碧が52で続き、この3、4番が機能したことが打線の破壊力につながった。本塁打2位の柿沼の8本は歴代3位だ。川井田流碧と5番伊藤優の5本だって、例年ならば本塁打王にもなるような数だ。盗塁王は内藤匠之介の53、ところが52で川井田流碧と柿沼大翔が続き、終盤までトップだった伊藤優が51と、誰が盗塁王になってもおかしくなかった。伊藤優が終盤突如打撃フォームが崩れて出塁できなくなったことからこの結果になった。これだけ強打で俊足の4人が並べば、勝てないほうがおかしいと言える。伊藤優は四球25でトップ、次点は柿沼大翔の23だった。足の速い選手が選球眼も良ければ、これは実に厄介だ。2013年度は死球が少なく、湊陽向が3でトップ、この中にはチームの勝利に繋がる貴重なデッドボールもあった。打席毎に構えが変わり、ベンチは必死になって吹き出すのをこらえたが、相手投手は馬鹿にされていると思ったか、制球を乱して四球ということもたびたび、頭に来過ぎるとぶつけた。しかし黙っていればフォアボールになるものを、打ちたくて、打ちたくてクソボールを振ったりするものだから、三振率3割8分と、巽竜(2割6分1厘)を抑えてトップに立った。しかし犠打も8でチームトップ、大いにチームに貢献した。ちなみに犠打の次点は7で伊藤優。湊陽向は終盤、守備が良くなって、やっと安心して見られるようになったが、もはや北岡杯ぐらいしか公式戦は残っていなかった。もう少し早くチームに入っていれば・・・と惜しまれる。しかし今や下級生に外野守備のお手本を見せられるようになり、入ってきた頃と比べると格段の進歩で、信じられないような上達は、「やればできる」の見本みたいなもの。巽竜は不思議な選手だった。何しろこの選手だけが6年生で2試合欠場した。この選手が居なくてやる気を失ったウエストは川合ランバー杯で新倉フェニックスに大敗、15点も取られたのはこの試合だけで、失点差で決勝トーナメントに進めなかったのも巽竜のせいだ。ただ、それだけチームの要だったと言える。なにしろ、神業みたいな守備と、東入間春季大会で富士見エンゼルスにコールド負けしそうな場面になると本塁打をぶっ放してチームにカツを入れた。北岡杯準決勝では鶴ヶ岡少年野球クラブに負けそうな展開になると、逆転打と勝利打点、火事場の底力を発揮した。走力など基礎体力があるのであとはヤル気だけ。実に楽しい1年だったが、この強さはこの6人のチームワークの良さのため。挨拶もシッカリして他のチームにもほめられた。性格の良い選手揃いで、しかも自主性があり、互いに注意しあうなど、指導者から見ると有難い選手たちだった。ありがとう。